二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百七話 脂肪 ( No.227 )
- 日時: 2014/02/22 22:48
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: FX8aUA2f)
テイルーンの背中を覆う雲が、鳥の形となった。
激しいオーラを纏い、転倒しているカビゴンに突貫した。
カビゴンは何とか起き上がるが、そこから躱す術はなかった。
テイルーン最大の一撃が、カビゴンの腹に正面から直撃した。
だが。
激突したはずのテイルーンが、逆に吹き飛ばされた。
突貫した時とほぼ同じ勢いでテイルーンは後ろに吹っ飛ばされ、壁に激突する。
「今よカビゴン! ぶち壊す!」
その隙を逃すはずもなく、カビゴンは右腕を振り回し、テイルーンに全力の拳の一撃を叩き込んだ。
「……っ」
ジンがテイルーンの方へ振り向くと、テイルーンは壁にめり込み、目を回して動かなくなっていた。
「……何があった」
ジンですら何が起こったのかが分からなかった。
それもそのはず、突っ込んだはずのテイルーンが、逆に吹き飛ばされたのだ。
「うん? そりゃあ簡単なことよお。要はトランポリンの原理と同じ。突っ込んできたテイルーンが、カビゴンのお腹の脂肪の弾力によって、吹っ飛ばされたってワケねえ」
「……」
言葉の一つも出ないジン。
驚きと呆れが混ざり、何も言えなくなってしまったのだ。
最後の最後まで、ぶっ飛んだ戦略を駆使するサクラ。
「……テイルーン、戻れ」
ようやくジンはボールを取り出し、テイルーンを戻す。
「まあいい。俺はここで敗れた、だがここにはまだ天将が三人いる。それに俺に苦戦する程度の実力の連中では、『覚醒』を使った天将に勝つことは出来んだろうな」
「ふふー、それはどうかしらねえ。特にリョーマの切り札はぶっ飛んでるしい、案外天将も負けちゃうんじゃないかしらあ?」
サクラが笑みを浮かべて言い返すが、ジンはもう何も言わなかった。
サクラに背を向け、通路の奥へと去って行く。
「なかなか楽しかったわよお。またバトルしようねえ☆」
サクラの声に応えるはずもなく、ジンの姿は通路の奥の闇に消え、見えなくなった。
「さあ、行きますよ! オールガ、アクアテール!」
尾ビレで床を蹴って跳び上がり、オールガは水を纏った尾ビレを上空からへラクロスへ叩きつける。
「へラクロス、躱して瓦割!」
へラクロスは後ろに素早く飛び、オールガの攻撃を躱すと、前へと飛び出し、硬い角をオールガに狙いを定め、振り下ろす。
「オールガ、ぶち壊す!」
だがオールガが再び尾ビレを振るう。
今度の一撃は全力を込めた一撃で、へラクロスの角と少し拮抗するものの、すぐにその角を弾き飛ばす。
「アクアテール!」
そして二発目の尾ビレがへラクロスに直撃し、吹っ飛ばした。
「ちぃっ、へラクロス、立て直すぞ! 襲撃!」
「そう上手くは行きませんがねえ! オールガ、岩雪崩!」
起き上がったへラクロスに、無数の大きな岩が降り注ぎ、へラクロスの動きを封じてしまう。
「これで終わりです! オールガ、アクアテール!」
床を蹴ってオールガは跳び上がり、上空から勢いをつけ、水を纏った尾ビレを振るう。
岩を容易く突き破り、閉じ込められたへラクロスにアクアテールが直撃した。
へラクロスは大きく吹っ飛ばされ、戦闘不能となってしまう。
「へラクロス、よくやった。後は休んでてくれ」
へラクロスをボールに戻すと、レオは二つのボールを握る。
(いつもならここはポッチャマだ。だけど、奴のポケモンは水タイプのオールガ。ポッチャマの技は、殆ど通らないな)
ポッチャマの覚えている四つの技のうち、三つがオールガに半減されてしまう。
その反面、オールガからはぶち壊すという強力な悪技を受けてしまう。
(となれば、ここはやっぱりこいつしかいないな)
ポッチャマのボールは出さず、もう片方のボールを取り出すレオ。
「最後はお前だ! 任せたぜ、レントラー!」
