二次創作小説(紙ほか)

Re: 第百九十八話 神道 ( No.355 )
日時: 2016/08/07 18:52
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

レオの最後のポケモンは、エスパータイプに有利な悪タイプのディザソル。
対するヤグモのエースは、首の長い四足歩行のポケモン。白い二本の長い髭を生やし、首は体毛に覆われている。
そしてひときわ目を引くのは黒い尻尾。尻尾の先には、紅の瞳に鋭い牙を持つ丸い顔がある。
未来予知ポケモンのフォリキー。ノーマル・エスパータイプだ。
「最後はフォリキーか……厄介なポケモンだけど、ディザソルなら勝てる」
「ディザソルの実力に自信があるみたいね。その力、私に見せてちょうだい!」
「上等です! ディザソル、ぶち壊す!」
ディザソルが床を蹴って一気に飛び出し、一瞬のうちにフォリキーの懐まで飛び込み、額の鎌を叩きつける。
「随分と速いわね……! フォリキー、シグナルビーム!」
押し戻されたフォリキーの両眼が激しい光を放つ。
ビビッドンのような光線ではなく、残光を引きながら光を放つエネルギー弾がフォリキーの眼から撃ち出された。
「ディザソル、サイコカッター!」
額の二枚の鎌に念力を纏わせ、鎌を振り抜いてディザソルは二発のエネルギー弾を破壊、さらに、
「神速だ!」
ディザソルの姿が消える。風を切るような音が、フォリキーの周りで響く。
「ぶち壊す!」
「そうはいかないわ。ハイパーボイス!」
フォリキーの背後から攻撃を仕掛けようとするディザソルに対し、フォリキーは上を向いて大きく吼える。
空気の振動がフォリキーを中心として周囲に衝撃波を起こし、ディザソルを逆に吹き飛ばした。
「フォリキー、噛み砕く!」
フォリキーの黒い尻尾が伸びる。
吹き飛ぶディザソルに狙いを定めて、黒い尻尾が牙を剥く。
「ディザソル、神速で躱せ!」
宙を舞うディザソルの姿が消えた。
黒い尻尾は何もない空間を噛み砕き、ディザソルはレオの元まで一瞬で戻って来る。
「さあ、どうやって隙を作ろうかしら。フォリキー、連続でシグナルビーム!」
フォリキーの両眼が激しく光り、点滅するエネルギー弾が立て続けに撃ち出される。
「ディザソル、掻い潜って近づけ! ぶち壊す!」
エネルギー弾の弾幕の中にディザソルは突っ込んでいく。
襲い来るエネルギー弾を飛び越え、掻い潜り、ディザソルは少しずつフォリキーとの距離を詰めていく。
「フォリキー、ハイパーボイス!」
「ディザソル、躱して火炎放射!」
フォリキーが吼え、空気を振動させて衝撃波を飛ばすが、ディザソルは大きく跳躍してそれを躱すと、頭上から灼熱の炎を噴き出す。
しかし、

「フォリキー、噛み砕く!」

フォリキーの尻尾が伸び、尻尾の先の顔が口を開く。
上空から降ってくる炎に喰らいつくと、たちまちその炎を食べてしまった。
「っ!?」
「隙が出来たわね。シグナルビーム!」
尻尾の顔の瞳から、エネルギー弾が放出される。
空中にいるディザソルを吹き飛ばし、地面へと叩き落とした。
「フォリキーの尻尾は、命あるものは食べられない代わりに、闇や空間を削り取って食べてしまうのよ。飛び道具を食べるくらい、造作もないわ」
ヤグモの言葉に呼応し、フォリキーの尻尾が悍ましい雄叫びを上げる。
「さあ、勝負はここからよ。フォリキー、噛み砕く!」
再び尻尾が伸び、黒い顔が鋭い牙を剥いてディザソルに迫る。
「っ、ディザソル、ぶち壊す!」
咄嗟にディザソルは鋭い爪を構えた前脚を突き出し、尻尾を弾き返すと、
「サイコカッター!」
二枚の鎌に念力を纏わせ、鎌を振り抜いて二枚の念力の刃を飛ばす。
「フォリキー、サイコキネシス!」
対してフォリキーは強い念力を放つ。
二枚の刃に念力を掛け、その念力を操って刃を捻じ曲げ、破壊する。
「ディザソル、火炎放射!」
その隙にフォリキーの横へと回り、ディザソルは灼熱の炎を噴き出すが、
「噛み砕く!」
フォリキーの黒い尻尾が伸び、またしても炎を食べてしまう。
「そこだディザソル、ぶち壊す!」
尻尾の顔が炎に噛み付いた瞬間に、ディザソルが飛び出す。
フォリキーとの距離を一気に詰め、前脚を突き出してフォリキーを吹き飛ばした。
「フォリキー本体は尻尾で身を守っている。なら尻尾が動いた瞬間に攻撃すれば、身を守るものはありませんよね!」
「なるほど、上手く考えたわね。だったら、次からはそれも対策させてもらうわよ。フォリキー、ハイパーボイス!」
立ち上がったフォリキーが天高く咆哮し、空気を振動させて衝撃波を周囲へと放つ。
「ディザソル、神速で回避!」
一瞬でディザソルはフォリキーの頭上へと飛び、衝撃波を回避。
「サイコカッター!」
「シグナルビーム!」
ディザソルが念力を纏わせた鎌を振って二枚の念力の刃を飛ばし、対してフォリキーは両眼から激しい光を放つエネルギー弾を飛ばす。
お互いの技が激突し、爆発を起こす。
「噛み砕く!」
フォリキーが尻尾を伸ばし、さらにその尻尾を大きく振る。
黒い顔が一振り目で爆煙を喰らい尽くし、二振り目でディザソルの脚へと噛み付き、さらに、
「叩きつけなさい!」
尻尾を床へと振り下ろし、捕らえたディザソルを床へと叩きつけた。
「煙を使ってもフォリキーからは逃れられないわよ。邪魔するものは全て食べ尽くし、確実に標的を狙う、それが私のフォリキーよ」
地面に叩きつけられたディザソルは、まだ何とか起き上がる。
(流石は四天王のエースだ、まるで隙がない。尻尾で火炎放射とサイコカッターは防がれるし、ハイパーボイスがある以上神速での奇襲も効かない。どうする……技を躱して、その隙を突いていくしかないか……?)
頭の中で策を巡らすレオだが、ヤグモはその時間を与えてはくれない。
「フォリキー、シグナルビーム!」
「っ、ディザソル、躱してぶち壊す!」
フォリキーが両眼を光らせ、激しい光を放つエネルギー弾を撃ち出す。
ディザソルは横に飛んで弾を躱すと、額の鎌を構えてフォリキーへと突っ込んで行くが、
「ハイパーボイス!」
フォリキーの咆哮と共に放たれる衝撃波によって、ディザソルの一撃はフォリキーには届かない。
「ディザソル、神速!」
ハイパーボイスを撃ち終わった直後を狙って、ディザソルは神がかった速度でフォリキーへと激突する。
「逃さないで。フォリキー、シグナルビーム乱射!」
フォリキーの両眼と尻尾の顔の両眼が光り、四方八方へとエネルギー弾を発射する。
「っ、ディザソル、神速で回避!」
フィールドを飛び回ってシグナルビームを躱すディザソルだが、ろくに狙いも定めず放たれた無数のエネルギー弾は逆に回避が難しく、回避し続けていたディザソルもやがて弾を浴びてしまう。
「そこね。フォリキー、噛み砕く!」
ディザソルの動きが止まった瞬間を狙って、フォリキーは黒い尻尾を伸ばす。
鋭い牙を剥いた黒い顔が、ディザソルの脚を狙う。
だが、
(……そうだ! その手があった!)
ここでレオは気づいた。フォリキーへ、確実に攻撃を当てる方法がある。
ディザソルの前脚に、鋭い牙が食い込んだ。
その刹那。

