二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第百九十九話 雪ん子 ( No.356 )
- 日時: 2016/08/09 06:46
- 名前: パーセンター (ID: VYLquixn)
「ああそうだ、レオ君」
次の部屋に進もうとするレオを、ヤグモが呼び止める。
「どうしたんですか?」
「言い忘れてた。次の部屋に入る前に、これを着ていくといいわ」
そう言ってヤグモはレオに厚いセーターを手渡す。
「?」
「まぁあまり詳しくは言わないけど、これを着てから次のフロアに行くといいわ。この先も、頑張ってね」
「は、はい! ありがとうございます」
何だかよく分からないが、とりあえずセーターを受け取り、レオは次のフロアへと進む。
「寒っ!」
三番目の部屋に入るなり、レオは開幕一番そう叫ぶ。
フィールドは雪に包まれ、特に周囲は積もり積もった雪の壁に覆われている。
さらに、少しずつではあるが天井からは雪が降っている。
ヤグモから受け取ったセーターを着ているが、それでも寒い。
そして。
雪で覆われたフィールドの向こう側には、例によって人が立つ。
「アハハ! よく来たね、レオおにーさん! ここに入ってきたときから、ずっと待ってたよ!」
フィールドの向こう側に立つのは、レオよりも幼い少女だった。
「……!?」
「あれ? あたしみたいなちっちゃい子どもが四天王だからって、驚いたって顔してるね!」
その少女は無邪気にキャッキャと笑う。
「自己紹介しなくっちゃね! あたしは氷ポケモン大好き、四天王のミトリ! ちっちゃいからって油断しないでよね。イダおじさんよりも、ヤグモおばさんよりも、あたしは強いんだからね!」
四天王ミトリ。
水色のボブカットの髪に赤い花の髪飾りを付け、この寒いフィールドだというのに雪の描かれた水色の浴衣を着ている少女だ。
ホクリク地方では言うまでもなく、おそらく他の全ての地方を見ても最年少の四天王だろう。
「正直驚いたよ。ジムリーダーならともかく、自分よりも年下の子がまさか四天王をやってるなんて」
「でしょでしょ? それじゃあ次は、ポケモンバトルで、あたしの強さに驚いてもらうんだから!」
「負けないぜ。僕のポケモンの力で、逆に君をあっと言わせてやる!」
その言葉を引き金に、二人は同時にポケモンを繰り出す。
「頼んだぜ、レントラー!」
「やっちゃえ、オニゴーリ!」
レオの一番手は、氷タイプに複数の有効打を持つレントラー。
対するミトリのポケモンは、氷で覆われた岩で出来た鬼の顔面のようなポケモン、オニゴーリだ。
「それじゃあ行くぜ! レントラー、ギガスパーク!」
最初に動いたのはレントラー。
大きく吼え、電撃を一点に集めて巨大な電撃の砲弾を作り上げ、それをオニゴーリへと放つ。
「オニゴーリ、アイアンヘッド!」
対して、オニゴーリは全身を鋼のように硬化させて、砲弾へ突っ込んでいく。
鋼の頭突きをぶちかまし、砲弾を強引に破壊してしまった。
「なんてパワーだ……だけどパワーなら負けないぜ。レントラー、馬鹿力!」
力のリミッターを外し、レントラーは全力で突撃していく。
「オニゴーリ、アイアンヘッド!」
再びオニゴーリは全身を硬化させ、突撃してくるレントラーに立ち向かっていく。
双方の一撃が激突する。威力は互角。
「レントラー、氷の牙!」
お互いに一旦退いた直後、レントラーは牙に細く鋭い氷を纏う。
寒いフィールドが味方し、氷の牙がいつもより大きい。雪の地面を蹴って飛び出し、オニゴーリに牙を剥くが、
「オニゴーリ、アクアボルト!」
対するオニゴーリは電流の流れる水を噴射する。
水は牙によって凍らされるが、やはり威力は互角のようで、レントラーの氷の牙もそこで途絶えてしまう。
「それじゃあこっちから行くよ! オニゴーリ、凍える風!」
オニゴーリが口を開き、冷気を乗せた風を放つ。
ダメージは少ない。しかしレントラーを急速に冷やし、足元から徐々に凍えさせる。
「っ、レントラー、ギガスパーク!」
レントラーが全身から電気を生み出し、それを一点に集めて巨大な電撃の砲弾を作る。
「オニゴーリ、躱して氷柱落とし!」
砲弾が撃ち出されるが、オニゴーリは素早く宙に浮かび上がってそれを躱すと、レントラーの頭上に冷気を放つ。
冷気は空気中で急速に大きな氷柱を作り上げ、無数の氷柱がレントラーへと降り注ぐ。
「っ、レントラー、頭上にギガスパーク!」
上を向いて再び電撃の砲弾を放ち、レントラーは無数の氷柱を防ぎ切る。
しかし、
「隙ありぃ! オニゴーリ、アイアンヘッド!」
その隙を狙って、全身を鋼のように硬化させたオニゴーリが突っ込んでくる。
「回避は間に合わないか……レントラー、馬鹿力!」
オニゴーリの激突を相殺すべく、レントラーは力のリミッターを外して全力の突撃を仕掛ける。
