二次創作小説(紙ほか)

Re: 第二百一話 雪玉 ( No.358 )
日時: 2016/08/11 12:34
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

「ディザソル、火炎放射!」
まずはディザソルが動く。
大きく息を吸い込んで、灼熱の業火を吹き出す。
「ユキメノコ、水の波動!」
対してユキメノコは手にした水の弾を投げつけ、業火を打ち消す。
「冷凍ビーム!」
さらにユキメノコは凍える冷気と共に氷の光線を放つが、
「ディザソル、躱してサイコカッター!」
瞬時にディザソルは冷気の光線を躱し、一気にユキメノコとの距離を詰め、念力を纏った額の鎌でユキメノコを切り裂く。
「っ、速い! ユキメノコ、十万ボルト!」
「ディザソル、神速!」
ユキメノコが周囲へと高電圧の電撃を撃ち出すが、対するディザソルは神がかった速度でユキメノコの周りを縦横無尽に飛び回り、電撃を躱し、
「ぶち壊す!」
ユキメノコの背後に回るが早いか、一瞬で額の鎌を振り下ろす。
だが。

「ユキメノコ、道連れ!」

ディザソルが鎌を振り下ろすほんの一瞬前、ユキメノコの瞳が妖しく光る。
その瞬間にディザソルの二対の鎌がユキメノコを捉えた。
トゲキッス戦でのダメージも重なり、ユキメノコは戦闘不能となって倒れてしまう。
だが。
構えを解いたディザソルが、その直後、雪の積もる床に崩れ落ちた。
「っ……道連れを持っていたのか……!」
道連れはその技を撃った直後に相手に倒されると、その相手を戦闘不能にする極めて厄介な技だ。
「ユキメノコ、おつかれさま! すごい活躍ぶりだったよ!」
「ディザソル、ありがとう。くっ、油断したな……」
お互いにそれぞれのポケモンをボールへと戻す。
ここでディザソルを失ったのはレオとしてはかなり大きい。勿論、悪い意味でだ。
手持ちのナンバー2が何も出来ずにやられたのも大きいが、それだけではない。レオのポケモンは残り二体なのに対し、ミトリにはまだポケモンが三体残っているのだ。それも、無傷で。
(完全に油断してた。最後の技はトゲキッスに効かないゴースト技だと勝手に決めつけてたけど、そうか、道連れか……ユキメノコなら充分あり得る選択肢だったな……)
だがやってしまったものは仕方がない。ここから切り替えて、戦っていくしかないのだ。
「……大丈夫だ。僕にはまだ二体のポケモンが残ってる。この二体でも充分すぎるほど強い。やってやるさ!」
「そうこなくっちゃ! ここからどんなバトルをするのか、あたしに見せてよ!」
レオとミトリが、同時に次のポケモンを繰り出す。
「頼んだぜ、ヘラクロス!」
「やっちゃえ、アスイーツ!」
レオのポケモンは、氷タイプに有利な格闘タイプを持つヘラクロス。
対するミトリの三番手は、ソフトクリームのアイスの部分に小さい足と手、顔をつけたようなポケモン。コーンのような尻尾があり、チェリーに似た触覚も付いている。
氷菓ポケモンのアスイーツ。見た目通りに氷タイプだ。
「行くぞヘラクロス! マグナムパンチ!」
ヘラクロスが翅を広げて飛翔する。
拳を握り締めて突貫し、ミサイルのように勢いを込めて拳を突き出す。
「アスイーツ、躱してアイスボール!」
だがアスイーツは身軽な動きでヘラクロスの拳を躱すと、手足と顔を引っ込め、ヘラクロスとは逆の方向に転がっていく。
「……?」
不可解な動きに思考が止まるレオだったが、その狙いはすぐに分かった。
転がっていったアスイーツが、そのままUターンしてヘラクロスの元へと戻って来たのだ。
床に積もった雪を纏い、大きな雪玉となって。
「なるほど、それが狙いか! だけど、ヘラクロス、メガホーン!」
ヘラクロスが硬い角を突き出し、アスイーツへと突っ込んでいく。
大きな雪玉と化したアスイーツに激突し、持ち前のパワーでアスイーツを覆う雪を砕いた。
「シャドークロー!」
続けざまにヘラクロスは手に黒く鋭い影の爪を纏わせ、両腕を振り抜いてアスイーツを切り裂く。
「やるねー! アスイーツ、サイコキネシス!」
アスイーツが起き上がり、瞳を光らせて強い念力を発生させる。
念力をヘラクロスに掛けて動きを操り、投げ飛ばして雪の壁に叩きつけた。
「アイスボール!」
そしてヘラクロスとは逆の方向に転がっていく。
雪を纏ってどんどん大きくなっていき、Uターンして大きな雪玉となってヘラクロスに襲い掛かる。
「ヘラクロス、メガホーン!」
再びヘラクロスは翅を広げ、硬い角を構えて突っ込んでいく。
しかし、
「アスイーツ、避けて!」
突如、雪玉の軌道がずれた。
ヘラクロスとの正面衝突を避けてその横を猛スピードで通り過ぎ、より多くの雪を纏ってさらに大きくなっていく。
そしてまたUターンし、今度こそヘラクロスを狙う。
「っ、でかい! ヘラクロス、マグナムパンチ!」
拳を握り締め、ヘラクロスは翅を広げて突撃しながら、ミサイルの如き勢いで両拳をアスイーツへと叩き込む。
だが巨大な雪玉となったアスイーツの勢いの前に押し負け、逆にヘラクロスは弾き飛ばされてしまう。
「今だよアスイーツ! 熱湯!」
巨大な雪玉が砕け、中からアスイーツが飛び出し、煮え滾る高温の湯をヘラクロスへと浴びせる。
「続けてシグナルビーム!」
さらにアスイーツは激しい光を放つ光線を放つが、
「させるか! ヘラクロス、シャドークロー!」
ヘラクロスが手に影の爪を纏い、それを振るって光線を切り裂き、追撃を防いだ。
しかし、体勢を立て直した直後、ヘラクロスが急に膝をついてしまう。
「どうした、ヘラクロス!?」
再び立ち上がるが、その腹部には火傷の跡。
どうやら、先ほどの熱湯で火傷状態になってしまったようだ。
「熱湯の追加効果で火傷したみたいね! チャンスよアスイーツ、サイコキネシス!」
アスイーツが強い念力を生み出し、ヘラクロスに念力を掛ける。
念力を操作し、ヘラクロスの動きを操って真上に投げ飛ばし、
「シグナルビーム!」
体勢が整わないうちに、ヘラクロスへ激しい光を放つ光線を撃ち出す。
「っ、ヘラクロス、ストーンエッジ!」
ヘラクロスの周囲に白い光が迸る。
光は無数の尖った岩を形作り、一斉にアスイーツへと撃ち出される。
シグナルビームを打ち破り、残った岩がアスイーツへ襲い掛かるが、
「アイスボール!」
手足と顔を引っ込め、高速回転し、アスイーツは岩を弾いてしまう。
そしてまた回転しながら、雪を纏って突き進む。
ヘラクロスには目もくれず、雪原の上を駆け抜け、果てにはフィールドを飛び出し、雪の壁の上を走り、アスイーツが纏う雪はどんどん大きくなっていく。
「そろそろだね! アスイーツ、やっちゃえ!」
さらに巨大な雪玉と化したアスイーツが、ようやくヘラクロスへと向かってくる。
先ほどマグナムパンチを弾き返した時よりも、さらに大きな雪玉だ。もはやヘラクロスにこの雪玉を破る手段はない。
しかし。
それはあくまでも、ミトリの考えでしかない。