「今だ! ディザソル、火炎放射!」

ディザソルが、灼熱の炎を噴き出した。
「無駄よ。フォリキー、噛み——」
ここまで言ってヤグモは気付く。
尻尾の顔は、ディザソルの脚に食らいついている。
つまり。
防御が間に合わない。
「しまった……! しょうがない、フォリキー! 一発耐えて、ディザソルを放り投げなさい!」
灼熱の業火が、フォリキーを飲み込む。
身体中を焼かれていくが、それもフォリキーは耐えた。
しかし、
「遅いですよ! ぶち壊す!」
額の鎌を、思い切りディザソルは振り下ろす。
狙い目は、尻尾の黒い顔。その額へと、ディザソルは二枚の鎌を力一杯叩きつけた。
黒い顔は悍ましい悲鳴をあげ、そのまま動かなくなった。
「これで噛み砕くは使えませんね。後は本体を叩くだけ!」
「っ、一本取られたわ。だけど、ディザソルも体力は残り少ないわよね。そこまで追い込めば、後はシグナルビームとハイパーボイスだけで充分よ」
どちらの言い分も、間違ってはいない。
次に攻撃を当てた方が、勝つ。
「ディザソル、神速だ!」
ディザソルの姿が消える。
神がかった速度でフィールドを縦横無尽に飛び回り、フォリキーを撹乱する。
「無駄よ! フォリキー、吹き飛ばしなさい! ハイパーボイス!」
フォリキーが天高く咆哮し、空気を揺らして、周囲に衝撃波を起こすが、
「ディザソル、飛べ!」
大きく跳躍し、ディザソルは衝撃波の届かないところまで飛び上がった。
「行けディザソル! 最大パワーでぶち壊す!」
「撃墜しなさい! フォリキー、連続でシグナルビーム!」
前脚と額の鎌を構え、落下の勢いもつけてディザソルはフォリキーへと襲い掛かる。
対するフォリキーはただディザソル一点を見据えて、これでもかと言わんばかりに激しい光を放つエネルギー弾を撃ち出す。
しかし、落下してくるディザソルの方が一撃が重かった。
飛来する無数のエネルギー弾を前脚の鋭い爪で全て打ち破り、ディザソルの額の鎌がフォリキーを切り裂いた。
効果抜群の一撃を耐えるだけの体力は、もうフォリキーにはない。
フォリキーの体がふらつき、静かに床へと崩れ落ちた。


「レオ君、君は本当に相手の隙を見つけるのが上手ね。悔しいけど、私の負けよ」
いかにも悔しそうに、しかし力を出し切ってどこかすっきりしたような口調で、ヤグモは話す。
「ヤグモさんは四天王ですからね。上手く隙を見つけないと、ただ正面からぶつかるだけでは勝てませんから」
「私、君みたいなトレーナー、嫌いじゃないわよ。レオ君、気に入ったわ。君の力がどこまで通じるか、もっと見てみたいわね。さ、次の部屋にお進みなさい」
「ありがとうございます。次の相手にも、勝ってみせますよ!」
四天王二番手、ヤグモに勝ったレオは、次なるフロアへと進んでいく。