二次創作小説(紙ほか)

Re: 第八十九話 穴 ( No.193 )
日時: 2013/11/22 17:06
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Yry.8Fde)

「気を取り直して、バトルスタート、ワークロ!」
ママルの二番手は、前回ポッチャマを破ってレオの敗北を決めたあのワークロ。
「ワークロは格闘タイプの血も持ってるからね。トノッパーよりは断然寒さには強いよ」
「それならそれで別の手段を使いますよ。ポッチャマ、水の波動!」
ポッチャマは水を凝縮し、波動として撃ち出す。
「ワークロ、マグナムパンチ!」
ワークロは腕を振り回し、ミサイルのような勢いで拳を突き出し、水の波動を粉砕すると、
「穴を掘る!」
手慣れた手つきで草をかき分け、地に穴を掘り、地中に潜る。
「ポッチャマ、下から来るぞ。用心しろよ」
ポッチャマは全神経を集中させ、じっとワークロを待つ。
ポッチャマの目の前の草が、僅かに揺れ動く。
「そこだ! ポッチャマ、ドリル嘴!」
このフィールドには草がある分、地中からの襲撃には適していない。
ワークロの手が突き出てくると同時、ポッチャマは嘴を伸ばし、ドリルのように高速回転して迎え撃つ。
しかし。
このフィールドを支配するジムリーダーが、何の考えも無しに不適な手を使うはずがない。

「かかった! ワークロ、カウンター!」

ポッチャマの嘴を左手で受け流すと、ワークロは右拳を思い切り放ち、ポッチャマを殴り飛ばす。
「しまった、ポッチャマ!」
カウンターの存在を、レオは完全に忘れていた。
目の前に出来たチャンスに、あっさり釣られてしまった。
ポッチャマは吹っ飛ばされ、壁に激突し、戦闘不能となった。
「くっ、ポッチャマ、よくやった。戻って休んでてくれ」
ポッチャマをボールに戻し、レオは次のボールを取り出す。
「今のはやられましたよ。完全にチャンスだと思い込んで、何も考えずに出てしまった」
「でしょ? この前のレオとのバトルの後に考えついた戦法なんだけど、これが上手く決まるのよね」
「ですが」
レオが言葉を続ける。
「そのワークロの技は既に三つ分かりました。そしてその三つの技を抑えられるポケモンを、僕は持っています」
そのポケモンとは、
「次はお前だ。頼んだぜ、パンプリー!」
レオの二番手、パンプリー。
格闘技は無効、さらに穴を掘るも効果今一つと、非常に相性がいい。
「なるほどね。確かにパンプリーなら、技的にはワークロは不利だ」
だけど、とママルは続け、
「私はジムリーダーだよ。それくらいは対策してて当然! ワークロ、冷凍パンチ!」
「パンプリー、シャドーボール!」
ワークロが拳を握り締め、その拳に冷気を宿らせる。
助走をつけて殴りかかってくるワークロに対し、パンプリーは影の弾を撃ち出し、相殺する。
「マジカルリーフ!」
続けてパンプリーは妖しく光る必中の葉の刃を放つ。
「ワークロ、穴を掘る!」
ワークロは素早く地面に穴を掘り、地下に潜る。
穴はすぐに閉じ、マジカルリーフは届かない。
「チャンスだ! パンプリー、悪巧み!」
穴を掘るは潜ってから攻撃までに時間がかかるため、その隙にパンプリーは脳を瞬時に活性化させ、特攻を大きく上昇させる。
「今よ、ワークロ!」
突然、パンプリーの足元からワークロの拳が突き上げられ、パンプリーを吹っ飛ばす。
とはいえ穴を掘るは地面技。草タイプのワークロへのダメージはそう大きくはない。
「ワークロ、冷凍パンチ!」
再びワークロの冷気を纏った拳が繰り出される。
「パンプリー、シャドーボール!」
再びパンプリーは影の弾を放って迎撃する。
悪巧みで特攻が上がっているため、シャドーボールは先ほどよりも勢いが強く、ワークロを逆に押し戻した。
「やっぱり悪巧みは辛いねー。自慢の格闘技も通らないし。だったらワークロ、穴を掘る!」
体勢を立て直すと、ワークロはまた地面に潜る。
「パンプリー、気を付けろ。どこから来るか分からないぞ」
パンプリーはじっと構え、レオもパンプリーの周囲を注意深く見据える。
先程とは違い、ワークロは中々姿を見せない。
パンプリーもレオも集中を切らず、静かに攻撃に備える。
不意に僅かな動きが生じた。
パンプリーの近くの水溜まりに、不自然な波紋が広がる。
「パンプリー、水溜まりだ! シャドーボール!」
素早く反応し、パンプリーは影の弾を撃ち出す。
しかし、
「残念外れ! ワークロ、冷凍パンチ!」
影の弾は水溜まりに着弾するが、飛沫が上がるに留まり、直後、パンプリーの足元からワークロが飛び出し、冷気を込めた拳でパンプリーを殴り飛ばす。
「神経過敏になり過ぎ! ワークロ、もう一発!」
「くっ、パンプリー、放電!」
さらにワークロは冷凍パンチで追撃を仕掛けるが、パンプリーは体勢を崩しながらも周囲へ電気を撒き散らし、何とかワークロの攻撃を防いだ。
「今度はこれよ! ワークロ、地面にマグナムパンチ!」
ワークロは地面へとミサイルのような、地面を割る拳の一撃を放つ。
「冷凍パンチ!」
飛び散る地面の破片に、ワークロは連続で冷凍パンチを放つ。
破片が凍りつき、鋭い氷の棘となってパンプリーへと襲いかかる。
「パンプリー、マジカルリーフ!」
妖しく光る葉を放ち、パンプリーは氷の棘を破壊、さらに
「シャドーボール!」
ワークロとの距離を詰め、影の弾を撃ち出す。
「ワークロ、マグナムパンチ!」
ワークロは腕を振り回し、拳を突き出し、影の弾を破壊。
さらに大きく跳躍し、木の後ろへと着地する。
「パンプリー、逃がすな! シャドーボール!」
木の向こうのワークロを追い、パンプリーは影の弾を撃ち出すが、
「ワークロ、穴を掘る!」
それよりも速くワークロは地面に潜ってしまい、シャドーボールは当たらない。
今度はワークロは地中からは攻撃せず、木を挟んでパンプリーと反対側から現れ、
「ワークロ、マグナムパンチ!」
腕を振り回し、ミサイルのような拳を木の幹に思い切り叩き込む。
次の瞬間。

