二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百八話 勇猛 ( No.229 )
日時: 2014/03/01 22:39
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: L3izesA2)

「ネクロシア、シャドークロー」
ネクロシアが右手に影を纏い、鋭く黒い爪を伸ばし、ブレイオーとの距離を一気に詰める。
「ブレイオー、リーフブレード!」
対してブレイオーは剣に自然の力を込め、影の爪を受け止め、捌いてネクロシアの体勢を崩し、
「ストーンエッジ!」
周囲に尖った岩を浮かべ、一斉に撃ち出す。
「ネクロシア、サイコバレット」
ネクロシアは念力を実体化させ、念力の無数の銃弾を撃ち、岩を破壊するが、
「メタルブラスト!」
自らが放ったストーンエッジをも打ち消す勢いで、鋼のエネルギーを溜め込んだ砲撃が撃ち出される。
回避しようとするネクロシアだったが間に合わず、砲撃を喰らって吹っ飛ばされる。
「ブレイオー、リーフブレード!」
吹っ飛ぶネクロシアを追い、ブレイオーは剣に自然の力を込め、大きく前に跳ぶ。
「反撃の可能性くらい考えなさいよ。ネクロシア、スプラッシュ」
宙を舞うネクロシアだが、それでもブレイオーの剣に対し、下半身の鎌に水を纏い、ブレイオーを迎え撃つ。
「反撃なんて喰らったら喰らったでまた立て直せばいいんだよ。ヒット&アウェイなんてこいつには合わねえしな」
ブレイオーの突きが、ネクロシアの水を纏う鎌を突き刺す。
ネクロシアもそれだけでは負けず、ブレイオーを叩き落とさんと鎌に力を込める。
「ネクロシア、ギガスパーク!」
「ブレイオー、メタルブラスト!」
ネクロシアが瞬時に電撃の砲弾を作るが、それを確認したブレイオーも素早く退き、鋼のエネルギーの砲撃を放つ。
双方の技は正面からぶつかり合い、爆発を起こす。
「この煙はチャンスね。ネクロシア、シャドークロー」
影を操るゴーストタイプのネクロシアには、このような爆煙に潜むなど容易い。
気配を完全に殺し、静かにブレイオーに忍び寄る。
だが。
「甘い! ブレイオー、リーフブレード!」
並の人間では絶対に見切れないようなその一撃。
それを、リョーマとブレイオーは瞬時に見切ってしまう。
自然の力を込めた、淡く光るその剣が、一振り目で影の爪を捌き、二振り目でネクロシアを切り裂いた。
「剣道ってのはな、如何に相手の動きを読むか、如何に相手が攻撃してくる気配を知るかなんだよ。剣の達人のブレイオーに、そんな小細工が通用するわけねえだろ」
何をやっても返される。
正面からぶつかっても、隙を突こうとしても、気配を消したとしても、ブレイオーに攻撃が届かない。
「……ッ、ネクロシア、シャドークロー!」
追い詰められたラピスへの選択肢は、正面突破しかなかった。
下手な小細工を使うくらいなら、正面からぶつかって突破する。
「最初にさ」
対して、リョーマは軽い口調で言った。
「お前の三位コールと吐血でさ、こっちの台詞、遮られたじゃんか」
リョーマの言葉と共に、ブレイオーが剣を構える。
「だからさ。もう一回言わせてもらうぜ」
血走った眼を見開き、爪を突き出し、確実に仕留めんと迫るネクロシア、その奥のラピスを見据え、リョーマは小さく笑みを浮かべる。

