二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百十二話 隠れ里 ( No.235 )
- 日時: 2014/03/17 09:19
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: p3cEqORI)
「ジムリーダーが、二人?」
よく分からないコタロウの発言に戸惑うレオとアスカ。
「ジムリーダーが二人と言えど、ジムが二個ある訳ではない。寧ろ俺はジムリーダーとしては二番手だ」
「つまり、貴方は臨時ってことですか?」
レオの言葉に、コタロウは首を横に振る。
「いや、そうではない。この町のジムリーダーは、この町全体を纏めるお方。それ故、ジムリーダーの仕事のみに専念してはおれぬ。そのため、俺が第二のジムリーダーを引き受けておるのだ」
「でも、この町の民家って五、六軒でしょ? それくらいの余裕はあるんじゃないかしら」
「ああ、そうか。お前たちはまだ、この町の全景を見ていないのであったな」
では、とコタロウは続け、
「先程も言ったが、これからお前たちを俺たちの集落へ案内する。ついて来い」
そう言って、コタロウはジムを出る。
レオとアスカも、後に続く。
「あの、もうすぐ夜ですけど、大丈夫なんですか?」
レオが訊く。
「ああ、それなら問題ない。あのお方はいざとなれば最低でも三日三晩なら眠らずに過ごせるお方だ」
ここまで来るとレオもアスカもその人物が気になる。
メジストの能力が効かず、ジムリーダーの仕事と両立が出来ないほど広いらしい町を一人で治め、さらに三日三晩眠らずに過ごせる人物とは、一体どんな人物なのだろうか。
「こっちだ。ここからは道が草木に覆われるから、俺を見失うなよ」
コタロウは森の中へ入って行った。
それを追い、レオとアスカも茂みに飛び込む。
十分ほど歩くと、コタロウが足を止める。
「着いたぞ」
茂みを掻き分け、レオとアスカもコタロウに追いつく。
そこには、非常に開けた集落が存在していた。
昔にあったような家が無数にあり、家の中は明かりもついている。
巧妙に残された木の位置によって、木の葉が、町が上空から見られることを完全に防いでいる。
一番奥には、一際大きな屋敷があった。
「ここが、俺たちの町、ヨザクラタウンの全貌だ。現代の他の町の科学力と、昔からの伝統が組み合わさって発展してきた、我々の誇りの町だ」
そう言われると、確かに家の見た目は昔のものに似ているが、その家の中を照らす明かりは電灯によるものだ。
過去と現在の文化が、見事に適合している。
「ちなみに、この町に住む者の7割以上が忍びの者。ここは、隠された忍者の町でもあるのだ」
レオもアスカも、まさか森の奥にこのような集落があるとは予想していなかった。
「さて、この町の主、ミヤビ様に、お前たちを紹介しなければならんな」
再びコタロウが歩き出す。
恐らく、一番奥の屋敷に、ミヤビと言う人間がいるのだろう。
屋敷に着くと、コタロウが扉を叩く。
扉が開かれて、出て来たのは、ピンク色の忍者服に、紫色でショートヘアの髪に赤い花を付けた少女だった。
「あら、コタロウ様? どうされたのですか?」
「アヤメか。今、ミヤビ様に会えるか? 無理なら構わぬが、早急な事態だ。出来れば早く話しておきたいことがある」
「了解しました。すぐに確認してまいります」
そう言って音もなく少女は消えてしまう。
二回に主の元へ行ったのだろう。
「今のは名をアヤメという。ミヤビ様の一人娘で、町の中でも優秀な忍者だ」
どのような忍者が優秀なのかレオには分からないが、単純にポケモンか強いとか、そういうことだろうか。
そんな事を考える暇もなく、アヤメは戻って来た。
「コタロウ様。父上が、上がって来いと」
「分かった。お前たち、ついて来い」
コタロウは一礼し、屋敷へと入る。
レオとアスカもとりあえず一礼し、コタロウに続く。
階段を登り、一番奥の部屋へと辿り着く。
「失礼します」
そう言って、コタロウは襖を開く。
コタロウの後に続き、レオとアスカも部屋の中へ入る。
そこにいたのは、一人の男性だった。
髪は白く、目は細く目付きは非常に鋭い。
紋の入った紫の着物を着、腰には刀を差し、座禅を組んで座っているその様子は、忍者というよりは武士に近い。
「コタロウか。何用だ」
その声は低く鋭い。
「ミヤビ様、例の『ブロック』の使いの者です。私が話を聞いたのですが、どうやらこの者たちの話は、私が一人で解決するには重すぎる内容だと判断し、ミヤビ様の元へ来た次第です」
