二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百四話 聖剣 ( No.222 )
- 日時: 2014/02/09 16:40
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: uY/SLz6f)
「エルレイド、よく頑張った。戻って休んでいろ」
エルレイドをボールに戻すと、ロフトはマゼンタの方へと向き直る。
「この戦いは私の負けだ。だがそれで我々に勝ったと思うなよ。ここにはまだ私と同等以上の力を持つ直属護衛、さらに天将の方々もいらっしゃるのだ。私一人に勝ったからと言って油断していると、痛い目を見ることになるぞ」
「忠告ありがと。で、ここにあんたらの戦力はあと何人おるん?」
「そこまで教えるほど、私は敵に甘くはない。さらばだ」
それだけ言って、ロフトは踵を返し、暗い通路の奥へと行ってしまう。
純白の光線が、ドンカラスを吹き飛ばした。
「ッ、ドンカラス!」
吹っ飛ばされた勢いをそのままに、後ろの壁へと叩きつけられる。
効果抜群の高威力の技を立て続けに喰らい、流石のドンカラスでも耐えられず、ここで戦闘不能になってしまう。
「ドンカラス、よォやっただ。休んどけ」
ドンカラスをボールに戻し、カンタロウはすぐさま次のボールを取り出す。
「こォなりゃ次はお前しかいねェだ! 羽ばたけ、プテリクス!」
カンタロウの三番手は、以前ケケのスカタンクを圧倒したプテリクス。
低く唸り、鋭い眼光でサーナイトを睨み、威嚇する。
「おっと、破天隊から報告のあったプテリクスってのはそいつだな」
「あ? ああ、この前の仮面男だか。確か破天隊直属護衛とか言ってただな」
「まあ、俺のポケモンに勝てるとは思えんがな! サーナイト、十万ボルト!」
両手を翳し、サーナイトは高電圧の強力な電撃を撃ち出す。
「プテリクス、躱してドラゴンダイブ!」
プテリクスは上空へ飛び上がり、電撃を躱すと、龍の力を纏い、凄まじい殺気と共に急降下する。
だが。
「効かねえんだよなあ! サーナイト、サイコキネシス!」
プテリクスの全力の突撃は、サーナイトが片手を添えるだけで容易く止められてしまう。
そのままサーナイトは念力の波を放ち、逆にプテリクスを吹っ飛ばした。
「なるほど、ドラゴン技を無効化するだか! そげなら、プテリクス、ストーンエッジ!」
フェアリータイプにドラゴン技の効果がない事を瞬時に把握するカンタロウ。
そしてプテリクスは周囲に尖った岩を無数に浮かべ、一斉に撃ち出す。
「サーナイト、纏めて薙ぎ払え! サイコキネシス!」
襲い来る無数の岩を、サーナイトは強い念力を放ち、全て吹き飛ばし、
「シャドーボール!」
サーナイトが構えた両手から、影の弾が放たれる。
「躱して怒りの炎!」
二発の影の弾を躱し、プテリクスは憤怒の感情の如く燃え盛る業火を放つ。
「サーナイト、吹き飛ばせ! ムーンフォースだ!」
サーナイトが白い光を纏い、直後に純白の光線を撃ち出す。
襲い来る灼熱の業火は、ムーンフォースにまとめて吹き飛ばされるが、
「ストーンエッジ!」
間髪入れず、プテリクスの周囲から無数の尖った岩が撃ち出され、サーナイトの体に突き刺さる。
「おいてめえ! 俺のサーナイトに岩を突き刺すとは、よくもやってく」
「うるせえ! プテリクス、怒りの炎!」
セドニーの怒声は一蹴され、プテリクスは再び荒れ狂う灼熱の業火を放つ。
「サーナイト、サイコキネシス!」
サーナイトは強い念力を操り、強引に炎の動きを止めると、
「十万ボルト!」
反撃の高電圧の強力な電撃を撃ち出す。
「プテリクス、怒りの炎!」
再びプテリクスは荒れ狂う灼熱の業火を放つが、十万ボルトが炎を突き破り、プテリクスを撃墜する。
「サーナイト、ムーンフォース!」
サーナイトの頭上に月のようや白い光の玉が浮かび、サーナイトが白い光に包まれる。
「そげなら、プテリクス、ゴッドバード!」
プテリクスも、神々しい白い光をその身に纏う。
「力を溜めてる隙に決めてやるぜ! サーナイト、やれ!」
刹那、サーナイトが純白の光線を放つ。
神の光を纏うプテリクスを、月の光が呑み込まんと迫る。
リョーマとラピスの戦いは、ラピスが優勢。
コスモパワーで耐久を上げ、さらにバークアウトでこちらの特攻を削ってくるブラッキーは、積み技の無いマンタインでは非常に戦いづらい。
加えて、先ほどブラッキーに毒々撃たれ、マンタインは猛毒を浴びている。
普通の毒と違い、時間が経つ毎にそのダメージが増えていくのだ。
「きっついな……マンタイン、アイアンヘッド!」
頭を鋼のように硬化させ、ブラッキーへと頭突きを繰り出す。
「ブラッキー、サイコキネシス」
対するブラッキーは強い念力を操り、念力の壁を作ってマンタインの攻撃を受け止める。
「種爆弾!」
マンタインはどこからか植物の種のような爆弾を無数に放つ。
ブラッキーに当たり、種が炸裂するが、既にコスモパワーを最大まで使っているブラッキーには対したダメージは入らない。
「ブラッキー、サイコキネシス」
再びブラッキーが念力を操る。
