二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百九十五話 爆発 ( No.350 )
日時: 2016/08/04 11:31
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

吹き飛んだドータクンの眼前に、激しい破裂音を立てる電撃の砲弾が迫ってくる。
だが。

「ドータクン、大爆発!」

ドータクンの瞳から、危険を示すような赤い光が漏れる。
次の瞬間。
ドータクンを爆心地として、フィールド全体を吹き飛ばすような大爆発が起こった。
電撃の砲弾をたやすく消し飛ばし、さらにレントラーをも吹き飛ばす。
「っ……!? ここで大爆発かよ……!」
自分の体力と引き換えになるが、圧倒的な攻撃範囲と威力を持つ大技、大爆発。
威嚇で攻撃力を下げ、さらにギガスパークで多少は威力を削いだのが幸いし、レントラーは吹き飛ばされてもまだ起き上がれるほどの体力は残っていたが、それでもダメージは大きい。
「ドータクン、お疲れ様。充分な仕事をしてくれたわね」
ドータクンをボールへと戻し、ヤグモは次のボールを取り出す。
「ここまではこの子の常套手段よ。トリックルームを貼って相手を一体倒し、仕事が終われば次の相手に大ダメージを与えて退場。そしてまだトリックルームは残っている。次はこの子も、トリックルームの恩恵を受けられるわ」
ヤグモが二番手の入ったボールを掲げる。
「日陰の霊よ、ロップル!」
ヤグモの二番手は、長い耳に、帽子を被ったような頭部が特徴の、可愛げのあるポケモン。
日陰ポケモンのロップル。ゴースト・エスパータイプで、一年前はレオの手持ちにもいたポケモンである。
「ロップルですか。ウチセト地方で旅をしてた頃は僕の手持ちにもいましたよ」
元気にしているだろうか、とレオは少しだけ故郷のポケモンたちのことを思い浮かべる。
「あら、そうなのね。この子も素早さは遅めだから、トリックルームの恩恵を受けることが出来るわよ。それじゃあロップル、シャドーボール!」
ロップルが二本の長い耳で影の弾を掴み、二発の影の弾をレントラーへと投げつける。
「レントラー、耐え切って怒りの炎!」
レントラーが床を踏みしめ、防御の体勢を取る。
二発のシャドーボールがレントラーに直撃するが、レントラーはしっかりと耐え切り、憤怒の感情の如く荒れ狂う灼熱の業火を放って反撃する。
範囲の広い荒れ狂う炎を前にしてロップルは躱し切れず、炎を浴びてしまう。
(ドータクンほどは速くない……いくら遅めだとはいえ、流石に元の素早さがドータクンよりは速いみたいだな。これなら充分戦えるぞ)
「よし、レントラー、床へと氷の牙!」
「させないわ。ロップル、気合玉!」
レントラーの牙に、鋭く長い氷が覆っていく。
対してロップルが掌に気合を溜め込んだ光の弾を作り出し、それをレントラーに投げつける。
「レントラー、目標変更! 気合玉を砕け!」
咄嗟にレントラーは牙の矛先を切り替え、飛来する気合玉に牙を突き刺す。
氷の牙は砕け散るが、気合の弾も打ち消された。
「そのロップルのスピードなら、何とか追いつけますよ。レントラーも、別にそこまで速いポケモンじゃありませんしね」
「見たところ、そうみたいね」
それなら、とヤグモは続け、
「これはどうかしら! ロップル、自己再生!」
ロップルの体が光り、傷が少しづつ癒えていく。
「っ、回復技か! レントラー、ギガスパーク!」
レントラーが電気を一点に集め、巨大な電撃の砲弾を放つが、
「ロップル、躱して!」
ロップルは身軽に大きく跳躍し、砲弾を躱してしまう。
「なるほど。トリックルームを利用して、先制で回復技を出してきますか」
「そうよ。この子の強みは粘り強さ。トリックルームを貼ったドータクンの大爆発を受けて大ダメージを受けた相手、もしくはその次の相手をしぶとく追い詰めるのがこの子の役割よ」
ドータクンとはまた違った方向でやりづらい相手だ。どれだけ攻撃を叩き込もうとしても、それよりも早く回復されてしまう。
「それなら全体攻撃で確実にダメージを与える! レントラー、怒りの炎!」
レントラーが大きく息を吸い込み、荒れ狂う怒りの炎を広範囲に噴き出す。
「ロップル、炎の勢いを抑えて! アイスバーン!」
ロップルが自分の周囲へと氷の衝撃波を放つ。
炎を打ち消すには及ばないが、幾分かは炎の勢いを弱める。
「氷の牙!」
「させないわよ。シャドーボール!」
レントラーが牙に鋭い氷を纏わせるが、ロップルは影の弾を長い耳で掴み、耳を振ってそれを投げつける。
「ちっ、レントラー、壊せ!」
二発の影の弾に対し、レントラーは氷の牙を突き刺し、影の弾を破壊する。
「ロップル、アイスバーン!」
軽やかなステップで一気にレントラーへと近づき、ロップルは氷の衝撃波を放つ。
「ぐっ、レントラー、もう一回氷の牙!」
衝撃波を受けて押し戻されるレントラーだが、牙に氷を纏わせて一歩突き進み、ようやく牙をロップルへと突き刺した。
「今だ、ギガスパーク!」
「そうはいかないわよ。ロップル、自己再生!」
レントラーが電気を一点に溜め込むが、先にロップルが体の傷を癒し、体力を回復させる。
「来るわよロップル、躱して!」
放たれる電撃の砲弾は、ステップによって躱されてしまう。
(くそっ、どうすりゃいいんだ! どれだけ叩き込んでもそれより先に回復される。こっちの体力もそろそろ持たないし、本格的にやばいな……)
忘れそうになるが、レントラーはドータクンの大爆発も食らっている。
次の攻撃を受けると、そろそろまずい。
「どうにかしてダメージを稼ぐ必要がある! レントラー、怒りの炎!」
レントラーの技の中で一番効果がありそうなのは怒りの炎。レントラーは荒れ狂う怒りの感情の如き灼熱の業火を撃ち出す。
「ロップル、アイスバーン!」
氷の衝撃波を放ち、ロップルは炎の勢いを弱めてしまう。
炎がロップルを覆うが、致命傷には至らない。
「ギガスパーク!」
「自己再生!」
レントラーが電気を一点に集めるが、それを見てからロップルは自らの傷を癒す。
まさに、その直前に。

