二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百三十五話 幕開け ( No.272 )
日時: 2014/08/26 16:59
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: G1aoRKsm)
プロフ: 初期の威圧感がどんどん薄れていくガーネットさん。

「あ、ソライト様! お疲れ様ですっ」
広い研究室に戻ったソライトを、直属護衛シーアスが出迎える。
「おやシーアス、ご苦労様。例の任務は順調ですか?」
「はいっ、いい感じです! でも、あの宝玉、偽物だったんですよね? 大丈夫なんですか?」
「その点については心配ご無用です。それよりシーアス、先ほど私が伝えたように、現在『ブロック』の連中が侵入しています。この場は私に任せて、貴方も排除に向かってください。私はここでちょっとやっておきたいことがあるので」
「了解です! このシーアスにお任せください!」
シーアスは敬礼し、部屋から飛び出していった。
「さて、シーアスが頑張ってくれたおかげで、完成までもう少し。誰かが来る前に、仕上げておきたいところですね」
残されたソライトは、先ほどまでシーアスが操作していた機械に手を掛ける。



鼻歌を歌いながら通路を進んでいくサクラは、そこで丁度いい獲物を見つけた。
豪華な花や鳥の模様などで装飾された赤い扉があり、アルファベットの筆記体で『Garnet』と書かれている。
それを見た瞬間に、サクラの目が輝く。
舌舐めずりして、気持ち悪い笑みを浮かべ、バタン! と、サクラは一気に扉を開く。
「誰だ! ……っ、お前は……!?」
「ガーネットちゃあーん☆」
猛獣が獲物に飛び掛かるような勢いで、サクラはガーネットに飛びついた。
驚いたガーネットが身を捻ってサクラ渾身のダイブを避ける。
「やばいガーネットちゃん超可愛い突然の敵の来襲にちょっとビクつきながらも強がってるガーネットちゃん超可愛いそして私を見て露骨に焦ってるガーネットちゃん超可愛い抱きしめたいほっぺすりすりしたいちゅーしたいそういうわけで今すぐ抱きつかせブゴゥーッ!?」
部屋の本棚の影から何者かが飛び出し、発狂しているサクラを殴り飛ばした。
緋天将直属護衛、ブレイズだ。
「ガーネット様、この下賤な女は私が排除致します。ここは私に任せて、お逃げください」
「私を甘く見ないで……って言いたいところだけど、今回ばかりはそうさせてもらうわ。ブレイズ、頼んだわよ。この女を、絶対に私の元に向かわせないで。分かったわね」
「仰せのままに」
突然来襲した猛獣が目を覚ます前に、急いでその場を去るガーネット。
「痛つつ……女に暴力なんか振るっちゃだめよお?」
やがて頬をさすりながら、サクラが起き上がる。
「これは失礼。私も女性へ手を出すことは好みではありませんが、我が主に危険が及ぶと判断した場合は容赦は致しませんので。貴方は我が主にとって害となる存在だと判断しました。故にここで、徹底的に叩きのめして差し上げましょう」
「あら残念。あたしは男には興味ないのよねえ。さっさと終わらせて、ガーネットちゃんを探しに行こうかしらあ?」
冷徹なブレイズの圧力にも一切動じず、サクラは笑みを浮かべてモンスターボールを取り出す。



部下の助けもあって何とか貞操を守ったガーネットは、すぐに自分の部屋から離れる。
ラピスの部屋にでも転がり込んで、別の敵が来るのを来るのを待っていようかと考えたガーネットだが、途中の通路でその別の敵に遭遇した。
同時に、向こうもガーネットに気付く。
「あら? 坊やは確か」
「お前、スティラタウンで見たぞ。確かあの時はレオにーちゃんが戦ってたよな」
ガーネットが見つけたのはホロ。
スティラタウンでは、一瞬だけだが対面している。
「ソライトのとこの部下から聞いてるわよ。年齢の割に強力なポケモンを使うそうじゃない」
「まーな。自分で言うのも何だけど、俺のポケモンはみんな強いぜ」
「まあ強いと言っても、所詮は直属護衛に勝った程度でしょ? 逃げるなら今のうちよ」
「何言ってんだ。俺は最初からお前を倒すつもりだし、お前としてもわざわざ見つけた敵を逃がす理由なんて無いんじゃねえのか?」
「そりゃあね。そんなに乗り気なら丁度いいわね、サクッと倒してあげる」
「やれるもんならな!」
それを引き金に、二人は同時にボールを取り出す。
「頼んだぜ、ムクホーク!」
「我が血筋にかけて、グレイシア!」
ホロのポケモンは、カンタロウも使っていたムクホーク。
対するガーネットのポケモンはグレイシア。
実力者同士が対峙し、睨み合う。



