二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百六話 剣豪 ( No.224 )
- 日時: 2014/02/15 20:59
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: .1vW5oTT)
- プロフ: ミスでサーナイトの技が五つになってます。今回は見逃してやってください。
純白の光線が、プテリクスに直撃する。
月の光に呑み込まれ、プテリクスの姿が見えなくなってしまう。
だが。
「プテリクス、ゴッドバード発動!」
刹那、月の光が薙ぎ払われ、消滅した。
代わりに光り輝くのは、プテリクスを覆う神の光。
その光は巨大な鳥の形に姿を変え、直後、プテリクスがその光を纏い、凄まじい速度で突貫する。
「こいつのゴッドバードに勝てると思っただか? プテリクス、ぶっ飛ばすべ!」
サーナイトが回避する隙も与えず、巨大な光の鳥がサーナイトに激突した。
サーナイトは後ろへ吹っ飛ばされ、壁に打ち付けられて遂に戦闘不能となる。
「……! サーナイト、大丈夫か? このバトルが終わればすぐに回復させてやるから、しばらく休んでな」
先程までのセドニーからは想像も出来ないような優しい声をサーナイトにかけ、ボールに戻し、すぐに次のボールを繰り出す。
「仇を取ってこい、フワライド!」
セドニーの三番手は、やはりフワライド。
「やっぱりフワライドか。そいつの情報がほとンどねェから、ここで仕入れさせて貰うだ」
「そういやこいつをお前らとのバトルで使うのは初めてだな」
確かに、このフワライドだけはその存在以外の事前情報が全く無かった。
「まあ何にせよ、オラがやることは変わンねェだがな! プテリクス、ストーンエッジ!」
相手が飛行タイプなら好都合。プテリクスが周囲に無数の尖った岩を浮かべ、一斉に撃ち出す。
対して、
「フワライド、ゴーストダイブ!」
フワライドの姿が消えた。
何処かに隠れた、などの話ではない。
一瞬ののちには、その場から消えたのだ。
「ッ!? ゴーストダイブ……?」
聞いたことのない技だが、何か嫌な予感がする。
(ゴーストダイブ……シャドーダイブと似た技名だが……)
カンタロウがそこまで考えついた瞬間。
何もなかったはずの空間から突如フワライドが飛び出し、その腕をプテリクスに叩きつけ、地面へと撃墜する。
「ッ、やっぱシャドーダイブと同じだか」
「まあな。一瞬でその場から消え、しばらく間を置いて虚空から現れ敵を攻撃する。分かってても防げるもんじゃねえぜ」
「……お前本当に最弱だか? オラにはとてもそォは見えねェだが」
「ポケモンの力的にはな。加えて他の奴らは俺の戦い方を熟知してるから、総合的に見りゃ俺が最弱になっちまう」
だが裏を返せば、初めて戦う相手には強いということ。
サーナイトのフェアリータイプや、フワライドのゴーストダイブなどは、確かに初見の相手には厳しいだろう。
「その点お前は何なんだよ。俺のサーナイトのタイプ変更を見抜き、フワライドのゴーストダイブをすぐに理解した。N・E団のメンバー以外でお前みたいな切れ者に会ったのは初めてだぜ」
「ハンッ、そりゃありがてェだな。だが無駄話はここまでだべ。プテリクス、怒りの炎!」
地面へと落ちたプテリクスだが、硬い体のおかげで衝撃は少ない。
すぐに荒れ狂う灼熱の業火を放ち、反撃する。
「フワライド、ハリケーン!」
フワライドは嵐のような暴風を巻き起こし、炎を纏めて吹き飛ばし、
「サイコキネシス!」
念力を操り、波として撃ち出す。
「プテリクス、ストーンエッジ!」
プテリクスは空へと再び舞い上がると、尖った岩を一斉に放ち、念力を相殺し、
「ドラゴンダイブ!」
さらに上へと飛び上がり、龍の力を身に纏い、凄まじい殺気と共に急降下する。
「フワライド、ゴーストダイブ!」
しかしプテリクスの一撃が直撃する寸前、フワライドは消えた。
標的を見失い、プテリクスはそのまま地面へ激突する。
プテリクスが起き上がった瞬間を狙い、フワライドが現れ、プテリクスに襲い掛かる。
「プテリクス、ストーンエッジ!」
フワライドの襲撃を受けるが、それでもプテリクスは踏みとどまり、尖った岩を撃ち出して反撃、フワライドに岩を突き刺した。
「プテリクス、もう一度だべ!」
再びプテリクスは周囲に岩を浮かべ、フワライドに向けて一斉に撃ち出す。
体勢の整わないフワライドに、再び無数の岩が突き刺さる。
その寸前。
「甘い! フワライド、小さくなる!」
フワライドの体が、空気が抜けたように一気に縮小化した。
その大きさは、先程の四分の一ほど。
小さくなったフワライドの体は、上手く岩と岩との間を潜り抜け、無傷でストーンエッジをやり過ごした。
しかも、大きさは元に戻らず、そのままである。
「俺のフワライドの一番の技、小さくなるだ。文字通り小さくなるだけだが、それだけで攻撃は躱しやすくなる。勿論火力は変わらないぜ」
