二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百二十三話 余裕 ( No.257 )
- 日時: 2014/06/24 11:22
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
マニューラとガルラーダの、一進一退の攻防が繰り広げられている。
「マニューラ、氷柱落とし!」
「ガルラーダ、ブレイブバード!」
マニューラがガルラーダの頭上に冷気を放つが、ガルラーダは激しく燃えるオーラに身を包み、氷柱の雨を突っ切って突貫する。
氷柱はガルラーダに突き刺さるが、ガルラーダの全力の突撃をマニューラも躱せず、ブレイブバードの直撃を喰らって吹っ飛ばされる。
「ガルラーダ、襲撃!」
ブレイブバードの反動などものともせず、ガルラーダは更なる追撃を仕掛ける。
吹っ飛ぶマニューラとの距離を一気に詰め、翼を横薙ぎに振るう。
「くうっ、マニューラ、辻斬り!」
間一髪、マニューラが翼の一撃をギリギリの距離で躱す。
ガルラーダが急所、背中の殻を見せたその瞬間を逃さず、白く鋭い鉤爪を突き刺した。
「相打ち上等、ただでは負けんぞ! ガルラーダ、襲撃!」
殻を貫かれたガルラーダの動きは止まらなかった。
渾身の力を込めて、翼を振るい、マニューラを叩き飛ばす。
効果抜群の一撃を立て続けに喰らい、エーフィ戦でのダメージも重なり、マニューラは戦闘不能となるが、同時に力を使い果たしたガルラーダも床へと落下し、戦闘不能となった。
「マニューラ、ありがとう。二体も倒してくれたのは大きいわよ」
「ここまでだな。ガルラーダ、戻って休め」
お互いにポケモンを戻し、次のボールを取り出す。
「行って来なさい、チルタリス!」
「占領せよ、チリーン!」
トパズのチリーンに対し、アスカのポケモンは白い雲のような翼を持つ青い鳥ポケモン。
ハミングポケモンのチルタリス、ドラゴン・飛行タイプ。見た目からは想像し辛いが、龍の血を持つ歴としたドラゴンポケモンである。
「随分余裕な表情をしてるじゃない。だけどそろそろ危ないんじゃないかしら?」
「戦闘では弱みを見せた方が負ける。如何に自分が不利な状況であろうとも、怯まずに構えておかねばならんのだよ」
アスカの言う通り、トパズは全く焦りを見せない。
(この男、何か隠してる気がするのよね……。いくら何でも表情の変化がなさすぎる。戦闘のプロだからって、感情が無いはずがない)
とはいえ、そこばかりを警戒してバトルへの集中を切らす訳にはいかない。
「さあ行くわよ! チルタリス、大文字!」
チルタリスが大きく息を吸い、灼熱の火の玉を放つ。
火の玉は燃え盛る大の字に形を変え、チリーンに襲いかかる。
「チリーン、サイコキネシス!」
対してチリーンは強い念力を操り、念力を集中させ、炎にぶつける。
大文字の中心に穴が空き、チリーンに炎は当たらない。
「次だ。チリーン、ハイパーボイス!」
チリーンも負けじと大きく息を吸い、こちらは大音量の音波と共に衝撃波を撃ち出す。
「チルタリス、コットンガード!」
チルタリスの綿のような羽毛が膨れ上がり、チルタリスの体を包む。
衝撃波で綿は吹き飛ばされるが、チルタリスには傷一つ付いていない。
「チルタリス、龍の波動!」
さらにチルタリスは龍の力を一点に凝縮させ、波動の弾に変えて撃ち出す。
「チリーン、躱してシャドーボール!」
「させないわよ! チルタリス、冷凍ビーム!」
チリーンがふわりとした動きで波動を躱し、布のような下半身を振って影の弾を放とうとするが、それよりも早くチルタリスが冷気の光線を放つ。
「ッ、チリーン、神秘の守り!」
チリーンの体が光のベールに包まれる。
冷凍ビームはチリーンに直撃するが、体は全く凍りつかない。
「でもダメージがないわけじゃないはずよ。チルタリス、ガンガン行くわよ! 龍の波動!」
「果たしてそう上手くいくかな? チリーン、サイコキネシス!」
チルタリスが放つ龍の力を溜め込んだ波動の弾と、チリーンの操る強い念力の塊が激突する。
