二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百七十一話 紅 ( No.318 )
- 日時: 2016/05/13 11:01
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: lEyrJ7j9)
リョーマの指示を受けて下の階層に降り、テレジアは通路を突き進んでいく。
(まずは、奴らの砲撃で穴を開けられた場所を探しましょうか)
敵の侵入口に進めば、そこからその敵がどこへ向かったかが分かるかもしれない。
そう考えながら、テレジアは足を進めていくが、
コツッ、コツッ……と。
曲がり角の先の通路から、何者かの足音が聞こえる。
(……味方の可能性もなくはありませんわね。ですが)
敵が忍び込んでいるこの状況、例え味方だったとしても、通路の向こうにいる人物は敵と疑った方がいいだろう。
テレジアは足を止めてモンスターボールを手に取り、壁に背中を付けて息を潜める。
(わざわざ戦う必要もありませんわよね。不意打ちで一撃で仕留めますわ)
聴力に全神経を注ぎ、テレジアは敵の距離を測る。
足音が、少しずつ大きくなっていく。
透視能力を使っていたレントラーが、突然足を止めた。
「どうした、レントラー?」
小声でレオが尋ねると、レントラーは低く唸り、曲がり角の奥を睨む。
「そっちに敵がいるのか?」
レオの言葉にレントラーは頷き、瞳の光を一回点滅させる。
敵は一人、というサインだ。
「分かった。じゃあ戦うしかないな。レントラー、行くぞ」
通路の向こうの敵に聞こえないように小さく囁き、
「そこにいるのは分かってるぞ! 姿を見せろ!」
続いて、曲がり角の向こうまで聞こえるように大きく怒鳴る。
少し間をおいて、向こうにも反応があった。
「おやおや、気付かれてしまいましたか。それならば仕方ありませんね」
現れたのは赤髪の執事服の男、緋天将直属護衛ブレイズ。
「貴方の名はよく知っています。私たちの主が作った組織の一つを潰したヒーローだと。そんな方と戦えるとは、光栄です」
「お前は……確か緋天将の部下だな。となるとガーネットも来てるのか」
「ええ。ただしガーネット様は正面入り口前でメジスト様とともに戦っております。内部に入り込んでいるのは、トパズ様を除けばほとんど直属護衛の面々ですね」
小さい薄ら笑いを浮かべ、丁寧な物腰でブレイズは語る。
「ちなみに、一つ言っておきますと、私たち直属護衛軍が潜入しているのはここを占拠するためではない。宝玉回収の邪魔をさせないためです。おそらくトパズ様でも、あの副統率が相手では苦戦なさる。ましてや敵に援軍がいれば、流石のトパズ様でも敗れる可能性があります。宝玉の回収失敗だけは避けねばなりません」
そこでブレイズは一拍置き、
「そういうことですので、先程申し上げた通り、私がお相手させて頂きます」
静かにボールを取り出す。
「上等だぜ。それに、こっちだってリョーマさんの邪魔をされても困る。トパズに勝てるのは、おそらくリョーマさんしかいないからね」
レントラーを戻し、レオも別のボールを手に取る。勝負の条件は整った。
直後、お互いに手にしたボールからポケモンを繰り出す。
「魅惑せよ、ミロカロス!」
「頼んだぞ、パンプッチ!」
ブレイズのポケモンはミロカロス、レオのポケモンはパンプッチ。
「それでは、行きますよ」
ブレイズの紅の瞳が、レオとパンプッチを捉える。
「行きな、スカタンク!」
「お願いしますよ、グライオン!」
ケケのポケモンはスカタンク、エフィシのポケモンはグライオンだ。
「グライオン、剣の舞です!」
グライオンはまず戦いの激しい舞によって攻撃力を高める。
「積まれたか。まぁ一度くらいなら積ませてやるよ。スカタンク、火炎放射!」
対するスカタンクは口から灼熱の炎を放つ。
「グライオン、スカイアッパーです!」
しかしグライオンは右腕の鋏を思い切り振り上げて炎を打ち消してしまい、
「地震です!」
その振り上げた鋏を床に叩きつけ、地面を揺らして衝撃波を起こす。
「おおっと! スカタンク、躱してヘドロ爆弾!」
鋏が振り下ろされる寸前、スカタンクは跳躍して地震を避け、いくつものヘドロの塊を連射する。
