二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百十六話 黒刃 ( No.246 )
- 日時: 2014/04/29 19:16
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
「続けようか。ドクロッグ、マグナムパンチ!」
ドクロッグが大きく跳躍し、アブソルに狙いを定め、ミサイルの如き勢いで拳を突き出す。
「アブソル、躱してサイコカッター!」
アブソルは素早く後ろに下がって拳を躱すと、念力を込めた鎌を振るい、刃を撃ち出す。
「ドクロッグ、悪の波動!」
だがドクロッグは素早く左手を翳し、悪意に満ちた波動を放って念力を防ぐと、
「毒突きだ!」
右拳の毒針から猛毒を分泌させ、アブソルへ突き刺す。
「くっ、アブソル、辻斬り!」
咄嗟にアブソルは鎌を振るい、ドクロッグの毒針を弾く。
だがドクロッグの体勢は崩れない。
すかさず左手の毒針がアブソルを襲い、針がアブソルに突き刺さる。
「ッ、アブソル、火炎放射!」
何とか体勢を保ち、アブソルは灼熱の炎を放つ。
「ドクロッグ、回避!」
ドクロッグは素早く飛び上がり、炎を躱そうとするが、完全には躱し切れず、ドクロッグの足が炎に焼かれる。
「フィールドから木が無くなったのはやはり痛いな。草木が残っておれば、身代わりを使ってより撹乱することも出来たのだがな」
だが草木が無くなったからと言って、ドクロッグが不利になる訳ではない。
寧ろ流れはドクロッグの方にある。
「アブソル、辻斬り!」
一瞬でアブソルはドクロッグとの距離を詰める。
そのまますれ違いざまに鎌を振るい、ドクロッグを切り裂く。
「続けてサイコカッター!」
アブソルが振り向き、鎌に念力を纏わせ、直接ドクロッグを切り裂く。
「ドクロッグ、身代わり!」
ドクロッグは瞬時に身代わりを発生させる。
「ドクロッグ、マグナムパンチ!」
「同じ手は喰らいませんよ! アブソル!」
ギリギリのところでアブソルは攻撃を止める。
後ろから出て来たドクロッグが攻撃を仕掛けるより先に、アブソルの鎌がドクロッグを切り裂く。
だが。
アブソルが切り裂いた後ろのドクロッグは、風船のように破裂し、消えてしまった。
「……! しまッ……!」
気付いた時にはもう遅い。
本物のドクロッグのミサイルの如き拳の一撃がまともにアブソルを捉え、吹き飛ばす。
「恐らく、先ほどの身代わりで警戒していたのだろうが、その逆手を取らせてもらったぞ。早々の思い込みは禁物、あらゆる可能性を想定せよ」
つまり、レオはミヤビの心理作戦にまんまと引っ掛かったということだ。
身代わりを警戒してはいたが、まさか本体をそのままに残すとは全く予想していなかった。
そして、効果抜群の大技を二発も受ければ、流石のアブソルでも致命傷は避けられない。
「仕留めよ。ドクロッグ、毒突きだ」
それでも何とか立ち上がろうとするアブソルに、ドクロッグが静かに迫る。
両手の毒針から猛毒を分泌させ、アブソルへと突き刺し、確実にとどめを刺す。
その瞬間、ドクロッグが吹き飛ばされた。
「……何だ」
冷静沈着なミヤビの表情に、僅かに驚きが現れる。
その瞳がじっと見据えるアブソルの体は、青く光り輝いていた。
「これは……進化の光!」
光り輝くアブソルのシルエットが、その形を変えていく。
進化が終わり、光が消えていくと、そこにいたのはアブソルとは違う姿のポケモン。
体格はアブソルとそれほど変わらないが、額の黒鎌はより鋭く、さらに二本に増えている。
悪魔の翼のような黒い尾も二本になり、さらに踵にも黒い刃が生えている。
より凶悪そうな風貌になった、そのポケモンの名前はディザソル。
分類は災害ポケモン、悪タイプ。
「ほほう、ここに来て進化か。これは面白い戦いになって来たようだ」
