二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百二話 フェアリー ( No.218 )
- 日時: 2014/02/01 17:52
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: p3cEqORI)
トロピウスが無数の氷塊に押し潰される。
氷が消えると、既にトロピウスは戦闘不能となっていた。
「トロピウス、よくやったぜ。戻って休んでな」
トロピウスをボールへと戻し、次のボールを取り出すリョーマ。
「それじゃ、次はこいつだ。遊泳せよ、マンタイン!」
リョーマの三番手は、青い大きなエイ、つまりマンタのようなポケモン。
頭には二本の触角があり、背中にはいくつか二重丸の模様がある。
カイトポケモンのマンタイン、水・飛行タイプ。普通は水中に住むポケモンだが、尾びれで器用に立っている。
「ちなみに、俺は今までの三体の力を借りれば、世界のどこだって行けるんだぜ」
「ふうん。だから何?」
「おいおい、そういう時は棒読みでもいいから『うわーすごーい』くらい言ってくれよな」
「始めるわよ。プラネム、ダイヤブラスト」
リョーマの言葉は無視され、プラネムは青白く煌めく爆風を起こす。
「マンタイン、ハイドロポンプ!」
対するマンタインは、大量の水を噴射し、爆風を相殺、さらに、
「アイアンヘッドだ!」
頭を鋼の如く硬化させ、プラネムへと頭突きを喰らわせる。
「決めるぜ! マンタイン、種爆弾!」
マンタインはどこからか植物の種のようなものを飛ばす。
体勢を立て直したプラネムに当たると、次々と炸裂し、プラネムをさらに吹っ飛ばした。
効果抜群の連続攻撃を喰らい、プラネムはここで力尽き、戦闘不能となる。
「プラネム、よくやったわ。休んでいなさい」
ラピスはプラネムをボールに戻し、マンタインを見つめる。
「やけに攻撃的なマンタインね。本来は特攻が並程度、攻撃力は低いポケモンなはずだけど」
「俺が育てたポケモンだぜ? そんなつまんねえ型には当てはまらねえよ」
「ポケモンの本来の能力はどう説明するのよ」
まあいいわ、とラピスは呟き、次のボールを取り出す。
「ブラッキー、優雅なひと時を」
ラピスの三番手は、以前コウホクでマゼンタを散々苦しめたブラッキー。
「出たなブラッキー。戦術はマゼンタから聞いてるぜ。だが俺のマンタインは積み技は持ってねえぞ」
「それだけで負けるようじゃ、あたしは第三位になんかいられないわよ」
「言うねえ。じゃあその力を見せてみろよ! マンタイン、ハイドロポンプ!」
先攻で動いたのはマンタイン。
水柱の如き大量の水を噴き出し、ブラッキーを狙う。
「ブラッキー、コスモパワー」
対するブラッキーの体の、黄色い模様の部分が輝き出す。
宇宙の神秘の力を得て、耐久力を高め、ハイドロポンプを耐え切り、
「バークアウト」
怒声のような咆哮を放ち、マンタインを押し戻し、同時に特攻を下げる。
「……ッ、コスモパワーを持ってんのか。こりゃ、きついかもな」
小さく、少し苦々しく、リョーマは呟く。
一つだけ、思い付いた。
常識では考えられないことだが、相手は常識外れのN・E団だ。
どれだけあり得ないことをしていようが、その可能性はある。
「……まさかとは思うが」
ゆっくりと、カンタロウは口を開く。
未だ確信が持てない自分の答えを、紡ぎ出す。
「そのサーナイト、エスパータイプでねェだか……?」
思えばおかしい点はあった。
悪タイプのドンカラスを見て、セドニーがタイプ相性で不利なはずのサーナイトを自信満々に出したこと。
