二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百八十八話 韋駄天 ( No.343 )
日時: 2016/08/01 00:03
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

テンモンシティの巨大な門から、一人の少年が街にやって来た。
少年の名はレオ。彼はつい昨日まで、父親やその友人たちと共に三週間以上、ホクリク地方やその別の地方でひたすら特訓を重ね、今こうしてまさにホクリクに帰って来たのだ。
レオが帰って来た理由は二つ。まず一つは、ライオの言葉通りに、『ブロック』と手を組む四天王やチャンピオンとバトルをするため。
そして二つ目は、レオが特訓をしてきた理由、ネオイビルとの決戦が近づいて来ているからだ。
ネオイビルは少なくとも一ヶ月程で動き出す。そのため、残り一週間で四天王やチャンピオンと戦い、さらにポケモンの調整も行う必要がある。
「おお、レオじゃねえか。ようやく帰って来たな」
『ブロック』テンモン統括、ライロウが、レオを出迎える。
「ライロウさん、お久し振りです。他の皆はどうしてますか?」
「今も特訓の最中だ。各地のジムリーダーと戦ったり、一人で修業に行ったりな。カンタロウなんかは、ホウエン地方の師匠に直接鍛えてもらうためにホウエンに帰ってる」
さて、とライロウは一拍起き、
「ライオのおっさんから話は聞いてるぜ。四天王と戦うそうだな。うちのヘリで直接連れて行ってやろう。四天王は強いぜ。レオが帰ってくるまでに他の皆も戦っていたが、四天王全員に勝てたのはリョーマだけだった。そのリョーマでも、チャンピオンには勝ててない。だがその分、得るものも多いぜ。頑張れよ」
「はい。今までの特訓の成果を、見せてやりますよ」
レオはライロウのヘリコプターに乗り込む。
大きなプロペラの音を立て、ヘリコプターは飛び立つ。


ポケモンリーグ本部。
四天王の四人とチャンピオンが待ち受ける、ポケモンバトルの総本山だ。
ゆっくりと、レオは巨大なその建物に足を踏み入れる。
まず最初のバトルフィールドは、周囲を数多の木々に囲まれた森のフィールド。フィールド自体にも草が生い茂っている。
そして、そのフィールドを挟んで向かい側に立っている男が一人。
「よく来たな! ライオ博士から話は聞いているぞ! 俺はホクリク地方ポケモンリーグ四天王の一人、草タイプ使いのイダ!」
「よろしくお願いします! ライオの息子、ポケモントレーナーのレオです」
四天王イダ。
筋肉質かつ長身の男性だ。緑の髪は立たせており、服装はまるでギャングが着るような派手な服。龍を模したような緑色の模様付けが施されている。
「お前が噂のレオだな! リカルドに話を聞いてからこの三週間、お前と戦うのをずっと楽しみにしていたぞ!」
「僕もバトルが楽しみですよ。特訓のためとはいえ、四天王の人たちと戦えるなんて」
「ガハハハ! バトルにそんなお堅い理由はいらん。俺とのバトルは、そんな堅苦しい理由は忘れて、力の限り存分に戦え! バトルは五対五だ。準備はいいな!」
「ええ。それじゃ行きますよ、イダさん!」
その言葉を引き金に、二人はモンスターボールを取り出す。
「頼むぜ、ヘラクロス!」
「ぶちかませぃ、モジャンボ!」
レオの一番手は、草タイプに有利を取れる虫タイプのヘラクロス。
対してイダのポケモンは、全身を青い蔓に覆われたポケモン。手と思われる二本の蔓は特に長く、指先も赤い。
奇妙な見た目をしているが、その全長はヘラクロスよりも大きい。
蔓状ポケモンのモジャンボ。タイプは草のみ。
「行くぞヘラクロス! マグナムパンチ!」
ヘラクロスが翅を広げて、突撃を仕掛ける。
一気にモジャンボの懐まで飛び込み、ミサイルのように重い拳の一撃をモジャンボに叩き込む。
「モジャンボ、パワーウィップ!」
拳をまともに受けたモジャンボは吹っ飛ばなかった。
顔をしかめ、少し後退りし、すぐに蔓の腕を思い切り振り下ろしてヘラクロスに叩きつけ、吹き飛ばす。
「俺のモジャンボが一番に優れているのは攻撃面じゃない、防御だ! 物理で戦おうってんなら、こいつの強さを存分に味わうことになるぜ!」
「上等ですよ。ヘラクロス、ストーンエッジ!」
ヘラクロスの周囲を白い光が覆い、無数の尖った岩を形作る。
その岩を一斉にモジャンボ目掛けて放つが、
「もう一度パワーウィップ!」
しなる鞭のように両腕を振り回し、モジャンボは飛来する岩を全て弾き飛ばす。
「気合玉だぁ!」
「マグナムパンチ!」
モジャンボが長い両腕を構え、ありったけの気合を込めた光の弾を放出する。
対して翅を広げたヘラクロスは再び前方へと飛び出す。
ミサイルの如き拳を繰り出して気合玉を弾き返し、
「ヘラクロス、メガホーン!」
硬い角を思い切り突き出し、モジャンボの腹部へと激突。モジャンボを大きく押し戻す。
「マグナムパンチ!」
ヘラクロスのミサイルの如き拳がさらに突き出される。
しかし、
「モジャンボ、ダイヤブラスト!」
モジャンボの周囲の空気が突如として爆発し、青白く煌めく爆風が飛び散る。
爆風を諸に浴びて、ヘラクロスは逆に吹き飛ばされてしまう。
「いいぜぇ! モジャンボ、パワーウィップ!」
モジャンボが腕を振り回し、勢いをつけて鞭のように腕を思い切り振り抜く。
横薙ぎに振り払われた蔓の腕の一撃が、ヘラクロスを叩き飛ばす。
「調子付いてきたぞぉ! モジャンボ、パワーウィップ!」
振り払った腕を、その勢いのままさらにモジャンボはヘラクロスへと叩きつける。
「そこまでですよ! ヘラクロス、マグナムパンチ!」
ヘラクロスもやられっぱなしではない。
重い力を掌に込め、ヘラクロスはモジャンボの腕を掴み、受け止めた。
「ストーンエッジ!」
モジャンボの腕を掴んだまま、ヘラクロスは無数の尖った岩を一斉に撃ち出す。
無数の岩がモジャンボに突き刺さり、モジャンボがよろめいて後退りする。
「シャドークロー!」
モジャンボの腕を離すと、ヘラクロスは翅を広げて突撃。
両腕に鋭い影の黒爪を纏い、体勢を崩すモジャンボへと一気に迫る。
だが。