レオの最後のポケモンはレントラー。オールガが地面技さえ持っていなければ、タイプ上では有利に立ち回れる。
「なるほど、基本に忠実にタイプ相性を見て来ましたか。まあそれが賢明な判断でしょうね」
「あんたに一々僕の言動を評価されるのは気に入らないけどな」
「ふふふ、それでは最終戦を始めましょうか。オールガ、ぶち壊す!」
標的を見据え、オールガが跳び出す。
レントラーに狙いを定め、全力で尾ビレを叩きつける。
「レントラー、躱して十万ボルト!」
レントラーは尾ビレの一撃を横へと躱し、高電圧の強力な電撃を撃ち出す。
「もう一度ぶち壊す!」
だがオールガは再び尾ビレを振るい、電撃を打ち返し、弾き飛ばしてしまう。
「氷柱落とし!」
オールガがレントラーの頭上に冷気を放つ。
冷気は凝結し、幾つもの大きな氷柱となり、レントラーへと降り注ぐ。
「レントラー、怒りの炎!」
レントラーは頭上へと荒れ狂う業火を放ち、氷柱を溶かす。
だが、
「アクアテール!」
尾ビレで地を蹴って、オールガが突っ込んで来る。
水を纏った尾ビレを振るい、レントラーを殴り飛ばす。
「レントラー! ッ、やっぱ痛えな……」
レオの予想した通り、このオールガは典型的なアタッカーのようだ。
ただし、圧倒的な実力差は感じない。
立ち回り方に気を付ければ、十分勝機はある相手だ。
「それにしても、そのオールガ、攻撃一辺倒か。あんたには似合わねえな」
「ふふふ、結局最後に勝ち残るのは、力を持つ者です。圧倒的な力の前には、小細工など通用しない。その意味では、貴方もレントラーという純粋なアタッカーを出して正解でしたねえ。私のオールガの前では、搦め手など効きませんからね」
「どうかな。仮に僕がアブソルを出してたら、身代わりに対処出来たのかよ」
「そもそも貴方はオールガに対しアブソルを出すはずがありませんね。貴方のアブソルの技は、オールガには全て通りが悪い」
こんな事を話していても仕方がありませんね、とソライトは続け、
「バトルの再開です。オールガ、岩雪崩!」
オールガはレントラーの頭上から無数の岩を落とす。
「レントラー、躱して馬鹿力!」
レントラーは岩を次々と躱し、オールガに向かって守りを捨てて全力で突進する。
「力なら負けませんよ。オールガ、ぶち壊す!」
オールガもレントラーの突撃に合わせ、渾身の力を込めて尾ビレを振るう。
お互いの全力の一撃が激突するが、やはり素の火力はオールガの方が強く、レントラーは吹っ飛びこそしないものの、押し戻される。
「オールガ、アクアテール!」
勢いを殺さず、オールガは尾ビレに水を纏い、レントラー目掛けて振り下ろす。
「レントラー、躱して十万ボルト!」
まだ体勢が戻っていなかったレントラーだが、何とかアクアテールを躱し、間髪入れずに反撃の高電圧の電撃を撃ち出す。
至近距離での一撃。オールガは躱すことが出来ず、効果抜群の攻撃を受ける。
「私のオールガ程ではないにせよ、火力は馬鹿に出来ませんね。オールガ、氷柱落とし!」
一旦後退して体勢を整えると、オールガはレントラーの頭上へと冷気を放つ。
冷気は凝固し、大きな氷柱となって落下する。
「レントラー、躱してもう一度十万ボルト!」
今度は氷柱を躱し、再びレントラーは電撃を放つ。
「オールガ、ぶち壊す!」
「レントラー、馬鹿力!」
オールガが尾ビレを振るい、電撃を弾き飛ばすが、それが終わったタイミングを狙って、レントラーは守りを捨てた突撃を仕掛ける。
渾身の力で激突し、オールガを吹っ飛ばした。
「やりますね。ですが接触技には気をつけた方がよろしいかと」
「あ?」
レオがレントラーの体を見ると、レントラーがオールガに体をぶつけた箇所に傷が出来ていた。
「オールガの特性、鮫肌です。接触技を喰らった時、相手にもダメージを与えるのですよ」
「なるほどな。わざわざ教えてくれるなんてありがたいぜ」
「所詮、貴方には勝ち目の薄い試合ですからねえ。少しくらいハンデは差し上げますよ」
「言ったな。負けて泣きを見ても知らねえぞ」
「それはこちらの台詞ですが」
双方ともに見られるのは余裕。戦況的には、まだ互角。