「分かった。して、使いの者とはお主らか」
ミヤビの瞳が、レオとアスカを見据える。
「は、はい」
ミヤビの発する威圧感に圧倒されながらも、レオは答える。
このミヤビという男は、今までレオが体験したものとは全く違う威圧感を持っている。
「私の名はミヤビ。この町を治める者であり、ヨザクラタウンのジムリーダーである。ここまで連れて来られたと言う事は、相当な事態なのだろう。まずは座れ」
そう言われ、レオとアスカはミヤビの前に座る。
とてもではないが正座以外では座れない。
そして、レオはN・E団の事を話し出す。
「なるほど」
全てレオの話を聞き終わった後、ミヤビは目を開く。
「つまり、そのN・E団という者どもが、我が町にまつわる宝玉を奪うと。ふっ、面白い」
ミヤビは小さく、不敵に笑う。
「我々忍びの者から、我々が一番の宝とするものを奪うと申すか。面白い、受けて立とう。やれるものならやってみよ」
「ミヤビさん、N・E団を甘く見ないでください」
そこで口を開いたのはアスカだ。
「奴らは目的を達成するためには手段を選びません。町全体を制圧し、もしかすると町自体を破壊してしまうかもしれません」
アスカの言い方はまったく大げさではない。
一度コウホクシティはN・E団に完全に制圧され、スティラタウンでは町全体を襲う大火事になりかけた。
「お主らこそ、我々を甘く見てもらっては困る」
アスカのN・E団への警告にも怯む様子すら見せず、ミヤビはそう返す。
「我々の先祖も、そして我々も、危険だと呼ばれる集団を無数に倒してきたのだ。なあ、コタロウよ。N・E団とやらがどれほどの集団かは知らぬが、我々の恐れる相手ではないわ」
「はい。ですがミヤビ様、妙ではありませんか。奴らは、この町の者しか知らぬはずの、宝玉の存在を知っております。我々の文明を否定する集団なら何度も潰していますが、この手の集団は初めてです。私は、その者たちは怪しいと、警戒をより強めた方がよいと考えております」
「ほう。お主がそこまで慎重になるとは、珍しい。だが確かに、お主の言う事も一理ある」
その時。
「失礼します」
襖が開き、アヤメが入って来た。
「どうした、アヤメ」
「父上、今し方、ポケモンセンターの方から、ジムリーダー宛に書かれた手紙を預かりました」
そう言ってアヤメはミヤビに手紙を渡す。
ミヤビがそれを広げ、レオたち近くにいた者がそれを覗き込む。
『この手紙が届いた四日後の、十五時丁度に、隊を率いてヨザクラタウンへ侵攻する。目的は町の制圧ではなく、三つの宝玉の回収である。抵抗したくば、戦力を集め、我々の侵攻に備えよ。——輝天将トパズ』
「ミヤビさん、こいつは危険です」
真っ先に口を開いたのはアスカだった。
「こいつが、コウホクシティを完全に制圧し、目的物回収だけのためにスティラタウン全体を戦火に巻き込んだ張本人です」
レオも分かっている。輝天将を出して来る時のN・E団は、本気だ。
「ミヤビさん、お気を悪くするような事を言いますが、いくら忍者でも、こいつの前では小細工は通用しません。こいつが出て来る時は、目的物の回収のために町全体を破壊してしまってもおかしくありません」
アスカの言葉を受け、再びミヤビは目を閉じ、考え込む。
やがて、
「分かった。お主らの言う通りにしよう。こちらとて、我が街に伝わる秘宝を部外の者にみすみす渡す気は無い」
そう言って、ミヤビはコタロウの方を向く。
「コタロウ、明日の朝一番で町全体にこの事を伝え、腕の立つ者を集めよ。アヤメはコタロウを手伝え。四日後の十五時までに、各自、万全な状態で敵襲に備え、迎え撃つのだ」
「了解しました」
コタロウとアヤメは同時に頷く。
「さて、『ブロック』の使いの者よ。私はまだお主らの名を聞いておらぬ。申せ」
「あ、はい。僕はレオといいます。ライオの息子です」
「私はアスカ、こいつの幼馴染です」
二人が名乗ると、ミヤビは小さく口元を緩める。
「レオにアスカか、いい名だ。お主らは、ポケモントレーナーだな?」
ミヤビの問いに、二人は頷く。
すると、ミヤビはニヤリと笑い、
「よし、明日、ジムに来い」
「ミヤビ様! ジム戦なら私が引き受けます。ミヤビ様は最近ポケモンをお使いになっておりませんでしたし、ここは私が」
コタロウが声を上げるが、ミヤビはそれを制する。
「お主の言う通り、調子を取り戻さねばならぬ。それには実戦が一番だ。いつもはコタロウに任せているが、今回はこの私が相手をしよう」