「ヘラクロス、地面にメガホーン!」

アスイーツを前にして、ヘラクロスは雪の積もる床へ自慢の硬い角を突き刺した。
「何をする気かわかんないけど、火傷したヘラクロスじゃ、今のアスイーツは——」
「そのままぶん投げろ!」
ヘラクロスの角に、途轍もない力がこもる。
床に積もる雪ごと、最大級の雪玉と化したアスイーツを、宙へ投げ飛ばしてしまった。
アスイーツを纏う雪玉が崩れ、アスイーツは天高く吹き飛ばされる。
「ヘラクロス、マグナムパンチ!」
翅を広げ、アスイーツを追ってヘラクロスは急上昇する。
吹っ飛ぶアスイーツのその上を取り、両拳をミサイルの如き勢いで突き出し、アスイーツを床へと叩き落とした。
流星のようにアスイーツは落下し、床へと激突。
「普通のポケモンなら、火傷状態になると攻撃力は下がる。だけど、僕のヘラクロスの特性は根性。状態異常になれば、逆に攻撃力が上がるんだ」
床に叩きつけられたアスイーツは、目を回して戦闘不能になっていた。
「アスイーツ、おつかれさま! 休んでてね」
アスイーツをボールに戻すと、ミトリは楽しそうな表情を浮かべてレオの方に向き直る。
「さすがだね! ポケモンの特性や特徴までちゃんと考えて戦ってる。そのヘラクロスの特性が根性なのもちょっとつらいかな」
だけど、とミトリは続け、
「火傷状態になったことに変わりはないってことだから、火傷はヘラクロスの体力を削り続けるよ。攻撃は上がってるけど、その状態であたしの次のポケモンに勝てるかな?」
「勿論。こいつなら、やってくれるさ」
レオのその言葉を聞き、ミトリはにんまり笑うと、
「それじゃあ、次はこの子かな」
浴衣の袖から、次なるモンスターボールを取り出す。