二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百八十七話 父子 ( No.341 )
日時: 2016/07/26 08:37
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

炎を纏って突き進むコマレオンに対し、エンペルトも一歩も引かずに水流を放ち続ける。
コマレオンの炎によって水は蒸発されていくが、次第にコマレオンの炎も小さくなっていく。
「今だエンペルト! ジオインパクト!」
コマレオンの炎が衰え出したその刹那。
エンペルトが両翼に銀色の光を纏い、その翼を地面に叩きつける。
銀色の衝撃波が地を裂いて突き進み、コマレオンを吹き飛ばす。
「流石、やるな! コマレオン、地震だ!」
「エンペルト、もう一度ジオインパクト!」
コマレオンが大地を揺らし、エンペルトが銀色の両翼を地面に叩きつける。
双方の放った衝撃波が激突、大地を割るとともに大爆発を起こす。
「エンペルト、ハイドロポンプ!」
爆煙の中へ、エンペルトが大量の水ありませを放出。
水柱は煙の中を突っ切ってコマレオンに襲い掛かるが、
「コマレオン、ぶち壊す!」
鋭い爪を構えた前脚を突き出し、水柱を打ち消す。
「そこだエンペルト! ドリル嘴!」
ハイドロポンプのすぐ後を追うように、エンペルトは嘴を伸ばしてドリルのように高速回転しながら突撃。
コマレオンが水を打ち消し、前脚を引っ込めたその瞬間を狙う。
だが、
「コマレオン、受け止めろ!」
コマレオンが大きく口を開く。
鋭い牙でエンペルトの伸ばした嘴に噛みつき、その動きを封じ、
「ぶち壊す!」
首を下に振ってエンペルトを地面に叩きつけ、すぐさま前脚を突き出し、エンペルトを叩き飛ばした。
「私のコマレオンの顎の力を甘く見るなよ。コマレオン、フレアドライブ!」
吹き飛ぶエンペルトを見据えたコマレオンの鬣が激しく燃え上がる。
地を蹴って大きな炎弾のように飛び、エンペルトとの距離を一気に詰めていく。
「これを食らったらまずい……やるしかないな! エンペルト、ハイドロカノン!」
エンペルトの口元に、身体中の水の力が集中していく。
一気に凝縮された水の力は巨大な水の砲弾を作り出し、エンペルトの口を砲台として巨大な砲弾が撃ち出される。
炎弾となって迫るコマレオンに着弾すると同時に大爆発を起こし、逆にコマレオンを吹き飛ばし、地面に叩きつけた。
「なにっ!? コマレオン、まだ行けるか!」
体を纏う炎で少しは相殺したのか、足を震わせながらも、コマレオンは何とか起き上がった。
「なるほど。水タイプ最強の技、ハイドロカノンを覚えるまでに成長していたか。ではこちらも、本気の本気を見せなければいけないな」
ライオの言葉と同時に。
コマレオンの鬣が燃え上がり、天高く火柱を上げる。

「コマレオン、ブラストバーン!」

コマレオンの長い牙が熱を帯び、見る見るうちに真紅に染まっていく。
その牙を、コマレオンは大地に突き刺す。
刹那。
囲い込むように、コマレオンの周囲の地面から灼熱の炎の壁が噴き出した。
「これ、は……! エンペルト、突き破れ! ハイドロカノンだ!」
エンペルトの口元に、再び水の力が集まり、巨大な水の砲弾を形作っていく。
水の砲弾がエンペルトの口元から撃ち出されると同時に、コマレオンを覆う炎の壁が、その形のまま炎の衝撃波となって周囲に放たれる。
水の砲弾と爆炎の衝撃波が激突する。
しかし。
水の砲弾が着弾し、爆発を起こすも、炎の壁は全く勢い衰えることなく突き進んでいく。
「……っ! エンペルト——」
レオが指示を出すよりも早く。
炎の衝撃波が、エンペルトを飲み込んだ。
「エンペルト!」
炎が過ぎ去った時には、エンペルトはその力を使い果たし、力尽きていた。


「……まだまだ父さんには及ばないか。流石は父さんだね」
「ははは、そりゃそうだ。息子に負ければ、それこそ父の威厳と言うものが無くなってしまうからな」
コマレオンを戻し、ライオはレオの方に向き直る。
「今のバトルで色々なことが分かった。レオ、お前がこの旅でどれだけの力を付けてきたかもな。今のバトル、なかなかいい戦い方だったぞ」
だが、とライオは続け、
「まだまだ足りない点、気になる点も多い。今から一ヶ月、私が直接バトルの指導をしよう。そうだな、四天王くらいには勝てるように徹底的に鍛えてやろう。流石にチャンピオンを超えるレベルにまで到達するには一ヶ月では足りないが、それでも今よりもっと強くなれるぞ。もっとも、ついて来られるならの話だがな」
「任せてよ。どんな厳しい特訓だって、ついて行くさ」
「よく言った。かつては私もいろいろな地方を旅したものだ。競い合った友人もたくさんいる。その中には、現役のジムリーダーをやっている奴もいる。明日以降であれば、私の友人たちもお前に力を貸してくれるだろう。最後の一週間までに、私が出来る全てを使って、お前をとことん鍛えてやる」
さらにライオは言葉を続ける。
「それが終わったら、最後の一週間でホクリクの四天王と戦うといい。私の特訓を全てこなしていれば、四天王くらいには負けないはずだ。ここのチャンピオン、リカルドは四天王と比べても飛び抜けて強いが、それでも互角に渡り合えるくらいにはなれるぞ。あわよくば、勝てる可能性も出て来る。裏を返せば
、それだけ厳しい特訓になるぞ。覚悟は出来ているか?」
そう語るライオの眼差しを、レオはまっすぐに見つめる。

「勿論。覚悟なんて、ここでマターを見た時からとっくに出来てる。僕はこの手であいつを倒し、ネオイビルの野望を阻止する。そして、マリアを助け出す!」

強く拳を握りしめ、レオは父親の目をまっすぐ見つめて言い返した。
「よし。じゃあまずはエンペルトを回復してやろう。それが終われば、早速始めるぞ。私が今まで身に付けた経験、その出来る限りの全てをお前に教えよう」
そして、父親と息子は共にシラハタウンを去っていく。
二人の向かう、その行方は——