確かにセドニーの言う通りだ。
周り全体への攻撃ならともかく、特にストーンエッジのような攻撃では、フワライドの動きを捉え辛くなるだろう。
しかし、その一方で。
カンタロウは、これを寧ろ好機と見ていた。
(ハッ、やっぱ所詮は最弱だか。確かに小さくなるはストーンエッジに対して相性さええが、プテリクスがさっき使った技さお前はもォ忘れただか)
表情には出さず、カンタロウは心の中で静かに笑う。
双方が同時に動いた。
「ブレイオー、リーフブレード!」
「ネクロシア、シャドークロー」
ブレイオーは右手の剣に自然の力を込め、ネクロシアは黒く鋭い影の爪を右手に纏い、前方へ跳び出す。
お互いの斬撃が交錯し、金属のこすれたような音が鋭く響く。
「ブレイオー、メタルブラスト!」
すぐさま振り返り、ブレイオーは鋼エネルギーを一点に集め、砲撃を放つ。
「ネクロシア、スプラッシュ」
対してネクロシアは下半身の鎌に水を纏い、その場で一回転しながら鎌を振り抜き、砲撃を両断、さらに、
「サイコバレット」
念動力を実体化させ、それを無数の銃弾に変えて撃ち出す。
「ブレイオー、聖なる剣!」
ブレイオーは剣を振るい、襲い来る銃弾を全て斬り裂き、撃ち落とし、
「ストーンエッジだ!」
周囲に尖った岩を浮かべ、一斉に放つ。
「ネクロシア、もう一度サイコバレット」
対してネクロシアは再び念動力の銃弾をマシンガンのように撃ち出し、ストーンエッジを相殺する。
「ブレイオー、リーフブレード!」
一歩前へ進み、剣に自然の力を込め、一気にブレイオーが跳ぶ。
「ネクロシア、ギガスパーク」
ネクロシアは素早く後ろへと退き、巨大な電撃の砲弾を放ち、ブレイオーの行く手を阻む。
ブレイオーの剣に砲弾は真っ二つに斬られるが、ネクロシアには届かない。
「まだ終わらねえぜ! メタルブラスト!」
「こっちも同じよ。シャドークロー」
ブレイオーが鋼エネルギーの砲撃を放つが、ネクロシアはそれを躱し、一瞬でブレイオーとの距離を詰め、鋭い影の爪を振り抜き、ブレイオーを切り裂く。
「リーフブレード!」
ブレイオーは体勢を崩さなかった。
シャドークローをその場で耐え、自然の力を込めた剣を振る。
ネクロシアは素早く後ろへと下がるが、剣先がネクロシアを掠めた。
「メタルブラスト!」
勢いをそのままにブレイオーは一歩前へ踏み出し、左腕を翳し、鋼エネルギーの砲撃を放つ。
「それは効かないって分かってるでしょ。ネクロシア、スプラッシュ」
ネクロシアは下半身の鎌に水を纏い、それを縦に振るって砲撃を両断するが、
「同じ手は通用しねえぜ? ブレイオー、リーフブレード!」
すぐそこにブレイオーが迫っていた。
自然の力を溜め込み、淡く光る黄金の剣が、今度こそネクロシアを捉えた。
「……ネクロシア、立て直しなさい。サイコバレット」
「そんな隙やらねえよ! ブレイオー、メタルブラスト!」
ネクロシアは起き上がるが、攻撃を放つよりも早くブレイオーが鋼エネルギーの砲撃を放出する。
「っ、ネクロシア、シャドークロー!」
ラピスの声に僅かに焦りがこもる。
ネクロシアは両手に黒い影の爪を纏い、襲い来る砲撃に正面から爪を突き刺し、ダメージを最小限に抑える。
「休む隙なんかやらねえぞ! ストーンエッジだ!」
ブレイオーの周囲に尖った岩が浮かび、ブレイオーが左手を突き出すと共に一斉に撃ち出される。
「鬱陶しいわね……ネクロシア、サイコバレット」
ネクロシアは念力を実体化させ、マシンガンのように念力の銃弾を撃ち出し、岩を次々と破壊していく。
だが、
「リーフブレード!」
ストーンエッジの真ん中を突っ切るように、剣を構えたブレイオーが突っ込んで来る。
サイコバレットを剣で捌き、撃ち落とし、その切っ先をネクロシアへ向けて突き刺す。
「受け止めなさい! ネクロシア、シャドークロー!」
ラピスの声が次第に大きくなっていく。
右手の爪に黒い影を纏い、ブレイオーのリーフブレードを正面から受け止める。
さらに左手にも影が宿る。
拮抗して両者迂闊に動けない隙を狙い、黒い爪を突き刺そうとするが、
「読めてるぜ! メタルブラスト!」
ブレイオーの方が動きが早かった。
翳した左手から鋼エネルギーの砲撃が放たれ、ネクロシアを吹っ飛ばす。
(馬鹿な……圧倒的に押されてる。N・E団三位の、覚醒状態のあたしが、押されてるなんて……!)
薄々、ラピスは気付いていた。
目の前にいる、リョーマという男。
そして、彼の操るポケモン、ブレイオーの、戦慄を覚えるほどの飛び抜けた実力に。
(認めたくはないけど、これは認めざるを得ないわね……)
正直な所、ラピスはリョーマを甘く見ていたところはあった。
情報が殆どないとは言え、覚醒状態でN・E団七天将三位の自らの力を持ってすれば、恐れる相手ではないと考えていた。
しかし、違う。
確かに今のラピスの力は全力の半分ほどだが、それでも分かる。
この目の前の男は、その実力は、まさに本物だった。