二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百七十二話 嵐 ( No.319 )
- 日時: 2016/05/14 21:39
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
「チェキッド、もう一度影分身!」
立ち上がったチェキッドが、再び無数の影分身を作り出す。
「さらにシャドークロー!」
チェキッドの分身たちが一糸乱れぬ動きで一斉に攻撃を仕掛ける。
黒く鋭い爪を構えて、一瞬のうちにルナバインを取り囲む。
「所詮は影よ。ルナバイン、ハイドロポンプ」
術を唱え、ルナバインは掌から水柱を放つ。
鞭のように水を操り、次々と分身を薙ぎ払うが、
「行け」
ルナバインが影分身の半分を消したあたりで、背後から分身に隠れていた本物が飛び出す。
反応が遅れ、ルナバインは影の爪にその身を切り裂かれる。
「チェキッド、氷柱落とし!」
さらにチェキッドはルナバインの頭上に冷気を放射する。
冷気は急速に凝固し、無数の氷柱となって降り注ぐ。
「ルナバイン、サイコキネシス」
しかしその氷柱は全て、ルナバインが発する超念力の前に止められ、
「綺麗な氷柱をあげるわ。お受け取りなさい」
念力操作によって、無数の氷柱はチェキッドへと牙を剥く。
「ふふ、ありがたいプレゼントだが遠慮しておこう。チェキッド、ぶち壊す!」
チェキッドは悪タイプ。エスパー技を使われていることを逆に利用し、チェキッドは氷柱の中に突っ込む。
尻尾を振り抜いた一撃で氷柱を諸共粉砕し、もう一振りの一撃がルナバインを叩き飛ばした。
「頂きだ。チェキッド、シャドークロー!」
吹き飛ばされて地面に落ちたルナバインに狙いを定めて、チェキッドが地を蹴って跳ぶ。
影で作った黒い爪を携え、獲物を狙う猫のように一気にルナバインとの距離を詰める。
しかし。
「ルナバイン、ウッドハンマー」
対して、ラピスの指示はウッドハンマー。
しかし、ルナバインが動かしたのは杵を持つ手ではなく、臼を持つ尻尾。
尻尾を横薙ぎに振るい、ルナバインは臼でチェキッドを逆に吹っ飛ばしてしまう。
「なにっ?」
「甘かったわね。ルナバイン、気合玉」
間髪入れず、ルナバインが体のエネルギーを掌に集め、エネルギー弾を投げ付ける。
避ける事も出来ず、気合玉の直撃を食らったチェキッドは、一撃で戦闘不能となってしまう。
「むー、流石に四倍の格闘技は耐えられないか。チェキッド、よく頑張った。休んでいろ」
少々悔しそうにセイラはチェキッドをボールに戻す。
「やられたな。思ったよりも器用な戦い方をするじゃないか」
「正面から突っ込んでくるようなポケモンを処理するのは簡単。……まぁ例外もあるけど」
ラピスの最後の小さな一言は、セイラには聞こえなかった。
「ふふ。だがまだ一体。私の戦力は、まだまだ残ってるぞ」
先程の表情から一転、余裕を取り戻し、セイラは二つ目のボールを取り出す。
「二番目を頼んだぞ、ホムロソク!」
セイラの二体目は、炎とゴーストタイプを持つホムロソク。
「ふふ、まずはさっさとこいつを片付けて二番手を出させるか。ホムロソク、シャドーボール!」
「そう上手くいくかしら。ルナバイン、サイコキネシス」
ホムロソクが影の弾を放つが、ルナバインは強い念力の波を放ち、弾を防ぐ。
爆風と共に煙が上がる。その隙を突き、
「ホムロソク、火炎放射!」
煙に紛れ、気配を消してホムロソクはルナバインに接近し、至近距離から灼熱の炎を放つ。
「っ……ルナバイン、ハイドロポンプ」
慌ててルナバインは水柱を放とうとするが、間に合わず、業火を浴びてしまう。
「今度こそ頂きだ。シャドーボール!」
炎に包まれたルナバインに、ホムロソクは影の弾を撃ち出す。
効果抜群のシャドーボールが直撃し、今度こそルナバインは体を黒焦げにして地に倒れ、戦闘不能となっていた。
「チリーン、シャドーボール!」
「トロピウス、ドラゴンダイブ!」
チリーンが短冊のような半身を振り、影の弾を撃ち出す。
対して、トロピウスは龍の力をその身に纏って突撃。
