二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百九十七話 信号 ( No.352 )
- 日時: 2016/08/06 10:30
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: JZXB6IQ1)
「未知なる生命よ、ビビッドン!」
ヤグモの四番手は、レオも見たことがあるが実に奇妙なポケモン。
信号機のような顔をぶら下げた長い首に、三本の丸い指の先はこれまた信号機の色。胴体の色も青、黄、赤。足は三本あり、バランスの悪い体を支えている。
シグナルポケモンのビビッドン。謎が多いポケモンで、電気・エスパータイプ。
「ビビッドンか……なるほど、エンペルトに有利な電気タイプ。エンペルト、気をつけて行くぞ」
わざと気合玉を受けたのもあって、エンペルトも消耗しているが、レオの言葉に応えて頷く。
「よし、エンペルト、ハイドロポンプ!」
エンペルトが大きく息を吸い込み、大量の水を放出する。
しかし。
「ビビッドン、目覚めぬパワー!」
ビビッドンの三つの目に謎の力が集まる。
刹那、ビビッドンが三つの目から真っ黒なビームを撃ち出した。
「っ!? な、なんだこれ!?」
真っ黒な光線に水柱は打ち破られ、さらにエンペルトへと直撃する。
「雷!」
目が真っ黒になったビビッドンが、間髪入れずに雷に匹敵するほどの超高電圧の電撃を放つ。
雷撃がエンペルトを貫き、エンペルトは床に倒れる。
強烈な二発の攻撃を立て続けに受け、エンペルトはここで戦闘不能になってしまった。
「マジかよ……! エンペルト、よくやってくれた。休んでてくれ」
レオはエンペルトを労い、ボールへと戻す。
「目覚めぬパワー……だっけ? 聞いたこともない技だな……」
「私もほとんど見たことないわよ、この技を使うポケモンは」
おそらくビビッドンだけなんじゃないかしら、とヤグモは続け、
「目覚めぬパワーは謎のエネルギーの光線を放つ、強力なエスパータイプの技よ。あまりに強力すぎて撃った直後はビビッドンの目がやられちゃうんだけど、今の場面ではエンペルトがその場から動けなさそうだったし、問題なかったわ」
先ほどビビッドンの目が真っ黒だったのはそういうことだったのだろう。
「なるほど……だけど分かってしまえば対策方法はある。頼んだぞ、パンプッチ!」
レオの四番手はパンプッチ。
特殊技を扱うビビッドンに対して特防が高く、さらに電気技の威力も半減できる。
「なるほど、パンプッチで来たわね。だけど私のシビルドンの攻撃力は特防やタイプ相性なんて容易く打ち破るわ」
「イダさんがヒカリゴケを出した時にも同じようなことを言われましたよ。だけど今度はそうは行きません! パンプッチ、シャドーボール!」
手にした葉っぱの杖を振り、パンプッチが黒い影の弾を飛ばす。
「ビビッドン、シグナルビーム!」
対してビビッドンは指先から激しく点滅する光線を放ち、シャドーボールを防ぐと、
「雷!」
身体中から電気を発して、超高電圧の電撃を放つ。
「隙が大きいですよ! パンプッチ、躱してハイドロポンプ!」
電気を生み出す僅かな時間も、小回りが利き技の出が早いパンプッチにとっては十分な隙。
杖を構え、ふわりと浮き上がって雷撃を躱すと、杖の先から大量の水を噴射し、ビビッドンをヤグモの元まで押し戻す。
「なるほど、それならこれね。ビビッドン、シグナルビーム!」
ビビッドンの指先から、激しく点滅する光線が飛び出す。
「パンプッチ、放電で防御だ!」
対して、パンプッチは目の前に電撃を撒き散らし、電撃の壁を作って光線を防ぐ。
「ならこれはどう? ビビッドン、熱風!」
「問題ありませんよ! パンプッチ、ハイドロポンプ!」
ビビッドンがどこからか灼熱の風を放つが、パンプッチは杖の先から太い水柱を噴射。
風を打ち破り、その奥のビビッドンを捉える。
「今だぜパンプッチ、シャドーボール!」
体勢を崩したビビッドンの隙を突き、パンプッチは杖を振って黒い影の弾を放つ。
吸い込まれるようにビビッドンへと飛び、そのまま直撃する。
エスパータイプのビビッドンには効果抜群、だが、
「ビビッドン、シグナルビーム!」
シャドーボールを受けたビビッドンは三本の足でバランスを取ってその場にしっかりと踏み止まり、吹き飛ばされることなく反撃に出る。
カラフルな指の先から激しい光を放つ光線が飛び出し、攻撃直後のパンプッチを捉えた。
「雷!」
吹き飛ぶパンプッチに狙いを定め、ビビッドンが身体中から電気を生み出し、超高電圧の電撃を撃ち出す。
