二次創作小説(紙ほか)

Re: 第九十三話 妖精 ( No.200 )
日時: 2013/12/07 10:31
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: W5lCT/7j)
プロフ: タクさんのオリキャラ、ロフト登場です。何かありましたら申し付けください

『ブロック』シヌマ支部は、外見はかなり小さい。
一見すると、木造の小屋にしか見えない程だ。
しかしこれは町の景観を守るための工夫で、地下に大きく広がっているのだ。
ちなみに一階にはエレベーターが二つしかない。
「レオさんとカンタロウさんですね?」
二人がその建物に入ると、胸に『ブロック』のバッジを付けたスーツを着た男性に尋ねられる。
「はい」
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
その男性は二人を連れてエレベーターに乗る。
地下二階でエレベーターが止まった。
「こちらになります」
男性は、レオとカンタロウを『小会議室』と書かれた部屋に案内する。
レオが扉を開け、部屋に入ると、そこにいたのは三人。
リョーマ、サクラ、そして以前コウホクシティで出会ったマゼンタだ。
「来たな。まあ取りあえず座れよ」
リョーマが笑みを浮かべ、手招きする。
「貴方がカンタロウちゃんねえ。リョーマから聞いてるわよお」
「レオくん、久しぶりやな。せや、うちも『ブロック』入ったんやで。で、カンタロウくんやったっけ? うちはマゼンタ、よろしゅうね」
こんな感じで初対面の人の挨拶は済ませ、本題に入る。
「レオとカンタロウはいなかったから、さっきと同じ話をもう一回するぜ」
リョーマは相変わらずの軽い口調で話す。
「俺はここしばらく、N・E団のアジト捜索のために単独で行動してた。だが、残念ながらアジトは見つけられなかった」
このことはレオはテレジアから聞いている。
「だけど、何も成果が無かったわけじゃねえ。実は奴らはいろんなところにいくつか拠点を持っててな、前々から俺たちで少しづつ潰してたんだ」
それでだ、とリョーマは続け、
「シヌマとヨザクラのちょうど中腹くらいのところに、奴らの研究所みたいなところを見つけた。今回はそこを潰すために、集まってもらったって訳だ」
「質問」
そこでカンタロウが口を開く。
「こげな少人数で大丈夫だか? 仮にも奴らの拠点だ、もォ少し人数いた方が安全でねェか?」
「いや、寧ろ人数は多過ぎない方がいい」
カンタロウの質問に、リョーマが答える。
「拠点っつっても、所詮は研究所だし、見つからない程度に簡単に調べたが、そんなに規模も大きくねえ。敵もそんなにいねえだろうし、人数が多過ぎても逆に動きづらくなるしな。他に質問とかある奴はいるか?」
リョーマが訊くが、特に誰も何も言わない。
「っし。じゃあレオはジム帰りらしいし、今日は休め。明日の朝八時にシヌマ支部前に集合だ。場所としては……」
その後、研究所破壊の大まかな説明や流れをリョーマが説明し、その会は終わった。
レオ、カンタロウ、マゼンタの三人はポケモンセンターに戻った。カンタロウとマゼンタは、初対面ながら意気投合している様子である。
全員が部屋を出て行った後、リョーマは一人部屋に残っていた。
「ま、バレてる可能性も十分あるがな。寂れた研究所のように見えたが、奴らの事だ。最新のシステムを備えてるだろうしな。逆にそうでなけりゃ張り合いがねえぜ」
独り言を呟き、リョーマは小さく笑う。



