二次創作小説(紙ほか)

Re: 第九十五話 代償 ( No.207 )
日時: 2014/05/13 09:15
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: /6p31nq7)
プロフ: サクラのキャラがよく分からなくなってきました。

カンタロウと分かれた後、マゼンタはレオと二人で行動していたが、途中でさらに分かれ道を見つけ、そこでレオと分かれた。
「意外と広がってるさかい、迷わんようにせななぁ」
今のところ一本道だが、下手に分かれ道で曲がってしまうと迷いかねない。
だからマゼンタは出来るだけ通路を直進するようにしている。
慎重に通路を進み、曲がり角を曲がったところで、
「……!」
遂にマゼンタは、N・E団と出くわした。
華奢な体つきだがそれに似つかわない気迫を放つ、中性的な顔付きの女。
碧天将直属護衛、ロフトだ。
「見つけたぞ、侵入者だな」
声こそ女の声だが、その口調には力強さが宿る。
「出てきたなあN・E団。あんた誰や? 天将とか言う人らとはちゃうやろ?」
「私の名はロフト、セドニー様の直属護衛だ。セドニー様及びソライト様の命令により、貴様を排除する!」
「うふふ、やれるもんなら、やってみいや」
互いに一歩も譲らず、ロフトとマゼンタはボールを取り出す。



サクラと分かれ、リョーマは周囲に気を配りながら奥へと進んでいく。
(見た感じ下っ端軍はいねえな。やっぱり研究施設と見て正解だったな)
とはいえ、流石に天将が二人か三人はいるはずだ。
そのためにも、自分が一番先に奥へと辿り着きたい。
「おや」
ふと声を上げたリョーマの行く手は、行き止まりだった。
しかし何もないわけではない。扉がある。
(何の部屋だ? 見た感じここが一番奥ではなさそうだし、普通の部屋か?)
扉の前まで近づくが、リョーマの目的は最奥部だ。
出会った敵は蹴散らすが、中に敵がいたとして、わざわざこちらから出向く理由はない。
引き返し、別の道を探そうとするリョーマ。
だが。

ガタン! と背後で音がし、天井から壁が落ちてきた。

「チッ、面倒くせえな」
リョーマは小さく舌打ちする。
(中に敵がいるのか? 倒さないと帰しませんってことか)
『倒さないと帰しません』であれば、リョーマにとっては面倒ではあるが大したことではない。
問題なのは、この壁が『帰しません』だった場合だ。
その場合、リョーマは外からの助けが来るまで出られなくなってしまう。
(とりあえず、中に進むしかねえか)
一先ずこの場で壁を何とかするのは諦め、リョーマはその部屋へ入る。
その部屋はなかなか広かった。中にあったのは、何に使うのかよく分からない機械や、本の入った棚。
それらが壁際に置かれ、部屋の中央には何も置かれていない。
代わりに、中央には人間がいた。
ゴスロリを着、車椅子に乗った、レオと同じくらいの少女。
夜天のラピスだ。
「ようこそ、『ブロック』副統率」
冷たい光を湛えた瞳をこちらに向け、ラピスが口を開く。
「おいおい、いきなり天将かよ。大当たりじゃねえか」
「そうでもないんじゃないかしら。確かに私は天将だけど、ここは最奥なんかじゃない、まだ入り口に近い方よ。そして私は来た敵を倒せばいいだけだけど、貴方は私を倒さないと出られない」
「ハッ、俺を誰だと思ってんだ? 『ブロック』で二番目に強い——」
「それに」
リョーマの言葉を遮り、ラピスは続ける。

「覚醒すれば、私は天将三位になるのよ」

直後。
ラピスの瞳が、菫色の光を放つ。
ゴスロリの両腕を捲ると、腕には鱗の付いた菫色の龍の腕のような模様が浮かび上がっている。
夜天のラピスが、覚醒を使用したのだ。
「もう一度言うわよ。覚醒した時の私は、序列三——ッ」
そこまで言ったところで、ラピスの体が痙攣し、両腕で口を押さえ、蹲る。
某然とするリョーマを他所に、ラピスはそのまま十秒ほど止まり、やがて顔を上げる。
そのラピスの口元には、一筋の血が垂れていた。
「……は?」
流石に驚きを隠せないリョーマだが、当のラピスは特に驚いた様子も見せず、手で血を拭う。
「私はまだ成人もしてないし、体も生まれつき弱いからかな、覚醒の力を抑えきれないのよ。覚醒を使うたびに、その代償として体が傷ついていくのよ」
しかしそれでも三位。その実力は、決して侮ってはいけない。
「ま、私もそれなりの覚悟を決めてるって事。だから、安い同情で手加減なんてしないでよ」
そう言って、ラピスはボールを取り出す。
「おいやめてくれよ。俺はそういう健気で可愛い女の子に弱いんだって」
とは言うものの、勿論リョーマは手加減などしない、寧ろ出来ない。
何しろ相手は覚醒状態で三位となる化け物だ。その実力がどのようなものかは分からないが、手を抜こうものなら間違いなくやられる。
「まあ心配すんな。全力で潰してやるからよ」
無理矢理笑みを作り、リョーマもボールを構える。



