二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百八十六話 意志 ( No.340 )
日時: 2016/07/23 09:16
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: vvxYtBmq)

シラハタウンに戻ったレオ。
父親は一旦研究所に戻り、レオは母親と二人で紅茶を飲んでいた。
特訓をするために帰って来たのだが、折角帰って来たんだから少しくらい休みなさい、というシイナからの配慮である。
テレビをつければ、ジム閉鎖のニュースで持ちきりだ。
「それにしても、大変なことになったわね。まさかジムが閉鎖されちゃうなんてねえ。よっぽどの事態なのね」
普通、全てのポケモンジムが閉鎖されるなどという事態は、滅多なことがない限り起こらない。
それだけ只ならぬ事態なのだということを、改めてレオは思い知らされた。
そして。
自分自身が、これからその事態の中心部に足を踏み込もうとしていることも。
「ねえ、レオ」
そんな息子に、不安そうに母親が声を掛ける。
「確かに、レオは今までネオイビルとの戦いに参加してきた。だけど、だからといってこれからも関わり続ける必要はないのよ。引き下がったって、誰も怒らないわ。命を失ったら、それこそ元も子もないんだから」
シイナの言うことは、決して間違っていない。
親として、危険地帯に足を踏み込む子供を止めたがるのは当然だろう。
しかし。
「ううん、母さん」
レオは引き下がらない。
確固たる自分の意志を持って、母親に言葉を返す。
「僕はネオイビルのボスと一年前にも戦った。僕はあいつが許せない、絶対に許せないんだ。僕はあいつを、ネオイビルを止めたい。僕の手で、決着をつけたいんだ」
「……随分と、たくましくなったわね」
レオの言葉を聞き、シイナは微笑む。
「けれど、これだけは約束よ。全部終わったら、必ず無事に帰って来ること。分かったわね」
「うん。勿論さ。全部終わらせて、笑顔で帰って来るよ」
息子の言葉を聞くと、シイナは微笑み、レオの頭を優しく撫でた。


次の日。
朝早くから、レオとライオはモンスターボールを携え、庭に立っていた。
「特訓を始める前にさ、父さん。一つ、聞きたいことがあるんだ」
「何だ?」
ライオが聞くと、レオは手にしたモンスターボールからエンペルトを繰り出す。
「父さんがくれたポッチャマ、今ではエンペルトにまで進化した。だけど、進化が明らかに普通とは違ったんだ」
「ほう。どうやって進化したんだ?」
「普通はポッチャマからポッタイシ、そしてエンペルトへと進化するはずだ。だけど僕のポッチャマは違った」
レオが思い出すのは、聖天のオパールとの戦い。
「あの時、僕のポッチャマは普通よりも遥かに莫大な進化のエネルギーを纏ってた。そしてポッタイシを飛び越え、一気にエンペルトまで進化した。こんな事ってあるの? 父さんなら、何か分かるんじゃないかと思ってさ」
「なるほどな」
レオの話を聞いて、ライオは頷く。
そして。

