二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百十八話 破襲 ( No.248 )
- 日時: 2014/05/06 14:42
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: p3cEqORI)
レオがミヤビに勝利した次の日に、アスカもヨザクラジムに挑戦した。
最後にはアスカの切り札、モウカザルが進化したポケモン、ゴウカザルと、ミヤビのクロバットとの勝負になり、ギリギリのところでアスカが勝ったらしい。
そして、アスカがジム戦を終えた後は、いよいよ本格的に作戦会議が始まった。
町に住む、戦闘経験のある忍びの者たちが皆ミヤビの屋敷に集まった。
「今回の敵の目的は、我が一族が代々守り続けてきた、三つの宝玉だ。先祖、そして子孫のために、何としてでもこれだけは守り通さねばならぬ」
そして、ミヤビはレオやアスカを含む、この場にいる全員にその宝玉を見せた。
一つは炎のように紅に光る赤の宝玉、もう一つは海のように蒼い光を反射する青の宝玉。そして最後には、若葉のように美しい翠の光を放つ緑色の宝玉だ。
「これを、この屋敷の最奥に置く。何者かがその部屋に入れば、その時点で罠が発動、それと同時に、瞬時に我々全員に伝わる。奴らが罠に掛かっているその隙に、奴らを一網打尽に捕らえるのだ」
これが、ミヤビが伝えた今回の作戦。
さらに、宝玉の部屋には十人の忍びが控え、罠を掻い潜って来た者にとどめを刺す。
「奴らが攻めてくるのは二日後。今日と明日は各自準備を整え、明後日は決戦だ」
そして決戦の日。
レオとアスカ、コタロウやアヤメを始め、ヨザクラの腕の立つ者たちが、屋敷に全員集結した。
その中央に座るは、ヨザクラシティ最強の忍び、ミヤビ。
「父上、町の他の者たちは、全員ポケモンセンターに避難させました」
アヤメが進み出る。
「うむ。宝玉の方は」
「この屋敷の最奥に設置致しました。全ての罠も正常に動くことを確認済みです」
「そうか。ご苦労であった」
部屋全体に、張り詰めた緊張感がある。
しばらく、無言の時間が続くが、
「そろそろか」
ミヤビが顔を上げ、立ち上がる。
レオがライブキャスターで時間を確認する。
トパズが指定した時間は十五時。現在時刻は十四時五十分。
宝玉の護衛を十人ほど屋敷の中に残し、ミヤビを中心とする忍び達は外へ出る。
「行け」
ミヤビが短く、そう告げる。
次の瞬間、忍び達は一斉に消えた。
木の影や建物の影に隠れ、敵襲に備えているのだろう。
ミヤビの元に残っているのは、レオ、アスカ、アヤメ、コタロウ。そして十人ほどの忍びの者たち。
レオのライブキャスターが、十五時を示す。
「時間です」
そう告げるレオ。
しかし、スティラタウンの時とは違い、全く動きが無い。
「……どういうこと?」
「臆病風に吹かれたか、それとも俺たちを欺くつもりか」
アスカやコタロウも、状況が変化しないことを疑問視している。
しかし。
敵は確かに、その場に迫って来ている。
「そこか!」
突如、ミヤビが手にしたクナイを投げる。
クナイは一本の木の中に吸い込まれるように飛び、木の幹に刺さる。
一瞬の沈黙。そして、
「流石は忍びの長。よく俺様がここにいることに気づいたな」
木の上から飛び降りて来たのは、黒い服を身に纏い、顔を真っ黒なフードで覆った男。腕には黒い蛇のような模様の刺青。
N・E団で最も危険な男、破天のメジスト。
僅かに見える左の頬から、血が垂れている。先ほどのクナイが顔を掠めたようだ。
「貴様がN・E団の刺客か」
ただならぬ威圧感を放つメジストに全く怯む様子も見せず、ミヤビが一歩進み出る。
「ご名答。俺様はN・E団七天将が一人、破天のメジスト。この町の宝玉を戴きに来たぜ」
「我々忍びの一族から、我らの一番の宝を奪えると思っているのか?」
「まあな。いくら俺と言えど、流石に一人じゃ無理だ。だが」
メジストがそう言った直後。
バキバキバリ! と、木の葉や枝を突き破って、巨大な飛行機、N・E空中輸送ドッグが姿を現す。
ドッグが開き、中からは十人ほどの人間が次々と飛び降りてくる。
