二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百八十二話 雷獣 ( No.334 )
- 日時: 2016/07/16 20:46
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: Ft4.l7ID)
ハッサムの鋏が、ヘラクロスの角を挟み、動きを止めた。
さらにもう片方の腕が振り上げられ、ヘラクロスの脳天を狙う。
だが。
「甘い! ヘラクロス、ハッサムを持ち上げろ!」
地に足をつけ、ヘラクロスは角を思い切り振り上げ、逆にハッサムを宙吊りにする。
「何と……ハッサム、離れなさい!」
ブレイズの口調に焦りが生じる。
ハッサムは慌てて鋏を離し、ヘラクロスから距離を取ろうとするが、
「遅えよ! ヘラクロス、投げ飛ばせ!」
ハッサムの腹の下に角をねじ込み、ヘラクロスは角の力だけでハッサムを持ち上げる。
そのままハッサムを力一杯真上にぶん投げ、
「メガホーン!」
翅を開き、真上にヘラクロスは飛び上がる。
硬い角を突き出し、ハッサムの腹を思い切り突き上げ、そのまま天井へと激突した。
「ッ! ハッサム!」
ブレイズが天井を見上げる。
ヘラクロスが離れると、ハッサムは重力に従って為す術なく落下し、床へと激突した。
ハッサムを見れば、既に目を回して、戦闘不能となっていた。
「……ここまでですか。ハッサム、よくやってくれました」
ハッサムの側に屈み込み、ブレイズはハッサムをボールへと戻す。
「さあ、僕のポケモンはヘラクロスも含めてまだ四体が戦える。これで終わりだぜ」
レオとヘラクロスがじりじりとブレイズへ迫る。
「ふむ、どうしましょう。ソライト様から通信が来ないということは、トパズ様はまだ戦っておられる。やはり貴方相手に私では力不足でしたか。それならば」
ブレイズが特に慌てる様子もなく、そう言った直後。
レオの真上から、鉄のシャッターが降りてくる。
「っ!?」
慌ててレオとヘラクロスは後ろへ飛び退く。
間一髪シャッターの下敷きになるのは避けられたが、ブレイズと分断されてしまった。
「ふふふ。ソライト様が既にここのセキュリティシステムをハッキングしています。最もここのセキュリティはこの無数の壁のみのようですが。私がここで貴方を待ち伏せしていたのは、私が敗北した場合にも確実に足止めするためだったのですよ?」
鋼鉄の壁の向こうから、ブレイズの声が聞こえてくる。
「くそっ、ヘラクロス、瓦割りだ!」
ヘラクロスが硬い角を壁に叩きつけるが、壁はびくともしない。
このまま壁を攻撃し続けて、仮に壊せたとして、その時にはもうブレイズはどこにもいないだろう。
「ちっ。残念だけど、迂回するしかないな。ヘラクロス、ありがとう。お疲れ様」
ヘラクロスを戻し、レオは別の道から最上階を目指す。
トパズの切り札、マカドゥスが、その姿を現した。
無数の結晶のように硬く鋭い岩が体を覆い、白く輝く鋭い爪や牙からはバチバチと電流が走る。
右眼は潰れているが、ほんの少しの弱さも全く感じさせない。
(遂に来やがったか。っ、こいつぁ凄え。こんなに強そうなポケモン、今まで見たことねえぜ。下手すりゃ先生のドラドーンより強えんじゃねえの、こいつ)
それでも、一歩も引かない。
恐怖は感じない。あるのは、目の前の相手を必ず倒すという強い意志のみ。
「燃えてきたぜ。こんなに強そうなポケモン、俺のブレイオー以外に初めて見た。こいつを倒せりゃ、もうほとんどネオイビルなんざ怖くねえ。ブレイオー、やってやろうぜ」
「ふっ、前回戦った小娘よりは、ずっと歯応えのあるバトルが出来そうだな。では行くぞ。覚悟は出来たか、『ブロック』副統率よ」
「その言葉、そっくりそのまま返すぜ。輝天将、覚悟はいいな?」
輝天将の口元が僅かに緩み、副統率が戦場に似合わぬ楽しげな笑みを浮かべる。
「マカドゥス、ダイヤブラスト!」
「ブレイオー、聖なる剣!」
刹那、両者の姿が消え、中央で青く煌めく爆発が起こった。
ブレイオーが放った神速の剣の一撃を、マカドゥスは爆発を起こして正面から受け止めたのだ。
「マカドゥス、磁力線!」
「ブレイオー、リーフブレード!」
マカドゥスが磁場を荒らし、磁力の波を起こす。
対するブレイオーは自然の力を帯びて淡く光る剣を携え、磁力の波を破ってマカドゥスに一太刀浴びせる。
「ダイヤブラスト!」
だがマカドゥスは動きを止めない。
剣に切り裂かれた、その瞬間に、マカドゥスの周囲が青く煌めく爆発を起こす。
「ストーンエッジ!」
しかしリョーマも油断はしていない。この反撃は想定内。
