二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百六十八話 防城戦 ( No.315 )
日時: 2015/07/20 19:14
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: 6k7YX5tj)

その日の夕方には、ホロとセイラもリュードウとのジム戦を終えた。
セイラは何とか勝利したらしい。
曰く、
「最後の一体にヒョウカクを残しておいて正解だった。ミロカロスとドラドーンを纏めて対処してくれた」
とのこと。
一方、ホロは惜しくも負けてしまったらしい。
曰く、
「あのミロカロスのアクアリング、あれやばいだろ!? 倒すまでに時間掛けすぎて、さすがのムクホークでもドラドーンまで倒す体力残ってなかったぜ」
だそうだ。
また、レオたちがジム戦をしている間に、リョーマやエフィシ、ライロウが街の住民全員に二日後の避難勧告を終え、大体の作戦を立てたらしい。
今、一同はテンモン支部の会議室にいる。
「つーわけで、今回の配置はこうします」
リョーマが全員を見渡し、口を開く。
「まず入口ですが、当然ここは何としても防ぐ必要があります。なのでここは比較的手厚い守備を。メジストが来ると洒落にならないので、奴の能力が効かないリュードウ先生、あとアスカ、ライロウに正面の入口を守ってもらいます」
次に、とリョーマはテンモン支部の内部図を取り出す。
「レオとセイラ、エフィシにホロ。この四人には、内部の要所要所を守ってもらいつつ、内部を警備してもらう予定です。入口を突破された場合の保険も兼ねてですが、工作兵が侵入して来る可能性も普通にありますからね」
そして最後に、とリョーマは続ける。
「最上階、宝玉を保管してある金庫がある部屋。ここを、俺が守ります。ライロウからヨザクラタウンの件を、アスカからトパズの実力を聞きました。トパズが建物を直接ぶち抜いて来る可能性もゼロじゃありません。その場合、俺がトパズと一騎打ちです。万が一メジストが来た時のために、セイラは上階の方の配置にしてます。あと、トパズに誰かが付属してる場合に備えて、当日はテレジアを呼びます」
「恐らくヨザクラタウンの一件を考えれば、メジストを能力の効かないリュードウ先生を誘き出すために使って来るはずです。だから敢えてリュードウ先生を正面に置き、メジストをそこで足止めさせる作戦です。トパズの相手は、リョーマに託します」
横からエフィシが補足を付け足す。
「うむ、それで問題ないだろう。リョーマ、万が一お前がトパズに負けた場合の対抗策は、考えてあるな?」
「勿論です。ただしそれを分かった上で動いてほしくないので、後で先生にだけ話します。とりあえず、他の面子は、俺がやられても宝玉は無事だということだけ分かっておいてください」
リョーマの説明を聞いて、リュードウは無言で頷く。
「それでは、これで作戦の共有は終わりです。明日は各自調整に使って、明後日、奴らを何としても撃退、あわよくば捕らえてやりましょう。何か質問とかある人は、個別で俺に聞きに来てください。それでは、解散」



「レオ」
前日の夜。
ポケモンセンターの宿泊室で、レオのいる部屋に入って来たのは、アスカだ。
「どうしたんだ?」
「正直、私は明日が怖い。宝玉を背後にして輝天将と戦った時の感覚が、まだ脳内に染み付いて離れない。一度ああいう場での敗北を経験するとね、いざって時に弱い自分が出てくるのよ」
「そりゃ、僕だって怖くないわけじゃないよ。僕だって、イビルやネオイビルとの戦いで何度も恐怖を経験してきた」
レオの脳裏に、今までの記憶が蘇る。
トレーナーを始めて間もない頃に見たアンタレスの威圧感や、リーティンを敗北寸前まで追い詰めたトゥレイスのハサーガ、そして何より伝説と謳われるはずのポケモンを簡単に操ってしまうマター。
ポッチャマを圧倒したガーネットのフィニクスや、レントラーを相打ちにまで持ち込んだソライトのオールガ、レオのポケモンを容易く二体も撃破したマツリのポリゴンZ。
「でもさ」
それらを受け止めた上で、レオは言葉を続ける。
「それをどれだけ怖がったとしても、やって来るのは間違いないんだ。それにアスカ、戦う前から負けた時のことなんて考えてたら、それこそ本当に負けることになるぜ。心配するなよ、お前が強いのは僕もよく知ってる。いつものアスカらしくさ、自信持っていこうよ」
レオの言葉を聞いて、アスカは小さく微笑みを作り、頷く。
「そうね。あんたに相談してよかったわ。少なくともそんな思いを持ったことがあるのは私だけじゃないし、そいつはそれを乗り越えて戦ってる。しかもそいつが偉そうな幼馴染みときたら、くよくよなんかしてられないわね」
「……偉そうなは余計だけどな」
レオの言葉など聞いてもいないようで、瞳に熱い光を戻したアスカは立ち上がる。
「もう少しゴウカザルたちとトレーニングして来るわ。大丈夫、明日に悪い影響は残さないから。それじゃ、明日は頑張るわよ。おやすみ」
そう言って、アスカは部屋を出て行った。
「明日か……」
再び一人になったレオは、小さく呟く。
レオの脳内に染み付いて離れないのは、禍々しいマターの威圧感、そして、変わり果てたマリアの姿。
「マリア、待ってろよ。いずれ絶対、あのクソ野郎を叩き潰して、助け出してやるからな」
拳を握りしめ、考えていたことが思わず漏れてしまったように、レオは呟く。



