二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百五十七話 闇 ( No.301 )
日時: 2015/04/15 10:29
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: iTHoKTwe)

ライチュウの鋼の尻尾が、バジリールの放った電撃を突き破り、バジリールに直撃する。
「バジリール、サイコバーン!」
体勢を崩しながら、それでもバジリールは体内に念力を溜め込み、それを爆発させて周囲に放ち、ライチュウを吹き飛ばす。
「大成長!」
バジリールの足元の床が割れ、硬い杭のような無数の蔦が飛び出し、ライチュウに襲い掛かる。
「ライチュウ、アイアンテール!」
硬化させた尻尾を振り回し、ライチュウは向かってくる蔦を次々と弾き飛ばす。
「シグナルビーム!」
「躱して瓦割りだ!」
その無数の蔦の真ん中を、激しい光を放つ光線が突き進む。
ライチュウはそれを躱してバジリールに急接近し、手刀を振り下ろす。
「バジリール、躱して大成長!」
素早く一歩後ろへ下がり、バジリールは手刀を躱す。
ライチュウの一撃は床を凹ませ、直後、ライチュウの真下の床から蔦が飛び出し、空中へと突き上げる。
さらにその刹那、ライチュウを囲むように四方から蔦が床を突き破って出現、一斉にライチュウへ襲い掛かる。
「一気に打ち破るぞ! ライチュウ、ボルテッカー!」
ライチュウが青白く輝く爆発的な電撃を身に纏う。
四方から襲い掛かる蔦を纏めて突き破り、一直線にバジリールへ突っ込む。
「バジリール、大成長!」
そしてバジリールがそれを迎え撃つ。
十本ほどの蔦を固めたような、最早巨大な鈍器と化した蔦を二本出現させ、ライチュウへと向かわせる。
二本の蔦とボルテッカーが激突する。
ライチュウが最初の蔦を打ち破り、さらに突き進むが、二本目の蔦にほとんどの勢いを削がれてしまう。
「サイコバーン!」
その隙をバジリールは見逃さない。
念力を爆発させて衝撃波を飛ばし、ライチュウを押し戻す。
「バジリール、十万ボルト!」
「効かん! ライチュウ、アイアンテール!」
バジリールが高電圧の強力な電撃を放つが、ライチュウは硬化させた尻尾で電撃を両断し、そのまま突き進む。
「それくらいは分かってら。バジリール、大成長!」
自ら放った電撃を打ち消すように無数の蔦が出現し、ライチュウの行く手を遮る。
「ライチュウ、躱してアイアンテール!」
「バジリール、弾き返せ! サイコバーン!」
横っ飛びに蔦を躱し、ライチュウが硬化させた尻尾を叩き込む。
同時にバジリールも念力を爆発させ、衝撃波を飛ばす。
鋼の尻尾と念力の衝撃波が激突し、激しくせめぎ合い、やがて爆発を起こし、両者が吹き飛ばされる。
「そろそろ大詰めだなぁ! バジリール、大成長だ! 最大火力!」
「望むところだ! ライチュウ、ボルテッカー! 最高出力だ!」
バジリールを囲むように、十本の蔦を固めたような巨大な三本の蔦が飛び出す。
その蔦が、ライチュウを叩き潰さんと正面から迫る。
対して、ライチュウも爆発的な超高電圧の電撃を纏う。
激しく音を立てて放電を放ちながら、バジリールへ一直線に突っ込む。
三本の蔦がライチュウを連続で殴りつけるが、ライチュウは蔦に目もくれず、その勢いのままバジリールに激突、大爆発を起こした。
「くっ……!」
爆風の衝撃に身を屈めるセドニーとライロウ。
煙が晴れた、そこには。
「……ちっ、俺の負けだ」
肩で息をつくライチュウの足元で、バジリールが力を使い果たし、倒れていた。
残念、といった様子で、セドニーはバジリールをボールへと戻す。
同時に、セドニーの手に輝く龍爪のような翠の光が消える。
「あーあ、負けちまった。これで残りは……おいおい、あと二人だけじゃねえか。他は全員やられたのかよ」
スマートフォンのような機械を取り出し、セドニーはぼやく。
「ま、それで構わねえ。何せ」
そこまで言って、セドニーはライロウの方へ向き直る。
「ここには、俺たちを束ねるボスがいるからな。こんな言い方したかねえが、俺相手に苦戦してるようじゃ、ボスにはどう頑張っても勝てねえぞ」
「俺だけが勝つ必要はない。こっちには戦いを終えたメンバーに、まだ無傷のリョーマもいる。お前たちのボスが誰かは知らんが、それだけの戦力相手に勝てるとは思えんな」
「ケッ、ムカつく物言いだぜ。まぁ信じるか信じないかは自由だ。俺はもう負けたし、おさらばするぜ。じゃあな」
そう言い残し、セドニーは踵を返して去っていった。