「チェリム、まずは日本晴れ!」
サクラとジンのバトル。
チェリムは太陽を模した光の玉を頭上に打ち上げ、周りを明るく照らす。
同時に、チェリムの姿が変化する。
蕾のような大人しい姿から一転、満開の桜の花のような晴れやかな姿、ポジフォルムへと変わる。
しかし、
「やはりそう来るか。ならばここはドータクン、雨乞いだ」
直後にドータクンが黒い雨雲を呼び、太陽を覆い隠し、雨を降らせる。
それに対応し、チェリムも元の姿、ネガフォルムへと戻ってしまう。
「ちょっとお、余計なことしないでよねえ。チェリム、日本晴れ!」
「ドータクン、雨乞いだ」
チェリムが擬似太陽を打ち上げるが、すぐにドータクンがまた雲を呼ぶ。
「これはしょうがなさそうねえ。チェリム、悪いけどこのまま戦うわよお」
結局サクラは一旦ポジフォルムを諦め、そのまま攻撃させる作戦に出る。
「チェリム、ウェザーボール!」
チェリムは上空に白い玉を撃ち出す。
白い玉は雨を受けて青く光り、ドータクンへと落下する。
ウェザーボールは基本はノーマルタイプの技だが、天候によって威力が上がり、技のタイプが変化する。
雨が降っていれば、ウェザーボールは水タイプとなる。
「ドータクン、サイコキネシス」
そのウェザーボールを喰らうが、ドータクンは耐久力が売りのポケモン。
強い念力を操って念波を飛ばし、反撃する。
「チェリム、エナジーボール!」
対してチェリムは自然の力を一点に集め、弾に変えて撃ち出す。
「ウェザーボール!」
お互いの技は相殺されるが、チェリムは再び白い玉を撃ち出し、雨の力を得てドータクンへと命中。
「所詮その程度の火力か。ドータクン、ジャイロボール」
「貴方が日本晴れさせてくれないからでしょお。チェリム、エナジーボール!」
ドータクンが高速回転しながらチェリムへと突撃し、チェリムは一点に集めた自然の力を弾として撃ち出す。
だがドータクンの回転力によってエナジーボールが弾かれ、チェリムはドータクンの突撃を喰らって吹っ飛ばされる。
「痛ーい。チェリムがそこまで速くないのが幸いねえ。チェリム、反撃よお! バグノイズ!」
ジャイロボールは相手の素早さが自分に比べて高いほど威力が上がる。
ドータクンは非常に遅いポケモンだが、チェリムも遅い方なのでダメージは少ない。
チェリムは大きく息を吸うと、もはや声とは思えない狂ったような甲高い音を出す。
ドータクンの動きを封じ、強烈な雑音がドータクンの体力を削っていく。
だがそれを喰らってもまだドータクンは平然としている。
「ふん、火力が無さすぎるな。その程度の実力で俺に勝つつもりか? 『ブロック』と言えどそんなものか」
「むー、だから貴方が日本晴れさせてくれないからでしょお。折角の日本晴れウェザーボール戦法が使えないじゃないのよお」
ジンの挑発に、サクラは子供っぽく頬を膨らませる。
「てゆーか流石にこれは相性悪すぎだわあ。チェリム、悪いけど一旦戻っててねえ」
バトルは始まったばかりだが、サクラはチェリムをボールに戻す。
「お願いよお、へラクロス!」
代わりに出て来たのは、レオも持っている虫・格闘タイプのポケモン、へラクロス。
しかしレオの個体と比べて角がやや短く、先も丸みを帯びている。
どうやらこのへラクロスは♀のようだ。
「交代して仕切り直しか。だがこちらが有利なのは変わっていないぞ」
「それはどおかしらあ? さあ、反撃開始よお」
無表情を崩さないジンに対し、サクラは子供のような無邪気な笑顔を浮かべる。