二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百六十五話 美麗龍 ( No.312 )
日時: 2015/06/26 09:39
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: FpNTyiBw)

床へと落ちたトゲキッスへ、灼熱の大文字が迫り来る。
「……そうだ! トゲキッス、波動弾! 炎の中央を狙え!」
レオの指示を受け、咄嗟にトゲキッスは体の奥から力を溜め込んだ波動の弾を撃ち出す。
波動弾が大文字のちょうど真ん中、五本の炎の集合を貫き、フィニクス本体も捉える。
核を破壊された大文字が急に揺らぎ、その勢いが急速に衰え、形が崩れる。
火の粉が降り注ぎ、トゲキッスは大量の火の粉を浴びることになるが、大文字の直撃を受けるよりダメージはずっと少ない。
「なるほど、やるではないか。いい判断だ」
「そう簡単に負けられませんからね。勝負はここからですよ」
どうにか大文字を凌いだトゲキッスが再び浮上する。
「よし、トゲキッス、反撃開始だ! 波動弾!」
再びトゲキッスは波動の念弾を放つ。
「フィニクス、破壊しろ。ダイヤブラスト!」
対してフィニクスは周囲に青白く煌めく爆発を起こし、爆風を放って波動弾を粉砕。
「エアスラッシュ!」
その隙にトゲキッスはフィニクスの上を取る。
空を舞いながら羽ばたき、連続で空気の刃をフィニクス目掛けて落とす。
「まとめて吹き飛ばせ! フィニクス、ドラゴンビート!」
フィニクスが上を見上げ、龍の心臓の鼓動のような音波を放つ。
強烈な音波の前に、刃はまとめて打ち破られる。
「エナジーボール!」
さらにフィニクスは生命の力を込めた自然の念弾を放ち、トゲキッスを狙い撃つが、
「大文字だ!」
トゲキッスが放つ、激しく燃えさかる大文字の炎に焼かれて消え、さらに炎がフィニクスに襲い掛かる。
「炎を司る龍に炎など効かんぞ! フィニクス、大文字!」
自身を襲うものが炎であれば、それは何の障害にもならない。
トゲキッスの大文字など気にもとめず、フィニクスは上空のトゲキッスへと狙いを定めるが、
「遅いですよ! トゲキッス、サイコバーン!」
放った大文字に隠れて、トゲキッスはフィニクスのすぐ横まで接近していた。
そのまま念力の衝撃波を放ち、フィニクスを吹き飛ばす。
「一気に畳み掛けるぞ! トゲキッス、エアスラッシュ!」
吹っ飛ぶフィニクスを追い、トゲキッスは羽ばたきとともに空気の刃を放つ。
「何の、この程度では負けんぞ! フィニクス、ドラゴンビート!」
対するフィニクスもただではやられない。
体勢を崩しながらも、龍の心臓の鼓動のような強力な音波を放ち、まとめて空気の刃を粉砕し、トゲキッス本体も押し戻す。
「フィニクス、大文字だ!」
「トゲキッス、こっちも大文字!」
フィニクスが煌々と燃えさかる巨大な大の字型の炎を放ち、同時にトゲキッスも激しく燃える大の字型の炎を撃ち出す。
やはりフィニクスの方が強く、トゲキッスの放った大文字は打ち破られてしまうが、
「トゲキッス、サイコバーン!」
体に念力を溜め込んだトゲキッスがその念力を爆発させて衝撃波を起こして炎を打ち消し、さらに、
「エアスラッシュ!」
連続で羽ばたき、空気の刃を次々と飛ばす。
「同じことよ! フィニクス、ドラゴンビート!」
しかしフィニクスの放つ音波の前に刃は粉砕され、トゲキッス自身も押し戻される。
「くっ、トゲキッス、波動弾!」
「させん! フィニクス、エナジーボール!」
トゲキッスが体勢を立て直して波動弾を撃ち出そうとするが、それよりも早くフィニクスのエナジーボールがトゲキッスに直撃し、爆発する。
「とどめだ! フィニクス、大文字!」
フィニクスが炎の翼を広げ、灼熱の大の字の炎を放つ。
その刹那。

真横から飛来した波動弾が、フィニクスを吹き飛ばした。

「……なにっ!? 今の波動弾、どこから飛んで来た!?」
予想だにしていなかった一撃に、驚きを隠せないリュードウ。
「さっきのエナジーボールを受けた時ですよ。話は単純です。あの時、トゲキッスの動きは止まっていなかっただけです!」
大きく体勢を崩したフィニクスを追い、トゲキッスは一気にフィニクスとの距離を詰める。
「決めるぞ! トゲキッス、エアスラッシュ!」
大きく羽ばたき、トゲキッスは無数の空気の刃を放つ。
フィニクスの体を切り裂き、ついにフィニクスは床に墜落し、戦闘不能となる。
「くっ、見えなかったな……いや、見ていなかったが正しいな。慢心こそが敵とはよく言ったものだ。フィニクス、よく頑張った。戻って休んでいろ」
悔しそうな様子でリュードウはフィニクスを戻すが、すぐに切り替え、次のボールを手に取る。
「では、行くぞ。深海に臨め、ミロカロス!」
リュードウの次のポケモンは水タイプのミロカロス。
一番手のギャラドスと比べると細い体つきだが、長さはそのギャラドスとほぼ同じ、かなり大型のポケモンだ。
「ミロカロスですか。コモラゴンが一番小さいって聞いた時から分かってましたけど、やっぱり大物揃いですね」
「ふっ、大きさだけではない。大きさを生かすためにはそれに見合った強さを兼ね備えなければならないし、私のポケモンは全てその強さを兼ね備えている」
「ここまでの戦いで分かってますよ。でも勝つのは僕です! 行きますよ、トゲキッス、サイコバーン!」
トゲキッスが溜め込んだ念力を爆発させ、衝撃波を飛ばす。
しかし、