「それは、私のせいだよ」

そう、言った。
「……え?」
何を言っているのか分からず、レオは聞き返す。
「どうやら、種明しする必要があるようだな。レオが旅立つ前の日の夜、レオが寝た後に、私はポッチャマにある道具を持たせた」
「ある、道具?」
「変わらずの石。持っている間、ポケモンが進化しなくなるというものだ。私は、ポッチャマにそれを隠し持たせておいた」
「変わらずの石……。でも、なんで」
「お前に、ポケモンの力を上手く引き出させるためだ」
ライオは真っ直ぐな瞳でレオをじっと見る。
「私は、息子には自分の意志で自分が決めた道を進んでもらいたい、そう思っている。N・E団のニュースをお前が見た時、一年前もそうだったように、レオ、お前は必ずN・E団と戦うことになる。直感でそう感じた。だが、あの手の組織が強大な力を得た場合、並のトレーナーでは太刀打ち出来なくなる可能性も大いにあり得る。一年前にイビルを倒したとはいえ、レオ、お前も言ってしまえば一人の普通のポケモントレーナーに過ぎないからな」
レオがホクリク地方に来た時、既にライオはそこまで予測していたのだ。
「だから、お前が選んだポッチャマに変わらずの石を隠し持たせた。ポケモンは進化すれば飛躍的に強くなるが、敢えて進化させないままにすることで、レオ、お前にポケモンの力を引き出させる力をつけさせるためにな」
「……ちょっと待ってよ。じゃあ、何で今ポッチャマは進化しているの……?」
「おそらく、何らかの形で変わらずの石がポッチャマの手元から離れてしまったのだろう。例えば、相手の技で強い衝撃を受けた拍子に、とかな。石が手元から離れたその時点で、ポッチャマはエンペルトにまで進化する十分な力を身につけていたのだろう」
そう言われてレオは思い出す。
ポッチャマが進化する直前、ポッチャマはフーディンの使う念力によって操られ、思い切り壁に叩きつけられていた。
「今だから言うが、世間が今のような事態になった場合、私はお前を呼び戻すつもりだった。その場でポッチャマの石を戻し、エンペルトまで進化しなければ、力不足と判断し、お前をネオイビルとは戦わせないつもりだった」
だが、とライオは続け、
「今の話を聞いて安心した。変わらずの石が離れた段階でエンペルトまで進化したということは、レオ、お前はポッチャマの力を上手く引き出せていたということだ。加えてエンペルトのその眼を見れば分かる。お前とエンペルトの信頼関係も十分だ」
そう言って、ライオはニヤリと笑う。
「さあ、それでは私もポケモンを出そう。勝負は一対一。レオ、私にお前とエンペルトとの絆を見せてくれ!」
ライオが、手にしたボールを掲げる。
「行くぞ、コマレオン!」
ライオの繰り出すポケモンは、百獣の王、ライオンのようなポケモンだ。
首から体の半分以上を覆う立派な鬣を生やし、口からは長く立派な二本の牙が伸びる。
鬣ポケモンのコマレオン。タイプは炎・地面。
「それじゃあ父さん、行くよ」
「ああ。どこからでもかかって来い!」
「よっし! エンペルト、ハイドロポンプ!」
エンペルトが口を大きく開き、極太の水柱を放出する。
「コマレオン、ぶち壊す!」
対して、コマレオンが鋭い爪を持つ右の前脚を上げる。
前脚の渾身の突きによって、水柱は防がれてしまった。
「さあ今度はこちらからだ。コマレオン、地震!」
コマレオンが前脚を地面に叩きつけて大地を揺らす。
「エンペルト、躱してドリル嘴!」
エンペルトが跳躍し、地面の揺れと衝撃波を躱す。
空中で嘴を伸ばすと、ドリルのように高速回転しながらコマレオンへと突撃する。
「コマレオン、迎撃だ! ぶち壊す!」
突っ込んでくるエンペルトに向けて、コマレオンは思い切り前脚を突き出す。
「来るぞ! エンペルト、躱せ!」
激突する直前、エンペルトが軌道を逸らす。
コマレオンの前脚の一撃を躱し、横からコマレオンにドリルの如き鋭い嘴を食い込ませる。
「やるな! ならばコマレオン、フレアドライブ!」
コマレオンの鬣が燃え上がる。
激しく燃え盛る炎がコマレオンの体を覆い、エンペルトを引き離し、
「突っ込め!」
巨大な炎弾のように、コマレオンが地を駆ける。
エンペルトに激突し、大きく吹き飛ばした。
「エンペルト! 大丈夫か!?」
エンペルトが地面に落ちるが、それでも何とか立ち上がる。
「コマレオン、ぶち壊す!」
「エンペルト、ジオインパクト!」
コマレオンが地を蹴り、エンペルト目掛けて一気に跳ぶ。
鋭い爪を突き出し、エンペルトを一気に打ち崩そうとする。
対して、エンペルトの鋼の翼を銀色の光が覆う。
翼を振るってコマレオンの前脚の一撃を防ぐと同時に銀色の鋼の衝撃波を放ち、コマレオンを逆に吹き飛ばしてしまう。
「いい火力だ! コマレオン、フレアドライブ!」
吹き飛ばされたコマレオンが起き上がると、再び鬣を燃え上がらせる。
そのまま地面を蹴り、巨大な炎弾のように突き進む。
「来るぞ、迎え撃て! エンペルト、ハイドロポンプ!」
エンペルトが大きく口を開き、大量の水を太い水柱として放射する。
炎弾の如きコマレオンと、エンペルトの放つ大量の水が激突。
水飛沫と火花が、激しく飛び散る。