ブレイオーの周囲を白い光が渦巻き、無数の岩を形作る。
放たれた煌めく爆風は、無数の岩に防がれる。
「ほう、我がマカドゥスのスピードに追い付くか。やるではないか」
「おいおい、凄えな。ブレイオーの剣を食らって、顔色一つ変えねえとはよ」
相変わらず薄ら笑いを浮かべるトパズに対し、リョーマも余裕の口調を崩さない。
「マカドゥス、悪の波動!」
マカドゥスが全身から悪意のオーラを放出し、闇の力を纏った衝撃波を飛ばす。
「ブレイオー、リーフブレード!」
対してブレイオーは自然の力を纏った剣を一振りして衝撃波を両断し、
「メタルブラスト!」
左手を翳して、強大な鋼エネルギーの砲撃を放つ。
「マカドゥス、雷!」
それに対してマカドゥスは雷に匹敵する超高電圧の電撃を撃ち出し、砲撃を突き破る。
槍のような電撃がブレイオーに直撃するが、ブレイオーはしっかりと地に足をつけたまま耐えた。
「マカドゥス、ダイヤブラスト!」
そのブレイオーに対して、一瞬でマカドゥスが距離を詰める。
マカドゥスの青い岩肌から爆発が生じ、青白く煌めく爆風が放たれるが、
「ブレイオー、聖なる剣!」
ブレイオーは剣の鎬で爆発を受け止め、すかさず剣を横薙ぎに振るい、マカドゥスの岩の体を切り裂く。
「磁力線だ!」
その一瞬後に、マカドゥスの周囲の磁力が荒れる。
磁力の波が噴き出し、ブレイオーをリョーマの元まで押し戻した。
「マカドゥス、雷!」
マカドゥスが咆哮し、超高電圧の電撃が槍のように放出される。
「ブレイオー、聖なる剣!」
右手に携えた剣を突き出し、ブレイオーは雷撃を正面から突き崩す。
凄まじい音を立てて火花が散るが、それでも剣が雷撃を止めた。
(技は全部見えた。とりあえずはどの技も捌けることも確認。後はこっちの展開に引き込め。ペースを握られさえしなければ、勝てる!)
「ブレイオー、リーフブレード!」
「マカドゥス、悪の波動!」
ブレイオーが一歩踏み出し、次の瞬間には淡く翠に光る剣がマカドゥスを切り裂く。
だが直後、マカドゥスの周囲へ悪意に満ちた衝撃波が放出される。
「ダイヤブラスト!」
体勢を崩すブレイオーへ、マカドゥスは青白く煌めく爆発と共に爆風を起こす。
「やっべ、ブレイオー、メタルブラスト!」
咄嗟にブレイオーは床へと鋼エネルギーの砲撃を放つ。
砲撃の反動で遠くへと飛び、爆風を躱してマカドゥスとの距離を取る。
「危ねえ危ねえ。直撃は受けねえぜ。ブレイオー、ストーンエッジ!」
ブレイオーの周囲に白い光が迸り、無数の尖った岩を形作る。
「させぬ。マカドゥス、悪の波動!」
「どうかな! ブレイオー、リーフブレード!」
マカドゥスが悪意を込めた衝撃波を放つが、対してブレイオーは岩を周りに纏ったまま踏み出す。
周囲の岩を盾に利用し、悪の波動を防ぎつつ、自然の力を受けて淡く光る右手の剣がマカドゥスを切り裂いた。
「聖なる剣!」
「ならば、雷!」
さらにもう一歩ブレイオーが踏み込んでもう一太刀浴びせようとするが、マカドゥスの体中から超高電圧の電撃が放出される。
聖なる剣の一撃は電撃に阻まれ、
「ダイヤブラスト!」
間髪入れずにマカドゥスの周囲が青白く煌めく爆風と共に爆破し、ブレイオーを吹き飛ばした。
「ちっ、ダメか。それにしても」
ブレイオーが上手く着地して立ち上がったのを確認し、リョーマが口を開く。
「ダメージは入ってるんだろうが、仰け反るどころか怯みすらしねえとは恐れ入るぜ。そもそもどんな鍛え方すりゃそんな頑丈なポケモンが出来上がるんだよ」
「生憎、貴様らとは戦ってきた環境が違うのでな。負けても地位や財産しか奪われないお前たちの戦場とは違い、我の戦場は負ければ命を奪われる。そもそもの根本的なところが違うのだよ」
それこそ、我がマカドゥスの右眼が示すようにな、とトパズは続けた。
マカドゥスを見れば、全く変わらぬ闘志がその左眼の瞳に宿っている。
恐らく、右眼が無いことなど気に留めてすらいないのだろう。
トパズの言葉を受け止めた上で、
「だけどよ、俺だってただ『ブロック』に入って戦ってるわけじゃねえ。お前には及ばないかもしれねえが、それでも人生変える覚悟を持って今こうしてやってんだ。俺だって、ここで負けるわけにはいかねえんだよ」
リョーマもまた、自身の信念を貫く。
「だからこの勝負、絶対に勝たせてもらう! ブレイオー、聖なる剣!」
「なるほど、その信念は認めよう。だが、それでも我には勝てぬ。マカドゥス、雷!」
ブレイオーが剣を携えて踏み出し、マカドゥスが全身から超高電圧の電撃を放つ。
張り巡らされ襲い来る電撃を掻い潜り、ブレイオーが黄金に輝く剣の剣先をマカドゥスに差し向ける。