「ムクホーク、インファイト!」
「フィニクス、大文字!」
ムクホークが一気にフィニクスとの距離を詰めるが、フィニクスが素早く退いて初撃を躱し、激しく燃え盛る大の字型の炎を放つ。
「蜻蛉返りだ!」
「引き離しなさい! ドラゴンビート!」
蜻蛉返りのスピードを生かしてムクホークは大文字を躱しつつフィニクスに突っ込むが、フィニクスが龍の心臓の鼓動のような音波を放ち、ムクホークを吹き飛ばす。
「フィニクス、大文字!」
「ムクホーク、ブレイブバード!」
フィニクスが激しく燃え盛る大文字の炎を放つが、吹き飛ばされたムクホークもすぐさま反撃に出る。
青い炎のような勇気のオーラを纏い、空気を切り裂き突貫する。
「フィニクス、大文字!」
フィニクスが煌々と燃え盛る大の字型の炎を撃ち出すが、炎の中ををムクホークは突破し、そのままフィニクスを捉える。
「まだよ! エナジーボール!」
命の力を集め、フィニクスは自然の力の波動を放つ。
「ムクホーク、敵討ち!」
翼を縦に振り下ろし、ムクホークはエナジーボールを粉砕、さらに、
「インファイト!」
再びフィニクスへ一気に急接近する。
「邪魔よ! フィニクス、ドラゴンビート!」
龍の心臓の鼓動のような音波を放ち、フィニクスは迫るムクホークをなぎ払う。
「そろそろ墜としてやるわ! フィニクス、龍星群!」
フィニクスが三度目の龍星群を放つ。
打ち上げられた龍のエネルギーが炸裂し、無数の流星となって次々とムクホークへ降り注ぐ。
「やられてたまるかよ。最後に勝つのは、俺だぜ! ムクホーク、ブレイブバード!」
降り注ぐ流星に、ムクホークは正面から挑む。
勇気の青い炎のオーラに身を包み、流星の雨の中へ飛び込んでいく。
無数の流星がムクホークを襲うが、それでもムクホークの勢いは止められない。
今度こそ、ムクホークの最高の一撃が、フィニクスを貫いた。
「ッ、フィニクス!」
フィニクスの翼を覆う灼熱の炎の勢いが、みるみるうちに衰えていく。
その巨体が床に墜ち、力を使い果たしたフィニクスは目を回して動かなくなった。
「……くっ、どうやらここまでのようね。フィニクス、お疲れ様。戻って休んでなさい」
ガーネットがフィニクスを戻すと同時に、ガーネットの足から光を放つ龍の尾のような紅の光が消える。
バトルが終わってみれば、床や壁が龍星群などによってボロボロに破壊されていた。
「これだけ派手にやっちゃったら、このアジトももう使えないわね。めちゃくちゃ悔しいけど、もう手持ちのポケモンもいないし、今回は引き上げるわ。次にあったら、今度こそ容赦しないわよ。それまで覚えてなさい!」
そう言い放ち、ガーネットは振り向き、アジトの奥へと走り去っていく。
「ふぅ……。お疲れ、ムクホーク。よくやった」
ムクホークの頭を撫で、ホロはムクホークをボールへ戻す。
「N・E団なんかに負けられないからな。ちゃんと勝ててよかったぜ。レオとかエフィシのにーちゃんも、勝ててるかな?」
仲間のことを思い浮かべながら、ホロもさらに奥へと足を進める。



「ご苦労様です、ブレイズ。貴方には迷惑を掛けてしまいましたね。ラピスの容態はどうですか?」
アジトの一角、大研究室。
ソライトが、仕事を終えたブレイズを労う。
「強引に意識を奪ってしまいましたので、当分は目覚めないかと。当然ですが命には別状はありません」
「そうですか。それでは、ラピスを先にドックの中に乗せてあげてください。どの道、もうすぐここも撤収することになるでしょう」
「了解です」
ブレイズが敬礼し、部屋を出ていく。
「ソライト様、こちらの準備も整いました! これで、全て完成です!」
部屋の奥で作業をしていたシーアスが仕事を終え、ソライトの近くに来る。
「ご苦労様です。では後は自由にしていて構いませんよ。先にドックに乗り込んでいてもいいですし、ここに残っていても結構です」
その時、部屋の奥側の扉が開く。
「おや、お疲れ様です。バトルはどうでしたか?」
「あぁ? どうせモニターで全部見てたんだろうが。勝ち切れなかったよ。ま、久々に最後までバトル出来たことだけは評価点かねぇ」
姿を現したのは、戦いを終えたメジスト。
「これで、こっちの残りの戦力はオパールだけか。向こうはまだ副統率が無傷、こっちの負けだな、っと」
「向こうは、そう思っているでしょうねえ」
「? ソライト様、メジスト様、どういうことです?」
ソライトとメジストが笑みを浮かべる中、シーアスだけが状況を理解出来ていない様子だ。
「何だ、聞いてねえのか? 今回は、ボスもここに来てるって言ってただろ?」
「加えて、たった今『兵器』の最終調整も終わりました。今回の戦いの全ては、この時間稼ぎに過ぎません。『兵器』が完成した以上、今回の戦いは、私たちの勝ちです」
「そういうこと。正直オパールには悪いが、俺はオパールにさっさと負けてほしいと思ってる。奴らが絶望を見せるか、それとも怒りを見せるか、楽しみで仕方ねえ。ギャヒャヒャ!」
「さて、どうなるでしょう。そもそも、彼にオパールを突破する力があるかどうか、という問題もありますがね」
刹那。

「例の『兵器』が、完成したようですね」

尋常でなく恐ろしい気配が、研究室全体を包む。
部屋の最奥部、暗闇から、一人の人物が姿を現した。
「……ッ!?」
「……ええ。準備は、全て整いました。あとは、三つの宝玉を手に入れるのみです」
「……にしても、やっぱ怖えわ。面と向かって、あんたと話すのは」
声と気配だけでシーアスは震え上がり、ソライトの声も僅かに上ずる。
メジストも口調こそ変わらないが、声にいつもの勢いはない。
「ソライト、ご苦労でした。それでは、後は彼らが来るのを待つとしましょうか」
恐怖と戦慄をばら撒き、その人物は告げる。
「裁きの時はもうすぐです。愚かな民に、神の裁きを」