二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百十三話 黒影 ( No.236 )
日時: 2014/03/17 09:15
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: p3cEqORI)

その後、レオとアスカはミヤビやコタロウから様々な話を聞いた。
ミヤビやアヤメは、かつて大きな勢力を誇った忍びの一族の血を受け継いでおり、彼らの先祖は森から別の森へと移り住んでいたという。
その後、科学技術が発達し、彼らの文化が一部の集団に否定され始めると、彼らは山奥へと身を隠し、同じような忍びの子孫を集め、さらに小さい村を装い、隠れ里を作った。
そして出来たのが、このヨザクラタウンだという。
この地に住む者は皆、忍びとしての修行を重ねており、普段は普通の生活をしているが、いざとなれば忍者服の姿となり、ミヤビの元へと結集する。
町の外の者で、ヨザクラタウンの全貌を知っている者は殆どいない。
ちなみに、彼らは生涯をこの地で過ごすが、全く外に出ないわけではなく、普通の服装で他の町に買い物にいったりすることもあるらしい。
ミヤビは、N・E団襲撃まで、屋敷の空いている部屋をレオとアスカに貸すと約束した。
そこそこの広さはあり、布団の寝心地も悪くない。
また、アヤメはレオたちと同い年で、すぐに仲良くなった。
彼女曰く、外の町の者をこれだけ丁寧にもてなすのは彼女の知る限りこれが初めてらしい。
「父上は人を見る目は一流だからね。父上に受け入れられた貴方たちなら、安心して話せるわ」
アヤメはそう言ってくれた。
ジム戦の順番は、じゃんけんの結果、レオが先になった。



翌日。
早速、レオはジムを訪れていた。
本来ならばカラクリの屋敷を攻略していかなければならないのだが、今回はミヤビの調整も兼ねているため、すぐにジム戦が出来るようにコタロウが事前に屋敷の進み方を教えてくれた。
最後の扉に辿り着き、レオは扉を開く。
「お願いします!」
最後の部屋に入ると、そこはバトルフィールド。
ここのバトルフィールドには木や草が生えている他、部屋全体がやや薄暗い。
「待っておったぞ」
フィールドの向こう側には、ミヤビが腕を組んで立ち、鋭い眼光でレオを見据えている。
「早速始めるとしよう。私が操るのは、変幻自在の妖しの技を使いこなす、毒タイプのポケモンだ」
それと、とミヤビは続け、
「忍びは突然の任務にも備え、常に全力を出せるようにするもの。調整を兼ねたバトルとは言え、手加減などしない方がよいぞ」
「当然じゃないですか。どんな時でも、僕は本気ですよ」
「そうでなくてはな。では、始めようか」
その言葉を引き金に、二人は同時にボールを取り出す。
「頼むぜ、トゲキッス!」
「出でよ、ゲンガー!」
レオの初手はトゲキッス。
対するミヤビの一番手は、一頭身の影の体を持つポケモン。
頭には二本の角、背中は無数の棘が生えたような形をしており、目は大きく、赤い。足があるが宙に浮いている。
シャドーポケモンのゲンガー。ゴースト・毒タイプ。
「ゲンガーか。ウチセトで見たことはあるけど、戦うのは初めてだな」
「まずは私から行かせてもらおう。ゲンガー、鬼火だ」
ゲンガーの周囲に、不気味な青い炎が揺らめく。
「サイコキネシス!」
ゲンガーが強い念力を操り、火の玉を操作する。
全ての鬼火を一点に集め、大きな火の玉に変え、念力を操って撃ち出す。
「トゲキッス、躱してエアスラッシュ!」
トゲキッスは羽ばたき、上昇するが、念力により操られた火の玉はそれに合わせて軌道を変えてくる。
トゲキッスが空気の刃を放つが、火の玉を相殺するに止まる。
「トゲキッス、サイコバーン!」
トゲキッスは念力を体内に溜め込み、爆発させて衝撃波を起こす。
「ゲンガー、シャドーボール!」
ゲンガーは影の弾を作り上げ、それを投げつけ、衝撃波を相殺する。
「次だ! トゲキッス、エアスラッシュ!」
トゲキッスは連続で羽ばたき、次々と空気の刃を放っていく。
無数の刃が、様々に軌道をかえてゲンガーを狙う。
「ゲンガー、ヘドロ爆弾!」
対して、ゲンガーはヘドロの爆弾をゲンガーの真下の床へ投げつける。
着弾すると爆弾は破裂し、煙幕のように周囲に爆風と煙を放ち、空気の刃を防ぐ。
「やっぱり戦い方も忍者みたいだな……」
慣れない戦法に苦戦しそうだと考えるレオだが、とりあえずゲンガーの技は全て見ることが出来た。
少なくとも、トゲキッスに致命傷を与える技は持っていない。
こちらは波動弾が使えないが、向こうもシャドーボールが使えない。
「トゲキッス、大文字!」
大きく息を吸い、トゲキッスは大の字の形に燃え盛る炎を放つ。
「ゲンガー、鬼火からサイコキネシス!」
ゲンガーは鬼火を周囲に浮かべ、念力で操り、青い炎の壁を作る。
大文字を正面から受け止め、爆発と共に黒煙が巻き起こる。
「トゲキッス、エアスラッシュ!」
トゲキッスが連続で羽ばたき、無数の空気の刃を飛ばす。
黒い煙ごと空気を貫き、刃がゲンガーに迫る。
だが。

