二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百五十六話 爆進 ( No.300 )
日時: 2015/04/14 08:31
名前: パーセンター (ID: 8uCE87u6)

ティラノスの太い尾と、ヒョウカクのドリルのような角が激突する。
しかし、パワーでは明らかにティラノスの方が上。
ティラノスの力の前に押し負け、ヒョウカクは吹き飛ばされてしまう。
「ティラノス、フレアドライブ!」
ティラノスが雄叫びを上げ、激しく燃え盛る炎を纏う。
「ヒョウカク、躱してハイドロポンプ!」
巨大な火の弾のようにティラノスが突っ込んで来るが、ヒョウカクは尾ビレで床を蹴って飛び上がり、ティラノスの背後から大量の水を放つ。
「ティラノス、グランボールダ!」
フレアドライブを解いたティラノスが床を踏み鳴らすと同時、大量の岩が出現する。
立ち塞がる岩が水を遮断し、残った岩は一斉にヒョウカクへ襲い掛かる。
「ヒョウカク、守る!」
「無駄だ! ティラノス、もう一度グランボールダ!」
ヒョウカクは守りの結界を張るが、ティラノスはさらに大量の岩を向かわせる。
結界を張るヒョウカクが動けないのを利用し、無数の岩を積み上げ、ヒョウカクを岩の中に閉じ込めてしまう。
「ギャヒャヒャ! こうすりゃ守るなんざ何の意味も持たねえ! ティラノス、ぶち壊す!」
眼を血走らせ、ティラノスが大きく鋭い鉤爪を備えた両腕を突き出す。
岩など何の障害にもならない。積まれた岩を容易く破壊し、中に閉じ込められたヒョウカクを貫く。
はずだったのだが。

岩が崩れ去ったその時、ヒョウカクはどこにもいなかった。

代わりにメジストが見たものは、床に開く一つの穴。
「なに……ッ!? 下か!」
「ふふ、ご名答。ヒョウカク、ドリルライナー!」
刹那。
ティラノスの足元の床を突き破り、ヒョウカクが姿を現す。
ドリルの如き角の一撃がティラノスの岩肌を削り、突き飛ばす。
「ヒョウカク、吹雪!」
さらにヒョウカクは雪を乗せた暴風を起こす。
ティラノスを押し戻し、その身を少しずつ凍りつかせる。
「ティラノス、フレアドライブ!」
ティラノスの体が炎上する。
爆発的に展開された炎が、吹雪を一瞬で振り払い、
「ぶち壊す!」
その巨体が大きく跳躍した。
ヒョウカクの目の前まで迫り、太く大きな尻尾を渾身の力で振り下ろす。
「っ、ヒョウカク、守る!」
咄嗟にヒョウカクは守りの結界を張る。
ティラノスの尻尾の一撃が重くのしかかるが、流石にこの結界は打ち破れない。
だがそれでもティラノスは退かない。
両腕を突き出し、鉤爪を結界に突き刺す。
恐ろしいのは、並の攻撃なら容易く跳ね返してしまうほど強力な守りの結界を相手に、ティラノスは競り合えているということだ。
「そろそろ結界も切れるか……! ヒョウカク、後ろに飛べ!」
結界が消える寸前に、ヒョウカクは尾ビレを受かって後ろに大きく飛び退く。
次の瞬間、先ほどまでヒョウカクがいた床を、ティラノスの鉤爪が抉り取った。
「逃がさねえ! グランボールダ!」
大地を揺るがし、ティラノスは出現させた無数の岩をヒョウカクへ放つ。
「躱し切れないか……ヒョウカク、ドリルライナー!」
ヒョウカクの角が伸び、ドリルのように高速回転する。
襲い来る岩を片っ端から壊していくが、全てに対応することは出来ず、いくつかの直撃は受けてしまう。
「ぶち壊す!」
「躱してハイドロポンプ!」
体勢を崩したヒョウカクへ、ティラノスの靭尾が振り下ろされる。
どうにか躱そうと体を反らすヒョウカクだが、間に合わずに尻尾の一撃を食らってしまう。
「急所を外して致命傷は逸らしたか。だが次だ! ティラノス、馬鹿力!」
力のリミッターを外し、ティラノスは突撃する。
破壊の鉤爪が、立ち塞がるもの全て粉砕する勢いで襲い掛かる。
「ヒョウカク、ドリルライナー!」
床に角を差し込み、角を高速で回転させ、ヒョウカクは地面に潜る。
「引きずり出せ! ティラノス、グランボールダ!」
「ならばこちらから出向く。ヒョウカク、ドリルライナー!」
ティラノスが床を踏み付けるより早く、ヒョウカクがティラノスの横から飛び出し、その胴体に角を突き刺す。
「ぶち壊す!」
そしてドリルライナーを食らってもティラノスは全く怯まない。
太い尻尾を横薙ぎに思い切り振り抜き、ヒョウカクを振り払う。
咄嗟に飛び退いたヒョウカクだが、尻尾の一撃が尾ビレを掠めた。
「……どこまで脳筋なんだ。そろそろスタミナ切れしてもいいんだぞ」
「こいつにスタミナ切れはあり得ねえ。少なくとも、お前を叩き潰すまではなぁ! ティラノス、フレアドライブ!」
「……化け物め。ヒョウカク、ハイドロポンプ!」
灼熱の豪華を纏ったティラノスの爆進を躱し、ヒョウカクは大量の水を噴射する。
「無駄ぁ! ティラノス、グランボールダ!」
ティラノスが床を踏み鳴らすと共に、大量の岩が浮かび上がる。
ハイドロポンプを打ち消し、ヒョウカクを無数の岩の中に封じ込めてしまう。
「馬鹿力!」
間髪入れずにティラノスは太い尻尾を思い切り叩き込む。
岩を容易く粉砕し、その中のヒョウカクを渾身の力で叩き飛ばした。
「これで終わりだ! ティラノス、ぶち壊す!」
大地を揺るがす咆哮を上げ、ティラノスは爆進する。
目を血走らせ、牙を剥いて大口を開き、鋭い鉤爪の生えた両腕をヒョウカクへと突き出す。
脅威と畏怖がセイラを呑み込まんと迫るその瞬間。
セイラは、全く恐怖などしていなかった。