「モジャンボ、リーフストーム!」

モジャンボの周囲で空気が渦を巻く。
腕を突き出し、モジャンボは尖った葉の刃を乗せた風の渦を放つ。
数多の葉の刃によって影の爪は刈り取られ、ヘラクロスは風に巻き込まれ、逆に吹き飛ばされてしまう。
「っ、ヘラクロス!?」
ヘラクロスが床に落ちる。まだ何とか起き上がるが、ダメージは相当なものだ。
草技が効果抜群のポケモンなら、今のでやられていただろう。
「ほぉ、俺のモジャンボのリーフストームを耐えたか! それならば!」
心底楽しそうにイダは笑みを浮かべ、
「もう一度食らうがいい! リーフストーム!」
再び、モジャンボの周囲を空気が渦巻く。
「来るぞ! ヘラクロス、躱してメガホーン!」
翅を広げ、ヘラクロスが飛翔する。
尖った葉の刃の嵐を掻い潜り、角を突き出して突撃、モジャンボの足元の地面へと硬い角を突き刺した。
「今だ! ヘラクロス、投げ飛ばせ!」
渾身の力を込めて、ヘラクロスが角を真上に振り上げる。
モジャンボが立っている場所ごとフィールドを抉り取り、モジャンボを真上に投げ飛ばした。
「なにぃっ!? モジャンボ、パワーウィップ!」
「突撃だ! ヘラクロス、メガホーン!」
吹き飛ばされながらも、モジャンボが両腕を構える。
それよりも早く、ヘラクロスが角を構えて真上に突撃する。
ヘラクロスの渾身の角の一撃が、モジャンボの腹部に直撃した。
だが。
「パワーウィップ!」
一時は止まったモジャンボの腕が再び動き、密着していたヘラクロスを捕らえた。
「しまった……! ヘラクロス、抜け出せ! シャドークロー!」
「モジャンボ、そのままだ! リーフストーム!」
ヘラクロスの爪が黒い影を纏うと同時に、モジャンボの周囲を葉の刃を乗せた空気が渦巻く。
葉の嵐に覆われ、モジャンボとヘラクロスはもつれ合ったまま地面へと落下する。