二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第八十七話 光 ( No.189 )
- 日時: 2013/11/13 07:53
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: IvdLyRwl)
黒い鎌と白い爪が、連続して激しくぶつかり合う。
「アブソル、火炎放射!」
「ブニャット、切り裂く!」
アブソルの噴き出す灼熱の炎を、ブニャットは鋭い爪を突き出し、一気に炎の中を突っ切る。
「ッ、アブソル、サイコカッター!」
炎を突き破られ、咄嗟にアブソルは鎌に念力を纏わせるが、ブニャットの攻撃に間に合わず、鋭い爪に切り裂かれる。
「ブニャット、十万ボルト!」
さらにブニャットは追撃をかける。
高電圧の強力な電撃がアブソルに襲いかかるが、
「甘いぜ。アブソル、辻斬り!」
瞬時に体勢を立て直し、アブソルはブニャットとの距離を一気に詰めると、黒鎌でブニャットを切り裂く。
「こちらの攻撃が尽く通用しないわね……。当てられる時も、手応えを外される感じ」
「言って悪いけど、そのブニャットの長所は見た目に似合わないスピードだ。そのスピードを見切ることが出来れば、そのブニャットはもはや脅威でも何でもない」
実際、レオとアブソルは既にブニャットの素早さを見切っている。
だから、ブニャットの攻撃はほぼ躱すか相殺するかが出来ているのだ。
「ふうん。そこまで分析されてるなんて、流石要注意人物に登録されてるだけはあるわね」
キキは呟き、そして、
「だったら、もうこの技を使うしかないかしら」
刹那。
キキの周りの空気が豹変する。
「大口を叩くのは、この技を攻略してからにすることね」
ブニャットの体に、言いようのないオーラが集まるのが分かった。
そして、ブニャットが突如カッと目を見開き、大きく飛び上がる。
「ブニャット、ギガインパクト!」
もはや目で見ることができるほど途轍もないほどのオーラをその身に纏ったブニャットが、アブソル目掛けて全力で突撃する。
しかもそのスピードは、今までの動きの中で一番速かった。
(なるほど。確かに、これは躱せないな)
素直にレオは認めた。
認めた上で。
レオの口元には、勝ちを確信した笑みが浮かぶ。
「アブソル、身代わり!」
アブソルの姿が消えた。
ブニャットの渾身の一撃は、代わりに現れた何かを破壊するに留まる。
そして。
「アブソル、辻斬り!」
ギガインパクトは非常に強力な技だが、相手に当てた後は反動で動けなくなるというデメリットがある。
その隙を逃すはずもなく、アブソルの一撃がブニャットの急所を的確に切り裂いた。
「ッ、ブニャット!」
ブニャットの体が傾き、地面に倒れる。
目を回しており、戦闘不能になっていた。
闇のオーラが、プテリクスを覆い、体力を蝕んでいく。
「ヒャハハハ! 苦しみ抜いて地に伏せろ!」
仮面の奥でケケが狂ったような高笑いを上げる。
プテリクスが闇に包まれ、蝕まれていく中。
カンタロウだけは、表情を全く変えず、じっと一点を見据えていた。
「プテリクス、ゴッドバード!」
ゴバッ!! と。
プテリクスを覆う闇が、一瞬にして薙ぎ払われる。
「……!?」
そのままの姿勢で完全に固まるケケ。
「ふー、危ねェ危ねェ。正直今のは少し焦ッたべや」
代わりにプテリクスが纏うものは、白い光。
あまりに眩い、神々しい光を纏い、プテリクスは力を溜めていく。
「一つだけ。直属護衛程度のお前が、少しでもオラさビビらせたこと、それだけは認めたるだ」
だがな、とカンタロウは続け、
「オラの生まれの地、ホウエン地方からずゥッと一緒にいるこいつさ、あれくれェの技でどォにか出来る訳ねェだろォが!」
プテリクスを覆う光が、爆発的に展開される。
巨大な鳥のように、その光が形を変え、
「プテリクス、ぶちかませ!」
咆哮を上げ、プテリクスは突貫する。
その姿は、神の力を得た巨大な鳥の如し。
「……ッ! スカタンク、ダークリゾルブ!」
スカタンクは黒いオーラを纏い、再び闇のオーラを放つが、神の力の前に容易く打ち破られ、スカタンクにゴッドバードが直撃する。
「スカタンク!」
五メートルほど吹っ飛び、スカタンクは戦闘不能となって地に落ちた。
「ケケ、貴方負けてしまったの?」
「姉貴だって負けてんじゃねえかよ」
追い詰められた覆面姉弟だが、焦る様子は見せない。
「随分と余裕だな」
「生憎、シヌマには『ブロック』があるだ。ここの統率さ呼べば、それでお前ら終わりだべ」
詰め寄るレオとカンタロウ。しかし、キキとケケはまるで気に留めない。
「でもさ、ケケ。やっぱり全ての戦力を使い切らなくて正解よね」
「そうだな。こんな時のためにな」
そして、キキとケケは同時にボールを取り出す。
「出て来なさい、アゲハント!」
「出て来な、ドクケイル!」
キキのボールからはカラフルな翅と細長い口が特徴の蝶々ポケモンアゲハント、ケケのボールからは黄色い触覚に赤い模様が入った緑の翅を持つ毒蛾ポケモンのドクケイルが飛び出す。
「ま、そういうことで。お二人さん、さようなら」
「お前らなかなか強かったぜ。じゃあな」
キキがアゲハントに、ケケがドクケイルに捕まり、二人は空へと飛び上がる。
「逃がさねェだ! ムクバード!」
カンタロウが手にしたボールからムクバードが飛び出す。
二人を逃がすまいと急上昇し、その後を追うが、
「ドクケイル、ピッカリ玉だ!」
ドクケイルが放った黄色い光球が破裂し、閃光が放たれる。
眩い閃光にムクバードは目をくらまし、地面に落ちてしまう。
「チッ! ムクバード、急げ!」
何とか立て直し、再びムクバードは飛び上がるが、既にキキとケケはどこにもいなかった。
「ケッ、逃げ足だけは一流だなや」
悔しそうに呟き、カンタロウはムクバードの嘴を撫で、ボールに戻す。
「とりあえず、リョーマさんに報告しなきゃな」
「オラが後でやッとくだ。ま、それはともかく」
カンタロウが顔を上げる。
「あいつらのせいで本題さそらしツまッたけンど、レオ、お前のジムの話だ」
「あーそうだった。とりあえずこいつらを回復させてやって、そしたら頼むよ」
「そのことだが」
カンタロウがポケットに手を突っ込み、何かを取り出す。
「シヌマジム攻略のことで、これさお前にやるべ」
取り出したそれを、カンタロウはレオに差し出す。
「何だこれ?」
「これさ使えば、虫タイプさ使うママルに対スてより有利になれるだ。珍しいモンだけンど、オラが鳥ポケモンには使わねェ道具だべさ」
ただ、とカンタロウは続け、
「すぐには使わねェほォがええかも知れねェだ。とりあえず、今から特訓の相手さなってやるべ。オラがもォ大丈夫だと判断したら、それ、使いな」
カンタロウにそう言われ、レオは受け取ったそれをじっと見つめる。