「ミロカロス、ミラーコート!」

ミラーコートが光のベールを纏う。
念力の衝撃波がミロカロスを捉えるが、直後、ベールが白く輝く光を放出する。
白い光は容易くトゲキッスを呑み込み、吹き飛ばした。
「しまッ……トゲキッス! くそっ、ミラーコート持ちか!」
ミラーコートは、受けた特殊攻撃のダメージを倍にして返す技。
かなり消耗していたトゲキッスが自ら放った技の二倍返しを受けて耐えられるはずもなく、戦闘不能となってしまう。
「トゲキッス、よくやってくれた。後は後続に任せて、休んでてくれ」
トゲキッスをボールに戻し、レオは次の、いや、先ほどのボールを再び取り出す。
「相手が水タイプのミロカロスでよかったですよ。それなら、こいつも互角以上に戦える」
そう言って、レオはボールを掲げる。
「さあ、もう一度お前の出番だぜ! 頼んだぞ、レントラー!」
レオの次なるポケモンは、最初に出したレントラー。
ダメージは少し溜まっているが、バトルするには全く問題ない。
「やはりレントラーだろうな。だが、タイプ相性如きでは私には勝てんぞ。ミロカロス、ハイドロポンプ!」
ミロカロスが口を開き、大量の水を太い水柱のように噴き出す。
「レントラー、躱してギガスパーク!」
対して、レントラーはハイドロポンプを躱すと、破裂音を立てる巨大な電撃の砲弾を撃ち出す。
「水技では分が悪いか。ミロカロス、アイアンテール!」
長い尻尾を硬化させ、ミロカロスはその尻尾を振り下ろし、電撃の砲弾を一刀両断する。
「だったらレントラー、馬鹿力だ!」
レントラーが床を蹴って、一気に飛び出す。
力のリミッターを外し、渾身の突撃を繰り出す。
「ミロカロス、もう一度アイアンテール!」
再びミロカロスは硬化させた長い尻尾を振り下ろす。
しかしパワーはレントラーが勝り、ミロカロスの尾を弾き飛ばし、さらにミロカロス本体に激突、大きく吹き飛ばす。
「今だ! レントラー、ギガスパーク!」
ミロカロスの隙を逃さず、レントラーは巨大な電撃の砲弾を撃ち出す。
「対処する。ミロカロス、アイアンテール!」
体勢を崩しながらも、ミロカロスは硬化させた長い尻尾を振り抜き、どうにかギガスパークの軌道を逸らす。
(奴のミラーコートはレントラーには意味がない。ここまで見る限り、ギガスパークに対してはアイアンテールしか対処方法がなさそうだし、油断さえしなければ、かなり有利に攻めていけるぞ)
「よっし! レントラー、馬鹿力!」
戦況を有利と考え、一気に攻めていくレオ。
対して、
「ミロカロス、アクアリング!」
ミロカロスが頭上に水を噴き出す。
その水が無数の輪を作り上げ、ミロカロスを守るように、ミロカロスの周囲に展開される。
「アクアリング? 気にするなレントラー、構わず突っ込め!」
アクアリングという技については、レオも知っている。
水のリングを纏って、少しずつ体力を回復する技だ。
しかし所詮はそれだけの技。馬鹿力の方がハイドロポンプより強いことは先ほど分かったため、この技しか出来ないのだろう。
などと考えを巡らすレオだったが、

レントラーの渾身の突撃が、何重もの水の輪の前に止められてしまう。

「……え?」
刹那。
「ミロカロス、ハイドロポンプ!」
ミロカロスが大量の水を噴き出し、動きの止まったレントラーを吹き飛ばす。
「考えが甘かったようだな」
そう言うリュードウの口元が、小さく緩んでいる。
「このミロカロスのアクアリングは、通常のポケモンのものより何倍も頑丈なのだ。相手の攻撃を防ぐ盾として、利用することができる」
「……マジかよ……そんなアクアリング、見たことないぞ」
その時。
水の輪が一つ、ミロカロスに吸い込まれる。
水の力が、ミロカロスの傷を少し癒す。
「おまけに本来の回復効果もそのままか……。これは、なかなか厳しい展開かもな……」
リュードウに聞こえないように、小さく呟くレオ。
水の輪を纏う美龍が、レオの前に立ちはだかる。