二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百三十話 風雲 ( No.267 )
日時: 2014/08/08 19:25
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: p3cEqORI)

「くっ、最後の最後で一本取られましたね……」
「瓦礫だけでなく、地中の岩が隆起したようだな……お前のコモラゴンのパワーでも砕けぬとは」
アヤメとコタロウは、ケケの置き土産に苦戦していた。
トパズは極めて強引に侵入したが、本来この屋敷は正面からしか入れない。
窓は極めて硬く、割ることが出来ないのだ。
コモラゴンが拳を、アルデッパが蔓を撃ち込むが、一向に壊れる気配がない。
その時。

「どいてな」

突然、野太い男の声が響いた。
アヤメとコタロウが振り返ると、そこには一つの大柄な人影が。
傍らには、オレンジ色の大きなネズミのようなポケモンが控えている。
「貴方は……!」
「どうしてここに!?」
驚くコタロウとアヤメを気に留めず、その男は進み出る。
「アイアンテール!」
男がそう叫んだ直後、そのポケモンが跳び上がり、思い切り尻尾を振り下ろす。
刹那。
屋敷の入り口を塞ぐ岩が、粉々に砕け散った。



「捻り潰せ、ぶっ殺せ! ティラノス、ぶち壊す!」
怒り狂ったような雄叫びを上げ、ティラノスは突撃する。
「ゲンガー、躱せ」
ゲンガーは地中に潜り、ティラノスの一撃を躱す。
「引きずり出せ! グランボールダだ!」
「同じ手は通用せんぞ。ゲンガー、鬼火だ!」
ティラノスが地面を踏み鳴らすが、それよりも早くゲンガーが地面から飛び出し、青白く揺らめく火を放つ。
しかし、
「効かねえ! ティラノス、ぶち壊す!」
放った鬼火は無数の岩に吹き飛ばされ、さらにティラノスが渾身の力を込めて突撃する。
慌ててゲンガーは地中に潜ろうとするが、少し遅かった。
ティラノスの必殺の一撃を受けたゲンガーが吹き飛ばされる。
当然耐えられるはずもなく、ゲンガーは戦闘不能になってしまった。
「ゲンガー、よくやった。戻って休め」
ゲンガーを戻し、ミヤビは最後のボールを取り出す。
「ギャヒャヒャヒャヒャ! さあさあ、これで後一体! そいつをぶっ飛ばして、ゲームセットだ!」
凶悪な笑みを浮かべるメジストだが、
「そう上手くは行かせんがな」
余裕を込めてミヤビは言い返す。
「私の最後の一体は、先ほどのクロバットだ。これから私は、戦場をこの森全体に広げ、森中を飛び回っての戦いを展開する」
「ギャハハ! そりゃあ好都合だ、お前がどこかへ行った隙に、俺はあっちに戻れば——」
「ちなみに」
メジストの言葉を遮って、ミヤビは続ける。
「この森の中を私は完璧に把握している。ほんの一瞬でもお前の私に対する戦意が消えたのを感じれば、すぐに私はお前の元に立ち塞がる」
ミヤビの言葉を聞き、メジストの表情には明確な不快感が現れる。
「っ、ふざけんじゃねえぞてめえは! バトルを続けるなら、そっちから真面目にぶつかって来やがれ!」
「ふっ、生憎これが忍びの戦い方でな」
メジストの怒声も、ミヤビは軽く受け流す。
「さあ、終わりのない勝負を始めようではないか。なあに、向こうでの勝負が終わるまでの間だけだ。楽しむとしようぞ」



「ポリゴンZ、よく頑張りました。戻って休んでてください」
エナジーボールの直撃を受け、戦闘不能となったポリゴンZを労い、マツリはポリゴンZをボールに戻す。
「負けてしまいましたか……流石は天将の方々が要注意人物とする人物ですね」
しかし、とマツリは続け、
「今戦っている貴方のお友達は、トパズ様には絶対に勝てない。あの人はあらゆる戦闘のプロです。いくらトレーナーをやっていようと、私や貴方は所詮は素人。戦闘経験の差が違いすぎます」
「そんなの、やってみなきゃ分からないだろ。僕だって、未覚醒とはいえ一度トパズに勝ってるし、ギリギリだけど覚醒したソライトに勝ったこともある」
レオが反論するが、
「いいえ、絶対に無理です」
マツリははっきりと言い切った。
「何と言っても、あの人は覚醒状態では天将第二位。第一位のお方には少々事情があるため、あの人が実質的な天将のリーダーなんです」
しかも、と、さらにマツリは言葉を続ける。

