二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百十七話 宵闇の翼 ( No.247 )
日時: 2014/05/04 13:40
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: p3cEqORI)

「ポッチャマ、冷凍ビーム!」
先手を取ったのはポッチャマ。
冷気を込めた光線を、クロバットへと撃ち出す。
「クロバット、躱せ」
しかし、やはりクロバットは桁違いのスピードで冷気の光線を躱し、一気にポッチャマとの距離を詰める。
「クロバット、クロスポイズン!」
「させるか! ポッチャマ、ドリル嘴!」
毒を帯びた翼を交差させ、ポッチャマを切り裂こうとするクロバットだが、ポッチャマの高速回転によって弾かれる。
さらにポッチャマはそのままクロバットに狙いを定めて跳び、嘴でクロバットを突き刺す。
「戦法は悪くないな。だが遅い。クロバット、シザークロス!」
一瞬の隙を突き、クロバットはポッチャマの後ろまで瞬時に移動する。
そのまま翼を振るい、今度こそポッチャマを切り裂く。
「ポッチャマ、スプラッシュ!」
だがポッチャマもただではやられない。
シザークロスを耐え切り、体に水を纏って突撃を仕掛け、クロバットを吹っ飛ばす。
「ほう。シザークロスをまともに受けても、すぐにそこまで動けるか」
ミヤビが感心したように言う。
「僕のエースですからね、今までとは一味違いますよ! ポッチャマ、冷凍ビーム!」
吹っ飛ぶクロバットへ、ポッチャマはさらに冷気を込めた光線を放つが、
「クロバット、躱してエアスラッシュ!」
途中で体勢を立て直したクロバットに躱され、さらにクロバットは素早く羽ばたき、空気の刃を飛ばす。
「ポッチャマ、水の波動!」
ポッチャマは水を凝縮した波動の弾を放ち、空気の刃を相殺、続けて、
「ドリル嘴!」
嘴を伸ばし、ドリルのように回転させて地を蹴り、クロバットへと突貫する。
「クロバット、クロスポイズン!」
「ポッチャマ、冷凍ビーム!」
クロバットがポッチャマの後ろへと回り込み、毒を帯びた翼を振るう。
だが、それを予測していたポッチャマはドリル嘴の勢いを抑え、後ろへ振り向き、冷気の光線を放つ。
冷凍ビームがクロバットを捉え、吹き飛ばす。
「流石だな、このクロバットの速度を上回るか」
効果抜群の一撃、ダメージは大きいが、しかし、それだけではクロバットはやられない。
「私は先ほど、クロバットに搦め手は必要無いと言ったな」
無表情でミヤビは語る。
「前言撤回する。お主ほどのトレーナーに、搦め手無しで戦うのは、少々無理があったようだ」
それはレオへの賛辞の言葉。レオとポッチャマの力を讃える言葉。
それと同時に。
レオとポッチャマに、絶望を与える言葉。

「クロバット、黒い霧!」

クロバットが、漆黒の霧を起こす。
ただでさえ薄暗いフィールドが、闇の霧に覆われ、完全に視界が奪われてしまう。
「ッ……嘘だろ……?」
「いいや、現実だ。一応言っておくが、クロバットは超音波によって闇の中でも敵や障害物の位置を完全に把握する。姿の見えぬ闇の中の襲撃に、お主は対応出来るかな」
もはやクロバットの姿をその目で捉えることすら出来ない。
羽音もせず、気配すら感じられない。
(最後は煙幕か……忍者らしいといえばそうだけど、この状況、やばいな……)
必死に打開策を探すレオだが、
「クロバット、エアスラッシュ!」
ミヤビはその時間を与えてはくれない。
漆黒の霧を貫き、空気の刃が襲い掛かる。
「ポッチャマ、水の波動!」
水を凝縮した波動を撃ち出し、空気の刃を相殺する。
切り裂かれた闇の向こうに一瞬、クロバットの姿が写るが、すぐに霧が立ち込め、見失う。
「くそっ、どうにかこの霧を払うぞ! ポッチャマ、ドリル嘴!」
ポッチャマは嘴を伸ばし、ドリルのように回転する。
ポッチャマの周囲の霧は一時的に晴れるが、フィールドの霧全体を晴らすことは出来ない。
「それならポッチャマ、跳び上がれ!」
ドリル嘴を真上に放ち、ポッチャマは大きく跳ぶ。
天井までは霧は立ち込めておらず、フィールド全体が見渡せる。
が、
「クロバット、シザークロス!」
霧の中から姿を現したポッチャマは格好の的。
闇の中からクロバットが現れ、ポッチャマを切り裂く。
「くそっ、ポッチャマ、冷凍ビーム!」
空中で体勢を立て直し、ポッチャマは冷気の光線を放つが、既にクロバットは霧の中に隠れてしまっている。
ポッチャマも着地し、霧の中に戻って来る。
「無駄だ。今のお主とポッチャマでは、私のクロバットを捉えることは出来ぬ。クロバット、クロスポイズン!」
闇の中でミヤビの声が響く。
次の瞬間、ポッチャマが毒の翼に切り裂かれる。
「シザークロス!」
「ドリル嘴だ!」
再び静かに襲い来るクロバット。
対して、嘴を伸ばし、ポッチャマは高速回転する。
周りの霧が晴れて、一瞬クロバットの姿が写る。
さらに、翼の一撃は、ポッチャマの回転によって弾かれる。
「今だ、ポッチャマ、スプラッシュ!」
「甘い。クロバット、シザークロス!」
水を纏い、ポッチャマはクロバットへと突っ込むが、クロバットはそれを躱し、翼を交差させて振り抜き、今度こそポッチャマを切り裂いた。
(くっそ、どうしたらいいんだよ……!)
最早打つ手は無い。今のポッチャマでは、この状況を打破する手は——
(ん……待てよ。霧……翼……!)
一つだけある。
ポッチャマが、クロバットの攻撃をどれだけ耐えられるかに懸かってくるが、勝機はこれしかない。
「ポッチャマ、後もう少しだけ、クロバットの攻撃を耐えてくれ」
小さく、ミヤビには聞こえないように、レオはポッチャマに呟く。
ポッチャマは振り向き、小さく頷いた。
「さて、見せてもらおう。ここから反撃の策を思いつくのか、それとも、漆黒の闇の中に沈むのか。クロバット、クロスポイズン!」
クロバットが静かに、かつ高速でポッチャマに迫る。
毒を帯びた翼が、ポッチャマを切り裂く。
一拍置いて再び、さらにもう一発。ポッチャマの体は、毒に切り刻まれていく。
しかし、レオはポッチャマを見ていなかった。
レオが見据えるのは、漆黒の霧。
(確かに、一切羽音を立てないクロバットの飛行能力は脅威だ。ましてこの霧の中じゃ、気配なんて掴めるはずもない)
ポッチャマの体がぐらつく。
(だけどミヤビさん、貴方は二つ、ミスを犯している。一つは、この黒い霧を使ったこと)
毒を帯びた翼がポッチャマを切り裂く。
じわりじわりと、毒がポッチャマの体力を蝕む。
(もう一つは、それによってクロバットの位置が分かるということに、気づいていないことだ)
先に、そのことにレオは気づいた。
クロバットが、とどめを刺さんと迫る。
漆黒の霧が、蠢く。