マツリとレオのバトルは、現状、ディザソルが圧倒している。
「フォリキー、電磁砲!」
「ディザソル、辻斬り!」
フォリキーが電気を集めた巨大な電撃の砲弾を放つが、既にディザソルはフォリキーのすぐ近くまで接近している。
額の対の黒鎌が、フォリキーを切り裂く。
「これさえ当てられればいいのですが……! フォリキー、鬼火!」
「当たらねえよ! ディザソル、神速!」
フォリキーが鬼火を放つよりも早く、ディザソルが超速で動き、フォリキーを吹っ飛ばす。
「辻斬りだ!」
容赦のない黒鎌の一撃がフォリキーを襲う。
双の刃が一瞬の連続攻撃を放ち、フォリキーにとどめを刺した。
「フォリキー、よく頑張りました。戻って休んでてください」
フォリキーをボールに戻し、最後のボールを取り出すマツリ。
「何だ、軍神の直属護衛だから戦闘慣れしてるかと思ったけど、大したことないな」
次第に余裕が出来、挑発を入れるレオ。
対して、マツリはまっすぐにレオを見つめる。
「一つ、言っておきます」
急に真剣な口調になり、マツリは続ける。
「正直なところ、私はバトルが好きではありません。例え敵でも、その人にとって大切なポケモンたちは、あまり傷つけたくはない」
ですから、とマツリは続け、
「降参したくなったらいつでも言ってください。そこでバトルは終わりです。今回の私たちの目的は宝玉の回収ですから、私たちが勝っても貴方たちに危害を加えるつもりはありません」
「何言ってんだ。この状態で降参しろなんて、よくそんな大口が叩けるよな」
「私はトパズ様の命令で戦っていますから、途中でバトルを投げ出すわけにはいかないのです。どうです、ここでバトルを終わらせましょうよ」
「ふざけんな」
マツリの提案を、レオは一蹴する。
「そんな馬鹿みたいな提案、絶対に乗れない。それに、僕はお前たちのことをそこまで信頼してるわけでもない」
「そうですか……残念です」
そう呟き、マツリは最後のボールを掲げる。
「お願いします、ポリゴンZ!」
マツリの最後のポケモンは、ソライトが使うポリゴン2の進化系、ポリゴンZ。
体のつくりはポリゴン2に似ているが、首と胴体が不自然に分離し、カクカクとした予測不能で不規則な動きをしている。
「最後はポリゴンZか。ディザソル、やるぞ」
レオの言葉にディザソルは頷き、一歩踏み出す。
「よっし! ディザソル、辻斬り!」
ディザソルがポリゴンZとの距離を一気に詰める。
一瞬の早業。次の瞬間には、二対の黒鎌が目前にある。
ポリゴンZは動かなかった。
しかし、それは躱す暇がなかったからではない。
躱す必要が、なかったからだ。
「ポリゴンZ、破壊光線!」
ポリゴンの体が、一瞬赤く発光する。
刹那、爆音と共に必殺の赤黒い光線が撃ち出される。
正面にいたディザソルに、これ躱す術はなかった。
凄まじい勢いでディザソルは吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられて、一撃で戦闘不能となった。
「……は?」
呆然とするレオ。何が起こったのか、理解するまでには何秒か必要だった。
「……ディザソル、よくやった。休んでてくれ」
ディザソルをボールに戻し、ポリゴンZに視線を戻す。
(……正直、こいつは弱いと思って油断してた。それは間違いない。だけど、今の一撃の威力は何だ? 火力が桁違いだぞ……!)
ここに来てのマツリの隠し球。こちらに余裕が出来てきたところで、一気に流れを変え、相手のペースを崩す。
「……考えてるばかりじゃ始まらない。次はお前だ、頼んだぞ、ヘラクロス!」
レオの二番手はヘラクロス。格闘タイプを持っているので、ポリゴンZに効果抜群の攻撃を与えられる。
「残念ですけど、タイプ相性くらいじゃ、私のポリゴンZは止められませんよ」
「もしそうだとしても、こっちにはヘラクロスを含めて二体残ってる。万が一ヘラクロスが負けても、最後の一体がとどめを刺すぜ」
思っていたよりも相当厳しい戦いになることをレオは予感し、先ほどと一変して余裕を浮かべるマツリの表情を見据える。