二次創作小説(紙ほか)

Re: 第九十四話 潜入 ( No.206 )
日時: 2013/12/08 22:30
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: mKkzEdnm)
プロフ: 白黒さんのオリキャラ、ジン登場です。

「よし、全員揃ったな」
五人揃ったのを確認し、リョーマがボールを取り出す。
出て来たのはフルーツポケモンのトロピウス。
「徒歩だと少々距離があるからな、空を飛んで行く。飛行ポケモン持ってない奴は、トロピウスに乗りな。後二人くらいは楽勝だぜ」
レオにはトゲキッスがいるし、カンタロウは言うまでもない。
「じゃあリョーマはん、うち乗せてや」
「私もお願いしようかしらあ。飛べる子はいるけど、人を運べるほどの力はないしねえ」
マゼンタとサクラは、リョーマと共にトロピウスに乗る。
レオはトゲキッスに掴まり、カンタロウは体に対して大きな嘴を持つ、白と青を基調とする水鳥ポケモン、ペリッパーを出し、その口の中に乗り込む。
「よし、行くぞ!」
リョーマの声に合わせ、三体のポケモンは大空へ飛び立つ。
トロピウスが先導し、トゲキッスとペリッパーがそれに続く。
「カンタロウ、お前凄い乗り方してんな」
カンタロウはペリッパーの口の中に完全に入っている。
ペリッパーが嘴を少し開けているので、外は見えるようだ。
「靴さ脱げば嫌がらねェだ。元々、ペリッパーは小さいポケモンとか卵さ嘴に入れて運ぶ空の運び屋だべ」
ペリッパーも力はあるようで、人間が中にいるのにも関わらず普通に飛んでいる。
その後は一時間強無言の飛行が続くが、
「リョーマはん、あれか?」
不意にマゼンタが声を上げ、一点を指差す。
マゼンタの指の先に見えるのは、木々に隠れ見えづらいが、森の中にぽつんと建つ、小さく寂しげな研究所のような建物。
「見えたな。そうだ、あれだ。標的は近いぞ、高度を下げろ。ある程度近づいたら、そっからは降りて、歩いて行く」
リョーマの指示で、三体のポケモンは高度を下げていく。
木々に引っかからないように上手く森の中に入り、研究所へと近づく。
やがて先頭のトロピウスが止まり、着地する。
それに合わせ、トゲキッスとペリッパーも地面に降り、レオとカンタロウが飛び降りる。
「もう少しで百メートル以内くらいに入るぞ。近くにN・E団がいるかもしれねえから、気をつけろ」
いつ襲われてもいいように五人はボールを取り出し、研究所へと静かに足を進める。



「む?」
実験室にいるソライトが顔を上げる。
ピピッ、とモニターが小さい音を鳴らし、周辺の地図を映した。
一点に、赤い点が点滅している。
「ふふふ、来ましたね。私の勘が当たりましたか」
赤い点を押すと、写真が映る。
『ブロック』の副統率とシヌマ支部統括、白髪の鳥使いの少年とライオ博士の息子、そして見たことのない浴衣の少女が写っていた。
ライブキャスターを操作し、ソライトは天将や直属護衛たちが待機する部屋へ速やかに連絡する。
「半径百メートル以内に、五人の人間が接近しています。各々持ち場に着き、出会った敵を排除してください」



リョーマたち五人は、研究所の入り口まで接近していた。
「作戦を再確認する。各自で進み、一番奥を目指せ。とりあえず出会った敵は全員駆逐しろ。それだけだ」
リョーマの最終確認を終え、五人は扉の前に立つ。
「それじゃ……行くぞ!」
リョーマが扉を開けると同時、五人の精鋭が研究所へ突入する。
どうやら地下に繋がっているらしく、地下への階段が二つある。
リョーマとサクラは右側、レオとマゼンタ、カンタロウは左側の階段へと進み、侵攻を開始する。



