二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第二百十三話 大蛇 ( No.372 )
- 日時: 2016/08/29 09:49
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: g4yvwkEd)
「パンプッチ、エナジーボール!」
手にした杖を淡く光らせ、パンプッチが自然の力を込めた光の弾を飛ばすが、
「ハサーガ、炎の牙!」
ハサーガの二つの顔が牙に炎を纏い、突撃してくる。
片方の顔が光の弾を噛み砕いて、もう片方はパンプッチへと牙を剥く。
「くっ、それなら、シャドーボール!」
「効かぬぞ。炎の牙!」
咄嗟にパンプッチは杖を振るって黒い影の弾を飛ばし、もう一つの顔の炎の牙と相殺させる。
しかしそれも束の間、牙に炎を灯した三つ目の顔が飛び出してくる。
炎の牙がパンプッチに食い込み、パンプッチの体を燃やす。
「とどめを刺せ! 悪の波動!」
パンプッチに噛み付くハサーガの顔が、首を大きく振ってパンプッチを頭上に放り投げる。
間髪入れずに殻を被った頭が口から悪意に満ちた衝撃波を放ち、躱す隙も与えずにパンプッチに直撃させた。
「っ、パンプッチ!」
なす術なくパンプッチはフィールドに落ち、戦闘不能となる。
「パンプッチ、よく頑張ってくれた。休んでてくれ」
パンプッチをボールに戻すと、レオは次のボールを手に取る。
(本当はこういう変則的な相手とは隙の少ないディザソルが一番やりやすいんだけど……こればっかりは仕方ないな。炎の牙が怖いけど、パワーにはパワーだ。いつも通りに行こう)
「よし、頼んだぜ、ヘラクロス!」
レオの三番手はヘラクロス。パワータイプ相手には、今まで多くの力自慢のポケモンと戦ってきたこのヘラクロスが適任だ。
「なるほど、力には力、というわけだな。では行くぞ、ハサーガ、サンドソニック!」
ハサーガの三つの顔が口を開き、砂の衝撃波を噴射する。
「ヘラクロス、躱してメガホーン!」
翅を広げて飛翔し、ヘラクロスは砂の衝撃波を躱す。
そのまま空中から角を突き出し、ハサーガへと全力の突撃を仕掛ける。
「ハサーガ、炎の牙!」
ハサーガの殻を被った頭が鎌首をもたげる。
鋭い牙に炎を灯し、角へと噛みつき、ヘラクロスを燃やす。
だが、
「甘い! ヘラクロス、投げ飛ばせ!」
体を焼かれるのにも気にせず、ヘラクロスは角を横薙ぎに振るい、巨体のハサーガをぶん投げた。
「マグナムパンチ!」
吹き飛ぶハサーガへ対し、ヘラクロスは一気に距離を詰め、大砲のような拳を殻の被った頭に叩き込む。
「ぬぅ、ハサーガ、ウッドハンマー!」
だがヘラクロスの拳が叩き込まれる直前、ハサーガの別の頭が立ち塞がり、殻を被った頭を守る。
ダメージは相応に負うものの、思考の核とも言える殻を被った頭は守り、返す刀で別の頭が硬い木の幹のようにその首を叩きつけ、ヘラクロスを吹き飛ばす。
「くっ、やっぱりあの五つの顔が厄介だな……」
顔が五つあるということは、単純に主力武器が五つあるということだ。
しかもそれぞれを好きなタイミングで好きなように動かせるとなれば、それだけで充分に脅威となる。
「だけど一つ、掴みましたよ。おそらくそうだろうとは思ってましたけど、今の動きを見る限り、殻を被った頭が弱点ですよね」
「ふっ、まぁ流石に気づかれているか。殻の頭はハサーガの思考の要だからな。だが弱点をそう簡単に晒すほど俺のハサーガは甘くはないぞ。サンドソニック!」
二つの顔が口を開き、砂の衝撃波を吹き出す。
「ヘラクロス、躱してシャドークロー!」
ヘラクロスは両腕に影の爪を纏うと、砂の衝撃波を躱しながらハサーガへと一気に近づく。
「受け止めろ! 炎の牙!」
砂の衝撃波を放った顔が牙に炎を灯し、振り下ろされるヘラクロスの両手の爪に噛み付く。
「まだまだ! ヘラクロス、メガホーン!」
「ハサーガ、ウッドハンマー!」
シャドークローは封じられたが、その状態からヘラクロスは渾身の力を込めて角を振り下ろす。
