二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百六十話 野望 ( No.305 )
- 日時: 2015/05/01 11:20
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: /48JlrDe)
N・E団、いや、ネオイビル。
その頂点に君臨する闇の黒幕、マターが、遂に姿を現した。
「……マター、お前だったのか。N・E団の、リーダーは」
恐る恐る、レオが言葉を紡ぐ。
「お久しぶりです。1年前、私の計画、プラン・オブ・ガタノアを潰した憎きヒーローよ。貴方の顔は、忘れるはずもない」
発せられるマターの声は、1年前より遥かに大きな邪気を孕んでいる。
「しかし、私の考えた計画は一つではなかった。計画の片方が潰される可能性も考え、私はずっと前から平行計画として、世界を手に入れる二つのプランを立てておいたのです」
「計画ねぇ」
ブレイオーを繰り出し、リョーマが一歩進み出る。
「お前が誰かは知らんが、教えてもらうぜ。お前らのそのプランってやつを」
「断ると言ったら?」
「力尽くでも、吐かせる!」
刹那。
刀を構えたブレイオーが、一瞬でマターとの距離を詰める。
しかし、
「甘いですね」
その刀は、ブレイドンの尾によって容易く止められ、弾き返される。
「そこまで好戦的にならずとも、教えてあげますよ。ここまで辿り着いたご褒美です」
邪悪な笑みを浮かべ、マターは告げる。
マターの、ネオイビルの、真の野望を。
「プラン・オブ・アスフィア。星と旋風を司る星座の伝説、アスフィア。その力を使い、世界を我が手で創造する。これが私たち、ネオイビルの最終目標です」
「アスフィア……だと?」
リョーマが、驚愕の表情を浮かべる。
「……リョーマ、知っているのですか?」
「神話で読んだことがある。星座を司り、大気を操る伝説のポケモンだ」
エフィシの質問に答えた上で、だが、とリョーマは続け、
「数々の伝説ポケモンの神話の中でも、アスフィアはそのトップクラスに位置するポケモンだ。俺たち人間如きが、その力を使えるようになるとは思えんがな」
リョーマの言葉を、
「ふっ。本気でそう言っているのなら、貴方は実に愚かだ」
マターは鼻で笑って返した。
「あぁ?」
「後でそこのヒーローに聞いてみるといい。私たちの科学力は、非常識を容易く常識に、不可能を容易く可能に変えられる。では、そのシステムもお話しして差し上げましょう」
そう言って、マターはオルディナを指す。
「ヨザクラから奪うはずだった三つの宝玉。あの宝玉は、正式名をそれぞれ氷鷲石、雷獣石、そして龍琴石といいます。どうしてあの地にあったかは私の知る由もありませんが、これらの宝玉は、そのアスフィアに力を与えることが出来ます」
しかし、とマターは続ける。
「本来、あの宝玉はもっと巨大な岩の形をしている。あのサイズでは、ただの欠片に過ぎない。ですから、アスフィアに力を与えるには宝玉のパワーを増幅させる必要がある。そこで、このオルディナです。オルディナについては、ソライトに話してもらいましょうか」
マターがソライトへと話を振る。
「では、私からオルディナの話を。宝玉のパワーを如何にして増幅させるか、私は幾度となく実験を繰り返し、その結果、人間の強い生命力が一番宝玉に対して強く作用することが分かったのです。宝玉をオルディナの中に埋め込み、オルディナ本来の生命エネルギーと反応させれば、宝玉のパワーを格段に増幅させられる。これは既に実験で明らかになっています。まぁ、宝玉が偽物だったので、後で宝玉を埋め直すという面倒な過程になってしまいましたがね」
「……その元の人間が、スティラタウンのあの少女というわけですわね」
ようやく、テレジアがレオとエフィシの絶叫の意味を理解する。
「……てめぇら、重罪だぞ」
「重罪? 貴方にそのような事を言われる筋合いはありませんね」
「……ふざけんじゃねえ。自分たちがどれほどのタブーに触れてるか、分かってんのか!? あぁ!?」
リョーマが激昂するが、マターの表情は変わらない。
「罪人に罪人呼ばわりされるなど、心底不愉快だ。いいですか、我々人間は、悪なる存在です。人は誰しも、生きる内に数々の過ちを犯すものだ。そして、その今までの過ちを全て償うことが出来た人間など、この世にいるはずもない。そう考えれば、この世に悪ではない人間などいない。ましてやそれにすら気付いていない者が、他人を罪人呼ばわりするなど、愚かしいにも程がある」