階段を降りたところで、道が二つあり、そこでリョーマと分かれたサクラは、気楽に通路を進んでいた。
元々サクラは緊張や焦りなどを全く見せない気まぐれでマイペースな性格だ。
アカノハのジムリーダーほどではないものの、彼女の表情から余裕が消えることはほぼない。
いつ襲われてもおかしくないのだが、サクラはそんな状況を全く気にせず、鼻歌を歌いながら奥へと進んでいく。
端から見れば、周囲の警戒など全くしていない。
しかし。
「チェリム、エナジーボール!」
突然サクラが振り向き、ボールからポケモンを繰り出す。
紫色の花の蕾のような姿をした奇妙なポケモンが飛び出し、自然の力を凝縮した弾を撃ち出す。
どこからかサクラに向けて放たれた念力の波がエナジーボールにぶつかり、相殺される。
「うふふ、もしかして隙だらけに見えた私を背後から奇襲しようとしたのかしらあ? 無駄無駄、それくらいさっきから気付いてるわよお」
子供のような笑みを浮かべるサクラ。
対して、ゆっくりとした足音と共に、暗い通路の奥から人影が現れる。
二メートルもの長身の男だ。赤い短髪に、肌は浅黒く、黒いズボンと両袖のない黒いジャケットを着ている。
痩せ型に見えるが、腕には筋肉がついているのがはっきりと分かる。
その傍らには、錆びた緑色の銅鐸のようなポケモンが控えている。
銅鐸ポケモンのドータクン。鋼・エスパータイプだ。
「早速出たわねえ、N・E団。私があれくらいでやられるほど弱いとでも思ったのかしらあ?」
いつもの猫撫で声で煽っていくサクラだが、その男は全く反応しない。
「ガーネットちゃんとは違って煽り耐性は強いみたいねえ。ところで貴方誰かしらあ? 私が一通り見たN・E団の要注意人物リストには載ってなかったけどお」
「……俺の名はジン。夜天将ラピスの部下だ」
その男がようやく口を開いた。
「ふうん。で、今から貴方は私に勝ち目のない勝負を挑むってことかしらあ?」
「随分と安い挑発だな。つまらなさ過ぎて笑う気にもならん」
しかしバトルしない訳ではないようだ。
ジンがそう言った直後、ドータクンが音もなく前に進み出る。
「ふっふーん、そうでなくっちゃねえ。優しいサクラお姉さんがその生意気な口を封じてあげるわあ」
サクラの言葉と共に、チェリムが前に立つ。
研究所戦、最初の対戦カードは、ジン対サクラ。



レオやマゼンタと分かれ、カンタロウは通路を奥へ奥へと走っていく。
「小せえ見た目の割に、思っとったより広いべ」
仮にもN・E団の拠点の一つ、見た目通り小さいはずはないと、初めからカンタロウは察していたが、ここまで広いとは思っていなかった。
とりあえず、奥へと進みながら敵を探す。
「ん?」
ふと足を止めるカンタロウ。
今まで壁しかなかった通路に、扉がある。
(罠か、それとも敵がおるだけか? 敵ならそいつさ倒すだけだ、罠なら入りたくはねェけンど)
迷わずカンタロウは扉を開く。
罠なら罠で、後続が引っかからないように破壊しておいた方がいい。
中で待ち受けていたのは、
「来やがったな、侵入者」
敵だった。それも大物だ。
長身の緑の髪に、青い服の上に迷彩柄のコートを羽織った男。
碧天将セドニー。
「おや? お前」
カンタロウを見るなり、セドニーの表情が変わる。
「お前、アカノハで俺たちの邪魔しやがったクソガキじゃねえか。なるほど、そりゃいいぜ。あの時の恨みを晴らさせてもらおうか」
「ああ、思い出しただ。オラのポケモンにやられて安い捨て台詞さ吐いて逃げ帰った雑魚でねェか」
「何とでも言いな。そんな風に大口叩けるのも今のうちだぜ」
セドニーが言い終わると同時に、セドニーの瞳が翠色の光を放つ。
同時に、手の甲に龍の爪のような模様が浮かび上がる。
セドニーが、覚醒を使ったのだ。
「お前には負けたくねえし、初めから覚醒させてもらうぜ。覚悟はいいな」
そして、そんなセドニーを見てもカンタロウは顔色一つ変えない。
「なるほど、それが覚醒だか。こりゃ前よりは楽しいバトルが出来そうだべ」
セドニーとカンタロウが、同時にボールを取り出す。