「遅かったじゃねえか、ソライト。1分の遅刻だぜ」
『申し訳ない。何せ森に囲まれたこの地ですから、位置取りに少々手間取ってしまいまして。とりあえず、破天隊は全員お連れしましたよ』
飛行機の中から、マイクを通したソライトの声が聞こえる。
「まあいいや。サンキューな、ソライト。あとはこっちに任しとけ」
そしてメジストは再びミヤビ達に向き直る。
「さあ行くぜ、俺たち破天隊の力を見せてやろうじゃねえか」
その言葉に続き、メジストの後ろの者たちが立ち上がる。
全員が、何かしらで顔を覆っていた。
覆面、ジャック・オ・ランタン、ひょっとこ仮面、ピカチュウの顔……など、素顔を一切見えない十人ほどの集団が立ちはだかる。
「ミヤビさん、こいつは危険です」
レオがそっと進み出て、ミヤビに耳打ちする。
「こいつは破天将メジスト。戦った相手の戦意や精神力を吸い取る、天性の能力を持っています。強靭な精神力を持っていれば、大丈夫だと聞いていますが……」
「分かった」
小さく頷き、ミヤビはメジストに向き直る。
「メジストと言ったな。私が相手になってやろう」
ミヤビがそう言った途端に、メジストの口元が歪む。
「ギャヒャヒャヒャ! いいねえ、そういう好戦的なのは大好きだぜ! じゃあ早速始めるか! おいキキ、ケケ!」
本性を現したメジストが、狂ったように笑う。
「お前ら二人を中心に、こいつらを叩きのめせ。俺様はこの忍者長を相手取る。それじゃあ、行くぞ!」
「いや、戦場はここではない」
「なに?」
「戦場は……こっちだ!」
刹那、ミヤビは森の中に飛び込んだ。
「上等だ。森の中なら俺を惑わせると思ってんだろうが、そうは行かねえぞ。覚悟しろや! ギャヒャヒャヒャヒャ!」
メジストもミヤビを追い、森の中へ飛び込む。
残されたのは、破天隊の面子と、レオたち。
「さあ、残った貴方たちは私たちが始末してあげる」
「宝玉を渡すか、俺たちに潰されるか、どっちか選びな」
紙袋を被った女、キキと、白黒マスクを被った男、ケケが進み出る。
「ハッ、以前僕に負けた雑魚のくせに、口だけは上等だな」
レオがモンスターボールを取り出すが、その刹那だった。
ズガァァァン!! と。
屋敷の奥から、大きな爆発が起こる。
「!?」
慌てて屋敷を振り返るレオたち。
宝玉のある部屋付近から、煙が上がっている。
「……ッ! まさか、トパズか!」
すぐにレオは気づいた。
恐らく、N・E団はこの展開を予測していたのだろう。
メジストの能力を知る者、レオをヨザクラに行くように仕向け、彼の能力を知らせた上であえてメジストを送り込み、N・E団にとって一番厄介な存在であるミヤビを戦線から引き剥がす。
そこをトパズが単身で宝玉の部屋を直接襲撃し、宝玉を回収する。
「あぁーら、気づいたみたいね」
「どうせ罠でも張ってんだろうが、トパズ様の前では無意味だ。今頃宝玉は回収されてんじゃねえの?」
嘲笑うキキとケケ。
「……レオ、アスカ」
その時、コタロウが小さく二人に声を掛ける。
「お前たちは、屋敷に戻り、宝玉を守ってくれ。恐らく控えの者たちがトパズとやらと戦っているが、それだけでは不安だ。頼む」
「……分かりました」
「任せてください」
レオとアスカは一度だけ顔を見合わせ、頷き、屋敷へと走り出す。
「させねえぞ! 行きなドクケイル、ヘドロ爆弾!」
ケケがドクケイルを繰り出し、屋敷へと向かうレオとアスカにヘドロの塊を放とうとするが、
「そうは行かぬぞ! 出て来いスモーガス、火炎放射!」
コタロウが繰り出した、紫色の楕円形の体をし、上下に銀色の角を持つポケモン、スモーガスが灼熱の炎を噴き出し、ヘドロ爆弾を止める。
「貴様らの相手は俺たちだ。アヤメ、お前はそこの紙袋女を頼む」
「言われなくても、そのつもりですわ。出番よ、ゴルバット!」
アヤメの繰り出すポケモンは、大口を持つ青色の蝙蝠のようなポケモン、ゴルバット。
「あぁーら、私の相手はこんな子供? 悪いけど、お姉さん手加減はしないわよ?」
猫撫で声で挑発し、キキもモンスターボールを取り出す。
コタロウ、アヤメ率いる忍びの一族と、キキ、ケケ率いる破天隊が対峙する。