二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第二百十七話 王 ( No.380 )
- 日時: 2016/09/07 11:17
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: y/h9HQTq)
「レジギガス、冷凍パンチ!」
無数の岩の刃が激しい水流に防がれた直後、レジギガスは冷気を纏った拳を振り下ろす。
技自体は普通の冷凍パンチなのだが、レジギガスの拳が人間一人分くらいの大きさを誇るため迫力が違う。
「エンペルト、躱してジオインパクト!」
対してエンペルトは跳躍してその氷拳を躱すと、銀色の光を纏った両翼を振り抜き、鋼の衝撃波を放つ。
「もう一度冷凍パンチ!」
顔面に衝撃波を食らうも、それをものともしない様子でレジギガスは先程床へと叩きつけた拳をアッパーのように振り上げ、空中のエンペルトを殴り飛ばす。
「メタルブラスト!」
「躱してドリル嘴!」
レジギガスの点字模様が激しく点滅し、強大な鋼エネルギーの砲撃が撃ち出されるが、吹き飛ばされながらもエンペルトは体勢を立て直し、嘴を伸ばして高速回転、そのままドリルのように突撃し、砲撃を掻い潜りながらレジギガスとの距離を詰める。
「レジギガス、叩き落とせ! 冷凍パンチ!」
「させるか! エンペルト、スピードを上げろ! ジオインパクト!」
レジギガスが冷気を込めた拳を振り下ろすが、エンペルトはさらに加速してギリギリのところで拳を回避する。
レジギガスの眼前まで迫ると、回転を解き、銀色の光を纏った右翼を手刀のように思い切りレジギガスへと叩きつけた。
だが。
「メタルブラスト!」
直後。
翼を叩きつけられたレジギガスの顔面の点字模様が激しく点滅し、間髪入れずに鋼エネルギーの砲撃が撃ち出される。
躱す隙すら与えず、砲撃がエンペルトを吹き飛ばし、エンペルトは壁に叩きつけられた。
「ストーンエッジ!」
さらにレジギガスが両拳を構えると、その拳の周りに白い光が迸り、無数の尖った岩を形作る。
レジギガスが両手を広げ、それを突き出すのを合図に、無数の岩がエンペルトに向けて一斉に発射される。
ようやく起き上がったエンペルトに対し、無数の岩の刃の雨が容赦なく降り注いだ。
「エンペルト! 大丈夫か!?」
幸い、レジギガスがここまで使用している技は全てエンペルトには効果が今一つ。
なのでまだエンペルトは戦えているが、ダメージ量はとても効果今一つのものとは思えない。
それに、
「レジギガスの攻撃力が、最初より上がっている……?」
先程エンペルトを吹き飛ばしたメタルブラスト。最初にレジギガスが放ったものより、明らかに威力が増していた。
ストーンエッジもそうだ。最初は片手で放っていたはずが、今の一撃は両手から繰り出していた。
そして、
「気付いたようだな」
リカルドのその言葉を聞く限り、レオのその感覚はどうやら間違いではないようだ。
「特性、スロースタートだ。レジギガスは戦闘が始まってしばらくの間はその力をフルパワーで発揮することが出来ない。だが、それが解除されれば、レジギガスが本来持つ非常に高い能力をフルパワーで発揮出来るようになる」
ぞわり、と。
レオの背筋に、悪寒が走る。
「先程のメタルブラストを放つ直前に、スロースタートが解除されたようだ。これでレジギガスはフルパワーを発揮出来る」
さらに、とリカルドは続け、
「俺のレジギガスの最後の技は、スロースタートが解除されなければ発動出来ない技でな。それまでは三つの技で戦わなければならないが、その分、とんでもない火力を持つ技だ」
リカルドの口元が吊り上がる。
レオが嫌な予感を感じた時には、既に遅かった。
「レジギガス、ギガインパクト!」
レジギガスの体を、途轍もない量のオーラが覆っていく。
