二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百三十四話 本拠地 ( No.271 )
日時: 2016/08/22 11:35
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: qPVFeoJe)

「よし、全員揃ったな」
次の日の朝。
アカノハ支部の外に、11人が集まった。ほぼ全員が冬服だ。
カンタロウは服の色こそ同じだが、黒い長ズボンは分厚くなっており、羽毛のフードのついた白いコートを着ている。マゼンタは浴衣以外持っていないようで、リョーマから丈の長い黒のコートを借りている。
ホロやレオ、リョーマにエフィシも分厚い服に着替えており、アスカはマフラーを持って来ていた。
セイラやテレジアもタイツを履き込んで来ているが、ライロウとサクラだけは変わっていない。
黒づくめのライロウはともかく、
「サクラ、お前馬鹿か?」
「失礼ねえ、大丈夫よお。あたしは寒いのには慣れっこなんだからあ。この格好で雪の中を走り回った事もあったしい」
「……やっぱお前馬鹿だな」
はぁ、とリョーマはため息を吐くが、すぐに全員の方を向く。
「準備は整った。サクラの小型飛行機でヨービエル山まで移動する。サクラ、この飛行機は上空の気流に耐えられるんだろうな」
「大丈夫よお。結構頑丈に作ってあるからねえ」
「よし。てめえら! 行くぞ! N・E団のアジトを、叩き潰してやろうぜ!」
リョーマが叫び、飛行機に飛び乗る。
他の者たちも続き、全員が乗り込むと、二対のプロペラが動き出す。
『ブロック』の戦士たちは、ヨービエル山に向けて飛び立つ。



雪が降ってきた。
「こいつがヨービエル山だ。この地で一番の標高を持つ山だぜ。窓を見てみな」
リョーマに促され、レオたちは窓の外を見る。
山は白く覆われ、木々は雪の結晶で美しく飾られていた。
「いやー、とてもこんなとこに敵の本拠地があるとは思えねえな」
「全くだ。確かにここなら早々バレんだろうな」
後ろで喋っているのはホロとライロウ。
「ところでリョーマはん、どこに入り口があるとかは分かっとるん?」
マゼンタが疑問の声を上げるが、
「それについては問題ねェだ」
答えたのはカンタロウだった。
「レーダー調査で大体の作りさ把握しただ。どの辺から入るかの目星もついてるべ」
「そういうこった。そろそろ着くぜ、高度を下げろ」
飛行機が下降し始める。
純白の大地の上に、機体を下ろす。



「くそッ、ちくしょう!」
N・Eアジト内部の一室で、メジストが椅子を蹴り飛ばす。
「あの忍者にまんまと嵌められた! おいソライト、もう一回行かせろ! 今度は直接、あの屋敷ごと破壊してやる!」
「無駄だと思いますがねえ」
荒れるメジストにソライトが冷静に答える。
「奴らが例の宝玉をいつまでも持っていると思いますか? どうせとっくに別の場所に隠しているでしょう。トパズがいない今、戦力にも不安がある。ここは大人しく、宝玉の隠し場所が分かるのを待ちましょう」
それにしても、とソライトは続け、
「本当によく出来た偽物だ。貴方たちが見破られなかったのも頷けますよ。私でも最初は本物だと思っていましたし」
「お前が気付けねえんじゃ、トパズが気付くはずもねえな。てか、あいつ今どこにいるんだ?」
「さあ。今は私以外は特に仕事はありませんし、どこかで気を休めているのでは? 他の面子は皆ここにいるようですが」
と、その時。

ビー! ビー! ビー! ビー!

アジト全体に、警告音が鳴り響く。
「何者かが、この山に着地したようですね。この山の地面のすぐ下にはセンサーが埋め込まれており、誰かが来ればすぐに警告音と共にモニターに映像を映してくれます」
ソライトがそう言った直後。
部屋のモニターが起動し、外の様子を映す。
「……やはり『ブロック』ですか。ですが見たところ、メジスト、貴方が抑えられそうですね。あのシヌマ支部の女が未知数ですが、『覚醒』した貴方の前には——」
「いや、そうもいかねえみてえだぞ」
メジストが注目したのは、黄色い髪に、紫とピンクを基調とした派手な服装の少女。
「確かあいつ、俺様の能力が効かねえ。俺が出たところで、あいつと一騎打ちになるだけだ」
「……総力戦は避けられませんね。トパズがいないのが痛いですが、呼び戻す時間はありません」
仕方ないですね、とソライトは小型マイクを取り出す。
「こちらソライトです。只今『ブロック』の連中がアジトのすぐ上にいることを確認しました。アジトにいる方々は、すぐに戦いに備えてください」
アジト内へ報告し、ソライトはモニターを切り、立ち上がる。
「では、私は研究室を守ります。あそこはやはり私がいなければ」
「てか今回はあいつもいるんだろ? お前が行く必要ないんじゃねえのか」
「念のためですよ。あの方が突破される可能性も無くはない訳ですし」
「ま、そうだな。じゃあ俺も行くぜ。最悪一人は再起不能にしてやる」
部屋の電気を消し、二人の天将はそれぞれの持ち場につく。