フィールドを覆っていた摩訶不思議な念力が、音もなく崩れ落ちた。

つまり。
「トリックルームが、消えた!」
「……しまった」
ボソリと、ヤグモが呟く。
「このタイミングで、トリックルームが……!」
レントラーが電撃の砲弾を放ったその瞬間、ロップルはまだ回復しきれていない。
「まずい! ロップル、中断よ! 躱して!」
慌ててロップルが自己再生を中断するが、間に合わない。
電撃の砲弾の直撃を受け、ロップルは大きく吹き飛ばされる。
「来たぞ! レントラー、チャンス到来だ! 怒りの炎!」
待ってましたとばかりに、レントラーはやられ放題された鬱憤を晴らすかのような荒れ狂う灼熱の業火を放つ。
「ロップル、少しでも勢いを抑えて! アイスバーン!」
ロップルが氷の衝撃波を周囲に放つが、トリックルーム展開時と比べてやはり炎の回りは早く、打ち消せる炎は先程よりも減っている。
荒れ狂う炎に、ロップルが焼かれていく。
「これで決める! レントラー、氷の牙!」
「食い止めるわよ! ロップル、シャドーボール!」
長く鋭い氷の牙を剥くレントラーに対し、ロップルは長い耳を使い、影の弾を投げつける。
氷の牙がロップルを貫いた直後、二発の影の弾がレントラーに直撃した。
「ロップル!?」
「っ、レントラー!」
ロップルはその場で地面に倒れ、レントラーも吹き飛ばされて地に落ちる。
両者共に、戦闘不能だ。
「レントラー、よくやってくれた。流れは元に戻ったぜ」
「ロップル、お疲れ様。ごめんね、調子に乗りすぎちゃったわ」
お互いにポケモンを戻し、次のボールを手に取る。
「これでトリックルームは崩れた。勝負は振り出しに戻りましたよ」
「そうね。なら、次からはトリックルームに頼らない子たちを出していこうかしら」
二人が同時にポケモンを出す。
「エンペルト、頼んだぜ!」
「叡智なる頭脳よ、フーディン!」
レオの三番手は、ここでエースのエンペルト。一気に流れを掴み取ろうという考えだ。
対して、ヤグモの三番手はフーディン。
フーディンというポケモンとは、一度聖天将とのバトルでエンペルトが戦っている。
「フーディンか……エスパータイプの中でも指折りの強力な念力を操るポケモン。エンペルト、気を引き締めて行くぞ」
「見た感じだけど、今までの二体より強いわね。だけどフーディン、ここは確実に勝っておきたいところ。頼むわよ」
フィールドを挟んで、エンペルトとフーディンが睨み合う。