「躱しきれないな……パンプッチ、マントで防御!」
羽織ったマントを翳して、パンプッチは雷撃を受け止める。
雷撃のダメージをマントが抑える。それでもダメージは負うが、直撃を食らうよりずっとましだ。
「よし、パンプッチ、エナジーボール!」
雷を耐え切り、パンプッチは杖から自然の力を込めた光の弾を撃ち出す。
「ビビッドン、躱してもう一度雷!」
ビビッドンが三本の足で地面を叩きつけ、跳躍する。
光の弾を躱して、全身から電気を生み出すが、
「シャドーボール!」
軽やかに杖をもう一振りし、パンプッチは黒い影の弾を飛ばし、飛び上がったビビッドンを撃墜する。
「僕のパンプッチの強みは、技の出が早いところ。空中なら、ビビッドンもバランスを保てないでしょう!」
雷を放つよりも早く、パンプッチは技を放てる。
ビビッドンは地面に落ち、砂煙が上がる。
だが。
「本当にそうかしら?」
ヤグモが不敵な笑みを浮かべた、次の瞬間。
砂煙の中から、超高電圧の電撃が飛び出した。
「なにっ!?」
予期せぬ一撃。反応が遅れ、パンプッチは雷撃をまともに受けてしまう。
「台詞を借りるけど、私のビビッドンの強みは打たれ強さよ。耐久力の話じゃなくて、攻撃を受けてもすぐに体勢を立て直せるの。空中だろうと関係ないわ」
自慢げにヤグモは語る。
パンプッチには雷は効果今一つだが、如何せん技の威力が高い。不意の一撃だったのもあり、ダメージは大きいだろう。
さらに不運は重なる。雷の追加効果が発動し、パンプッチを麻痺の状態にしてしまう。
「さあ攻め立てなさいビビッドン! シグナルビーム!」
ビビッドンが両手を突き出し、指先から激しい光を放つ光線を撃ち出す。
「くっ、パンプッチ、放電!」
目の前に電撃を撒き散らして電撃の壁を作り、パンプッチは何とか光線を防ぐが、
「熱風!」
立て続けにビビッドンの攻撃が来る。
今度はどこからか、熱い風がパンプッチへと吹きつけてくる。
「これなら返せる! パンプッチ、ハイドロポンプ!」
杖を振って大量の水を噴射し、パンプッチは熱風を打ち破り、ビビッドンを捉える。
「エナジーボール!」
連続して杖を振るパンプッチだが、やはり麻痺の影響でスピードは落ちている。
「ビビッドン、貫きなさい! 雷!」
全身から電気を発して、ビビッドンは超高電圧の電撃を放つ。
雷撃がエナジーボールを粉砕し、さらにパンプッチを狙う。
「っ、パンプッチ、防げ!」
マントを翳し、パンプッチは雷撃を受け止める。
「そろそろ限界よね! ビビッドン、目覚めぬパワー!」
何とか雷撃を受け切ったパンプッチへ、ビビッドンは三つの目から謎の力による真っ黒な光線を撃ち出す。
雷を受け切った直後の、麻痺したパンプッチには、これを躱すことは不可能。
漆黒の光線が、パンプッチへと迫り来る。
「その技を待ってた! パンプッチ、飛べ!」
パンプッチがカッと目を見開く。
思い切り両手で床を叩き、自身の浮遊能力も使い、最後の力を振り絞って、パンプッチは飛び上がった。
「うそっ……!?」
ヤグモが驚愕の表情を浮かべたのは、とどめの一撃を躱されたから、それだけではない。
「さっき言ってましたよね! 目覚めぬパワーの直後は、ビビッドンの視界がやられるって! パンプッチ、シャドーボール!」
パンプッチが杖の先に影の弾を作り上げ、その杖を直接ビビッドンへと叩きつける。
視界を失ったビビッドンに回避が出来るはずもなく、杖の一撃が直撃し、ビビッドンが大きくよろめいた。
「これで決める! パンプッチ、エナジーボール!」
「っ、ただではやられないわ! ビビッドン、シグナルビーム!」
パンプッチ杖を振ったその瞬間、ビビッドンの目を覆う黒いエネルギーが消える。
パンプッチの杖の先から光の弾が放たれたのと、ビビッドンの指先から光線が放たれたのは、ほぼ同時だった。
光の弾がビビッドンの脳天に直撃し、光線がパンプッチの腹部へと命中。
ビビッドンは数歩よろめいて床に倒れ、パンプッチは吹き飛ばされて床に落ち、両者共に戦闘不能となった。
「パンプッチ、よくやった。根性見せてもらったぜ」
「ビビッドン、お疲れ様。充分役目を果たしてくれたわ」
お互いにポケモンをボールへと戻し、最後のボールを取り出す。
「さあ、これで最後ですね」
「そうね。私のエースは手強いわよ、覚悟してね」
「望むところです。何が出てきても、僕は負けませんよ」
そして、双方のポケモンが繰り出される。
「最後は頼んだぜ、ディザソル!」
「神の使いよ、フォリキー!」