そして決戦の日。
アカノハ支部からテレジアが合流し、『ブロック』の面子が全員集合した。
「リュードウ先生。街の住民は全員、ポケモンセンターとジムに避難完了しやした。『ブロック』構成員とジムトレーナーが、中を守っておりやす」
「うむ、分かった。それでは、後は時間を待つだけか」
ライロウの報告を聞き、リュードウは周囲の様子を伺う。
時間は10分前。入口前は、まだ動きはない。
「ライロウ、アスカ。モンスターボールを手に取っておけ。敵に気付いたら、すぐにポケモンを出せるようにしておけ」
横の二人に指示し、リュードウはライブキャスターを起動させる。
「リョーマ、敵の影は見えるか」
『いえ、さっきからテレジアと俺でずっと双眼鏡で見てますが、敵らしきものは見えないっすね。見えたらすぐにアラームで知らせますんで、ご安心を』
「了解した」
それだけ言って、リュードウは通話を切る。
後は周囲を警戒するのみ。
時計の長針が、12を指す。

突如、リュードウたちの前の地面が爆発した。

「来たか!」
リュードウが素早く通知のスイッチを押し、三人がボールを構える。
対して、
「ネオイビルの科学力の産物、N・E輸送ドッグ地底式」
砂煙の奥から聞こえるのは男の声と、
「まさか地下から来るとは、思ってもなかったでしょう?」
女の声。
煙が消えると、そこにいたのは派手なドレスを着た紅のロングヘアーの女と、黒ずくめの服に真っ黒なフードを被った男、そして、大量の下っ端兵士たち。
緋天将ガーネットに、破天将メジスト。
「ギャヒャヒャ! やっぱりお前がいたか、元祖『ブロック』リーダー! 久しぶりじゃねえか、ずっとお前に会いたかったぜ。あん時は世話になったなぁ!」
「確かに貴様の顔を見るのは久方ぶりだな。私は二度と貴様に会いたくなかったが」
火花を散らすメジストとリュードウ。
「ライロウ、アスカ」
メジストと睨み合ったまま、リュードウは二人の名を呼ぶ。
「ライロウ、お前は後ろの下っ端の軍勢を対処しろ。アスカ、緋天将の相手は君に任せる。二人とも、頼んだぞ」
「「了解です」」
ライロウとアスカも、それぞれの役割を遂行しにかかる。
「あら、貴女と戦うのは初めてね。でも、手持ちポケモンの情報はトパズから聞いてるわよ。トパズに手も足も出なかったこともね」
「あら奇遇じゃない。私もあんたのことはこっちの仲間からよく聞いてるわ。シヌマのサクラさんに手も足も出ないってこともね」
ガーネットの挑発を、アスカは軽くいなす。
「口だけは達者なのね。そういう子、私嫌いなのよ。全力で潰してあげる」
ガーネットの瞳から、紅の光が漏れる。
同時に、腿に龍の尾のような紅の模様が浮かび上がる。
「生憎お互い様で。私も、あんたみたいな高飛車な女大っ嫌いなのよ」
それにも臆さず、アスカはボールを構える。