二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百九十四話 空間 ( No.349 )
- 日時: 2016/08/03 06:31
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
四天王の一人目、イダを倒し、レオは次のフロアへと進む。
次なるバトルフィールドは、ガラス張りの部屋だ。
ガラスの外は真っ暗で、プラネタリウムのように無数の星や月が浮かんでいる。
雰囲気を出すためか床も黒いが、フィールド自体は特殊な仕掛けはない普通のフィールドだ。
そして、フィールドを挟んで向かい側には一人の人影。
「ようこそ、レオ君。その顔を見る限り、イダ君には勝ったようね。私はホクリク地方四天王の一人、エスパータイプ使いのヤグモ。よろしくね」
「よろしくお願いします! ライオの息子、ポケモントレーナーのレオです」
四天王ヤグモ。
細い目に柔和な笑み、肩くらいまで伸びた金髪に、濃い桃色のドレスを着た妖艶な女性だ。
首には月の形のネックレスを掛け、腕には真珠の腕輪を着けている。
「ライオ博士から話は聞いているわ。息子を徹底的に鍛えてあげて、とのことよ」
「はい、よろしくお願いします。全力で勝負しましょう!」
「ふふふ、当然のことよ。私だって、もとより挑戦者相手に手を抜くつもりなどないわ。覚悟はいいかしら? 私の四天王たるその力を、存分に見せてあげる」
「望むところです! それじゃあ行きますよ、ヤグモさん!」
二人が同時にモンスターボールを掲げる。
「頼むぜ、トゲキッス!」
「豊作の化身よ、ドータクン!」
レオのポケモンは、先程ドダイトスを下したトゲキッス。
対するヤグモのポケモンは大きな銅鐸のような鋼・エスパータイプのポケモン、ドータクン。
(ドータクンか……耐久力が売りのポケモンだけど、その分攻撃力はそこまで高くはないし、大文字を持ってるトゲキッスなら打点もある。さっきの殻を破るの一件があるから、油断だけはしないように行こう)
「よし、トゲキッス、まずは波動弾!」
先攻を取ったのはトゲキッス。
体の奥から波動の力を生み出し、それを凝縮させて波動の念弾を撃ち出す。
「ドータクン、サイコキネシス!」
対してドータクンは瞳を光らせて強い念力を操作し、波動弾を念力で圧縮して押し潰す。
「ならトゲキッス、大文字だ!」
トゲキッスが大きく息を吸い込み、激しく燃え盛る大の字型の炎を吐き出す。
「ドータクン、もう一度サイコキネシス!」
再びドータクンは強い念力を発し、念力の波を放つ。
しかし流石にこの規模の炎を打ち消すことは出来ず、念力の波が逆に掻き消され、ドータクンも炎を浴びてしまう。
「なるほど、なかなかの威力ね。よく鍛えられているのが分かるわ」
だがそこは四天王のポケモン。効果抜群の一撃を食らったドータクンだが、平然としてトゲキッスを見据えている。
「トゲキッス、エアスラッシュ!」
トゲキッスがドータクンの頭上を飛び回り、四方八方から空気の刃を飛ばす。
「ドータクン、ジャイロボール!」
しかしドータクンはその場で超高速の回転を見せ、向かってくる空気の刃を全て弾き飛ばしてしまう。
「ジャイロボールか! ドータクンは遅いポケモンだから、もし食らうと厄介だな……」
ジャイロボールは、自分が相手と比べて遅いほど高火力で攻撃出来る技。
元々鈍足のドータクンにはぴったりの技だ。
「凄いわね、今の動き。素早さも高いんだ。それなら、セオリー通りに行けそうね」
トゲキッスの動きを確認し、ヤグモの口元が僅かに緩む。
「ドータクン、トリックルーム!」
ドータクンが念力を発し、フィールド全体へと放出する。
放たれた念力はフィールドを取り囲み、不思議な空間を作り出す。
「っ……なんだこれ? 特に変わった様子は無いけど……」
だがこのような技を四天王が何の考えもなしに使ってくるはずがない。
「何かわからないけど、とりあえずは警戒してかかろう。トゲキッス、大文字!」
トゲキッスが大きく息を吸い込んだ、その瞬間、
「ドータクン、ジャイロボール!」
ドータクンが超高速で回転する。
問題はそこからだ。
ドータクンが目にも留まらぬスピードで、一瞬でトゲキッスに接近してきたのだ。
「!?」
