二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百十九話 強硬 ( No.251 )
- 日時: 2014/05/13 16:41
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Z6QTFmvl)
森に飛び込んだミヤビを、メジストが追う。
木々の上を自由自在に飛び回るミヤビに対し、メジストはそれに負けない速度で地上を駆け抜ける。
「お主、なかなかやりおるな」
森の奥深くまで来たミヤビは、動きを止めて木の枝の上に立ち、メジストにそう告げる。
「あぁ?」
「長年修行を積んだこの私の動きに、貴様如きの若造が着いて来れるとは思わなかったぞ」
「こっちもこっちで昔から苦労してんだよ。お前ら忍者とは別の裏社会で生きて来たからな」
メジストの言葉を聞き、なるほど、と頷くミヤビ。
「だが、この密林は言わば忍びの本拠地。着いて来ることは出来ても、ここでのバトルに、果たしてお主は対応出来るかな」
ミヤビの言葉は正論だった。
このような森の奥でこそ、忍びは最高の力を発揮する。
N・E団で最も危険な男と称されるメジストと言えど、能力が通じなければ普通の一人のポケモントレーナーに過ぎない。
だが。
「ああ、それなら心配いらねえ」
何気ない口調で、メジストは言う。
「お前に勝つか負けるかなんざ、こちとらどうでもいいんだよ」
ミヤビの瞳が動き、メジストを睨む。
「正直な話、俺たちにとって今回一番厄介なのはライオの息子でも忍びの軍勢でもねえ。忍びの長ミヤビ、お前だ。だからわざわざ俺様が出向き、俺様とお前が戦うように仕向けたんだよ」
あまりにもあっさりと。
メジストは、自分たちの策を語る。
「お前が森の中に飛び込んでくれたのは好都合だったぜ? どうにかしてお前を宝玉の近くから引き離そうと思ってたからな。礼を言うぜ、ギャヒャヒャ!」
そして、メジストはボールを取り出す。
「さあバトルを楽しもうぜ! 自分から仕掛けた戦い、まさか逃げ出したりしねえよなあ? ギャヒャヒャヒャ!」
対して、ミヤビもボールを取り出す。
「いいだろう。私がおらずとも、我が弟子たちが貴様の隊を打ち破る。相手になってやろう」
その言葉を引き金に、二人はポケモンを繰り出す。
「出でよ、カミギリー!」
「叩きのめせ、グライオン!」
屋敷の中を、レオとアスカは駆けて行く。
罠の避け方はミヤビから聞いているため、トパズ達が罠に引っかかっていれば、その隙に宝玉を別の場所に移したり、輝天隊を倒したりも出来るかもしれない。
そう思っていた二人だからこそ。
宝玉の部屋を開けたその瞬間、レオとアスカは戦慄を覚えることになる。
宝玉の部屋は、天井を貫かれ、ずたずたに破壊されていた。
綺麗な部屋は、見る影も無かった。
ボロボロになった床には、気を失ったミヤビの弟子たちが倒れていた。
そして、部屋の奥には、今まさに宝玉をその手に収めようとする二人の人影。
輝天将トパズと、直属護衛マツリ。
忍びの者たちが誇る無数の罠も、軍神の前では何の障害にもならなかったのだ。
「待て、トパズ!」
レオが叫び、部屋に飛び込む。それにアスカも続く。
「……あーあ、トパズ様、援軍が来ちゃいましたよ?」
「所詮子供二人だ。臆することなど無い」
対するトパズとマツリは、余裕の表情を崩さない。
「どうにか間に合った。トパズ、お前の思い通りにはさせないぞ」
「その宝玉は、絶対に渡さないわ」
ボールを取り出すレオとアスカを前に、トパズは表情を変えずに告げる。
「よかろう。我とマツリに勝つことが出来れば、この宝玉は諦めるとしよう」
その言葉と共に、トパズとマツリもボールを取り出した。
その時。
「レオ、輝天将は私に任せて」
アスカが、小さくレオに言う。
「私は、今までほとんどN・E団と関わってない。だから、私の情報はほとんどこいつらに伝わってないはず。あんたは以前、こいつと戦ってるんでしょ。それなら、手の内を知られていない私が戦った方がいい」
「……だけど」
「大丈夫よ。私だって、あんたに負けないくらいの腕はあるわ。任せときなさい」
「……分かった。じゃあ、頼んだぞ」
そして、二人はそれぞれの敵を見据える。
アスカの相手はトパズ。レオの相手はマツリ。
「マツリ。今回は大事な任務だ。あいつも使え。全力で敵を撃退せよ」
「了解です」
こちらも短く言葉を交し、戦闘態勢に入る。
「まずは小手調べと行こうか。征服せよ、エーフィ!」
「甘く見てると痛い目見るわよ。行って来なさい、マニューラ!」
トパズのエーフィに対し、アスカのポケモンは、黒いネコのようなポケモン。
非常に鋭い鉤爪を持ち、頭には赤い鳥の羽のような突起が扇状に広がっている。
マニューラ、鉤爪ポケモン。悪・氷タイプと、エーフィに対しては相性がいい。
