二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百二十六話 狂笑 ( No.260 )
- 日時: 2014/07/12 00:30
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
そもそも、笑う、笑むという行動は——
爆発と共に砂煙が巻き起こるが、ケケ、コタロウの両者は全く気に留めない。
「アルデッパ、ハイドロポンプ!」
アルデッパの放つ水柱が、霧を払うように、砂煙を貫き吹き飛ばし、さらにその奥にいるプラネムを狙う。
「プラネム、サイコバーン!」
プラネムは念力を集中させて爆発を起こし、衝撃波を飛ばしてハイドロポンプを相殺する。
「アルデッパ、噛み砕く!」
しかしすぐそこに、気配を殺したアルデッパが迫っている。
体長の半分を軽く超えるほどの大口が、プラネムの岩肌を突き刺し、ガリガリと削っていく。
「プラネム、吹き飛ばせ! ダイヤブラスト!」
「そうは行かぬぞ。アルデッパ、パワーウィップ!」
プラネムが周囲に爆発を起こそうとするが、それよりも早くアルデッパの腕から伸びた無数の蔓がプラネムを叩き飛ばす。
「プラネム、大地の怒り!」
プラネムが自らの目の前の地面を破壊し、土砂を巻き上げる。
「熱風!」
直後、プラネムが回転して灼熱の風を起こす。
「アルデッパ、ハイドロポンプ!」
アルデッパが大量の水を発射するが、通常の熱風に土砂や瓦礫も上乗せされ、水柱は逆に打ち破られ、土砂の混ざった熱風を喰らう。
「プラネム、ダイヤブラスト!」
プラネムが周囲を爆発させる。
体勢を崩すアルデッパへ、煌めく爆風が襲い掛かる。
「アルデッパ、吹雪!」
それでもアルデッパは雪を乗せた暴風を起こし、どうにか爆風を食い止める。
「そろそろ決めたいところだがな。アルデッパ、パワーウィップ!」
アルデッパが両腕の蔓を伸ばし、無数の蔓を一斉にプラネムへと叩きつける。
「まだ終わらせないぜ。プラネム、サイコバーン!」
対してプラネムは念力を体内に溜め込み、一気に周囲に放出して爆発させ、衝撃波を飛ばす。
両者の力はほぼ互角。やがて蔓が押し戻されると共に、衝撃波も消滅する。
しかし、
「プラネム、ダイヤブラスト!」
その後の動きはプラネムの方が早かった。
蔓が弾き飛ばされ、アルデッパが僅かに仰け反った隙を逃さず、プラネムが放つ、青白く煌めく爆風がアルデッパを吹き飛ばす。
「クリーンヒット! そろそろ終わらせるぞ、プラネム、サイコバーン!」
地面に落ちたアルデッパへと確実に狙いを定め、一点に集中させた念力を爆発させ、衝撃波を放つ。
だが。
「アルデッパ、噛み砕く!」
渾身の力を込めて、アルデッパは起き上がり、その大口を開く。
念力の衝撃波が、容易く噛み砕かれた。
そのままプラネムは一気にプラネムとの距離を詰め、岩盤のようなプラネムの体表に無数の牙を食い込ませる。
「ッ、マジかよ……! プラネム、吹き飛ばせ! ダイヤ——」
「終わりだ! アルデッパ、ハイドロポンプ!」
アルデッパの口から、滝の如き大量の水が噴射される。
ゼロ距離からの一撃を躱せるはずもなく、プラネムは吹っ飛ばされる。
効果抜群の攻撃を立て続けに喰らい、プラネムはついに戦闘不能となった。
「コモラゴン、火炎放射!」
コモラゴンが大きく息を吸い、灼熱の業火を放つ。
「プラネム、怒りの炎!」
プラネムも荒れ狂う炎を放ち、火炎放射を相殺させる。
「ぶち壊す!」
その炎に紛れ、プラネムのすぐそこまでコモラゴンが接近している。
渾身の力を込めて右腕を振るい、プラネムを殴り飛ばす。
