二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百七十話 対極 ( No.317 )
日時: 2015/07/27 09:52
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: hPXqbdLO)
プロフ: コメントほしぃ……

テレジアが送ったメッセージにより、レオやセイラにも内部に侵入者がいることが伝わる。
「それにしても、直接壁を破壊か……こうなるとどこから敵が来るか分かんないな……」
独り言を呟き、
「そうだ、レントラー、出てきてくれ」
レオはレントラーを繰り出す。
「レントラー、近くに敵がいないかどうか、調べてくれ」
レオの言葉にレントラーは頷き、瞳を金色に輝かせる。
透視能力を発動させて周囲を見回すが、やがて再びレオの方を向いて首を横に振る。
「そうか、近くには誰もいないんだね。分かった、じゃあ警備を続けるか。階段あたりは特に重点的に見張らないとな」
レントラーを戻さず、引き連れたまま、レオは通路を進んでいく。



一方、セイラは敵と遭遇していた。
それも、なかなかの大物と。
「車椅子の女……夜天将か」
「貴女と会うのは初めてよね。そうよ、あたしが夜天のラピス。貴女のことも知っているわよ」
感情の無い冷たい瞳を、ラピスはセイラへと向ける。
「マター様の部下として、イビル七将軍の一人、シャウラの名でウチセト地方で活動し、マター様の失踪と共に逮捕。やった事の大きさに比べて、出所が早すぎる気もするけど。それにしても、ほんの一年前まで悪の道を突っ走っていたのに、よく表の社会で生きていけるわね」
「私がどう生きようが、私の勝手だ。貴様には関係ない」
ラピスの言葉をセイラは切り捨て、
「私が今やることは、敵を排除すること。貴様の相手は、私だ」
モンスターボールを手に取り、ラピスに向けて突き出す。
対するラピスも服の腕を捲り上げ、無言でボールを取り出す。
その瞳が紫色の光を放ち、腕には龍の腕のような模様が浮かび上がる。
直後、ラピスの左腕に見えない刃物で切り裂かれたように傷口が生まれるが、ラピスは気にも留めない。
「さあ始めるわよ。敵を見つけ次第倒さないといけないのはあたしも同じ。夜天の魅せる闇に沈みなさい」
「ふふ。じゃあ私は、そっちの世界では絶対に見つけられなかった光を貴様に見せてやろう」
二人の少女が対峙し、それぞれボールを取り出す。
「行って来い、チェキッド!」
「ルナバイン、神秘のひと時を」
セイラの繰り出すチェキッドに対し、ラピスのポケモンはルナバイン。
タイプ相性的には、悪タイプを持つチェキッドが有利。
「別にタイプ相性だけでバトルを考えたくはないけど、エスパー技が通らないのは嫌ね。まあいいわ、始めるわよ」
「いいだろう。チェキッド、氷柱落とし!」
チェキッドが先手を取り、ルナバインの頭上に冷気を放つ。
冷気は大気中で急速に凝固し、氷柱となって降り注ぐ。
「ルナバイン、防ぎなさい。ウッドハンマー」
対するルナバインは手にした杵を頭上に掲げ、バトントワリングのように杵を片手で軽々と振り回し、氷柱を全て防ぎ切る。
「チェキッド、ぶち壊す!」
その隙を狙い、チェキッドが飛び出す。
一気にルナバインとの距離を詰め、軽やかなステップで飛び上がり、長い尻尾を叩きつけるが、
「ルナバイン、躱して気合玉!」
ルナバインは大きく跳躍してチェキッドの一撃を躱し、右手に自らの気を凝縮し、気合の念弾を投げつける。
「チェキッド、影分身!」
チェキッドが体勢を崩したところに効果抜群の一撃が迫るが、セイラは落ち着いていた。
咄嗟にチェキッドは自らの影に姿を映して分身を作り出す。気合玉が捉えたチェキッドの影は消滅する。
「なかなか冷静ね。状況判断力はそこそこ、といったところかしら」
「ふふ。貴様も知っている通り、私は貴様らよりもっと昔から闇の世界に浸っていた。戦闘経験だけで言えば、貴様らには到底負けない自信があるぞ?」
闇に堕ちた者と、闇から抜け出した者。
対極の位置に立つ二人の少女は、それぞれ冷静沈着に敵を見据える。



