二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百五十九話 黒幕 ( No.304 )
- 日時: 2016/09/17 07:32
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
「フーディン、シャドーボールです」
スプーンを突き出し、フーディンが連続で影を集めた弾を撃ち出す。
「エンペルト、お前の力を見せてやれ! ハイドロポンプ!」
エンペルトは大きく啼き、極太の水柱を放つ。
シャドーボールを纏めて薙ぎ払い、さらにフーディン本体を狙う。
「フーディン、サイコキネシス」
対するフーディンは強い念力を操作してハイドロポンプを押し返そうとするが、激流が発動したエンペルトの火力に押し負け、吹き飛ばされてしまう。
「今だ! エンペルト、ドリル嘴!」
ドリルのように高速回転し、エンペルトが飛び出す。
回転の速度も、特攻の勢いも、ポッチャマの時より遥かに上回っている。
「フーディン、もう一度サイコキネシス」
押し流されたフーディンが再び強い念力を操る。
エンペルトに念力を仕掛け、その動きを止めてしまうが、
「エンペルト、打ち破れ! ジオインパクト!」
翼に光り輝く銀色のオーラを纏い、エンペルトは力を振り絞って、念力を強引に打ち破ってしまう。
そのまま翼を床に叩きつけ、衝撃波を飛ばす。
「……! フーディンのサイコキネシスを、打ち破るとは……」
衝撃波を受けたフーディンが、再び吹き飛ばされる。
「これで、とどめだ! エンペルト、ハイドロポンプ!」
力を溜め込み、エンペルトは大量の水を込めた極太の水柱を撃ち出す。
「……終わりましたね。今のフーディンでは、この水柱ははね返せません」
オパールが目を閉じる。
水柱は一直線に突き進み、フーディンを捉えて吹き飛ばし、壁に叩きつけた。
フーディンが床に倒れ、その手からスプーンが落ちる。
戦闘不能となって、倒れていた。
「……フーディン、お疲れ様でした。休んでいてください」
フーディンをボールに戻し、オパールはレオの方へ歩み寄る。
「フーディンの計算され尽くしたはずの戦いの外へ、貴方は飛び出せた。それは貴方だけの力ではない、貴方とエンペルト、二人がいたからこそです。貴方とポケモンの絆、お見事でした」
そう言って、オパールは柔和な笑みを浮かべる。
「最後の壁である私を乗り越えた貴方たちには、真実を知る権利がある。さあ、先に進みなさい」
ちょうどその時。
「ここが最奥か?」
「どうやら、そのようですわよ」
別の扉からリョーマとテレジアが、
「なるほど、この先ですか」
ロフトを連行したグライオンと共に、エフィシが姿を現わす。
「おい、オパール。彼らの代表として、僕はお前に勝利した。だから、僕の仲間も、真実を知る権利がある。リョーマさんたちも、先に進まさせてもらうぞ」
「構いませんよ。ただし、そちらの貴方、碧天将直属護衛はこちらに引き渡してもらいます。それを受け入れ、なおかつ、彼らもそれを望むのであれば」
オパールがエフィシの方を向く。
「……いいでしょう。グライオン、戻ってください」
エフィシがグライオンをボールへと戻し、ロフトがオパールの元へ駆け寄る。
「オパール様、面目ありません。ありがとうございます」
「礼には及びませんよ。仲間を助けるのは、当たり前ではありませんか」
そして、オパールは自身の後ろにある扉の鍵を開き、一歩下がる。
「勇気ある者たちよ。この先に進み、真実をその目で確かめるのです。我らの主が、貴方たちをお待ちです」
オパールは最後にそう言い、目を閉じて黙り込んでしまう。
「レオ、よくやった。遂にN・E団のボスとお目見えだ」
「この先に、全ての黒幕がいるんですのね」
「臆することはありません。最後まで、油断しないでいきましょう!」
リョーマとテレジア、エフィシが、レオに歩み寄る。
「はい。それじゃ……行きますよ」
レオが扉に手を掛ける。
『ブロック』の四人が、最後の部屋へと進む。
最後の部屋。
そこは、巨大な研究室だった。
「ようこそ、我らのアジトへ。よくぞここまで辿り着いたものです。その力、賞賛に値する」
手を叩きながら姿を現したその男は、蒼天のソライト。
