二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百八十四話 圧倒 ( No.336 )
- 日時: 2016/07/20 11:01
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
「ネクロシア、ありがとう。戻っていなさい」
ラピスがネクロシアをボールに戻す。
同時にラピスの瞳と、ボールの鎖の模様の紫の光が消える。
「ここまでか。トパズは……まだみたいね」
ふう、とラピスは息を吐く。
「さて、負けてしまったわね。途中から覚醒率もブレブレだったし。あぁ、言い訳と考えてもらって構わないわよ」
で、とラピスは続け、
「どうするの。ここであたしを捕まえるのかしら」
「さあ、どうしようか。副統率を補助するか、それとも貴様を捕らえるか、どちらかだな」
「ですって。ソライト、お願い」
何の気なしにラピスが呟く。
直後。
ラピスとセイラを分断する形で、セキュリティシャッターが降りてくる。
「さ、これでこの道は使えない。トパズを止めたかったら、迂回することね」
シャッターの向こう側から聞こえるのは、ラピスの声、そして車椅子のタイヤの音。
「ちっ、既にシステムが掌握されているか。覗き見とは感心しないぞ、蒼天将」
頭上の監視カメラを見上げて一言言い放ち、セイラは別の道を探す。
残る最後の試合。
展望台の、トパズとリョーマだ。
「マカドゥス、ダイヤブラスト!」
「ブレイオー、メタルブラスト!」
剣を突き刺されたマカドゥスがすぐさま煌めく爆発とともに爆風を起こし、対するブレイオーは鋼エネルギーの砲撃を放って爆風を食い止める。
「悪の波動!」
だがさらにマカドゥスが悪意に満ちた衝撃波を周囲に放ち、ブレイオーごと周囲のものを纏めて吹き飛ばした。
「っ、ブレイオー、リーフブレード!」
「マカドゥス、磁力線!」
着地したブレイオーの剣が自然の力を帯びる。
再びブレイオーは踏み出し、マカドゥスを狙うが、マカドゥスの放つ磁力の嵐に阻まれる。
「雷だ!」
マカドゥスの体中から、バチバチと音を立てて電気が生み出される。
全ての電気を一点に集め、マカドゥスは槍のような雷撃を放つ。
「ブレイオー、聖なる剣!」
黄金の剣を振り抜き、ブレイオーはマカドゥスの放つ雷撃の槍を食い止める。
「ストーンエッジ!」
「悪の波動!」
尖った無数の岩がマカドゥスへと撃ち出されるが、マカドゥスの悪意に満ちた衝撃波により全て粉砕される。
「踏み込め! リーフブレード!」
剣を携えたブレイオーが一気にマカドゥスの懐へと潜り込む。
自然の力を込めて淡く光る剣を振るい、剣を一度、二度、横薙ぎに振るう。
初めてマカドゥスが明確なダメージの反応を見せた。顔をしかめ、少し後ずさりする。
「畳み掛けろ! リーフブレードだ!」
「させぬ。ダイヤブラスト!」
さらに剣をもう一振りするブレイオー。しかしその剣は青白く煌めく爆発に阻まれ、惜しくもマカドゥスには届かない。
「聖なる剣!」
「雷だ!」
ブレイオーの剣が黄金に輝く。
対して、マカドゥスの体から夥しい電気が放出される。
黄金の剣と、雷撃の槍が、再び衝突する。
「磁力線!」
マカドゥスが周囲の磁場を荒らし、磁力の嵐を起こす。
「っ、ブレイオー、来るぞ!」
電撃を何とか破り、さらに磁力の波に剣を向けるブレイオー。
しかし流石のブレイオーでもこの二連撃を捌き切ることは出来ず、磁力の嵐に飲み込まれてブレイオーは吹き飛ばされる。
(くそっ、規格外すぎる! どれだけ攻撃を撃ち込めば倒れるんだ、この化け物。つーか、倒れるどころかほとんど怯みすらしねえ。さっきのリーフブレードでようやく手応えを感じたが、あのペースじゃ先にこっちがスタミナ切れする……!)
そろそろブレイオーの底が見えてくる頃だ。それはリョーマだけでなく、トパズも気付いているだろう。
だが対するマカドゥスは、底が見えない。
まだ何かを隠し持っている。まだ余裕を持って戦っている。
戦闘経験溢れるリョーマだからこそ、分かる。分かってしまう。
(ダメだ。それ以上考えるな、戦え! 俺は勝つ。勝つんだ!)
