二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百話 矛盾 ( No.216 )
日時: 2014/01/11 17:49
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: mKkzEdnm)
プロフ: 冬の小説大会銅賞を頂きました! ありがとうございます!

カンタロウのポケモンはドンカラス、対するセドニーのポケモンはサーナイト。
「行くぜ。サーナイト、十万ボルト!」
サーナイトは右手を翳し、高電圧の電撃を撃ち出す。
先程のシャワーズのハイドロポンプに比べれば劣るが、それでも普通のものより明らかに威力は高い。
「ドンカラス、躱して悪の波動!」
羽ばたいて飛び上がり、ドンカラスは電撃を躱すと、上空から咆哮と共に悪意に満ちた波動を放つ。
サーナイトは正面から悪の波動を喰らうが、
「……特防でも鍛えてるだか、そのサーナイト」
見た感じではあるが、効果抜群にしてはサーナイトへのダメージは驚くほど少ない。
「どうだろうな。サーナイト、十万ボルト!」
再びサーナイトは強烈な高電圧の電撃を放つ。
「ッ、ドンカラス、悪の波動!」
ドンカラスも再び悪意に満ちた波動を放つが、しばらく競り合うものの、電撃に押し返される。
「チッ、ドンカラス、回避だべ!」
素早くドンカラスは飛び上がり、何とか電撃を躱す。
「ナモの実さ持っとった訳でもなさそォだが……ドンカラス、熱風だべ!」
「サーナイト、アクアボルト!」
ドンカラスは大きく羽ばたき、灼熱の風を起こすが、サーナイトが放つ電気を含んだ水にかき消されてしまう。
「そこだべ! ドンカラス、悪の波動!」
しかしその瞬間を狙い、ドンカラスは悪意に満ちた波動を撃ち出す。
波動は再びサーナイトを捕らえるが、やはり大きなダメージはない。
(どォいう事だ、ちくしょう! 本当に特防さ鍛えてるだけだか?)
バトルから気を逸らさず、かつ脳をフル回転させてカンタロウは考える。
「悩んでる暇はないぜ? サーナイト、アクアボルト!」
「チッ、ドンカラス、躱すべ!」
思考の暇を与えず、サーナイトが電撃を含んだ水をドンカラスへと浴びせかける。
ドンカラスは大きく飛び上がり、水を躱すが、
「十万ボルト!」
そこにサーナイトは強烈な電撃を放って追撃。
「避けきれねェな……悪の波動!」
ドンカラスは悪意に満ちた波動を放ち、電撃を迎撃する。
波動は次第に電撃に押し戻され、ドンカラスは電撃を浴びてしまうが、ダメージはある程度軽減する。
「それでも痛ェだな……襲撃だ!」
体勢を立て直したドンカラスが一瞬で消える。
次の瞬間にはサーナイトの後ろまで移動し、横薙ぎに翼を振るい、サーナイトを切り裂く。
が、
「そげな……馬鹿な」
明らかに効果抜群のダメージを受けたようには見えない。
サーナイトは体勢を崩すものの、すぐに立て直す。
(ちくしょう、どォなってやがるだ! 今の襲撃もさっきまでの悪の波動も、直撃が決まってるべ。クソが、オラとしたことが、何さ起こっとるか全く分かンねェだ!)
いよいよ本格的に焦ってきたカンタロウ。
特防も高ければ防御も高いのか。しかしそれでは、そこからさらに特攻まで鍛える余裕は無い。
そして特攻を鍛えていなければ、十万ボルトで悪の波動は破れない。
「さあ、悩めるだけ悩めよ。最も、結論が出る前に勝敗が決まるかもしれねえがな」
セドニーが挑発するが、それを無視し、カンタロウは考える。
全てを結びつけられない。何をどう繋げても、矛盾が発生する。
もしくは、これが『覚醒』の力なのか。
仮にそうだとしたら、このセドニーで最弱なら、他の連中はどこまで規格外なのか。
得体の知れない恐怖と焦燥が、カンタロウに襲い掛かる。



「ネクロシア、シャドークロー!」
こちらはロフトとマゼンタのバトル。
不規則な動きで、しかし確実にネクロシアはラムパルドへと近づき、黒い影を纏った爪を振りかざす。
「諸刃の頭突きが使えへんのはきついけど、ラムパルド、逆鱗!」
対して、ラムパルドの目が赤く光る。
直後、怒りに狂ったようにラムパルドが暴れ出す。
振り下ろされた爪を弾き飛ばし、ネクロシア諸共吹っ飛ばした。
「くっ、やはり火力では敵わないか」
ネクロシアはまだ何とか起き上がる。
「へえ、まだ耐えるん? せやけど、次喰らったらもう倒れてまいそうやね」
技構成を見るに、耐久面もそこそこ鍛えているのだろう。
「せやけど、逆鱗は一撃では終わらへんよ?」
マゼンタがそう言った直後、ラムパルドはネクロシアに再び襲い掛かる。
「ネクロシア、回避だ!」
ラムパルドの猛攻を、ネクロシアは何とか躱し切る。
「そこだ! ネクロシア、乗り移る!」
ラムパルドの動きが止まった隙を突き、ネクロシアは自身の体から魂を抜け出させ、ラムパルドへ憑依する。
ラムパルドは一瞬動きが止まるが、すぐに何かに憑かれたかのようにのたうち回る。
「続けて行くぞ。ネクロシア、シャドークロー!」
素早く魂を元の体に戻し、まだ動けないラムパルドを影を纏った爪で切り裂く。
ラムパルドはそれを躱すことが出来ず、爪の一撃を喰らい、