だが。
「……えっ?」
レントラーの突進に勢いがつかない。
走るスピードが最初の馬鹿力の時よりも遅くなっているのだ。
当然威力も弱まり、オニゴーリとレントラーが正面から激突するが、オニゴーリの頭突きに押し負け、レントラーは吹き飛ばされてしまう。
「凍える風は相手のポケモンを冷やして、スピードを奪うのよ。これを受けちゃったら、突っ込んでくる時も技を避ける時も遅くなっちゃうんだから! さ、どうする?」
楽しそうにミトリは笑い、
「ま、考える時間なんてあげないけどね! オニゴーリ、アクアボルト!」
レントラーに向けて、オニゴーリは電流を含んだ水を噴射する。
「躱……せないのか。だったらレントラー、氷の牙!」
レントラーは牙に長く鋭い氷を纏わせ、放たれる水に牙をぶつけ、水を凍らせてしまう。
「どんどん行くわよー! オニゴーリ、凍える風!」
再びオニゴーリが冷気を込めた風を放ってくる。
再びレントラーの体を凍えさせ、レントラーのスピードを落としていく。
「さあ、どうやって避ける? オニゴーリ、アイアンヘッド!」
全身を鋼のように硬化させ、オニゴーリが突っ込んで来る。
対して。
「考えるまでもないぜ。策なんて簡単に言う思い浮かぶぞ」
レオが浮かべたのは、余裕の笑み。
「レントラー、怒りの炎!」
レントラーが憤怒の感情のような荒れ狂う業火を放つ。
フィールドの雪を容易く溶かしていき、鋼鉄の硬さとなって突撃してきたオニゴーリを逆に炎に飲み込んだ。
さらにレントラーの周囲で燃える炎がレントラーの体を暖め、足元にまとわり付いた氷を溶かし、スピードを元に戻した。
「こういう時のために炎技を隠しておいて正解だったぜ。普通に撃ってもアクアボルトで消されてしまうし、警戒もされるだろうしな」
「うぐぅ、おにーさんなかなかやるねえ。だけど」
ミトリがそう言った直後。
周りを覆う炎を吹き飛ばし、オニゴーリが再び浮上する。
「炎技一発でやられるほど、私のオニゴーリは弱くないよ。これくらいへっちゃらなんだから!」
流石にへっちゃらではないだろうが、それでも確かにオニゴーリはまだまだやる気のようだ。
「行くよオニゴーリ! 反撃の氷柱落とし!」
オニゴーリがレントラーの頭上へと冷気を放つ。
冷気は空気中で急速に固まり、無数の大きな氷柱となって降り注ぐ。
しかも、氷柱は先ほどよりも大きい。
「さっきは攻撃を誘うための氷柱落としだったけど、今回のは本気よ! オニゴーリ、アイアンヘッド!」
さらにオニゴーリは氷柱がレントラーに命中しないうちから、体を鋼のように硬化させて突撃を仕掛ける。
「片方を防げばもう片方の攻撃の餌食か! だったらレントラー、馬鹿力!」
対してレントラーは突っ込んで来るオニゴーリにフルパワーで向かっていく。
前方へと飛び出して氷柱を躱し、オニゴーリの鋼の頭突きと渾身の力を込めて激突する。
やはり威力は互角で、お互いに激しくせめぎ合うが、
「オニゴーリ、アクアボルト!」
不意にオニゴーリが体を引き、レントラーは勢い余って体勢を崩す。
そのレントラーに対して、オニゴーリは電気を含んだ水を噴射する。
水をまともに浴びたレントラーは、痺れて動きを止めてしまう。
「今よ! オニゴーリ、氷柱落とし!」
その隙を狙って、オニゴーリは冷気を打ち上げる。
冷気は急速に固まって無数の氷柱となり、雨のようにレントラーに降り注ぐ。
「っ、僕のレントラーを甘く見るなよ! 馬鹿力!」
レントラーがカッと目を見開き、渾身の力を込めてすぐ近くにいたオニゴーリにタックルをぶちかまし、吹き飛ばした。
だがその直後、無数の氷柱がレントラーへと突き刺さる。
「オニゴーリ、やっぱり動きを止めよう! 凍える風!」
吹き飛ばされて頭から雪の壁に突っ込んだオニゴーリが雪から抜け出し、冷気を込めた凍える風を放つ。
「いただき! レントラー、地面に氷の牙!」
ここでレントラーは長く鋭い氷の牙を地面へと突き刺す。
レントラーの十八番、氷の衝撃波だ。
しかも、今回はただの衝撃波ではない。凍える風によって力を増した氷の衝撃波がオニゴーリを捉え、吹き飛ばした。
「そんな攻撃の仕方があるなんて!? すっごぉい!」
驚き、しかしそれを楽しむように、ミトリが声を上げる。
「決めるぞ! レントラー、馬鹿力!」
「こっちもよ! オニゴーリ、アイアンヘッド!」
レントラーが力のリミッターを外して突撃し、オニゴーリも全身を鋼の如く硬化させて突貫する。
お互いの渾身の一撃が正面から激突。
競り合った末に爆発し、吹き飛ばされて、雪の中に突っ込み、双方共に戦闘不能となった。
「レントラー、よくやった。戻って休んでてくれ」
「オニゴーリ、おつかれさま! いいバトルだったね」
レオとミトリ、お互いにそれぞれのポケモンを戻し、次のボールを取り出す。