ラッキーだと思って見逃したが、確かにヒントはあったのだ。
悪の波動や襲撃のダメージ量も、等倍だと考えれば辻褄が合う。
「やるじゃねえか。正解だ」
感心したような口調で、セドニーは告げる。
「ポケモンのタイプの改造だか。そげな非人道的集団とまでは考えてなかっただが」
「おいおい、勘違いするな」
カンタロウの言葉に、セドニーは反論する。
「流石にそこまでの外道じゃねえよ。自分で言うのも何だが、特に俺は他の天将と比べりゃまだまともな方なんだからよ」
まあ聞けよ、とセドニーは続け、
「同僚から聞いた話だが、カロス地方ってとこで、フェアリーって新たなポケモンのタイプが発見されたらしい」
「カロス地方……聞いたことはあるだが」
「で、そこでは新発見されたポケモンだけじゃなく、既存のポケモンにもフェアリータイプを持つポケモンがいるんだとよ」
「なるほど。そげなら、ラルトス系統がカロス地方ではフェアリータイプさ持っとるってことだか」
「そういうことだ。俺も詳しくは知らねえが、カロス地方から送られて来た、ワクチン……つったか? それを使って、サーナイトにフェアリータイプを付与したのさ。つまり、俺のサーナイトはエスパー・フェアリータイプってことだよ」
これで全てが繋がった。
加えて、カンタロウにとっては嬉しい情報だ。
先ほど、受けたダメージが少なすぎると考えたが、それはあくまで効果抜群を考えた場合の話。
等倍であれなら、十分戦える。
が。
「それじゃあ、答え合わせと行こうか」
不敵な笑みを浮かべて、セドニーが告げる。
正解者には、敗北をプレゼント。
「サーナイト、ムーンフォース!」
サーナイトの頭上に、月のように白い球体の光が現れる。
白い光はサーナイトを照らし、それに共鳴するように、サーナイトの体が白く輝く。
刹那。
目の前の敵を浄化すべく、純白の光線が放出される。
「な、なンだべこりゃ……! ドンカラス、悪の波動だ!」
咄嗟に悪の波動を撃ち出すドンカラス。
だが、その波動は白い光に呑み込まれ、さらにドンカラスも白い光線を喰らい、吹っ飛ばされる。
効果抜群なのだろうか、ダメージは相当大きい。
(ッ、見た感じ、効果抜群みてェだな)
恐らく悪タイプに効果抜群なのだろう。
悪の波動のダメージ量からしても、フェアリーによって半減されたと考えるのが妥当だし、それならばフェアリー技は悪タイプに効くと思ってほぼ間違いない。
「何であれ、オラがやることは変わンねェだ! ドンカラス、熱風!」
一撃くらいで倒れるほどドンカラスは弱くはない。
体勢を立て直すと、翼を羽ばたかせ、灼熱の風を起こす。
「サーナイト、サイコキネシス!」
対するサーナイトは念力の波を周囲へ放ち、熱風を遮断し、
「十万ボルト!」
強力な高電圧の電撃を撃ち出し反撃。
「ドンカラス、襲撃!」
ドンカラスが一瞬のうちに電撃を躱し、サーナイトの背後に回る。
サーナイトが次の動きを見せるよりも早く、黒い翼を振り抜き、サーナイトを切り裂く。
「悪の波動!」
「シャドーボール!」
ドンカラスが追撃に放った悪意に満ちた波動を、サーナイトは影の弾を両手から撃ち出して相殺し、
「反撃だ! 十万ボルト!」
高電圧の強力な電撃を放って反撃する。
「ッ、躱せドンカラス!」
慌ててドンカラスは飛び上がるが、電撃が翼を掠めた。
翼への痺れを感じ、空中でドンカラスがぐらつく。
「隙あり! サーナイト、ムーンフォース!」
サーナイトの体が白い光に包まれ、その光が純白の光線として放出される。
ドンカラスは躱そうと上空に飛び上がろうとするが、少し遅かった。
その黒い体が、純白の光に覆われる。