地面に倒れ、戦闘不能となってしまう。

「……は?」
呆然とするロフト。それもそのはず、まだネクロシアは二発しか攻撃を入れていないのだ。
対象的に、マゼンタは特に驚くこともなく、
「ラムパルド、よく頑張ったで。休んでてやー」
ラムパルドをボールに戻し、最後のボールを取り出すところで、マゼンタはロフトが呆然としていることに気付く。
「うちのラムパルド、攻撃力はピカイチやねんけど、打たれ弱いんや。二発も喰らえば、まず耐えられへん」
「……そんなので大丈夫なのか」
「問題あらへんよ? そのネクロシアにも十分なダメージ喰らわせたし」
にこりと笑い、マゼンタは最後のボールを取り出す。
「ほな、一番最後やし、エースで行かせてもらうでー」
マゼンタが掲げたボールは、彼女のエース。
「さあ行くでー、フローリア!」



「トロピウス、龍の波動!」
「プラネム、ダイヤブラスト」
リョーマとラピスの戦いは、今のところほぼ互角。
トロピウスの放つ龍の力を込めた波動の弾を、プラネムは青白く煌めく爆風を起こし、相殺する。
「それにしても、第三位のあたしと互角の戦いが出来るなんて。もうちょっと弱いと思ってたけど」
「へっ、これでも『ブロック』副統率だからな。これくらいは戦えねえと他のメンバーへの示しがつかねえ」
ここまでは、両者ともほぼ互角に戦いを進めている。
「ところで夜天将、今お前はその覚醒率とやらをどれくらい出している?」
「五割くらいかしら。別に狙って五割にしてる訳じゃないけど」
「どういうことだ?」
「覚醒の力は使うたびに覚醒率が変わるのよ。どれくらいの力が出せるかは覚醒するまで分からない、特にあたしの場合はね。そんな事よりバトルを続けるわよ。プラネム、スターフリーズ」
話の流れを切り、ラピスはプラネムに指示を出す。
プラネムは星型の巨大な氷塊を作り上げ、トロピウスへと放つ。
「氷技は喰らえねえな。トロピウス、ハリケーン!」
トロピウスは植物の翼を思い切り羽ばたかせ、大嵐のような風を起こす。
吹き荒れる風の壁を氷塊は突破出来ず、破壊されてしまう。
「リーフストーム!」
トロピウスは羽ばたきを止めず、その大風に鋭く尖った葉を乗せて葉の嵐を巻き起こす。
「これで防げるかしら。プラネム、ダイヤブラスト」
プラネムも周囲を爆発させ、青白く煌めく爆風を起こすが、リーフストームを押し返すことは出来ず、岩の体が鋭い無数の葉に切り裂かれる。
「プラネム、熱風」
プラネムもそれくらいでは倒れず、灼熱の風を放って反撃する。
「トロピウス、ハイドロポンプ!」
トロピウスは大量の水を噴き出し、熱風を止めると、
「龍の波動!」
体内に眠る龍の力を一点に集め、波動として放出する。
「このまま戦ってても動きがないわね……プラネム、スターフリーズ」
技と技がぶつかり合っているが、まだバトルに大きな動きがない。
プラネムは星型の氷塊を作り上げ、龍の波動を破壊する。
「そうよ、こうすればいいじゃない。プラネム、黒い霧」
ここでプラネムは真っ黒な霧を周囲に放つ。
この部屋はそこそこ広いが、それでもリョーマとトロピウスの視界を奪うには十分。
「お前分かってねえな。こっちには風を使う技が二つもあるんだぜ? トロピウス、ハリケーン!」
トロピウスは羽ばたき、嵐のような風を起こす。
黒い霧はたちまちにして隅へと追いやられるが、
「無駄よ」
ラピスがそう呟いた直後、真っ黒な霧がふたたび戻ってくる。
「分かってないのは貴方なんじゃない? ここは今ほとんど密室よ。霧を風で吹き飛ばしても、霧の出口が無かったら何にもならないわよ。暫く消えるまで待つしかないわ」
「だが向こうが見えないのはお前も同じだぜ。条件は変わってねえ」
「そうかしら」
返って来たラピスの言葉に、何か嫌なものを感じるリョーマ。
「向こうの見えないこの濃い霧の中から、突然大量の攻撃が出て来たら、貴方のトロピウスはそれを全て躱せるのかしら」
「それはお前も同じだぜ。トロピウスと同じように、プラネムだって動きは遅そうだしな」
「じゃあその技によるダメージは?」
ラピスの口調に、力が篭っていく。
「貴方のトロピウスのこちらへの有効打はハイドロポンプとリーフストーム。だけどハイドロポンプはともかく、風を使うリーフストームなら技を放った瞬間に霧が一瞬晴れる」
ようやくリョーマは気付いた。
プラネムの覚えている、こちらへの有効打には何があったか。
「……そういうことか」
「そういうことよ」
そして。
夜天のラピスは、それを迷わず実行する。

「プラネム、スターフリーズ発射」

刹那。
真っ黒な霧の向こう側から、星型の氷塊が飛び出してくる。
そしてそれは一発ではない。向こうで力を溜めていたのだろうか、五発もの巨大な氷塊がトロピウスへと襲い掛かる。
「やってくれるな! トロピウス、ハリケーン!」
トロピウスは嵐のような暴風を起こすが、防げるとしても一つか二つ。
残りの氷塊を避ける術はなく、トロピウスは氷点下の星に押し潰される。