「始めるぞ。エーフィ、ダイヤブラスト!」
エーフィの額の珠が青白く光る。
次の瞬間、エーフィを中心に青白い爆発が起こり、爆風が放たれる。
「マニューラ、躱して氷柱落とし!」
マニューラは持ち前の機動力で爆風を躱すと、エーフィの頭上に冷気を放ち、いくつもの大きな氷柱を落とす。
「エーフィ、サイコキネシス」
だが、エーフィは強い念力によって氷柱を操り、動きを全て止めると、逆に氷柱をマニューラへ一斉に撃ち出す。
「マニューラ、辻斬り!」
マニューラは床を駆け回り、氷柱を全て回避。
さらに一瞬の隙を突いて一気に距離を詰め、すれ違いざまにエーフィを切り裂く。
「逃がすな。エーフィ、ダイヤブラスト!」
体勢を崩しながらも、エーフィは爆発を起こし、煌めく爆風を放つ。
この至近距離からの反撃は躱し切れず、マニューラは吹っ飛ばされる。
「エーフィ、シグナルビーム!」
続けてエーフィは激しく何色にも発光する光線を撃ち出す。
「マニューラ、躱して!」
吹っ飛ぶマニューラだが、床に落ちる瞬間に素早く受け身を取り、大きく跳び上がって光線を躱す。
「エーフィ、逃がすな! もう一度だ!」
今度は軌道を変え、エーフィは執拗にマニューラを狙う。
「しつこい! マニューラ、サイコパンチ!」
マニューラは握り締めた拳に念力を纏わせ、拳型の念力を撃ち出し、シグナルビームを止める。
「見たところ物理技主体のようだな。マニューラというポケモンの能力を考えれば当然だが」
「それがどうしたのよ。マニューラ、辻斬り!」
爪を構えると、一気にエーフィに接近し、鉤爪を振りかざすが、
「こういうことだ。エーフィ、リフレクター!」
その直前、エーフィが自らの周囲に輝く壁のような結界を作り上げる。
マニューラの鉤爪がエーフィを切り裂くが、硬い壁に弾かれたような感覚が残る。
「リフレクター持ちか……これはマニューラじゃ厄介そうね」
そう呟くアスカだが、
(なーんてね。レオとかリョーマさんから、その手は聞いてるのよ)
表情には出さないものの、まだまだ余裕。
「でも攻めて行くしかないわね。マニューラ、氷柱落とし!」
マニューラはエーフィの頭上に冷気を放つ。
冷気は空中で凝固し、いくつもの氷柱となって降り注ぐ。
「無駄だ。エーフィ、サイコキネシス!」
再びエーフィは強い念力を操り、氷柱を全て止めてしまう。
しかし、
「本当にそうかしら?」
その氷柱の上から、マニューラが飛び降りて来る。
マニューラは悪タイプ。このような場面も、サイコキネシスを恐れず切り込んでいける。
自信たっぷりに、アスカは次の指示を出す。
「マニューラ、瓦割り!」
「テレジアから聞いてるぜ。随分面倒くさい戦法を使うそうじゃないか」
「あれ、知ってるんですか? やだなあー、私の作戦は対策しやすいから、手の内が知られてるとなるときついかもしれないですね」
こちらはレオ対マツリ。
「とりあえず始めましょうか? 行きますよ、オオペラー!」
「速攻で片を付けてやる。頼んだぜ、ディザソル!」
マツリのポケモンはオオペラー、レオのポケモンはディザソル。
「エスパータイプのオオペラーに対し、悪タイプのディザソル。確かにタイプ相性では貴方が有利ですけど、それだけでは私のオオペラーには勝てませんよ」
「へえ。じゃあ、見せてみろよ。ディザソル、辻斬り!」
ディザソルは一歩踏み出し、次の瞬間にはオオペラーのすぐ横まで距離を詰める。
そのまますれ違いざまに額の鎌を振るい、オオペラーを切り裂く。
「っ、オオペラー、ハイパーボイス!」
効果抜群の一撃に体勢を崩すオオペラーだが、それでもすぐに立て直し、大きく息を吸い込み、大音量の音波を放つ。
ディザソルは押し戻されるが、吹っ飛ばされずに耐え切る。
「フェザーダンス!」
オオペラーは舞うように羽ばたき、羽毛を飛ばす。
羽毛はディザソルに纏わりつき、ディザソルの攻撃力を下げようとするが、
「甘いぜ。ディザソル、神速!」
目にも留まらぬスピードで、ディザソルは渦巻く羽毛の中から脱出し、そのままオオペラーに突っ込む。
「オオペラー、もう一度ハイパーボイス!」
神速の体当たりを受けたオオペラーだが、大音量の音波を放って反撃し、今度はディザソルを吹っ飛ばす。
「怪しい光!」
オオペラーは怪しく光る光線を放ち、ディザソルの混乱を狙うが、
「ディザソル、神速!」
超速でディザソルはオオペラーの後ろまで回り込むと、
「辻斬り!」
額の鎌を振り下ろし、オオペラーを切り裂く。
「一つだけ言っておくよ」
得意げな表情を浮かべ、レオは告げる。
「その手の下手な小細工は、僕のディザソルには通用しない。その程度のポケモンじゃ、絶対に僕には勝てないぜ」
「言ってくれるじゃないですか。その余裕がどこまで続くのか、見ものですね」
マツリも余裕を崩さず、レオの挑発を受け流す。