影の弾を粉砕し、その勢いに任せてチリーンに迫る。
「サイコバーン!」
シャドーボールを破壊されたチリーンだが、怯むことなく次の行動に出る。
体内に念力を溜め込み、それを爆発させて起こした衝撃波をトロピウスにぶつける。
衝撃波の前に龍の力はかき消され、トロピウスの巨体が後ろへ吹き飛ばされる。
「逃すな。チリーン、ハイパーボイス!」
小さな体内で音を反響させ、チリーンはその身に似つかぬ大音量と共に音波を放つ。
「来るぞ! トロピウス、翔べ!」
空中で立て直し、トロピウスは床と垂直に急上昇。
音波を躱し、天井からチリーンを見下ろし、
「リーフストーム!」
ヤシの葉のような翼を羽ばたかせ、鋭く尖った葉の嵐を起こす。
「無駄だ。チリーン、サイコバーン!」
対するチリーンは再び念力を溜め込み、爆発させて衝撃波を飛ばし、葉の嵐を食い止めるが、
「まだまだぁ! もう一発ぶちかませ!」
攻撃の手を緩めないトロピウスは羽ばたき続ける。
勢い変わらず襲い来る鋭い葉の嵐の前に、チリーンの迎撃が追いつかず、遂に嵐に巻き込まれてしまう。
無数の葉の刃が、チリーンの体を片っ端から切り裂く。
「締めだ! トロピウス、ハイドロポンプ!」
最後にトロピウスは大量の水を噴射する。
葉の嵐で拘束されたチリーンを、確実に仕留めに行く。
「忘れたか! チリーン、守る!」
しかしトパズはその上を行く。
リーフストームをあえて防がず、止めの一撃を防ぐことで、相手に流れたペースを再び自分に戻す。
チリーンの張った守りの結界によって、水柱は完全に防がれてしまう。
「忘れるわけがねえ! トロピウス、ハリケーン!」
しかしリョーマがさらにその上を行った。
結界が消えた刹那、嵐のような暴風がチリーンを襲い、吞み込み、吹き飛ばす。
「先鋒取ったりぃ! トロピウス、ドラゴンダイブ!」
龍の力と殺気を纏ったトロピウスが突貫、回避する隙も与えず、チリーンを吹き飛ばす。
床に叩きつけられ、バウンドしてさらに壁に叩きつけられ、床に落ちた時にはチリーンは既に戦闘不能になっていた。
「我のチリーンがここまで早く倒れてしまうとは。仕方あるまい、休んでいろ」
チリーンを戻し、トパズは次のボールを手に取る。
「流石は『ブロック』副統率。少なくとも戦闘にはなるようで安心したぞ」
「余裕だな。一本目を取られたのはそっちだぜ」
「だからと言って臆することもない。最後に我のポケモンが一体でも残っていれば我の勝ち、この段階で焦ってどうする」
お互いに余裕を見せるトパズとリョーマ。
そして、トパズは手にしたボールを掲げる。
「我の二番手は空中戦では絶対に負けん。撃墜せよ、ガルラーダ!」
トパズの二番手はガルダポケモン、ガルラーダ。
「へえ。でも生憎、俺のトロピウスにも空中戦にはなかなか自信があってよ。そう簡単には撃墜されねえぜ」
「減らず口はそこまでだ。その翼をへし折り、叩き落としてくれる」
「上等! その翼を叩き割ってやる! トロピウス、ハリケーン!」
「ガルラーダ、ブレイブバード!」
トロピウスが思い切り翼を羽ばたかせ、嵐のような暴風を起こす。
だがそんな風を受けてもガルラーダのバランスは一切崩れない。
ダメージは受けているのだろうが、動きを全く乱さずに突貫し、トロピウスを吹き飛ばす。
「ぐうぅっ、やるなぁ! トロピウス、リーフストーム!」
空中で体勢を立て直し、トロピウスは再び大きく羽ばたく。
今度はただの風ではない。
暴風に尖った無数の葉を乗せ、葉の刃の嵐を起こす。
「無駄なこと。ガルラーダ、ブレイブバード!」
だがガルラーダの炎の如き勇気のオーラを纏った突貫は、葉の嵐ですら防げない。
「まっ、じかよ! トロピウス、ドラゴンダイブ!」
急遽リョーマは指示を変更。
トロピウスは龍の力と凄まじい殺気をその身に纏い、ガルラーダを正面から迎え撃つ。
お互いの渾身の一撃が正面から激突、これでようやく威力は互角。
(なるほど、よく鍛えられてるぜ。攻撃中の特殊技への耐性が尋常じゃねえ。くっ、こいつぁ厳しい戦いになるぜ)
一筋縄ではいかないことを改めて感じつつ、それでも一歩も引かず、リョーマは目の前の敵を見据える。