二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百四十三話 仇 ( No.283 )
- 日時: 2014/12/23 09:04
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
テペトラーを戻し、ホロは次のボールを出す。
「行くぜ、ムクホーク!」
最初に姿を見せたムクホークが、再び戻ってくる。
「さっきのムクホークね。残り体力の少ないグレイシアを仕留めに来たんだろうけど、そうは——」
「ムクホーク、敵討ち!」
ガーネットには構わず、ホロが指示を出す。
敗れたテペトラーの力を受け継ぎ、ムクホークは一気に距離を詰め、テペトラーの無念を力に変えてグレイシアに一撃を叩き込む。
グレイシアは猛烈な勢いで吹き飛ばされ、壁に激突し、さらにその壁にめり込んで戦闘不能となった。
「……!?」
ひび割れた壁を見て某然とするガーネットと、
「どんなもんだ! ムクホーク、まずは一体、よくやったぞ!」
ムクホークと一緒に喜び回るホロ。
「……甘く見過ぎたようね。グレイシア、お疲れ様。休んでて」
ガーネットはグレイシアを戻し、次のボールを手に取る。
「っと、はしゃいでばかりもいられないな。さあ、次のポケモンはどいつだ?」
「それじゃあ貴方にしようかしら。我が誇りにかけて、エルレイド!」
ガーネットの二番手はエルレイド。ムクホークとの相性はタイプで見れば不利だが、
「ここまでの技でムクホークの型は分かったわ。蜻蛉返りで削りつつ引き、交代際に敵討ちで全抜きを狙う。だったらここは引くわよね。一応言っておくけど、この子はムクホークへの有効打を持ってるわよ」
ガーネットの言葉を聞いてホロは考える。
確かにムクホークならエルレイドとの相性はいい。このムクホークはホロのエースだ。エルレイドには勝てるだろうが、しかし、だからこそここでムクホークの体力を消耗させたくはない。
「……なら、ムクホーク、蜻蛉返り!」
ムクホークが飛び上がり、非常に素早い動きでエルレイドに突進する。
「やっぱりね! エルレイド、躱しなさい!」
ムクホークのスピードを見極め、エルレイドはムクホークの突進を躱す。
しかし、
「甘いぜ! ムクホーク!」
素早く旋回したムクホークが再び突進を仕掛け、エルレイドの背後からぶつかり、さらにその勢いのままボールへと戻る。
「よっし命中! このまま頼むぜ、ガブリアス!」
代わりに出て来たポケモンは、ガブリアスだ。
「ふうん、ガブリアスねえ。確かに強そうなポケモンだけど、私のエルレイドに勝てるかしら」
「勝てると思わなきゃ、出さねえよ! ガブリアス、地震!」
ガブリアスが地面を思い切り踏みつけ、床を揺らして地震の衝撃波を飛ばす。
「エルレイド、躱してサイコカッター!」
対するエルレイドは跳躍して地震を躱し、腕の刃を伸ばして念力の刃を放つ。
「砕け! ガブリアス、炎の牙!」
牙に炎を灯し、ガブリアスは襲い来る刃を全て噛み砕き、破壊するが、
「エルレイド、冷凍パンチ!」
その隙を狙って、拳に冷気を込めたエルレイドが距離を詰めてくる。
「来るぞ! ガブリアス、ダブルチョップ!」
エルレイドの拳に対し、ガブリアスも腕を構える。
左手でエルレイドの冷気の拳の威力を弱め、動きが止まったところを二発目の右手で相殺し、
「炎の牙!」
牙に炎を灯し、エルレイドの腕に牙を突き立てる。
「チッ、エルレイド、サイコカッター!」
