二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第九十八話 爆音 ( No.214 )
- 日時: 2013/12/28 20:38
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Yry.8Fde)
- プロフ: サクラの「にゃるほど」は打ち間違いではありません
マリルリの全力を込めた渾身の拳が、トリデプスの体へ叩き込まれる。
横倒しになった状態では防御も出来ない。回避など言うまでもない。
だが。
「トリデプス、カウンター!」
渾身のマリルリの一撃が、跳ね返された。
勢いよくマリルリは吹っ飛び、壁に叩きつけられる。
地面に落ちたマリルリは、既に戦闘不能になっていた。
「ふう、危なかったわ。最後まで隠しといて助かったわー」
カウンターは、物理攻撃を受けた時に、ダメージを二倍にして相手に返す技。
トリデプスは格闘技に非常に弱いが、それ故カウンターの威力も凄まじいものになる。
しかし、今の気合いパンチで、トリデプスも戦闘不能になってしまった。
「ちっ、まさかこんなに早くマリルリがやられるとは。だが一体は倒した。次はこいつだ、行け、ネクロシア!」
マリルリを戻したロフトは、次なるポケモンを繰り出す。
かなり歪なポケモンだった。顔には目が三つ、口の部分は包帯が巻かれたようになっており、腹にも目と口があり、さらに下半身は非常に鋭利な鎌になっており、そこにも目が付いている。
死神のようにも見えるこのポケモンの名は、ネクロシア。ゴースト・悪タイプを持ち、ホクリク地方では弱点がない。
「ほな、うちはこの子や。頼むで、ラムパルド」
マゼンタのポケモンは、超強化ガラスをぶち抜いたあのラムパルド。
「では行くぞ! ネクロシア、シャドークロー!」
「ラムパルド、諸刃の頭突き!」
ネクロシアが爪を構え、静かに、しかし素早く動く。
対して、ラムパルドは一発目からフルパワー。
自身への反動も顧みず、全力を込めた頭突きを放ち、ネクロシアの爪を容易く弾き返し、ネクロシア本体をもぶっ飛ばした。
「っ、なんという攻撃力!」
ロフトも驚きを浮かべるほどの威力の頭突きを受けて吹っ飛んだネクロシアは、それでもまだ倒れてはいない。
「やるな。だがそれが最高火力だろう。ならばネクロシア、金縛りだ!」
ネクロシアは起き上がると、ラムパルドに素早く術を掛ける。
「うぅ、諸刃の頭突きが……」
呻くマゼンタ。金縛りは、直前に相手が出した技をしばらく封じる技だ。
「さらに保険も掛けておくか。黒い眼差し」
ネクロシアの額の目が妖しく光る。
黒い光が、モンスターボールとのつながりを一時的に遮断してしまう。
「さて、これで準備は整ったな。では、改めて攻めていくか」
ロフトの言葉を受け、ネクロシアがその爪を構える。
カンタロウのオオペラーは、善戦しているものの、シャワーズに押されている。
「シャワーズ、ハイドロポンプ!」
「オオペラー、暴風だべ!」
シャワーズの大量の水とオオペラーの荒れ狂う風が激突するが、やがて遂に暴風が破られてしまう。
(ちっ、オオペラーの疲れがかなり溜まっとるべや)
戦いが長引き、オオペラーもかなり疲労して来ている。
それに比べ、シャワーズは未だ疲労が見えない。
勿論疲れはあるだろうが、オオペラーのそれに比べればかなり少ない。
「おいおい、最初の大口はどうした? やっぱ口だけかよ、つまんねえな」
セドニーも相変わらず余裕を浮かべている。
「そろそろ決めちまいな! シャワーズ、ハイドロポンプ!」
シャワーズが大きく息を吸い、そして大量の激流を吐き出す。
暴風では、打ち破られる。
(そげなら、これさあんまり使いたくねェだが、仕方ねえだ!)