夜。
薄暗い森の奥にひっそりと立つ、寂れた研究所。
青髪に白衣の研究者と、緑の髪の長身の青年がそこにいた。
その部屋は二つに分けられており、ガラス張りの壁の奥には無数の実験道具。
薄緑の液体が詰められた機械があり、その中には抱擁ポケモン、サーナイトが入れられている。
「おいソライト。本っ当にサーナイトに副作用とか後遺症とかは残らねえんだろうな」
「絶対に残りません。この実験で、貴方のサーナイトを確実に強化させられます。私に失敗はあり得ません」
この部屋にいるのは、二人のN・E団天将。
蒼天のソライトと、碧天のセドニー。
「ところでよ、俺はまだ実験内容を聞いてねえんだが、どういう強化なんだ?」
「先日、カロス地方というところに住む私の友人の研究者が面白いものを送ってきましてね」
ソライトはそう言いながら小さなピンク色の注射器のようなものを取り出す。
「なんだそりゃ」
「友人曰く、フェアリーワクチンというものです。カロス地方では新しいポケモンのタイプ、フェアリータイプというタイプが見つかっていましてね。珍しいことに、こちらの地方ではフェアリータイプを持っていないポケモンのほんの一部が、カロス地方だとフェアリータイプを持っているらしいのですよ」
「つまり、サーナイトがそうだと」
「その通りです。カロス地方に住むラルトス、キルリア、サーナイトは、フェアリータイプを持っています」
そこで、とソライトは続け、
「このワクチンは、こちらの地方にいる特定のポケモンにフェアリータイプを付加させるというものです。勿論害はありませんし、カロス地方でフェアリータイプを持っていないポケモンに使っても何の効果もありません」
その時、ソライトの手元にある機械が短い電子音を鳴らす。
同時に、機械の中の液体が引いていき、サーナイトが目を開く。
機械が開くと、サーナイトはテレポートでこちらの部屋へど移動してくる。
「サーナイト! 大丈夫か、どこも悪いところはないか?」
セドニーがサーナイトに駆け寄り、サーナイトは大丈夫と言うかのように頷く。
「よかった……。で、フェアリータイプってのを簡単に教えてくれ」
「ええ、では簡単に。フェアリータイプは、攻撃面ではドラゴン、格闘、悪タイプに効果抜群を取り、鋼、毒、炎タイプには効果今一つとなります。防御面ではドラゴン技を無効、さらに格闘、悪、虫技を半減しますが、毒、鋼技が効果抜群になります」
「なるほど。覚えてる技は……っと、ムーンフォース?」
「フェアリータイプの強力な特殊技ですね。バトルの時に使ってみてください。では、本題に入りましょう」
不意にソライトは話を切り替える。
「は? サーナイトの件が本題じゃねえのか?」
「いいえ、もっと重大な事があります。ロフトは連れてきていますよね?」
「ああ、部屋の外で待たせてるぜ。呼ぶか?」
「そうですね。聞かせておいた方がいいでしょう」
「分かった。サーナイト、ロフトを呼んできてくれ」
セドニーが言うと、サーナイトはテレポートで消え、五秒くらいして戻ってくる。
しばらくすると、
「セドニー様、お呼びでしょうか」
現れたのは一人の女。服の上からでも分かるすらりとした華奢な体型だが弱さは感じられず、茶髪のストレートヘアーに、顔は中性的で、男に見えなくもない。
「ソライトから話がある。俺もまだ聞いてねえんだがな」
「では、話を始めましょうか。先日、あの『ブロック』の副統率が、この周辺の視察に来ました。あまり近くまでは来ていませんでしたが、半径50メートル以内まで入っています」
「なに?」
セドニーが眉を顰める。
「おそらく近いうちに攻めてくるでしょう。そのために貴方たちを呼びました。こちらの勝手な都合で申し訳ありませんが、協力していただきたい」
頭を下げるソライト。
「何が協力していただきたいだ。言われるまでもねえよ」
「こちらの拠点が危険なのに、黙って見ている訳にはいきません」
セドニーもロフトも、快く了承した。
「ところで」
ロフトが口を開く。
「流石に三人では無理がありませんか? それに、私たちの配置も考えなくてはなりませんし」
「ああ、それなら心配いりません。ラピスとその直属護衛が既に別の部屋で待機しています。直属護衛の方は時々いなくなりますが」
「確かジンっつったか。ところでシーアスはどうした?」
「シーアスはアジトで仕事中です。人出が足りなさそうだったので、遣わせました」
「ってことは、五人か。大丈夫か?」
セドニーは心配の声を上げるが、
「大丈夫でしょう。向こうも馬鹿ではありませんから、こんな小さく見えるところに大人数は連れてきませんよ」
ロフトは肯定的だった。ソライトもロフトの意見に賛成のようだ。
「セドニー、碧天隊はいますか?」
「悪りい、こんな夜だしよ、二人だけだ。疲れてる部下を夜まで働かせたくはねえしよ」
「そうですか……まあいいでしょう。それでは、二人ともありがとうございます。今日は休んでいてください」
「おーう」
セドニーはそれだけ言うとサーナイトと手をつなぎ、テレポートで消えてしまう。
「いいのですか?」
しかしロフトは疑問があるらしい。
「何がです?」
「敵が夜襲を仕掛けてくるかもしれません。必要であれば、見張りなら出来ますが」
「構いませんよ。人間が半径百メートル以内に入ると、分かるようになっていますから。さ、貴女も今日はお休みなさい」
ソライトの言葉を聞くと、ロフトは納得した様子で部屋を出て行った。
「さて、どうなるでしょう。私の勘だと、明日にでも攻めてくるような気がしますが」
一人部屋に残ったソライトは、小さく呟き、不敵な笑みを浮かべる。