ソライトの指令を受けたシーアスは、敵を探すべく通路を歩き回っている途中で、N・E団にとって一番の要注意人物に遭遇してしまった。
「おいおい、こんなに早く敵と遭遇かよ、ついてねえ」
「出来るだけ奥まで進みたかったところですが、この人を倒さないと進めないようですわね」
リョーマとテレジアだ。
特に警戒すべきがリョーマ。詳細は知らないが、ソライトの研究所で夜天将を撃破したと聞いている。
(まさか敵のリーダー格と遭遇してしまうなんて。ここは出来るだけ粘って少しでも敵のポケモンの体力を消耗させ、他の天将様たちに後を任せるしかないよね)
覚悟を決め、シーアスはボールを取り出す。
「あたしの名はシーアス、ソライト様の部下! あたしを倒さなけりゃ、この先には進めないわよ!」
「ちっこいくせに度胸あるじゃねえか。よーし、俺が相手になってやるぜ。少しは楽しませろよ?」
不敵な笑みを浮かべ、リョーマもボールを取り出すが、
「待ってください」
テレジアがそれを止める。
「どうした?」
「今回は敵のアジトです。下手をしたら輝天将や第一位がいるかもしれないここでは、リョーマさんの力が必要となるかもしれませんわ。リョーマさんは温存しておくべきです。直属護衛程度が相手なら、私で十分ですわ」
「……なるほどな。しょうがねえ、戦いたかったとこだが、ここはお前に任せる。一応言っとくが、勝てよ?」
「勿論ですわ」
リョーマは取り出したボールを仕舞い、代わりにテレジアが一歩進み出る。
(……これはチャンスね)
その様子を見て、シーアスは心の内で笑う。
(相手が副統率でなければ、勝てるチャンスも十分にある。あたしがこの子を倒して、さらに副統率を消耗させれば、これで十分な仕事をしたことになるわ。ソライト様から褒めてもらえるかもだし、これはやるしかないわね!)
企みを考えつつも一切表情には見せず、シーアスは目の前のテレジアを見据える。



「おっと、忘れてた。『覚醒』しなきゃ、流石に厳しいからな」
セドニーが呟くと同時に、彼の瞳が翠の光を放ち、手の甲に翠の龍の爪のような模様が浮かび上がる。
「それじゃあ始めるぜ! フワライド、まずはサイコキネシス!」
フワライドが強い念力を操り、念力の波を飛ばす。
「ボンバット、ボーンラッシュ!」
ボンバットは長い骨を杖のように振り回す。
盾のように骨を展開し、念力を防ぐと、
「シャドークロー!」
骨を左手に持ち替え、右手から鋭い爪のような影を伸ばし、フワライドに切りかかる。
「フワライド、ゴーストダイブ!」
対して、フワライドの姿が一瞬の内に消える。
「ボンバット、気をつけろ。どこから来るか分からんぞ」
影の爪を躱されたボンバットは床に着地し、じっと周囲の様子を伺う。
「後ろだ! ボンバット、ぶち壊す!」
空間が少し動いたように見えたその一瞬。
気のせいだと見逃すことも出来たが、ライロウは即決した。
そしてビンゴ。ボンバットが思い切り骨バットを振り抜いたその瞬間、虚空からフワライドが現れ、四本の腕をボンバットに叩きつける。
しかしボンバットの骨バットに力負けし、フワライドは逆に押し戻される。
「攻撃力はかなり高いみたいだな。流石にその太い骨バットを振り回すだけの力はあるぜ」
「当たり前だ。特に攻撃力に重点を置いて育てたからな」
「だが、そこさえ警戒すればどうということはねえ。見た感じ素早さは少し速いといった感じか。加えてボンバットというポケモンはそこまで耐久が高いわけでもない」
「だからその点を俺の立ち回りでカバーしていくんだろうが。ポケモンの力だけを見てると、てめえ、痛い目見るぞ」
「それくらい分かってら。少し前は敵対勢力なんざ気に留めてなかったが、最近はそうもいかねえからな。特にお前ら『ブロック』が相手の場合はな」
負ける気はしねえけどな、とライロウを見据え、セドニーは不敵な笑みを浮かべる。