「俺を誰だと思ってんだ? 『ブロック』で二番目に強い男だぜ?」

直後。
剣を構えたブレイオーと、ネクロシアが交錯した。
ブレイオーが背を向けたまま、静かに構えを解く。
その刹那。
ネクロシアの体が傾き、床に崩れ落ちた。



「フワライド、サイコキネシス!」
体が小さいままのフワライドが、強力な念力を波に変えて撃ち出す。
小さいとはいえ、火力は変わらない。
「プテリクス、躱して怒りの炎!」
プテリクスは大きく上昇し、サイコキネシスを躱すと、荒れ狂う灼熱の炎を放つ。
「フワライド、小さくなる!」
しかしフワライドはさらに体を縮小させ、炎の僅かな隙間を通り抜け、躱してしまう。
「ハリケーンだ!」
フワライドは嵐のような暴風をおこし、空を飛ぶプテリクスのバランスを奪い、床へと撃墜する。
「サイコキネシス!」
さらに強い念力の波を起こし、追撃。
「プテリクス、ストーンエッジ!」
対してプテリクスはすぐに起き上がると、周囲に尖った岩を浮かべてそれを撃ち出し、念力を相殺する。
「プテリクス、怒りの炎だ! 連発して奴の逃げ道さ防ぐべ!」
憤怒の感情の如く燃え盛る灼熱の炎をプテリクスは連続で放つ。
下手をすると部屋が火の海になるほどの量だが、両トレーナーは全く怯まない。
「これは躱しきれねえな。フワライド、ゴーストダイブ!」
フワライドの姿が一瞬で消えた。
いくら全体攻撃を仕掛けようと、消えてしまえば攻撃は当たらない。
しかしこの時。
(来た!)
カンタロウは、フワライドへの勝利を確信した。
「プテリクス、奴が来た瞬間に、飛び上がるだ」
じっとプテリクスの周囲に気を払うカンタロウ。
「今だ、プテリクス!」
プテリクスが思い切り飛び上がった直後、すぐ横から小さなフワライドが飛び出す。
しかしその攻撃は空振りに終わる。
そして。
「プテリクス、ドラゴンダイブ!」
龍の力を纏い、凄まじい殺気を放ちながら、プテリクスは真下へと急降下する。
「ドラゴンダイブだと? ……まずい! フワライド、ゴーストダイブ!」
セドニーが気付いた時には遅かった。
フワライドが消えるよりも早く、プテリクスの急降下の一撃がフワライドを押し潰した。
プテリクスが起き上がると、既にフワライドは戦闘不能になっていた。
「小さくなりゃスピードくれえ落ちるとか思ったけンど、その通りだったべや。炎やたくさんの岩なら隙間さ探して躱せても、こいつは躱せねェだぞ」
おまけにフワライドは縮小化している。押し潰された時のダメージは、通常の比ではない。
「天将としたことが、先に最後の一体を出すとは、我ながら情けねえぜ。フワライド、戻って休んでな」
フワライドをボールに戻し、セドニーは最後のボールを、二重の鎖が描かれたボールを取り出す。
その模様は翠の光を放っており、同時に、セドニーの瞳の光がさらに輝きを増す。
「碧天に火花を散らせ、バジリール!」
セドニーの最後のポケモンは、覚醒状態でのみ出すことの出来る切り札、バジリール。
「分かってると思うがこいつは電気タイプを持ってるぜ。鳥使いのお前にはきついんじゃねえの?」
「いやいや、まだ優しい方だべ。草タイプさ入ってるから、飛行技が普通に通るだ」
「なるほど。それじゃ、まずはそいつを仕留めるか。バジリール、大成長!」
突如、プテリクスの足元から無数の蔦が飛び出し、プテリクスの動きを完全に止めてしまう。
「チッ、プテリクス、燃やせ! 怒りの炎だ!」
「無駄だぜ。バジリール、十万ボルト!」
プテリクスが灼熱の炎を放ち、蔦を燃やし、何とか拘束を解く。
しかし襲いくる電撃を躱すまでの余裕は無く、プテリクスは強烈な電撃を浴びる。
効果抜群の一撃を受け、プテリクスはここで戦闘不能となる。
「ここまでだか。プテリクス、よォやっただ。二体抜きすりゃ上出来だべ」
プテリクスをボールに戻し、カンタロウは次のボールを取り出す。
こちらも、これが最後のポケモンだ。

「さあ行くべ、オラがエース! 羽ばたけ、ムクホーク!」

カンタロウの最後のポケモンは、ムクバードの進化系。
頭の鶏冠は先端が赤く、さらに大きくなり、目も赤く、目つきは非常に鋭い。
脚もより太く、頑丈になり、人の一人位なら軽々と持ち上げられそうだ。
猛禽ポケモンのムクホーク。非常に攻撃性の強いポケモンで、ノーマル・飛行タイプ。
場に出るとムクホークは翼を広げて飛び上がり、赤い瞳を光らせてバジリールを睨み付け、威嚇する。
「おや、以前はムクバードを連れていたが、進化したのか」
「そんなとこだべ。オラの手持ちのなかでは、一番強えポケモンだぞ」
「当たり前だろうが。一番強いの選んでなかったら、こいつに瞬殺されるぞ」
だがまあ、とセドニーは続け、
「そいつでも俺には勝てやしねえ! バジリール、大成長!」
ムクホークの下の床から、無数の蔦が飛び出す。
ムクホークの逃げ道を封じ、さらに動きを止めんと、その蔦が襲い掛かる。
「効かねェだ! ムクホーク、インファイト!」
しかしエースは一味違う。
襲って来る蔦よりも速いスピードで、ムクホークは翼で蔦を叩き飛ばし、脚の鋭い爪で蔦を引きちぎり、大成長の蔦を全て止めてしまった。
「バジリール、十万ボルト!」
イルミネーションのような尻尾から、バジリールは高電圧の強烈な電撃を撃ち出す。
「ムクホーク、躱してブレイブバード!」
ムクホークはそれを躱すと、凄まじい炎のようなオーラをその身に纏い、ジェット機のようにバジリールへと突貫する。
「ッ、速え……! バジリール、十万ボルト!」
バジリールがイルミネーションのような尻尾を光らせ、電撃を放とうとするが、それよりも速くムクホークの渾身の突撃が命中し、バジリールを吹っ飛ばした。
「この俺を少しでもビビらせるとは、なかなかやるじゃねえか。だが、今のでそいつのスピードは分かったぜ」
セドニーがそう言った直後、バジリールが起き上がる。
久々に本気を出せる、とでも言うかのように、バジリールは右腕を軽く回し、尻尾の光を激しく点滅させる。
「お前が今どれくらいの力を出してッかは知らねェけンど、本気さ出さねェと、オラのムクホークには勝てねェだぞ」
カンタロウの言葉に合わせて、ムクホークも鋭い啼き声を上げる。