二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百二十二話 狂人 ( No.256 )
- 日時: 2014/06/18 15:58
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
スモーガスの灼熱の業火に、眠り状態のドクケイルはなす術もなく焼かれていく。
炎が消えると、ドクケイルは戦闘不能になっていた。
「ちっ、ドクケイル、戻れ」
表情は見えないが少し悔しそうにドクケイルを戻し、ケケは次のボールを取り出す。
「それじゃあ、次はこいつだ! 行きな、プラネム!」
ケケの最後のポケモンはプラネム。ルナトーンが進化したのだ。
「さあ、まずはそいつを倒すぜ。プラネム、サイコバーン!」
プラネムが念力を体内に溜め込む。
次の瞬間、プラネムの目が発光すると共に周囲が爆発し、念力の衝撃波が撃ち出される。
「スモーガス、火炎放射!」
スモーガスは灼熱の業火を放つが、サイコバーンに打ち破られ、衝撃波の直撃を受けてしまう。
「ダイヤブラスト!」
さらにプラネムの周囲が再び爆発する。
青白く煌めく爆風が放たれ、スモーガスを襲う。
「ならばスモーガス、ダークリゾルブ!」
「させねえよ。プラネム、大地の怒り!」
スモーガスが闇のオーラを纏う。
だが、同時にスモーガスの足元の地面が割れ、大量の土砂や瓦礫が噴き出す。
無数の瓦礫が、大地ごとスモーガスを吹っ飛ばし、スモーガスを戦闘不能にする。
「スモーガス、よく頑張った。戻って休め」
スモーガスをボールに戻すと、コタロウは次のボールを取り出す。
「出て来い、アルデッパ!」
コタロウの最後のポケモンは、植物の怪物のようなポケモン。
水草のような腕や足には触手を備え、体長の二分の一ほどもある大きな口を持つ。
水草ポケモンのアルデッパ。分類通り、水・草タイプ。
「タイプ相性重視か。だがそれだけで勝てると思うなよ。自分で言うのも何だが、このプラネムは強いぜ」
「その言葉は真実であろう。先程の技の威力を見れば分かる。だが、それでもお前は俺には勝てん」
表情を変えず、コタロウは対峙している笑う仮面を見据える。
「アゲハント、サイコキネシス!」
「ゴルバット、守る!」
アゲハントとゴルバットの攻防が続くが、アゲハントは猛毒により徐々に体力を奪われている。
「この辺で決めるわよ! ゴルバット、ベノムショック!」
ゴルバットが特殊な毒液を放つ。
アゲハントに降りかかると、毒の傷口に染み込み、毒のダメージをさらに加速させる。
遂にアゲハントが力を毒に蝕まれ、地面に落ちる。
起き上がろうと体を震わせるが、そこで力尽き、戦闘不能となった。
「随分とえげつない戦法を使うのね。アゲハント、休んでなさい」
アゲハントを戻し、次のボールを取り出すキキ。
「二対二だからこれで最後か。行きなさい、プラネム!」
キキのポケモンは、ケケと同じくプラネム。ルナトーンとソルロックは、同じポケモンに進化するのだ。
「まずはその面倒なゴルバットを倒すわよ。プラネム、ストーンエッジ!」
プラネムの周囲に尖った岩が浮かぶ。
無数の岩が一斉に放たれ、ゴルバットに襲い掛かる。
「ゴルバット、守る!」
ゴルバットは守りの結界を作り上げ、岩を全て弾く。
「毒々!」
さらに猛毒の毒液を放つが、
「プラネム、怒りの炎!」
プラネムの放つ憤怒の業火が毒液を焼き払い、さらにゴルバットの体をも焦がしていく。
「隙あり。プラネム、サイコバレット!」
プラネムが念力を実体化させ、念力の銃弾をマシンガンのように撃ち出す。
体を焼かれ、体勢を崩していたゴルバットに念弾が直撃する。
翼を撃ち抜かれたゴルバットがバランスを失い、空中でふらつく。
「ストーンエッジ!」
そしてキキがその隙を逃すはずもない。
無数の尖った岩が放たれ、ゴルバットに突き刺さる。
効果抜群の攻撃を立て続けに喰らい、ゴルバットは戦闘不能になってしまう。
「ゴルバット、ありがとう。休んでてね」
ゴルバットをボールに戻し、アヤメはプラネムに視線を戻す。
(アゲハントの実力を見て油断してた。あのプラネム、なかなかの曲者ね)
気を取り直し、次のボールを取り出す。
「行くわよ、コモラゴン!」
アヤメの最後のポケモンは、いかにも凶暴そうなポケモンだ。
二足歩行の頑強な恐竜のような姿をし、紫の体の所々に黒い独特な模様を持つ。
コモラゴン、毒トカゲポケモン。毒・ドラゴンタイプ。