いとも容易く根が千切れ、大木がパンプリー目掛けて吹き飛んで来た。

「!?」
レオが躱す指示を出す余裕もなく、パンプリーは木の幹に直撃し、大きく吹っ飛ばされる。
「二回目の穴を掘るを使った時に、その木の根を全部千切っておいたんだよ。ここまで誘導するのに少し時間が掛かったけど、ようやく上手く行ったよ」
それでもパンプリーはまだ倒れてはいなかった。
しかし予想もしない大きな一撃を喰らい、体力も残り少しであることは間違いない。
「ずっとそのままなのも辛いだろうし、これで決めるよ! ワークロ、冷凍パンチ!」
拳に冷気を纏い、ワークロは地を蹴って跳び出す。
まだ動けないパンプリーへ、冷気の拳が襲いかかる。
「パンプリー!」
レオの叫びを聞き、パンプリーは顔を上げる。
すぐ目の前に迫ったワークロを、その淡く光る拳を見据え、

パンプリーの体が輝き出し、眩い白い光を放った。

「ッ……これは」
「進化の光か!」
白い光のシルエットが、その姿形を変えていく。
光が消えていくと、そこにいるのはパンプリーの進化した姿。
体つきはそれほど変わらないものの、被っていたカボチャに乗って空に浮かび、代わりに魔女のような帽子を被り、片手には先端に葉のついた杖を持っている。
パンプリーの進化系、カボチャポケモンのパンプッチ。タイプは変わらず、草・ゴースト。
「ユカっちのとこでもコリンクが進化したって聞いたよ。レオ、あんたのポケモンは本当にあんたを信頼してるみたいね」
「僕の最高の仲間たちですから。僕だってこいつらの事を信頼してますよ」
「だけど、信頼だけじゃバトルは勝てない。進化したって、それで私に勝てるほどバトルは甘くないことは分かってるよね」
「勿論です。勝負はここからです」
薄い笑みを浮かべるママルに対し、レオはぐっと右拳を握り締め、気合いを入れ直す。
ワークロとパンプッチも、互いの敵をじっと見据える。