マターはさらに言葉を続け、
「人間は悪。それを理解した者が世界を変えなければ、愚かな者が増え続ける。だから私が、いや、裁きを下すのも私ではない。人間に人間を裁く資格などありませんからね。人を裁く資格があるのは、神以外にいない。だから、私はアスフィアの力を借りる。神の力を持って、全ての罪人に裁きを与えるのです。ソライト、先に撤収を」
ソライトとシーアスが敬礼し、メジストは小さく頷き、部屋の奥の暗闇へと姿を消す。
「さて、私たちの次の目的は、先日奪い損ねた宝玉です。もう場所も把握している。後日、トパズを中心とした部隊を『ブロック』のテンモン支部に送り込み、三つの宝玉を回収します。近いうちにトパズから布告状が送られるでしょう。私たちに抵抗するのであれば、テンモン支部に戦力を集め、襲撃に備えることです」
そう言ってマターは二つのモンスターボールを取り出す。
まずブレイドンを戻し、別のボールから繰り出されるのは始祖鳥ポケモンのプテリクス。
「このアジトは差し上げましょう。私たちには、まだ別の本拠地がある。探すのは勝手ですが、無駄だと思いますよ」
最後に言い残し、マターはプテリクスに飛び乗る。
「それでは、さらばです」
マターの声と共にプテリクスは咆哮を上げ、天井をぶち抜き、飛び去っていった。
サクラの飛行機の中に戻り、アカノハへと帰って来た『ブロック』の面子だが、雰囲気は重い。
まず、ネオイビルという正式名称、そのリーダーの判明。
さらに、その最終目標。伝説のポケモン、アスフィアを使い、世界を征服すると言っていた。
そして最後に、変わり果てたマリア、オルディナの存在。
リョーマが、アジト最深部で起こったことを皆に話し、ライロウは、テンモンを守るために先に戻った。
「……ふざけんなよ。何の関係もないマリアを、ただの道具みたいに弄びやがって。マターだけは、絶対に許さない」
レオが小さく、しかし明確な怒りを込めて呟く。
「……しかし、マターが生きていたとはな。確かにイビルと同じ匂いは感じたが、まさか奴がリーダーだとは思わなかったよ」
かつてマターに仕えていたセイラが、口を開く。
「セイラちゃん、そのマターって男は、どんな人なのお?」
「さっき副統率が話した通りだ。自分以外の全てを憎み、全ての人間が悪であるという思想を持つ。自分たちも悪であると気付いているから、目的のためにどんな外道な手段でも平然と取るし、自分の行動の間違いに気付いて止まることはあり得ない。ネオイビルを潰したければ、奴を殺してでも潰すしかない」
「それはともかく、ここからどうするん? このままここで話し合ってても、何にもならへんで」
「とりあえず、目の前の問題さ解決する必要があるだな」
マゼンタとカンタロウが話し始めるが、
「いや、やることはもう決まってる」
二人の話を遮って、リョーマが口を開く。
「テンモンシティへ行くしかねえだろ。これ以上奴らの好きにはさせねえ。ネオイビルを正面から迎え撃つ。宝玉は、絶対に渡さねえ」
そこで。
「そうです、リョーマ!」
エフィシが突然声を上げる。
「どうした」
「あの方は、伝説のポケモンに関わったことがあると話していましたよね。しかも一時期、実際に伝説のポケモンを連れていた。あの方に話を聞けば、何か解決策が見つかるかもしれませんよ!」
「……そうか! その手があった。正直あの人に会うのは気が進まねえけど、今回はそれが得策だな」
エフィシとリョーマの表情に、笑みが戻る。
その話を聞いていたサクラも、納得したような表情を浮かべる。
「エフィシのにーちゃん、どういうことだ?」
「テンモンに、心当たりでもおありですの?」
ホロとテレジアが二人に尋ねる。
「大ありだ。サクラ、もう一回飛行機を出せ。大急ぎでテンモンへ行くぞ」
「了解よお! すぐに手配させるわあ!」
急にいい雰囲気を作り始めた『ブロック』の三人。
「あの、リョーマさん」
「どういうことなんです?」
その状況に困惑する、レオやアスカたち。
「ああ、そうだ。お前らにも説明しないとな」
ようやくリョーマがレオたちの方を向く。
「実はな、テンモンにいい心当たりがいるんだよ。その人はかつて、伝説のポケモンとの関わりがあったんだ。もしかしたら、アスフィアに関することも聞けるかもしれねえ」
その人は、とリョーマは続け、
「『ブロック』創始者にしてテンモンシティの現ジムリーダー、リュードウ先生だ」