今度はマンタインに念力を掛け、その動きを封じ、
「投げ飛ばしなさい」
念力を操作し、マンタインを壁に向かって投げつけ、叩きつける。
「バークアウト」
「アイアンヘッド!」
さらにブラッキーは咆哮を放つが、マンタインはその咆哮を突っ切り、ブラッキーに鋼の如く硬化された頭突きを繰り出す。
しかしそれもダメージはあまり入らない。
「無駄よ。コスモパワーを六回、つまり最大まで防御と特防を高めたあたしのブラッキーには、どんな攻撃も通用しないわ」
「それでもやるしかねえんだよ。どの道ここでマンタインを戻してもその後の役割が持てねえ。少しでもそいつの体力を削る! マンタイン、ハイトロポンプ!」
マンタインは大量の水を噴き出すが、
「無駄だってば。ブラッキー、バークアウト」
特攻の下がったマンタインのハイドロポンプは、ブラッキーの咆哮の前に容易く打ち破られ、
「サイコキネシス」
念力を操作し、再びマンタインの動きを封じてしまう。
「もう決めてしまいましょう。ブラッキー、叩きつけなさい」
ブラッキーは念力を操り、マンタインを床に繰り返し叩きつける。
ブラッキーが念力を解くと、既にマンタインは毒と打撃によって体力を奪われ、戦闘不能になっていた。
「おいおい、何もそこまでするかよ? マンタイン、よく頑張った。後は任せとけ。こいつがお前の仇を取ってやる」
リョーマはマンタインの頭を撫で、ボールに戻すと、すぐに最後のボールを取り出す。
「さてこれで最後か。言うまでもねえが、一番最後に出て来るのは勿論俺のエースだ。覚悟して挑めよ」
「どうしてそんなに上から目線なのかしら。あたしに勝てるかどうかも怪しいのに」
「ハンッ、俺のエースに舐めてかかるのは結構だが、後悔しても知らねえぞ」
そして、リョーマが最後のボールを投げる。
「行くぜ相棒! 出て来い、ブレイオー!」
リョーマの最後のポケモンは、鋼の体を持つ、獣人のようなポケモン。
同じ獣人型のポケモン、ルカリオとやや似ているが、あちらと違い、顔は怪獣に近い。
高さはリョーマより少し低いほど。最大の特徴は、右手にある金色の剣。
剣道ポケモンのブレイオー。鋼・格闘タイプ。
「さあ、ブレイオー、久々にガチで戦える相手が来たぜ」
リョーマの言葉に、ブレイオーは頷き、右手の剣を構える。
「確かにタイプ上は有利みたいね。だけど、耐久力が最大まで上がったあたしのブラッキーに、どうダメージを与えるつもりかしら」
「俺のブレイオーの前では、そんなもん関係ねえんだよ」
それを聞き、ラピスは呆れたようなため息をつく。
確かにラピスの言う通りだ。いくらブレイオーが格闘技を持っていようと、今のブラッキーに致命傷は与えられない。
「根性論者かしら? それとも馬鹿なだけ? まあいいわ。ブラッキー、サイコ——」
「ブレイオー、聖なる剣!」
一瞬だった。
ブレイオーが一歩進み出たかと思うと、次の瞬間には、ブラッキーの横を通り過ぎ、右手の剣でその黒い体を切り裂いていた。
ブレイオーが構えを解いたと同時に、ブラッキーがその場に倒れる。
「ッ!? ブラッキー……?」
ブラッキーは目を回し、戦闘不能となっていた。
「だから言ったじゃねえかよ、覚悟して挑めってよ」
リョーマの表情に、勝ち誇った笑みが浮かぶ。
「聖なる剣の前では能力変化は意味をなさねえ。そんな小細工、聖なる剣の前では通用しねえんだよ」
聖なる剣は、相手の能力変化を無視して攻撃する技。
そのため、コスモパワーで上昇した防御が無視されたのだ。
「多少はやるみたいね。ブラッキー、よくやったわ。休んでなさい」
ブラッキーをボールに戻し、ラピスは最後のボールを取り出す。
そのボールには内部のものを封印するように二重の鎖の模様が描かれ、今、その鎖は紫色の光を放っている。
「それが噂の『覚醒』だな。楽しみじゃねえか」
「余裕でいられるのも今のうちよ。確かに今のは意表を突かれたけど、あたしの最後のポケモンの前ではそんなもの意味をなさないわ」
ラピスが最後のボールを掴み、前へ突き出す。
「夜天を司るあたしに与えられたのは、闇に蠢く霊の力。怨念をその身に受け、苦しみ抜いて地に伏せなさい」
ラピスの瞳が、冷たい紫の光を湛えるその瞳が、カッと見開く。
「夜天の闇に蠢け、ネクロシア!」
ラピスの最後のポケモンは、ロフトも使っていたネクロシア。
しかし彼女の個体と比べ、こちらの個体はより異形だった。
無数の瞳は充血し、赤い残光を放ち、爪はより長く、下半身の鎌はより鋭い。
並の人間なら、その姿を見ただけで畏怖し動けなくなるほどの悍ましさがある。
「なるほどな。それがお前のエースか」
しかし、それほどまでの恐ろしさを放つネクロシアを見ても、リョーマは顔色一つ変えない。
寧ろ強者との戦いを楽しむような笑みを浮かべ、ネクロシアを見据える。
「やってやろうぜ、ブレイオー。天将三位の切り札に勝てれば、こっちのモチベーションも上がるってもんだ」
「今のうちに余裕を味わっておきなさい。すぐに恐怖のどん底に叩き落としてあげるわ」
両トレーナーの言葉と共に。
片方は黄金の剣を、片方は漆黒の爪を構え、互いの敵と対峙する。