大文字を放つより早くドータクンの回転攻撃がトゲキッスに直撃し、トゲキッスが吹き飛ばされた。
「っ、そんなバカな! いくら鍛えてもドータクンがここまで早く動けるはずが……」
そこまで考えてレオは気付いた。
「まさか、トリックルーム! もしかして、あの技は」
「その通りよ」
薄ら笑いを浮かべてヤグモが語る。
「トリックルームは、しばらくの間ポケモンの行動順序を逆転させる技。この技効果が続く間は、素早さの遅いポケモンの方が早く行動できる」
さらに、とヤグモは続け、
「素早さ自体に変化があるわけじゃないから、ジャイロボールの威力も変わらないまま。超スピードから繰り出される超火力を味わってもらうわよ。ここから先は、ドータクンの領域。覚悟はいい?」
「っ……そういうことか……!」
レオの手持ちには素早さの遅いポケモンはいない。
一番遅いのはおそらくエンペルトだろうが、それでも並以上の素早さはある。
「誰を出しても同じか……仕方ない、トゲキッス、何とか頑張ってくれ!」
再び宙に浮かび上がり、トゲキッスは頷く。
「ドータクン、サイコキネシス!」
ドータクンが強い念力を発し、念力の波をトゲキッスへと放つ。
「トゲキッス、波動弾!」
恐ろしく速い速度で波が来るため、回避を諦め、トゲキッスは念力を食らってからの反撃に出る。
体の奥から波動の力を生み出し、凝縮した念弾をドータクンへと放つ。
「ドータクン、ジャイロボール!」
波動弾を食らうもドータクンは気にせず、超高速で回転しながらトゲキッスへと突撃。
「サイコバーン!」
トゲキッスが念力を体内に溜め込むが、やはり間に合わず、衝撃波を放つ前にドータクンの回転攻撃を受けて、再び吹き飛ばされてしまう。
「それなら、トゲキッス、一旦離れろ! 距離を取って大文字だ!」
空中で体勢を立て直し、トゲキッスは大きく上昇してドータクンとの距離を引き離す。
そこから炎を放つため、大きく息を吸い込むが、
「意味ないわよ。ドータクン、サイコキネシス!」
ドータクンが強い念力を操り、トゲキッスに念力を掛け、その動きを止めてしまう。
「くそっ、やっぱり速すぎる……! トゲキッス、抜け出せ! サイコバーン!」
「これで決めなさい。ドータクン、引き寄せてジャイロボール!」
トゲキッスに掛かる念力を操り、ドータクンはトゲキッスを見えない糸で引っ張るように引き寄せる。
そのトゲキッスを狙い、ドータクンは超高速で回転しながらトゲキッスへと突っ込んでいく。
回転しながらの突撃でトゲキッスを跳ね飛ばし、地面へと叩きつけた。
「トゲキッス!」
ジャイロボールを何度も食らって、早くもトゲキッスは戦闘不能となってしまった。
「くっ……トゲキッス、よく頑張った。休んでてくれ」
トゲキッスをボールに戻し、レオはヤグモの方に向き直る。
(こんなに早くトゲキッスがやられるなんて。これはトリックルームをどうこうするより、何とかして直接ドータクンを叩いた方が現実的だな。それなら、次はこいつだ)
「さあ、次はどのポケモンで来るのかしら? このトリックルームを攻略しないと、私はおろか、ドータクン一体すら倒せないわよ」
「そのドータクンを倒す策は、もう考えてあります。こいつなら、ドータクンを倒せる!」
レオが次のボールを取り出し、勢いよく投げる。
「頼んだぜ、レントラー!」
レオの二番手はレントラー。フィールドに立つと、大きく吼えてドータクンを睨みつけ、威嚇する。
高パワーのレントラーなら、ドータクンの攻撃を受け止めてから反撃に出られるという考えだ。しかも特性の威嚇で攻撃力を下げることが出来、さらにジャイロボールは効果今一つ。
「どうやってこの子を倒すのか、見せてもらおうかしら! ドータクン、ジャイロボール!」
超高速で回転しながら、ドータクンが突撃を仕掛ける。
攻撃を躱す隙すら与えないスピードで、レントラーに激突する。
「レントラー、馬鹿力!」
ジャイロボールを食らっても、レントラーは飛ばされなかった。
地に脚をつけてしっかりと踏み止まり、お返しとばかりに渾身の力でドータクンに激突、そのまま大きく吹き飛ばした。
「いいぞレントラー! 続けてギガスパーク!」
吹き飛ぶドータクンに向けて、レントラーは激しい破裂音を立てる電撃の砲弾を撃ち出す。
体勢を崩したドータクンに、巨大な電撃の砲弾が迫る。