「天将の中で唯一、あの人だけは、覚醒率を自力で制御出来るんですから」

レオの思考が、一瞬停止した。
ソライトやラピスですら完全に引き出すことが出来ない覚醒を、トパズは意のままに操ることが出来る。
その事実だけで、トパズの実力が如何に高いかかが分かってしまう。
「現在私たちが把握している敵対戦力の中では『ブロック』副統率くらいじゃないですか? トパズ様とまともにやり合える可能性があるのは」
マツリがそう言うが、最早レオの耳には入っていなかった。
レオの目に映るものは、隣で輝天将を相手に戦う、幼馴染の姿のみ。
(アスカ……!)
心の内で、レオは祈る。



気合玉がマカドゥスに直撃し、大爆発を起こす。
(これで、やったでしょ……! 流石にまだ倒せてはいないだろうけど、今の攻撃で受けたダメージは相当大きいはずよ……!)
爆発の中心を、アスカはじっと見据える。
だが。

「まあまあ、と言ったところだな」

今度こそ、本物の絶望がアスカに襲い掛かった。
砂煙が晴れたその場所に、マカドゥスは立っていたのだ。
多少の傷は受けているものの、先ほどまでと変わらない威圧感を放ち。
(う……嘘でしょ……?)
アスカの思考が。
(こんな化け物に……まともに、相対出来るわけが……!)
恐怖という名の怪物に、呑み込まれる。
同時に、アスカは理解した。理解してしまった。
勝てない。
この目の前の化け物には、絶対に勝てない。
目の前に立つ敵と、自分との間に、絶望的なまでの差があるということに、アスカは気付いてしまった。
気付けば、足がガクガクと震えている。
「まあ、最初思っていたよりはやるようだな」
そんなアスカの状態を見た上で、トパズが口を開く。
「そのゴウカザルはスピードには相当磨きがかかっているし、物理技、特殊技の威力も申し分ない。それくらいの実力があれば、我々N・E団を相手にしても十分やっていけるだろうな」
だが、とトパズは続け、
「貴様は我を甘く見過ぎたのだよ。最初のエーフィをあっさり失っても我が何も気に留めなかった時点で、我が何か隠していることに気付くべきだった。未覚醒で第四位と低位置にいるのにも関わらず、軍隊の統率を任されている、その本当の意味にも気付くべきだったのだ」
トパズが手を翳すと、マカドゥスが電気を溜め始める。
「とどめを刺せ。マカドゥス、雷!」
マカドゥスの体から、バチバチと激しく音を立てて超高電圧の電撃が放出される。
その電撃は八つの雷撃の槍に分かれ、凄まじい勢いでゴウカザルに襲い掛かる。
青白い輝きを放つ八本の槍が、ゴウカザルを貫く。
まさにその直前。

「ライチュウ、光の壁!」

マカドゥスとゴウカザルの間に、何者かが割り込んだ。
光り輝く壁を瞬時に作り上げ、八本の雷撃の槍を受け止めている。
「ライチュウ、瓦割りだ!」
マカドゥスの雷を食い止めると、そのポケモンは地を蹴って跳び、一気にマカドゥスとの距離を詰め、手刀を振り下ろす。
「マカドゥス、躱せ」
しかしマカドゥスは瞬時に離れ、瓦割を躱す。
「何者だ」
乱入者に対して、トパズが低い声で言い放つ。
その乱入者が物陰から姿を現した。
短めの金髪を立たせ、黒いコートを着た、長身の黒づくめの男。
サングラスを掛けており、その風貌はヤクザと間違えられてもおかしくない。
そして、その傍にいる、稲妻型の長い尻尾を持つオレンジ色の大きなネズミのようなこのポケモン。
このポケモンの名はライチュウ、電気タイプ。
「本来ならば貴様らに俺の名を名乗る義理はないが、今回は特別だ」
そう言って黒づくめの男はサングラスを外す。
黒い瞳をしており、眼つきは非常に鋭い。
そしてこの時、レオは気付いた。
男の耳に付けられたピアスの一つが、『ブロック』の紋章の形をしていたのだ。

「『ブロック』テンモンシティ支部統括、ライロウ。その胸によく刻んでおくんだな」