持てる力の全てをオーラに変え、レジギガスは莫大な量のオーラを身に纏う。
刹那。
特大の砲弾のように、レジギガスが突撃した。
一瞬だった。次の瞬間にはエンペルトは吹き飛ばされ、凄まじい勢いで壁へと叩きつけられ、壁にめり込んでいた。
「……!?」
レオが声をあげる時間もなかった。
有無を言わさない圧倒的な火力。タイプ相性など関係なく、力で全て吹き飛ばす。
センドウのドサイドンを一撃で沈めたこともある、レジギガスの切り札だ。いくらレオのエンペルトと言えども、流石にこの一撃を耐える術など存在しない。
だが。
それは、過去の経験に基づくリカルドの考えでしかない。
「エンペルト! ハイドロカノン!」
エンペルトが埋まる壁が砕け散り、極限まで水を圧縮した巨大な水の砲弾が飛び出した。ギガインパクトは攻撃後にしばらく反動で動けなくなる。つまり、今のレジギガスは完全に無防備。
そのレジギガスの顔面に水の砲弾が着弾し、その瞬間に、水蒸気爆発のような大爆発を起こした。
「……!? レジギガス!」
防御することも出来ず、レジギガスの巨体がふらつく。
吹き飛ばされこそしなかったものの、体勢を崩し、その場に片膝を着いた。
「エンペルトを甘く見てもらっちゃ困りますよ! 僕のエースは、そう簡単にやられはしない!」
得意げなレオの言葉とともに、壁からエンペルトが抜け出してきた。
その体には膨大な水のオーラを纏っている。体は傷だらけ、既に満身創痍だが、その闘志は全く衰えていない。
「……フ、ハハハハハ! 見事だ、実に見事だ! 今のハイドロカノン、素晴らしい一撃だった。チャンピオンになって以来、俺のレジギガスに膝をつかせたのは、レオ、君が初めてだ!」
そして、それを見てリカルドは心底楽しそうに笑う。
恐らく、この全力のバトルを、心の底から楽しんでいるのだろう。
「だがここまでだ。君との勝負、本当に楽しかった。次の一撃で、終わりにしよう!」
そして。
レオにとっても、それは同じだ。
「上等です。こちらこそ、楽しいバトルをありがとうございました。この思い、次の一撃に全て込めます!」
その刹那。
「レジギガス、ギガインパクト!」
「エンペルト、ハイドロカノン!」
持てる力の全てをオーラに変え、レジギガスが途轍もない量のオーラを纏っていく。
対するエンペルトは体を覆う水の力を全て一点に集め、極限まで水の力を圧縮し、巨大な水の砲弾を作り出す。
両者の一撃が正面から激突し、水の砲弾が大爆発を起こした。
エンペルトの全力の一撃。
それを持ってしても、レジギガスを撃ち破ることは出来なかった。
「……エンペルト、よく頑張った。お疲れ様」
レオがそう呟いた、その直後。
レジギガスの最後の一撃が、エンペルトを貫いた。
「リカルドさん、ありがとうございました。いいバトルでした」
「俺としてもここまで熱いバトルが出来たのは久し振りだ。こちらこそ、礼を言わせてもらうぞ」
バトルを終え、レオとリカルドは握手を交わす。
「……さて。ライオが言っていた通り、確かに君は強い。だが、チャンピオンの俺から言わせてもらうと、やはりまだ気になる点もある」
リカルドにそう言われ、レオは思い出す。
ネオイビルとの決戦はもうすぐ。早くてあと一週間なのだ。
「使える時間は残り一週間。あまりにも短い期間だが、俺としては少しでも君たちを強くしてやりたい。残りの期間、俺について来る気はあるか?」
真剣な表情に戻り、レオの目を真っ直ぐに見つめ、リカルドはレオに尋ねる。
「勿論です。元からそのためにここに来ました。寧ろ僕の方からも、お願いします」
レオの言葉を聞き、リカルドは頷く。
「よし、いいだろう。俺たちポケモンリーグの人間としても、ネオイビルをこれ以上放っておくことは出来ない。残りの時間、出来る限り君たちの力になろう」
残り一週間。
ネオイビルとの最終決戦の日は、すぐそこまで近づいている。