「ここしかない。ヒョウカク、ドリルライナー!」

力を振り絞って、ヒョウカクが前へ飛ぶ。
ティラノスの右腕、左腕を躱して懐へ飛び込み、ドリルの如く高速回転させた黄金の角でティラノスの下顎を突き上げる。
予想もしていなかった反撃を急所に食らい、ティラノスは大きく仰け反った。
「ハイドロポンプ!」
ようやくティラノスが見せた明確な隙。
その隙を、セイラは見逃さない。
ヒョウカクが大きく息を吸い、大量の水を撃ち出す。
効果抜群の連続攻撃を受けたティラノスが、吹き飛ばされる。
「やりやがったな。だが今度こそこれで終わらせる! ティラノス、ぶち壊す!」
「上等。こっちもこれで終わらせる。ヒョウカク、ドリルライナー!」
ティラノスとヒョウカクが同時に動いた。
ティラノスが両腕を突き出して悪魔の鉤爪を振りかざし、ヒョウカクが高速回転させた光り輝く黄金の角を突き出す。
ティラノスの爪がヒョウカクを切り裂いたのと、ヒョウカクの角がティラノスを突き刺したのはほぼ同時だった。
双方の動きが止まり、床へと崩れ落ちる。
その刹那だった。

心臓に突き刺さるような鋭い痛みが、一瞬セイラを襲った。

「くッ——?」
顔をしかめるセイラだが、痛みはすぐに引いた。
ティラノスとヒョウカクは、共に力を使い果たし、戦闘不能となっていた。
「……ちっ、ここが限界か。ティラノス、よく頑張った。休んでな」
セイラの僅かな反応には気付かなかったようで、メジストは悔しそうな表情を浮かべてティラノスを戻す。
同時に顔に浮かぶ黒い光が消え、メジストはフードを被り直す。
「……ヒョウカク、よく頑張った。お疲れ様」
セイラもヒョウカクを労い、ボールへ戻す。
「ハンッ、結局勝てなかったか。まあ久々に最後まで戦えたし、バトルに関しては満足だがな。出来ることならお前一人くらいは沈めたかったぜ」
「ふふ。貴様如きに屈しはしない。寧ろ貴様が私に負けなかったことに驚いているよ」
「今回の実力が100パーセントの本気だと思うなよ。覚醒率が最大なら……いいや、何かこの言い方は負け犬みてえだな。じゃあこう言うか。次に会った時は、今度こそ全力で、俺様の力の全てをぶつけてやるぜ。それまで楽しみにしてな。ギャヒャヒャ!」
最後に高笑いし、メジストは床に空いた無数の穴の中へ飛び込み、セイラの前から姿を消した。
(……流石は第四位。少しでも気を抜けば、私はやられていただろうな。N・E団で最も危険な男の呼び名を持つだけのことはあるな)
それにしても、とセイラは脳内で続け、
(一瞬感じた、さっきの痛みは何だ? 今まで感じたこともないようなものだったが……いや、まあ気にすることもないか。とにかく、ここからも警戒して進むとしよう)
気持ちを切り替え、バトルを終えたセイラはアジトのさらに奥へと進んでいく。