片腕を焼かれるエルレイドだが、もう片方の腕の刃に念の刃を纏わせ、腕を振るって刃を飛ばし、ガブリアスを切り裂く。
ガブリアスの牙が離れ、エルレイドは一旦距離をとって腕の煤を払い、体勢を立て直す。
「ガブリアス、もう一度炎の牙!」
「エルレイド、マグナムパンチ!」
ガブリアスが牙に炎を灯し、エルレイドはミサイルの如く勢いを込めた拳を突き出し、双方の技が正面からぶつかり合う。
セラーナの動きについて行けず、シーアスの二番手、ビビッドンは、対したダメージを与えられないままセラーナに敗れる。
「うう、ビビッドン、ありがとう。ゆっくり休んでてね」
ビビッドンをボールに戻すと、シーアスは天井を見上げる。
天井では相変わらずセラーナが打ち上げた小型太陽が光を放っている。
(葉緑素さえなければもっとどうにかなったんだけど……うう、これは勝ち目ないかも。最悪でも、引き分けには持ち込みたいけど……)
焦燥を抱えたまま、シーアスは最後のポケモンを繰り出す。
「頼んだわよ、ヤミクラゲ!」
シーアスの最後のポケモンはヤミクラゲ。
水タイプを持っているため、セラーナとの相性は悪い。
「最後は水タイプのヤミクラゲですか。降参してもいいですけど、そうしないのであれば容赦はしないで行きますわよ。セラーナ、ソーラービーム!」
ヤミクラゲの周りを超速で駆け回り、ヤミクラゲに反撃の隙を与えず、セラーナは太陽の力を受けた白く輝く光線を放つ。
(来た……!)
シーアスが目を見開く。
しかし、それは焦燥によるものではない。
「ヤミクラゲ、ミラーコート!」
太陽光線を受ける直前、ヤミクラゲの体が光のベールに包まれる。
光のベールはソーラービームを吸収し、セラーナへと眩い光を放つ。
ヤミクラゲに与えるはずだった二倍のダメージを受け、セラーナが吹き飛ばされる。
「チャンス! ヤミクラゲ、ギガドレイン!」
ヤミクラゲの触手が伸び、動きの止まったセラーナに絡みつく。
さらにその触手が光を発し、セラーナの残っていた体力を全て吸い尽くした。
触手がほどかれると、セラーナは戦闘不能となって床に倒れた。
「降参なんてするわけないでしょ! あたし、そういう平和主義嫌いなんだよね。始まった戦いを途中でやめるなんて、ありえない」
シーアスの抱えた焦燥は、セラーナを突破出来ないことではない。
彼女が抱いたのはあくまで、テレジアに勝てるかどうかの焦りだ。
そして、上手い具合にセラーナを突破出来たことにより、シーアスの心に落ち着きが戻ってくる。
「ミラーコートですか……完全に油断していましたね。セラーナ、休んでいてください」
セラーナをボールに戻したところで
「おいおい、何やってんだ? 反撃してもいいんですわよ? なんて、カッコつけてたくせ……おっと黙りまーす」
後ろのリョーマを視線だけで黙らせ、テレジアは最後のボールを取り出す。
「本当は特殊技主体のポケモンには出したくないのですが、他に有効打を持つポケモンがいないので仕方ありませんわね。お願いしますわ、カイリキー!」
テレジアの最後のポケモンは、エースのカイリキー。
「こうなったら後は攻めるだけですわ。カイリキー、爆裂パンチ!」
カイリキーの四本の拳が、一斉にヤミクラゲを狙う。
「ヤミクラゲ、躱してハイドロポンプ!」
シーアスが回避を指示する。
しかし、ヤミクラゲは躱せなかった。いや、躱さなかった。
正面からカイリキーを迎え撃ち、大量の水を噴射する。
ハイドロポンプがカイリキーの腕の二本の勢いを止めるが、残り二本は止められず、ヤミクラゲはカイリキーに殴り飛ばされる。
「え……?」
「回避は出来ませんわよ」