「まずいっ! プラネム、身代わり!」
慌ててプラネムは自らの身代わりを作り上げる。
コモラゴンが殴り飛ばしたプラネムは、風船のように弾けて消えてしまうが、
「コモラゴン、ドラゴンクロー!」
空いた左手に青く輝く光を纏わせ、すぐさま振り向き、後ろに現れたプラネムを切り裂く。
「さっきは油断してたけど、もう私に身代わりは効かないわよ。何せ父上からあらゆる戦法を散々教え込まれたからね。特に敵が視界から消えた時の対処方法は詳しく教えられたわ」
「たかが身代わりを攻略しただけの癖に、腹の立つ小娘ね。プラネム、ストーンエッジ!」
プラネムの周囲に無数の岩が浮かぶ。
その尖った岩を、コモラゴン目掛けて一斉に撃ち出す。
「コモラゴン、ダストシュート!」
コモラゴンは大きなヘドロの塊を投げ飛ばし、ストーンエッジを纏めて相殺する。
「サイコバレット!」
「ぶち壊す!」
プラネムが念力を実体化させ、無数の念の銃弾を撃つ。
対してコモラゴンは大きく吼える。
力を込めて尻尾を思い切り振り抜き、念弾の弾幕を一撃で全て弾き飛ばす。
自らが放ったはずの銃弾が、撃ち手を貫く。
「コモラゴン、火炎放射!」
さらにコモラゴンは灼熱の業火を放つ。
体勢を崩すプラネムの岩肌を、ジリジリと焼いていく。
「くっ、こうなったら! プラネム、怒りの炎!」
キキの怒りに呼応し、プラネムの感情も高ぶる。
その怒りを原動力とし、より激しく暴れる炎が放たれる。
「コモラゴン、火炎放射!」
コモラゴンが灼熱の業火を放つが、威力の上がった怒りの炎を防ぎ切れない。
怒りの炎がコモラゴンを燃やす。さらに周囲にも炎が燃え移り、コモラゴンを火の海の中に孤立させる。
「これでもうコモラゴンはまともに動けない。プラネム、決めるわよ! サイコバレット!」
プラネムが念力を実体化させ、無数の銃弾を浮かべる。
コモラゴンに狙いを定め、マシンガンの如く一斉射撃を放つ。
よりも早く。
コモラゴンの鉄拳が、プラネムを殴り飛ばしていた。
予想もしていなかった一撃を受け、プラネムが大きく吹っ飛ばされる。
「てゆーかさ。どんな状況でも確実に任務を遂行しないといけない忍びを相手に、どうしてこんな火の海程度で動けなくなると思ったわけ?」
普通のポケモンなら、周りを取り囲み、自らの体を焼く炎に体力を奪われ、動くことも出来なくなるだろう。
しかし、あらゆる困難を想定する忍びには、火の海ですら通用しない。
「くっ……こんな、バカな! プラネム、起き上がりなさい! ストーンエッジ!」
「もう終わりだよ。コモラゴン、ドラゴンクロー!」
何とか宙に浮かび上がるプラネムに、コモラゴンは確実にとどめを刺す。
青く輝く大きな爪が、プラネムを切り裂く。
龍の爪痕をその身に刻み込まれ、プラネムは戦闘不能となって地に落ちた。
通常よりはるかに強固となった氷柱が、無数に降り注ぐ。
それはまるで弾幕。躱せる死角すら与えず、確実に敵を仕留めるものだ。
しかし。
「ドクロッグ、マグナムパンチ!」
絶対に避けられないはずの無数の氷柱を、ドクロッグは軽やかな動きで躱していく。
しかもそれだけではない。
氷柱を躱しつつ、オニゴーリとの距離を詰めているのだ。
氷柱と氷柱の僅かな隙間をくぐり抜け、ドクロッグがオニゴーリへと迫る。
「……チッ、弾幕まで避けてくるかよ! 第3プランなんて用意してねえぞちくしょうが!」
目を見開いてメジストは叫ぶ。
同時に、ドクロッグがほぼ水平に跳んだ。
一瞬で一気に距離を詰め、ミサイルの如き拳の一撃を浴びせる。
しかしそこで、メジストが勝ち誇ったように笑う。