「ここだ」
山を少し降り、木々に覆われた道の行き止まりにある大岩の前でリョーマは立ち止まる。
「この岩の下に、入り口があると見て間違いない。恐らく団員ならこの岩を開いて中に入るんだろうが、その手段が無い以上強行突破だ。ぶち破るぞ」
そして、リョーマはブレイオーを出す。
後ろにいる者たちに下がれと指示し、
「ブレイオー、メタルブラスト!」
ブレイオーが鋼エネルギーを溜め込み、狙いを定めて砲撃を放つ。
アジトを塞ぐ大岩に直撃、大きな音を立て、大岩が粉砕されて吹き飛んだ。
現れたのは地下への階段。
それを少し進むと、より地下へと続くエレベーター。
「よし、こっからは敵の本拠地だ。ここまで来た以上、既に敵に気付かれているかもしれねえ。十分に気をつけろよ」
それと、とリョーマは続け、
「カンタロウ、悪いがお前は入り口に残って、敵の援軍が来ないか見ておいてほしい。今回はそれも十分にあり得るからな」
「そりゃ構わねェが、オラを連れて行かなかったことさ後悔すンじゃねェだぞ?」
「へへっ、お前の強さを見込んだ上での頼みだ。引き受けてくれるな」
「分かっとるだ。こっちはオラに任せて、存分に戦って来い」
ニヤリと笑い、カンタロウはモンスターボールを出し、階段を登っていった。
「さて行くか。なあに、在り来たりないつもの戦闘だ。ぶっ飛ばしてくぞ!」
一同がエレベーターに乗り込む。
エレベーターが止まり、扉が開くと、そこは既に分かれ道。
最後に全員で顔を見合わせ、頷くと、『ブロック』の戦士たちは一斉に侵攻を開始する。



エフィシと共に行動し、途中で分かれたライロウは、まっすぐに通路を突き進んで行く。
途中の部屋には目もくれない。彼が目指すのは最奥のみ。
しかし、
「む」
階段を見つけ、降りたところで、遂に敵と鉢合わせした。
「早速いやがったか、『ブロック』。えーっと、誰だっけお前は。ああそうだ、テンモン支部の統括か」
碧天将セドニー。
序列は七位だが、実力自体はガーネットに僅かに劣る程度。
独特の戦術を使い、初めて戦う相手には滅法強い。
「現れたなN・E団。残念ながら、貴様のサーナイトについては既に聞いている。フェアリーとかいう新しいタイプを持っているそうじゃねえか」
「何だ、知ってんのか。そりゃ流石に知られてるか。まあどっちでも構わねえが、わざわざ侵入者を逃す義理はねえ」
「そりゃあな。俺だって、のこのこ出て来てくれたN・E団を逃がす義理はねえぜ」
両者がモンスターボールを構え、同時にポケモンを取り出す。
「出て来い、フワライド!」
「さあ行くぜ、ボンバット!」
セドニーのフワライドに対し、リョーマのポケモンは骨の鎧を身につけた土竜のようなポケモン。
自分よりも大きな、白く太い骨を担いでいる。
ボンバット、骨バットポケモン。地面・ゴーストタイプ。
「ほう、同じゴーストタイプか。だが、俺のフワライドは飛行タイプ。お得意の地面技は効かねえぜ」
「分かってるさ。それを含めて、そいつに勝てると考えてこいつを出したんだからな。それに、ゴースト技なら通る」
「それはフワライドも同じだぜ。ま、そこまで言うなら見せてもらおうじゃねえか」
N・E団アジト戦、最初の対戦カードは、セドニー対ライロウ。