「そこだ! ポッチャマ、冷凍ビーム!」

ポッチャマがカッと目を見開く。
霧の動いた場所——クロバットの羽ばたきによって、霧が払われた場所へ、蒼白い光が一閃する。
「……ッ! ば……馬鹿な」
起死回生の反撃。
クロバットの素早さを持ってしても反応することが出来ず、クロバットは冷気をまともに浴びてしまう。
「……そうか。お主、クロバットの羽ばたきによる、霧の動きを見ていたのか」
「ええ、その通りですよ」
しかし、ミヤビは気づくのが遅すぎた。
冷凍ビームをまともに喰らい、クロバットの足の翼二枚が凍りついてしまった。
そして。
ポッチャマが、蒼いオーラを身に纏う。
極限まで追い詰められたことで、ポッチャマの特性、激流が発動したのだ。
そして、最高のタイミングで、黒い霧の効果が切れ、霧が晴れる。
「……まだ終わってはいない。多少スピードは落ちるが、私のクロバットはまだ止まらんぞ。クロバット、クロスポイズン!」
両足の翼が使えなくなったクロバットだが、それでもポッチャマとの距離を一気に詰め、毒を帯びた翼を振るう。
スピードは落ちているが、それでも相当な素早さ。
「ポッチャマ、ドリル嘴!」
対して、ポッチャマは嘴を伸ばし高速回転する。
「それで弾くつもりだろうが、その手には乗らぬ。クロバット、翼を叩きつけろ!」
毒を帯びた翼を、クロバットは回転の中心に向けて上から振り下ろす。
「ポッチャマ、スプラッシュ!」
しかし、ポッチャマは回転の勢いをそのままに、体に水を纏う。
凄まじい量の水飛沫が飛び散り、クロバットの動きを止める。
「そこだ! ポッチャマ、突っ込め!」
水をまとったままポッチャマはクロバットへ激突。
特性の激流も重なり、渾身の一撃を喰らったクロバットは大きく吹っ飛ばされる。
「とどめだ! ポッチャマ、冷凍ビーム!」
最後の力を振り絞り、ポッチャマは冷気を込めた光線を放つ。
流石のクロバットでも、一対の翼を封じられた上、体勢を大きく崩されたこの状態で、冷凍ビームを躱すことは出来なかった。
「……ここまでか」
ミヤビが呟く。
全ての翼を凍りつかせ、クロバットは地面に落ち、戦闘不能となった。



「変幻自在、怪しの技を使いこなす忍びの戦いを、お主は打ち破った。見事であった」
「ミヤビさんのポケモンも、強敵揃いでしたよ。正直、今までで一番戦いづらかったです。流石は忍びの長ですね」
「それは光栄だ。久々にここまで熱い戦いが出来た、礼を言うぞ」
そして、ミヤビは玉手箱のような箱を取り出す。
その中には、紫色の手裏剣のような形のバッジ。
「ヨザクラシティのジムを踏破した証、ゲンマバッジ。受け取るがよい」
「はい、ありがとうございます!」
これでレオのバッジは七つ。ホクリク地方ポケモンリーグまで、あと一つだ。
しかし、喜んでばかりはいられない。
これから攻めてくるN・E団から、何としてもこの町を守り抜かなければならない。