対して三番目のハサーガの頭が下がり木の幹のように硬化させた首を思い切り振り抜き、ヘラクロスの角を防いだ。
「くっ……まだ行ける! ストーンエッジ!」
「どうかな。ハサーガ、悪の波動!」
周囲に無数の尖った岩を浮かべるヘラクロスだが、それよりも早く二つの頭が悪意に満ちた黒い波動を放ち、今度こそヘラクロスを吹き飛ばした。
「ヘラクロス! くそ、やっぱりやりづらい……!」
幸いなのは、ハサーガからの打点があまりないということ。
炎の牙は効果抜群だが、他の技はヘラクロスに対しての通りはあまりよくない。
「……落ち着いていけ。ハサーガはここでヘラクロスで倒す。ストーンエッジ!」
ヘラクロスはすぐに起き上がり、再び周囲に無数の尖った岩を浮かび上がらせ、一斉に発射する。
「ハサーガ、サンドソニック!」
対してハサーガは二つの頭を動かし、砂の衝撃波を放って無数の岩を全て防いだ。
「続けてメガホーン!」
翅を広げ、ヘラクロスは角を突き出し、渾身の力を込めてハサーガへと突貫する。
「ハサーガ、ウッドハンマー!」
今度は炎の牙で動きを止めるようなことはせず、ハサーガの二つの頭が動き、二本の首を硬い木の幹のようにヘラクロスへと叩きつける。
「マグナムパンチ!」
突貫するヘラクロスが両拳を構える。
ミサイルのように拳を突き出し、振り下ろされるハサーガの二つの頭を弾き飛ばし、さらに本命の角の一撃がハサーガを捉え、吹き飛ばした。
「ならば、ハサーガ! サンドソニックから悪の波動!」
地響きを立ててフィールドに激突したハサーガは、起き上がると殻を被った頭以外の四つを動員し、まず二つの頭が口を開いて砂の衝撃波を放つ。
「ヘラクロス、躱してシャドークロー!」
翅を広げて飛翔し、ヘラクロスは砂の衝撃波を躱すと、腕に黒い影の爪を纏う。
しかし立て続けに後ろの二つの頭が首を突き出し、悪意に満ちた波動を撃ち出す。
ゴースト技では悪技には相性が悪く、影の爪は打ち消されて逆に吹き飛ばされてしまう。
「狙うは今ぞ! ハサーガ、炎の牙!」
二つの頭を従え、殻を被った頭も牙に炎を灯し、三つの頭が炎を纏った牙を剥いてヘラクロスへと襲い掛かる。
「くっ、手段を選んでる暇はないか! しょうがない、ヘラクロス!」
レオがヘラクロスの名を呼び、吹き飛ばされながらもヘラクロスはカッと目を見開く。
「お前の根性を見せる時だ! メガホーン!」
強引に空中で体勢を取り戻し、ヘラクロスは角を構え、渾身の突撃を仕掛ける。
狙い目はハサーガの炎の牙ではなく、その下。
体に食い込む炎の牙を耐え抜き、ハサーガの体の下に、自慢の硬い角をねじ込んだ。
「今だヘラクロス! ハサーガを放り投げろ!」
地に足をつけ、角に全ての力を込め、ヘラクロスはハサーガを持ち上げた。
そのまま角を思い切り振り上げ、ハサーガを上空へと投げ飛ばす。
「……なんと!? 巨体を誇る我がハサーガを投げ飛ばすとは!」
「僕のヘラクロスに、投げられないものなんてありませんよ! ヘラクロス、ストーンエッジ!」
上空のハサーガに向けて、ヘラクロスは無数の尖った岩を一斉に発射する。
「一気に決めるぞ! マグナムパンチ!」
翅を広げてヘラクロスは急上昇し、ハサーガの殻を被った頭に狙いを定め、大砲のような拳を繰り出す。
「やるしかないな! ハサーガ、迎え撃て! 炎の牙だ!」
対するハサーガが、ついに五つの頭を総動員する。
重力に従って落下しながら、五つの顔全ての牙に炎を灯し、ヘラクロスを迎え撃つ。
ヘラクロスの大砲のような拳が、殻を被った最後の顔の脳天に叩き込まれた。
同時に他の四つの顔が、炎の牙をヘラクロスの胴体に突き立て、爆発を起こした。
「ヘラクロス!」
爆発に巻き込まれ、ヘラクロスはなす術なくフィールドへと落下する。
地面に叩きつけられた時には、戦闘不能となっていた。
ハサーガが着地し、地響きが起こる。
しかし、
「……見事な根性だ。我がハサーガを、相討ちにまで追い込むとは」
リカルドがそう呟いた直後。
ハサーガの体がぐらりと傾き、地面に崩れ落ちた。