「グライオン、スカイアッパー!」
両手の鋏を拳のように動かし、グライオンは次々とヘドロを破壊していくが、エフィシの予想よりヘドロ爆弾が多い。
全てを捌ききれず、ヘドロの爆弾をいくつか受けてしまう。
「グライオン、立て直しなさい。アクロバット!」
「させるかよ! スカタンク、不意打ち!」
体勢を整え、グライオンがスカタンクまで一気に近づこうとするが、その隙を突いてスカタンクが一瞬でグライオンの距離を詰め、素早く前脚の爪を振り抜きグライオンを切り裂く。
「残念、こっちには不意打ちがあるんだよ。スカタンク、火炎放射!」
さらにスカタンクは至近距離から灼熱の炎を噴き出す。
「っ、グライオン、離れなさい!」
グライオンは翼膜を広げて飛び上がり、どうにか炎を回避する。
「よく立て直しました。グライオン、地震です!」
グライオンが尻尾を床に叩きつけ、床を揺らして衝撃波を放つ。
「スカタンク、躱して火炎放射!」
「読めていますよ! グライオン、スカイアッパー!」
スカタンクが跳躍し、灼熱の炎を放とうとするが、エフィシはそれを予測していた。
グライオンが一気にスカタンクとの距離を詰め、鋏を振り上げてスカタンクの顎にアッパーを喰らわせる。
「グライオン、叩き落としなさい! アクロバット!」
宙に飛ばされたスカタンクを追い抜き、グライオンは鋏を振り下ろしてスカタンクを床に叩きつける。
「決めましょう! 地震です!」
そのまま急降下し、グライオンは両手の鋏を思い切り床へと叩きつける。
「行きなさい、ブニャット!」
「よーし行くぜ、テペトラー!」
キキのブニャットに対し、ホロのポケモンはテペトラー。
「先手必勝! ブニャット、切り裂く!」
鈍重そうな体型に似つかないスピードでブニャットは一気にテペトラーとの距離を詰め、鋭い爪でテペトラーに斬撃を喰らわせる。
「テペトラー、波動弾!」
「ブニャット、躱して十万ボルト!」
テペトラーが体の奥から波動の力を呼び出し、それを凝縮して波動の念弾を放つ。
だがブニャットは素早くテペトラーから距離を取り、高電圧の強力な電撃を放って波動弾を相殺。
「これは積んだ方がいいな。テペトラー、ビルドアップ!」
ブニャットが距離を取ったのを好機とし、テペトラーは自らの筋肉を増強させ、攻撃力と防御力を高める。
「一回くらいは積ませてあげるわ。ブニャット、十万ボルト!」
再びブニャットが高電圧の強力な電撃を撃ち出す。
「テペトラー、もう一度波動弾!」
対するテペトラーは再び波動の念弾を放って電撃を相殺、さらに、
「アクアジェット!」
水を纏い、ブニャットのスピードを上回る素早さで突撃、ブニャットを突き飛ばす。
「よっし! テペトラー、サイコパンチ!」
吹っ飛ぶブニャットに狙いを定め、テペトラーは念力を纏わせた拳を突き出し、拳の形をした念力を飛ばす。
「っ、ブニャット、切り裂く!」
体勢の整わない空中で、ブニャットは前脚の爪を振り抜き、何とか念力の拳を切り裂いた。
「アクアジェット!」
対して、水を纏ったテペトラーが再び高速で突撃を仕掛ける。
「ブニャット、十万ボルト!」
だがここはキキが落ち着いていた。
ブニャットが高電圧の電撃を撃ち出し、突撃してきたテペトラーを正面から迎え撃つ。
攻撃力に優れるテペトラーと言えど、流石に効果抜群の電撃を正面から撃ち破ることは出来ず、逆に弾き飛ばされてしまう。
「攻めなさい! ブニャット、辻斬り!」
一瞬のうちにテペトラーに急接近し、ブニャットは鋭い爪を振り抜き、体勢を崩したテペトラーの弱点を的確に狙い、切り裂く。
そして攻撃を終えると、反撃を受ける前にすぐさま距離を取る。
「くっ、テペトラー、仕切り直しだ! ビルドアップ!」
立ち上がったテペトラーが積みの体勢に入るが、
「言ったはずよ、積ませるのは一度だけ! ブニャット、ギガインパクト!」
生まれた隙は逃さない。
途轍もないエネルギーがブニャットを覆い、そのエネルギーを身に纏ったままブニャットは一直線に突撃する。
しかもそのスピードはここまでの戦いで最速。
「やばいっ! テペトラー!」
ホロが叫ぶが、間に合うかなど一目瞭然。
今の状態のテペトラーに、これを躱す術はない。