戸惑うシーアスに、テレジアが告げる。
「このカイリキーの特性はノーガード。お互いの攻撃が必ず命中しますわ。ここから始まるのは単純な殴り合い、もし勝ちたければ、このカイリキーのパワーを上回るしかありませんわよ」
「行って来い、ペガーン!」
セイラの二番手は、羽馬ポケモンのペガーン。
エスパー・飛行タイプと、タイプ相性ではリーフィアには有利。
「飛行タイプか。確かに潜るは効かねえし、リーフブレードも通りが悪い。だがそんなもん知ったこっちゃねえ! リーフィア、シザークロス!」
リーフィアがペガーンを見据え、飛び出す。
一直線に距離を詰め、前足の葉を伸ばし、交差させてペガーンを切り裂く。
「ペガーン、躱して熱風!」
ペガーンは翼を広げ、羽ばたいて飛び上がり、リーフィアの攻撃を躱すと、翼を羽ばたかせ、灼熱の風を放つ。
「リーフィア、潜る!」
金属の床を容易く砕き、リーフィアは床下に身を隠す。
熱風をやり過ごすと、リーフィアはペガーンの真下から姿を現し、
「リーフブレード!」
額の葉を鋭く伸ばして、今度こそペガーンを切り裂く。
「ペガーン、構うな! 暴風だ!」
激しく翼を羽ばたかせ、ペガーンは暴風を吹き荒らす。
リーフィアを吹き飛ばし、壁に叩きつける。
「サイコバーン!」
ペガーンは体内に念力を集中させ、それを爆発させて衝撃波を飛ばす。
「リーフィア、動け! 躱してはたき落とす!」
何とか体勢を立て直し、リーフィアは壁を蹴って飛び、衝撃波を躱す。
そのままペガーンの上を取り、尻尾を振り下ろしてペガーンに叩きつけ、ペガーンを床に叩き落とす。
「切り裂け! シザークロス!」
リーフィアの前足の葉が伸びる。
二対の刃となり、ペガーンの喉元を狙う。
「させない。ペガーン、サイコキネシス!」
しかしペガーンが頭を上げ、強い念力を放ち、リーフィアの動きを止める。
念力を操作してリーフィアを投げ飛ばし、その隙に体勢を整えて立ち上がる。
「面倒くせえことして来やがるぜ。リーフィア、リーフブレード!」
額の葉を鋭く伸ばし、ペガーンに切りかかる。
「ペガーン、熱風!」
翼を羽ばたかせて、ペガーンは灼熱の風を起こす。
「リーフィア、躱しな!」
足に力を込め、リーフィアは思い切り跳躍して熱風の範囲から逃れる。
「よーし! リーフィア、シザークロス!」
前足の葉を伸ばし、その葉を交差させて上空からペガーンを切り裂く。
斬撃を受け、ペガーンが仰け反る。
「リーフィア、はたき落とす!」
さらにリーフィアはその場で一回転し、ペガーンの額へ尻尾を叩きつける。
「その辺にしておけよ。ペガーン、サイコバーン!」
だがそれよりも早くペガーンが溜め込んだ念力を爆発させて衝撃波を飛ばし、リーフィアを吹っ飛ばす。
「終わらんぞ! リーフィア、潜る!」
床へと着地するその瞬間に、リーフィアは床に穴を開け、その中へ潜る。
「リーフブレードだ!」
刹那、ペガーンの正面から姿を現したリーフィアが、額の鋭い葉を振り回してペガーンを切り裂く。
「攻めたてろ! リーフィア、シザークロス!」
「好き勝手はさせない。ペガーン、サイコキネシス!」
さらにリーフィアが前足の葉を伸ばすが、ペガーンは強い念力を操作し、念力の波を放って何とかリーフィアを食い止める。
「むー、ここまで攻撃的なリーフィアも珍しいものだな」
「ペットは飼い主に似るんだよ。一応言っとくが、この後に出てくる奴らはもっと凶暴だぜ、覚悟しとけよ?」
メジストが獰猛な笑みを見せ、それと共にリーフィアもセイラを威嚇するように低く唸る。