「そうですね。進化したこいつの力を、見せてやりますよ」
レオは図鑑を取り出し、ディザソルの技を確認する。
身代わりは消えてしまったようだが、代わりに強力な技を覚えたようだ。
「それでは、見せてもらおう。ドクロッグ、マグナムパンチ!」
ドクロッグが拳を構える。
ミサイルの如き勢いで、ディザソルに殴りかかろうとするが、
「ディザソル、神速!」
それよりも速い速度でディザソルが動く。
ほんの一瞬でドクロッグとの距離を詰め、そのままドクロッグを弾き飛ばす。
「サイコカッター!」
さらにディザソルは念力を込めた黒鎌を振り抜く。
今度こそ綺麗に命中し、ドクロッグはそのまま地面に落ち、戦闘不能となる。
「進化を遂げただけでここまで能力が上がるとは、流石だな。ドクロッグ、戻って休め」
ディザソルを称賛し、ミヤビはドクロッグをボールへと戻す。
「よもやこの私が先に最後の一体を出すことになろうとは。だが、私の切り札は強いぞ。油断するな、警戒せよ、常に気を配れ」
ミヤビの口元に、僅かに笑みが浮かぶ。
そして、ミヤビが最後のポケモンを繰り出す。
「出でよ、クロバット!」
ミヤビの最後のポケモンは、紫の蝙蝠のようなポケモン。
瞳は赤く、四枚の翼を持ち、小さい後ろ足がある。
クロバット、蝙蝠ポケモン。毒、飛行タイプ。
だが、普通のサイズより少し小さい。
「こいつが最後のポケモンか……ディザソル、こいつはミヤビさんの切り札だ。相当な曲者だと思うけど、気をつけろよ」
レオの言葉に、ディザソルは頷き、クロバットを見据える。
「行くぞ。クロバット、シザークロス!」
ミヤビが指示をした、刹那だった。
クロバットが、消えた。
「……ッ!?」
慌ててクロバットを探すレオだが、その必要は無かった。
羽音すら立てず、クロバットは一瞬でディザソルの真ん前まで忍び寄り、翼を振るってディザソルを切り裂いたのだ。
「クロスポイズン!」
さらにクロバットは目にも留まらぬ速度でディザソルの後ろへ回り込み、毒を帯びた翼を交差させてディザソルを切り裂く。
しかも二発目は的確に急所を捉えた一撃。
反撃する暇もなく、ディザソルは戦闘不能となってしまった。
「……ありがとう、ディザソル。戻って休んでてくれ」
レオはディザソルを労い、ボールへと戻す。
(速い……速すぎる! 流石にシュウヤさんのテッカニン程ではないけど、このクロバット、相当素早いぞ!)
このクロバットは、レオがホクリクで戦ったポケモンの中の誰よりも素早い。
しかもそれだけではない。
ウチセトリーグの準決勝で戦った相手、シュウヤのテッカニンと違い、このクロバットは一切羽ばたく音を立てないのだ。
どこにいるのか、全く気配を掴めない。
「これが私の切り札、クロバット。何らかの搦め手を使いこなす今までの者とは違い、クロバットには搦め手など必要ない。普通に飛ぶだけでも相手は戸惑い、普通に攻撃を仕掛けるだけでも相手はこちらの動きに対処出来ぬ。これこそ忍びの究極系よ」
ミヤビの言うことは間違っていない。
先程の動きでは、クロバットは全く気配を感じさせなかった。
だが。
だからと言って、それは諦める理由にはならない。
「確かに、そのクロバットは僕が今まで見た中で一番隙の無いポケモンです。たくさんの忍び達を束ねる、忍びの長の切り札だけはある」
でも、とレオは続け、
「だからこそ、そのクロバットを、僕が越えて見せます!」
そして、レオは最後のボールを取り出す。
「頼んだぜ、ポッチャマ!」
レオの最後のポケモンはやはりポッチャマ。
進化せずとも、レオの一番のポケモンだ。
そして、そんなレオとポッチャマを見て、ミヤビは頷く。
「よかろう。全力を以って、かかってくるがよい」
ミヤビの言葉に応じるように、クロバットが瞳を動かし、ポッチャマを見据える。
ポッチャマも一歩踏み出し、クロバットに対峙する。