「あぁーら、見るからに強そうなのが出て来たわね。だけどプラネムとの相性は悪いんじゃない?」
「タイプ相性だけ見ればね。でもバトルはタイプ相性だけじゃ決まらない。常識でしょ?」
双方共に余裕を浮かべ、互いの敵を見据える。
ミヤビの言葉は真実だった。
メジストのグライオンは、カミギリーに一撃も与えられず、敗れてしまった。
「……」
グライオンをボールに戻し、メジストは俯く。
暫く何の動きも見せないメジスト。
しかし、
「ぅぅぅぅぅ……」
低い呻き声がミヤビの耳に入った。
音源は、メジストの被るフードの下。
よく見れば、メジストの肩が小刻みに震えている。
「ぅぅぅぅぅぅうううううあああああああぁぁぁぁぁァァァァァァ!!」
バッ! と顔を上げ、天を仰ぎ、メジストは咆哮する。
周囲に恐怖と戦慄をばら撒き、獣のように吼える。
そして。
「ぶっ殺す!!」
あらん限りの大声で叫び、メジストは自身の顔を覆うフードを掴み、そのまま思い切り捲り上げる。
短いぼさぼさの黒髪、右目についた大きな傷、我を忘れて暴走する猛獣のような眼光。
メジストが、その素顔を晒したのだ。
さらに。
一瞬遅れて、メジストの瞳から黒い光が放たれる。
同時に、メジストの顔に鋭い牙を持つ龍の顔面のような黒い光の模様が浮かび上がる。
破天のメジストが、覚醒を使用した。
「これでお前は終わりだ! 覚醒したこの俺様には絶対に勝てねえ! 俺様に本気を出させたことを、後悔するんだな! ギャヒャヒャヒャヒャ!」
喉が枯れるくらいの勢いで叫び続け、気が狂ったかのように高笑いするメジスト。
その姿は、百戦錬磨のミヤビにすら、恐怖を感じさせるほどだった。
壊れそうなほどに強くモンスターボールを握りしめ、メジストは叫ぶ。
「ひねり潰せ、オニゴーリ!」
メジストの二番手はオニゴーリ。メジストの覚醒の影響を受けてか、瞳には強い戦意が宿っている。
「いくらポケモンが変わろうと同じだ。貴様がカミギリーの動きを見切ることが出来なければ——」
「うっせえ黙れ! オニゴーリ、絶対零度!」
ミヤビの言葉を遮ってメジストが叫ぶ。
オニゴーリが氷点下の氷のエネルギーを溜め込み、氷の砲弾を撃ち出す。
一本の木の幹に着弾した、刹那だった。
瞬間冷凍されたかのように、周囲の森が一瞬で凍結した。
ポケモンだけでなく、トレーナーを巻き込んでもおかしくない一撃だった。
咄嗟にミヤビは離れることが出来たが、カミギリーに指示を出している余裕は無かった。
−273℃の絶対零度に封じ込まれ、カミギリーは一撃で戦闘不能となった。
「……ッ」
僅かにミヤビが驚愕の表情を見せる。
あらゆる状況を想定、把握し、常に適した反応が出来るミヤビにしては、極めて珍しいことである。
「カミギリー、お前は責務を果たした。休んでおれ」
カミギリーを戻し、ミヤビは辺りを見回す。
周囲の草木は完全に凍り付き、溶ける気配を見せない。気温も大きく下がっている。
瞬時に極寒の地獄に封じ込める、恐怖の絶対零度。しかし、対抗策が無いわけではない。
「出でよ、ドクロッグ!」
ミヤビの次なるポケモンはドクロッグ。氷の上でも、滑ることなく体勢を保つ。
「何が出て来ても同じだ! 極寒地獄に呑まれて消えろ! オニゴーリ、絶対零度!」
再びオニゴーリが氷のエネルギーを溜め込む。
力を最大まで溜めると、一撃必殺の氷の砲弾が撃ち出される。
しかし、
「ドクロッグ、身代わり!」
ドクロッグが自らの分身を作り出す。
再び周りが凍結されるが、極寒の地獄に呑まれたのはドクロッグの身代わりのみ。
「マグナムパンチ!」
直後、オニゴーリの背後からドクロッグが姿を現し、ミサイルの如き勢いで拳を放ち、オニゴーリを殴り飛ばす。
「ドクロッグ、毒突き!」
さらにドクロッグは毒を帯びた手の甲の針をオニゴーリに突き刺す。
反撃しようと振り向くオニゴーリだが、既にドクロッグは間合いを取って、ミヤビの元へと戻っている。
(これで一応絶対零度には対抗できる。だが、こちらの不利に変わりは無いな。この男、一見すれば我を忘れて暴走しているが、状況判断力は寧ろ上がっているようにも見える)
一度使った手は、次からはメジストも対策してくるだろう。ミヤビにとっては苦しい戦いになりそうだ。
「絶対零度を躱したくらいでいい気になるんじゃねえぜ? これが封じられたところで、バトルは振り出しに戻るだけだ。お前に勝ち目なんかないんだよぉ! ギャヒャヒャヒャヒャヒャ!」
狂人と化した破天将メジストの笑い声が、森の中に響き渡る。