バッと顔を上げ、カンタロウは最後の技を指示する。
「オオペラー、爆音波!」
刹那、オオペラーが、爆弾が爆発したような轟音を放った。
同時に、爆発の衝撃波のような強烈な音波が放たれる。
とんでもない轟音と衝撃に、セドニーはおろか、使用者のトレーナーであるカンタロウすら耳を塞ぐ。
衝撃波は水を蹴散らし、シャワーズを吹っ飛ばした。
耳を塞いだまま、カンタロウは叫ぶ。
「もう一発ぶちかますだ! 爆音波!」
その超強烈な音波を、オオペラーは再び放つ。
まだ体勢の整わないシャワーズに再び命中し、シャワーズは壁へと激突し、戦闘不能となった。
気が付けば部屋の中はめちゃくちゃになっていた。
椅子などが吹っ飛び、棚は破壊され、壁もひびが入っていたり、壊れている箇所もある。
「くっそ、派手にぶっ放してくれたしゃねえか」
忌々しそうに呟き、セドニーはシャワーズをボールに戻す。
カンタロウもオオペラーを戻した。戦闘不能ではないものの、習得したばかりの爆音波を二発も連続で使い、もう体力が持たないと判断したのだ。
「しかもうるせえし。耳が壊れるかと思ったぜ」
「壊れてくれりゃ、後のバトルさ楽になっただがな」
ニヤリとカンタロウは笑う。
「次はお前だべ! 羽ばたけ、ドンカラス!」
カンタロウの二番手は、何かとと出番の多いドンカラス。
対して、セドニーが不意に薄ら笑いを浮かべる。
「悪タイプのドンカラスか。ムカついたし、ちょうどいいな」
そんなセドニーを怪訝な顔で見るカンタロウだが、セドニーは特に気にせず、次のボールを取り出す。
「それじゃあ、頼んだぜ、サーナイト!」
繰り出されるセドニーの二番手はサーナイト。
(悪タイプにサーナイト? ああ、そォいや後はサーナイトとフワライド、覚醒の何かだべな。フワライドは悪さ弱点だし、おかしくはねェだな)
この時。
サーナイトがボールから繰り出されるという異変に、そしてサーナイトが何か今までと違うという事に、カンタロウは気づかなかった。
サクラはチェリムをボールに戻し、へラクロスを出してバトルが再開する。
ふとジンは天井を見上げ、
「そろそろ効果が切れる頃か。ドータクン、日本晴れだ」
ドータクンは小さい太陽のような火の玉を打ち上げる。
小さくなってきた雨雲が晴れ、周りが明るくなるが、
「雨乞いだ」
すぐにまた黒い雨雲が戻ってきて、雨が降り出した。
「にゃるほど。雨乞いのターンをリセットしたのねえ」
それじゃ、とサクラは続け、
「へラクロス、こっちも行くわよお。メガホーン!」
へラクロスが翅を広げて飛び上がる。
ドータクンに全力で突撃し、額の硬い角を思い切り突き刺す。
ドータクンが仰け反り、後ろへ下がる。耐久力に自信のあるドータクンでも、ダメージは大きかったようだ。
「火力だけはあるようだな。ドータクン、サイコキネシス」
赤い目を点滅させ、ドータクンは強い念力の波を飛ばす。
「へラクロス、ぶち壊す!」
だがへラクロスは念力の波に角を叩きつけ、強引にサイコキネシスを相殺してしまう。
そして、
「インファイト!」
守りを捨て、へラクロスはドータクンへと突っ込む。
まずは角の一撃をぶつけ、そこから怒涛の連続打撃攻撃を浴びせ、とどめに思い切り角を突き刺し、ドータクンを吹っ飛ばした。
「まだ倒れんぞ。ドータクン、ジャイロボール」
それでもドータクンはまだ倒れない。
体を高速で回転させ、そのまま回転する大きな球のように突撃する。
「へラクロス、ぶち壊す!」
へラクロスは角を思い切り叩きつけるが、ドータクンの回転によって弾かれ、ジャイロボールを喰らってしまう。
「サイコキネシス」
その隙を逃さず、ドータクンは強い念力を発生させる。
今度はへラクロスを操り、その動きを止めるつもりだったのだが、
「へラクロス、貴方のパワーを見せてあげなさいよお! メガホーン!」
へラクロスは動きを妨げる念力に打ち勝ち、強引に打ち破り、渾身の力ドータクンへと硬い角を突き刺す。
ドータクンは吹っ飛び、地面に落ちる。
起き上がろうと体を震わすが、そこで力尽き、戦闘不能となった。
「ドータクンでは無理があったか。だが最初の時点で役割は果たしたな。ドータクン、戻れ」
特に表情を変えず、ジンはドータクンを戻す。
「いいわよおへラクロス! 流石ねえ」
まるで子供のような笑みを浮かべるサクラ。
対するジンは次のボールをゆっくりと取り出す。
「たかがドータクンを倒したくらいで喜べるのか、ぬるい思考回路だな」
「何よお。こっちはまだ三体、貴方は後二体なのよお? こっちが有利なのは明白じゃないのよお」
「その思考回路がぬるいと言ったんだ」
ジンの口元が僅かに緩む。
「確かに数の面では俺が不利だ。だが俺は、お前の三体のうち二体の戦法を把握し、加えてエースと思われるカビゴンの情報も緋天将から得ている。ここまで説明してもまだ分からなければ、病院にでも行ってくるといい」
「あらあ? ガーネットちゃんから聞いてるんだあ。ガーネットちゃん元気にしてる? 泣いてなかった? うふふ」
話がまるで通じない相手に、ジンは呆れと蔑みを込めた視線を送ると、次なるポケモンを繰り出す。