「チリーン、ハイパーボイス!」
先手を取ったのはトパズ。
チリーンが体内で音を反響させ、大音量の声と共に衝撃波を放つ。
「トロピウス、躱してドラゴンダイブ!」
トロピウスは飛翔し、衝撃波を躱すと、龍の力を纏い、凄まじい殺気と共にチリーンを狙って急降下するが、
「吹き飛ばせ。サイコバーン!」
チリーンは念力を溜め込み、爆発を起こして念力の衝撃波を発し、三倍以上の体格を持つトロピウスを逆に吹き飛ばしてしまう。
「逃がすな、追撃せよ! チリーン、もう一度サイコバーン!
「ちっこい割にやるじゃねえの! トロピウス、リーフストーム!」
チリーンが再び念力の強烈な衝撃波を放つ。
対してトロピウスは素早く体勢を立て直し、ヤシの葉のような翼を激しく羽ばたかせ、鋭く尖った葉の嵐を起こす。
今度は念力の衝撃波が打ち破られ、チリーンが無数の葉の刃に切り裂かれる。
「どんなもんよ! トロピウス、ハイドロポンプ!」
さらにトロピウスは大量の水流を発射し、さらに攻め立てるが、
「チリーン、守る!」
チリーンが周囲に守りの結界を張り、水流は結界の前に阻まれ、消滅してしまう。
「おや、守るに切り替えたのか? 聞いた話だと防御は神秘の守りに頼ってたみたいだが」
「恐らく今回の相手は貴様になると予想し、ラピスから貴様のポケモンの特徴を聞いて技を変えてきたのだよ。貴様のポケモン相手では、神秘の守りはほとんど役に立たないからな」
「なるほどねぇ。確かに、俺のポケモンで状態異常を起こせるポケモンはギャロップくらいだわ」
「これくらいは当然の策だ。チリーン、シャドーボール!」
短冊のような下半身を振り、チリーンは二発の影の弾を放つ。
「トロピウス、撃ち落とせ! ハイドロポンプ!」
再びトロピウスは大量の水流を放ち、纏めて影の弾を薙ぎ払うが、
「チリーン、ハイパーボイス!」
いつの間にかトロピウスの近くまで接近していたチリーンが大音量の音波を放ち、トロピウスを吹き飛ばす。
「おっと、いつの間に! トロピウス、ドラゴンダイブ! 奴の追撃を躱すぞ!」
追撃の回避も兼ね、トロピウスは大きく急上昇する。
上空で龍の力を
「なんつってな! トロピウス、ハリケーン!」
纏わず、トロピウスは激しい羽ばたきと共に嵐のような暴風を起こす。
迎撃の体勢を取っていたチリーンは大きく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「まだ終わんねえぜ! トロピウス、リーフストーム!」
さらにトロピウスはその暴風に鋭い葉の刃を乗せ、無数の葉をチリーンへと向かわせる。
「甘く見てくれるなよ。チリーン、サイコバーン!」
だが輝天将のポケモンはそう簡単にはやられない。
体勢を崩しながらもチリーンは念力を体内に溜め込み、それを爆発させて周囲に衝撃波を撃ち出し、リーフストームを纏めて相殺するが、
「終わんねえっつったろ! ドラゴンダイブ!」
サイコバーンを撃ち終えた瞬間を狙って、トロピウスは龍の力を纏い急降下する。
しかし、
「そうはいかぬわ。チリーン、守る!」
最高のタイミングで繰り出したドラゴンダイブだが、しかし、守りの結界に阻まれ、惜しくもチリーンまで届かず、
「サイコバーン!」
ドラゴンダイブの勢いが途絶えた瞬間を、チリーンの念力の衝撃波が捉え、トロピウスを吹き飛ばした。
「ちぃっ、流石は輝天将、技の使いどころがよく分かってやがるな」
「当然だろう。守るや見切りのような所謂防御技は、積極的に使う技ではない。我は寧ろ本来この技は攻めの技だと考えている。勿論危ない時の防御にも使うが、相手のペースを崩してその隙を突くという点で、これらの技は最適だ」
「なるほどな! トロピウス、リーフストーム!」
体勢を整えたトロピウスが再び激しく羽ばたき、鋭く尖った葉の刃の嵐を起こす。
「チリーン、サイコバーン!」
チリーンは体内の念力を一点に凝縮させ、爆発を起こして衝撃波を放ち、纏めて葉の刃を薙ぎ払う。
「トロピウス、ハイドロポンプ!」
「チリーン、ハイパーボイス!」
トロピウスの噴き出す大量の水流と、チリーンの放つ大音量の衝撃波が激突。
両陣営最強の男同士の戦いは、まだ始まったばかり。