「ブレイオー、気合い入れ直すぞ! 聖なる剣!」
立ち上がったブレイオーの携える剣が、黄金に光り輝く。
対して。
トパズが。
明確な。
勝ち誇った笑みを浮かべた。
「マカドゥス、雷!」
マカドゥスの岩のような体毛が、ぴんと逆立ち、全身から電気を生み出していく。
ブレイオーの黄金の剣がマカドゥスを切り裂いた。
マカドゥスの動きは、止まらなかった。
刹那。
マカドゥスの体全体から、八本の雷撃の槍が放出された。
「……ん、なぁ!?」
八本の雷撃の槍は、回避の指示を出す隙すら与えず、ブレイオーを貫いた。
「っ! ブレイオー!」
雷撃の槍に貫かれ、ブレイオーがその場に崩れ落ちる。
だが、
「……ほう。今の一撃、耐え抜いたか」
まだ倒れてはいない。
ブレイオーの瞳には依然として燃える炎が宿り、剣で体を支え、何とか立ち上がった。
「我がマカドゥスの八本の雷の槍を耐えたのは、マター殿と聖天将オパールのポケモン以外では初めてだ。流石は『ブロック』副統率の切り札だ」
だからこそ、とトパズは続け、
「最後まで絶対に諦めない、その気持ちに敬意を込めて、貴様にとどめを刺そう」
「……まだ勝負は終わってねえ。負けるまでは、終わりじゃねえ! それが戦うってことだろ!」
この体が動く限り。
リョーマとブレイオーは、絶対に諦めない。
「最後の最後まで、抗え! ブレイオー、聖なる剣!」
残る力を振り絞って、ブレイオーは跳んだ。
全ての力を込めて、黄金の剣の渾身の一撃を放つ。
「マカドゥス、雷!」
対して、再びマカドゥスの全身の体毛が逆立つ。
全てを打ち崩す最強の八本の雷撃の槍が、再び放出された。
黄金の剣が、八本の雷撃の槍と激突する。
だが。
抗いも虚しく。
少しずつ、ブレイオーが押されていく。
そして、遂に。
ブレイオーの剣が、弾かれた。
直後。
無数の雷撃の槍が、再びブレイオーを貫いた。
「……ブレイオー!」
リョーマの叫びが響く。
床に崩れ落ちたブレイオーは、動かなかった。
「……俺の、負けだ」
ブレイオーをボールに戻し、リョーマはトパズの方に向き直った。
「いい潔さだ。『ブロック』をまとめていることはあるな」
「勘違いするな。俺が負けたのは、あくまでお前とのポケモンバトルに関してだけだ」
ポケモンバトルでは、敗れた。
しかし、まだ万策尽きたわけではない。
「俺を倒しても、鍵がなけりゃ、そこの金庫は開かねえ。そんでもって、俺は鍵を持っていない。俺が負けた時のことを何も考えていないとでも思ったか」
これが、万が一リョーマが敗れた時の策。
自身がトパズと戦っている間に、他の者に鍵を持たせ、逃がす。
「……! なるほど、あの時か。統括補佐の、あの小娘か」
「そういうことだ。テレジアはもう別のところに鍵を隠しているはずだ。今からテレジアを捕縛したって無駄だぜ。そもそもそんなことは絶対にさせねえけどな」
リョーマが敗れても、チームで勝つ。
『ブロック』の、勝ちだ。
だが。
「トパズ様、任務完了致しました」
階段の下から、そんな声が聞こえた。
リョーマが振り向けば、階段から現れたのは赤髪に黒い執事服の男。
ブレイズだ。
「お探しの物は、これでよろしかったでしょうか」
トパズに近寄り、そう言いながら、ブレイズが取り出したものは。
テレジアが持っていたはずの、金庫の鍵だった。
「ば……バカな! なんで、それを持ってる!」
今度こそ、リョーマを本物の絶望が飲み込んだ。
「忘れていませんか。ここのセキュリティは、ソライト様が全て掌握している。もちろん監視カメラもです。貴方がたの作戦など、初めから全て筒抜けだったのですよ。あぁ、鍵を持っていたあの少女には、私のミロカロスの催眠術で少々眠っていただいています」
「そういう事だ。残念ながら、我らが一枚上手だったようだな」
「っ……ぐ……まだ、まだだ。リュードウ先生を始め、まだ沢山の戦力が残ってる。足止めされていたとしても、そろそろ着いてもおかしくない頃だ!」
「あぁ、その事ですが」
リョーマの抵抗を嘲笑うかのように、ブレイズが口を挟んだ。
「助太刀は来ないと思いますよ。少なくとも、正面玄関で戦っていた方々はね」
「は?」
「どうやら、メジスト様が盛大に暴れてくれたようです」
リョーマの思考が、追いつかない。
今、この建物はどうなっているのか。
一体、この建物では、何が起こっているのか。