二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第九十二話 赤い弾丸 ( No.199 )
- 日時: 2013/12/06 20:32
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: 0sokIT7I)
- プロフ: 今回は短め。
ハッサムのウッドハンマーとトゲキッスの波動弾が激しく競り合う。
しかし、遂に均衡が破れ、ハッサムの鋏が念弾を打ち返す。
「バレットパンチ!」
返された波動弾は地面に激突して消滅し、ハッサムは無数の弾丸のように高速の連続パンチを放つ。
「トゲキッス、エアスラッシュ!」
弾丸の拳を浴びたトゲキッスだが、羽ばたいて空気の刃を撃ち出し、反撃する。
「ハッサム、辻斬り!」
ハッサムは水平に鋏を振るい、空気の刃を破壊すると、
「シザークロス!」
鋏を交差させて跳び出し、その鋏を振り抜いてトゲキッスを切り裂く。
「トゲキッス、サイコバーン!」
対してトゲキッスは念力を溜め込み、爆発させて衝撃波を起こす。
再びせめぎ合いになるが、今度はハッサムが押し負け、衝撃波を喰らう。
「エアスラッシュ!」
その隙を突き、さらにトゲキッスは空気の刃を放ち、ハッサムを切り裂く。
「ハッサム、これくらいで倒れないでよ! ウッドハンマー!」
刃を喰らい、一度は片膝をつくハッサム。
それでもすぐに立ち上がり、羽ばたき、跳び上がり、樹木の力を込めた木の幹のように堅い鋏を、トゲキッスへ叩きつける。
「トゲキッス、サイコバーン!」
対してトゲキッスも念力を溜め込み、それを爆発させて衝撃波を起こす。
お互いにせめぎ合うが、威力は互角で、双方の技が相殺される。
「こうなったら……この手はあんまり使いたくないんだけど、しょうがないね」
ママルの口調が変わる。
上空のトゲキッスを、その翼を見据え、
「ハッサム、辻斬り!」
刹那、ハッサムは一瞬でトゲキッスへ近づき、右の翼を切り裂いた。
「……! まずい、トゲキッス!」
片方の翼をやられ、空を飛ぶためのバランスが崩れる。
右翼の機能を崩され、トゲキッスは何とか空中に留まろうとするのだが、
「もう一度!」
ハッサムの一瞬の斬撃が、左の翼を捕らえる。
バランスを崩した今のトゲキッスが躱せるはずもなく、トゲキッスは平衡感覚を完全に失い、地面に落ちてしまう。
「翼のある飛行ポケモンは、翼をやられれば飛べないよね。あそこのカンタロウが使ってたプテリクスみたいに脚力が強ければ、飛べなくても戦えるけど、トゲキッスに自由に歩き回れるだけの脚力があるとは思えないし」
しかしこれも立派な作戦だ。
相手の動きを封じるという、非常に分かりやすい作戦。
「惜しかったね。だけどこれで私の勝ち。悪いけど、次で決めさせてもらうよ」
ママルの言葉と共に、ハッサムがゆっくりと近寄る。
その歩みはカウントダウン。
ハッサムとトゲキッスとの距離がゼロになった時、そこで勝敗が決まる。
「ハッサム、ウッドハンマー!」
そしてハッサムが地を蹴って跳ぶ。
大木の幹の如き頑強さを得たその鋏が、トゲキッスに狙いを定める。
しかし。
このカウントダウンは、ハッサムの勝利を決めるためのものとは限らない。
「このチャンスを待ってたんだ! トゲキッス、大文字!」
最後の力を振り絞り、トゲキッスは煌々と熱く燃え盛る灼熱の大の字型の巨大な炎を撃ち出す。
「……ッ! まさか、そんな!?」
ママルの驚愕の声が響く。
鋏が振り下ろされる寸前、トゲキッスの放った業火がハッサムを捕らえ、その鋼の体を焼いていく。
ハッサムの唯一にして最大の弱点。それが、炎であった。
「へへっ、こんな事もあろうかと、最後の最後まで隠しておいたんですよ」
勝ち誇った笑みを浮かべるレオ。
炎が消えると、既にハッサムは体を真っ黒に焦がし、戦闘不能となって倒れていた。
「流石だね、レオ。正直、私が思ってた以上に成長してたよ」
ハッサムを戻し、そのボールを持ったまま、ママルはレオへ歩み寄る。
「トゲキッスを追い込んだと思っていたけど、追い込まれていたのは私の方だったみたいだね。それも、知らないうちにさ」
レオを讃えてはいるが、その口調はどこか悔しげだ。
「やったでねェかレオ。正直、大文字さいつ使うかとか、また負けるでねェかとか、冷や冷やしてただ」
いつの間にかレオの後ろにいるカンタロウ。
ママルはカンタロウにも声をかける。
「あーあ、あんたが光の石なんか持ってなかったら、私が勝ってたのに」
「ハハッ、そりゃ悪いことしただな」
ニヤリと笑みを浮かべるカンタロウ。
ママルは視線をレオに戻し、小さい箱からバッジを取り出す。
薄緑を基調とし、透き通った虫の翅を模したような、綺麗なバッジだ。
「シヌマジム突破の証、ナオスバッジだよ。大切にしてよ?」
「はい、ありがとうございます!」
レオのバッジケースに、ホクリク地方六個目のバッジが嵌め込まれた。
「それにスても、よォあの場面まで隠そうと思っただな」
「一度見せると絶対対策してくるだろ? 確実に決めたかったからさ。トゲキッスには申し訳ないけど」
「翼のケアさちゃんとしとけよ。飛行ポケモン、特に鳥ポケモンの翼は命だべさ」
シヌマジムを出て、レオはポケモンセンターでポケモン達を回復させる。
「カンタロウはこの後どこ行くんだ?」
「ヨザクラタウンか、テンモンシティだべ。さッさとバッジさ八個手に入れるだ」
と、その時。
突然、レオのライブキャスターに通信が入る。
「ん、誰だ? はい、もしもし」
『おう、レオか。俺だ、リョーマだ』
通話を掛けてきたのはリョーマだった。
「リョーマさん! 確かN・E団のアジトを調べていたんじゃ……?」
『ああ、そのことは後で話す』
「え? 後で話す?」
レオの疑問をよそに、リョーマは言葉を続ける。
『レオ、お前、今シヌマにいるよな』
「はい、いますけど」
『っし。じゃあ、すぐにシヌマ支部に来な。出来れば誰か強いトレーナーを連れてきて欲しい。誰か呼べるか?』
「それだったら、今ちょうど横にカンタロウがいますけど」
『そうか。じゃあカンタロウも連れてすぐに来い。切るぜ』
一方的に通話が切られた。
「どォした?」
横にいるカンタロウが聞いてくる。
「リョーマさんから、すぐにシヌマ支部に来いってさ。何かあったみたいだな」
そして、二人はポケモンセンターを出、シヌマ支部へと向かう。