「第3プランはねえ、第2プランは通用しねえ。だったらよお! オニゴーリ、絶対零度!」
オニゴーリの口が開く。その口に、全てを凍りつかせる絶対零度のエネルギーが溜まっていく。
「第2プランを使ったからって、最初の計画がダメになったわけじゃねえ。やっぱ最後はこれだよなあ! さあ喰らいな! 極寒地獄に連れてってやるぜぇ! ギャヒャヒャヒャヒャ!」
ドクロッグの拳の一撃はギリギリ届かない。
しかも予期していなければ、この一撃は絶対に躱せない。
だが。
「ドクロッグ!」
ミヤビの声が響いた直後、ドクロッグも分かっていたかのように地面に拳を叩き込んだ。
同時に、オニゴーリが絶対零度の氷エネルギーを発射する。
絶対零度は。
ドクロッグの地面への一撃によってわずかに浮かび上がったドクロッグを、ギリギリ捉えられなかった。
「……ッ!? なにぃっ!?」
流石のメジストも、表情に浮かぶのは驚愕のみ。
そして。
返しの一撃で、ドクロッグの全力の拳が放たれる。
渾身の拳の一撃がオニゴーリの顔面にめり込み、盛大に吹っ飛ばした。
オニゴーリが岩に激突し、その勢いで岩が砕け散る。
言うまでもなく、オニゴーリは戦闘不能だった。
「……く、はは。オニゴーリ、休んでろ」
オニゴーリを戻し、メジストは次のボールを取り出すが、
「……やべえ」
ゆっくりとそのボールを戻し、別のボールに持ち替える。
刹那。
メジストの顔が、狂気に歪む。
「ギャヒャヒャヒャヒャ! やべえ、やべえよ! 強まってる、超強まってる! あーちくしょう、もう我慢出来ねえ!」
メジストの感情に篭るものは、怒りではない。
それは喜び。
例えるならば、子供がずっと欲しがっていたものをようやく手に入れられるような。
「聞こえる、聞こえるぜ! こいつの中から、戦いを求める相棒の雄叫びがよお!」
メジストが勢い良く取り出したのは、別のモンスターボール。
ボールに描かれた二重の鎖の模様が、黒い光を放っている。
「本当は四対四のはずだが、そんなこたぁどうでもいい! こいつを使いたくてしょうがねえんだ! 俺は、俺はぁ! やっとお前の力を使えるんだ!」
まるで子供のように、メジストは叫ぶ。
龍の顔面を浮かべたその顔に、狂ったような笑みを浮かべ。
「破天を喰らえ、ティラノス!」
メジストが繰り出した巨大なポケモンが、周囲の木々をなぎ倒す。
濃い茶褐色の体は、所々黄色に染まっている。
古代の恐ろしい恐竜、それも凶暴な肉食恐竜のような風貌。
捻じ曲がった鋭い鉤爪、悪魔のように鋭く恐ろしい眼光。
7メートルはあろうかという巨体が、森の真ん中に立ち上がった。
ティラノス、暴君ポケモン。岩・悪タイプ。
「ギャヒャヒャヒャヒャ! 来た、来たぜ! 最ッ高だ! こっちに入ってから色々やって来たがよお、お前のその姿を見るのをどんだけ待ち望んだことか! やっぱり、お前がいなきゃ、始まんねえって! なあティラノス!」
笑いに笑いながら、メジストはティラノスに語りかける。
応えるように、ティラノスは大きく息を吸い、吼える。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!」
森全体が、振動した。
辺りを覆う氷が、次々と砕け散る。
(これは……まずいな……。今まで多くの者と戦って来たが、こいつは私が今まで見た中で、一番強い)
目の前の敵のかつてないほどの強大さに、思わず戦慄を覚えるミヤビ。
そんなミヤビを気にも留めず、ただメジストは笑う。
「さあティラノス、久々のバトルだ! 遠慮なんていらねえ、目の前に立つものをぶっ飛ばせ! ギャヒャヒャヒャヒャヒャ!」