煙が晴れたその時、ゲンガーはどこにもいなかった。

「は……?」
上を取られている訳でもない。木の後ろに隠れてもいない。
フィールド全体を見渡したが、どこにもいないのだ。
(嘘だろ、いくら忍者のポケモンだからって、雲隠れする能力まで身につけるのは流石に無理があるだろ……待てよ)
そこでレオは気付く。
(ゲンガーは毒とゴーストタイプ! まさか!)
「トゲキッス、飛び上がれ!」
「ゲンガー、ヘドロ爆弾!」
レオとミヤビが次の指示を出したのはほぼ同時だった。
トゲキッスが真上に飛び上がった刹那、フィールドに立つ木の中からゲンガーが現れ、ヘドロの塊を放った。
「やっぱりか。ゴーストタイプのゲンガーなら、壁や木の幹をすり抜けて移動することくらい出来ますもんね」
「よく気づいたな、その通りだ。この程度は造作もない」
忍者らしい戦い方だ、とレオは思う。
影に潜み、相手の予想もしないところから奇襲する。常人にとっては奇抜でも、忍びの者にとっては常套手段だろう。
だが、対抗策がないわけではない。
レオの手持ちには、このような相手に対して力を発揮出来るポケモンがいる。
「トゲキッス、一旦戻ってくれ」
バトルは始まったばかりだが、レオは一度トゲキッスを戻す。
「頼んだせ、レントラー!」
代わってレオが出したポケモンはレントラー。
「この場面でレントラーか。となれば、お主の考えは予想出来る。レントラーの透視能力を使い、ゲンガーが隠れた場所を見つけ出そうというのだろう」
「流石ジムリーダーですね。その通りですよ。物陰に隠れても壁の奥に潜んでも、こいつには通用しませんよ」
「ゲンガーを侮るな。この能力がゲンガーの全てではない。これが使えなくとも、十分に戦える力を持っている」
「ジムリーダーのポケモンなんですから、それくらいは分かりますよ」
「ふむ。では、ゲンガー、シャドーボール!」
ゲンガーは構えた手に影を集める。
それを黒い弾に変え、レントラーへ投げつける。
「レントラー、氷の牙!」
対して、レントラーは牙に長く鋭い氷を纏わせ、影の弾に突き刺し、破壊する。
「ゲンガー、ヘドロ爆弾!」
ゲンガーは上昇し、ヘドロの爆弾を撒き散らす。
次々と床に着弾し、無数の煙幕が上がる。
「レントラー、来るぞ! ギガスパーク!」
レントラーの瞳が金色の光を放つ。
煙に紛れるゲンガーの場所を確実に捉え、バチバチと破裂音を立てる大きな電撃の砲弾を撃ち出す。
「ゲンガー、躱してシャドーボール!」
電撃の砲弾が煙幕を薙ぎ払うが、既にゲンガーはそこにはいない。
無数の煙幕を次々と不規則に、かつ素早く潜り抜け、黒い影が静かにレントラーに迫り来る。
「くそっ、レントラーの透視が追いつかないのかよ! だったら、怒りの炎!」
レントラーは周囲に荒れ狂う怒りの業火を放つ。
炎が辺りを照らし、ゲンガーの位置を映し出し、さらにその体をじりじりと焼いていく。
「ッ、ゲンガー、退け」
ゲンガーは素早く床の下に消え、ミヤビの元へ戻ってくるが、その体の一部が焦げている。
顔をしかめ、煤を払うと、ゲンガーは再び裂けた口を釣り上げて笑う。
「お主、なかなかやりおるな。ポケモンのみならず、お主自身も優れたトレーナーであるな」
「ありがとうございます。これでも一応、ウチセト地方のポケモンリーグで三位になってます」
レオの言葉を聞き、ミヤビは目を閉じて頷く。
「だが、変幻自在、怪しの技を使いこなす忍びと戦うのは初めてであろう。少しでも気を抜けば、次の瞬間には忍びは後ろに迫っておる。常に警戒せよ」
ミヤビの瞳が見開かれ、鋭い眼光がレオを捉える。

『ヨザクラタウンジム ジムリーダー ミヤビ  背中刺す毒牙』