その後ろには直属護衛シーアスが控え、さらにフードを被ったメジストが立ったまま壁にもたれかかっている。
「何だ、蒼天将か。そういや今回はお前の姿を全く見ねえと思ったぜ。で、何だ。やるってのか?」
モンスターボールを手にしたリョーマが、一歩進み出る。
「いえいえ。先ほどまでの戦いを私はずっと見ておりました。皆様と今さら戦っても、時間の無駄というものです」
「だから、今回はお前らにいいものを見せてやろうと思ってよお」
ソライトの言葉に、メジストが続く。
「悪いが、今回はお前らのボスにしか興味ねえんだよ。茶番はいらねえ」
「まあまあ、そう焦らずに。シーアス、例の物を」
ソライトの指示を受け、シーアスが50センチほどの立方体の箱をソライトの前に置く。
「それでは、解放しましょう。私たちの、究極兵器を!」
ソライトが、目の前の箱を解放する。
そこから現れたのは。
翼こそあるが、手も足もない天使のような姿、顔は骸骨そのものという、悍ましい生物だった。
白い尾の先が、鎖で繋がれている。
「……! あれは……何だ?」
「もしかして……ポケモン、ですの?」
テレジアの言葉を聞いたレオが図鑑を取り出す。
図鑑は情報を出さないが、何かおかしい。
そもそも、それがポケモンでないのなら、図鑑は何も反応しない。
だが今回は違う。図鑑が、情報を探しているのだ。
そして、
「いかにも」
ソライトが不敵な笑みを浮かべて、口を開く。
「これこそが、我らの目的の鍵。我らの知識を総結集して作り上げた最高傑作。人工ポケモン、オルディナです」
思考に、空白が生じる。
四人が、一斉に言葉を失った。
「そういう、ことですのね」
「……そりゃあ図鑑も情報出せねえわ。にしても、人工ポケモンとはな。お前ら、重罪だぞ」
テレジアとリョーマがようやく言葉を紡ぎ出すが、この時、レオとエフィシの脳内には全く同じ考えが浮かんでいた。
感覚でそう考えてしまう。しかし、絶対にそうであってはならない。そのような疑惑を。
そして無情にも、ソライトはその疑惑を、確信へと変えてしまう。
「さて、それではオルディナ、自己紹介の時間です」
ソライトに促され、オルディナが言葉を紡ぐ。
ゆっくりと。
「……ゴ……メン……ネ……」
しかし、
「……レオ、エフィ……シ……」
確実に。
「……マリ……ア……、バケ……モノ、ニ……ナッ……チャッ……タ……」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
刹那。
レオとエフィシの、絶叫が響く。
無意識のうちに、二人はポケモンを繰り出していた。
「エンペルト、ハイドロポンプ!!」
「グライオン、スカイアッパー!!」
エンペルトの大量の水柱が、グライオンの握り締めた鋏が、ソライトへと一直線に放たれる。
だが。
「メタルブラスト」
突然、ここにいる誰のものでもない声が響く。
同時、絶大な鋼エネルギーの砲撃がどこからか打ち出され、エンペルトとグライオンを吹き飛ばした。
「!?」
「誰だ!」
テレジアが驚き、リョーマがボールを構える。
刹那、部屋全体が畏怖と戦慄に呑み込まれる。
「お待たせしました。私が、この組織を束ねるリーダーです」
聞くだけで恐怖を誘うような、酷く邪気を含んだ声。
だが、レオにとって、もっと恐ろしいことがある。
この声には、聞き覚えがあるのだ。
「折角の客です。丁重にもてなしましょう」
忘れたくても、忘れられるはずのない声。
声の正体が、闇の中から現れる。
まず、その人物の横に控えるのは、非常に頑強な体つきのポケモン。
恐竜のような姿をし、その大きさは2メートルを軽く超える。
瞳からは真紅の輝きを放ち、口や尾は巨大な刃のように鋭い。
切っ先ポケモンの、ブレイドンだ。
そして。
「まずは、自己紹介をしましょうか」
黒幕が、姿を現す。
闇のように黒く長い髪は後ろで括られ、その毛先は血のように赤い。
瞳は青く、悪魔のように暗く鋭い。
右手には、機械の爪が装着されていた。
酷く痩せ細っているが、その瞳からは圧倒的な邪気を放つ。
「私が、N・E団——『ネオイビル』のリーダー、マターです。以後、お見知り置きを」
N・E団、いや、ネオイビル。
そのボスの正体は。
かつてウチセトで世界の支配を企み、謎の失踪を遂げた男、マターだった。