二次創作小説(紙ほか)
- Re: 第二百二十五話 円盤 ( No.391 )
- 日時: 2016/09/25 22:09
- 名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)
テンモンシティでネオイビルと戦ってから、丁度一ヶ月。
少年レオは、アカノハシティへとやって来ていた。
理由は単純。『ブロック』の中心支部はアカノハ支部であり、丁度この日に集まるようにとリョーマからの指示が出ているからだ。
「……久しぶりに、この街に来た気がするなぁ」
この一ヶ月の間、レオは父親やチャンピオンと共に特訓をし、そのためにホクリク地方を長く離れていた。
「よッ、久しぶりだなや、レオ」
そんな時、唐突にレオの後ろから聞き慣れた訛り声が聞こえる。
「カンタロウ! 久しぶりだな!」
「おうよ。この一ヶ月、ホウエンに帰っとっただ。ナギ師匠にひたすら鍛えてもらっただべさ」
カンタロウは地元に帰っていたと、レオは一週間前にライロウから聞いた。どうやら、ナギという名の師匠がいるらしい。
「さて、と。奴らの話が予定通りなら、今日動いてもおかしくねェだな」
「ああ。個人的には、早いとこマターと決着をつけたいところだ」
そう言いながら、二人が支部へと足を進め出した、その時。
世界が、振動した。
「地震か!?」
「すっげェ揺れ……っ! 頼む!」
近くの木に手をつき、何とかレオは身を支える。
カンタロウは近くに何もなく、咄嗟にボールからムクホークを出し、掴まって宙に浮かび上がる。
しばらく揺れが続くが、やがて地震はゆっくりと収まった。
「長い揺れだったな……大ニュースになるほどだろ、これ」
「この地方でこげな規模の地震……何か、やな予感がするだな」
木から離れてレオは顔を上げ、カンタロウもムクホークから離れて地に降りる。
その瞬間。
「……!? な、何だよ、あれ!?」
何気なく空を見上げたレオが、驚愕の声を上げる。
「あン? どォしたべ、レオ……ッ!?」
カンタロウもレオの声に反応して空を見上げ、その瞬間に顔に驚愕を浮かべる。
「な、なンだべ、ありゃ……!?」
レオとカンタロウが見たもの。それは。
はるか遠方に浮かび上がる、巨大な空を飛ぶ円盤だった。
ここからだと遠く、全貌は掴めない。
しかしそれでも、この距離でこれだけの大きさに見える円盤だ。
未確認飛行物体とでも言うべきか、とんでもない規模の円盤が、どんどん空へと上がって行く。
あまりにも非常識な光景に、二人が呆然としていると、街の電光掲示板にニュースが流れ出した。
『緊急速報です。ホクリク地方北の海を震源として、巨大な地震が発生。同時に、謎の巨大な飛行物体が出現しています。現在、各種方面の機関が調査を進めております。なお、巨大な飛行物体はなおも上昇を続……け、いる……う、……』
ニュースの途中で明らかに異変が生じる。
映像にノイズが走り出し、古いテレビの砂嵐のようにザーザーと音を立てて画面がノイズだらけになってしまう。
しかし次の瞬間。
唐突に、全く別の場面が画面に映った。
『御機嫌よう。ホクリク地方の住民、そして、全世界の住民よ』
そこに映し出されたのは。
「マター……!」
ネオイビルの頂点に立つ、全ての黒幕。レオたちの最大の敵、マター。
一年前より遥かに痩せ細っているが、それに反比例するかのように狂気は増大している。
『現在、ホクリク地方に浮かび上がっている円盤。これは我々イビル、いや、ネオイビルの科学力全てを結集させ、作り上げた古代空中円盤都市。その名も、『スフィア・ディスク』です』
「空中円盤都市……だって?」
「どォいう原理で空さ飛んでるだ、あれ……」
『ホエール』の時にも同じことを思ったが、今回は空飛ぶ軍艦など足元にも及ばないほどの光景。どうやって空を飛んでいるのかなど知る由もないが、少なくともあれほどの科学力をネオイビルが有していること。それだけは、理解出来た。
『聞いているでしょう、『ブロック』諸君。我々は今からカントーの遥か南、スフィア遺跡へと向かい、アスフィアを復活させます。そしてそれが終われば、この地方、いやこの国、いやこの世界に、裁きが下されることとなるでしょう』
しかし、とマターは続け、
『貴方たちは今まで、散々私の邪魔をしてくれました。恐らく、今回も私の邪魔をしに来るのでしょう。それは目に見えたこと。だからこそ、この舞台を用意しました』
口元を吊り上げ、狂気の笑みを浮かべて、マターは告げる。
『この私を止めるのならば、『スフィア・ディスク』へと乗り込むのです、『ブロック』の者たちよ。そこで、今回の戦いの、全ての決着を付けようではありませんか!』
直後、ブツリと映像が途絶えた。
「……ふざけんじゃねえ。言われるまでもねえよ、そんなこと」
レオが強く拳を握り締めた、その直後。
レオのライブキャスターが、着信音を鳴らす。
発信元は、リョーマだ。
『レオか! 今のニュース、見てたよな!?』
「ええ、勿論です。今アカノハシティにいるので、これからすぐにカンタロウと一緒に向かいます!」
『よし、分かった。事は一刻を争う。すぐに来てくれよ。今回招集するメンバーは流石に大規模だから、アカノハ支部のどの部屋にも入らねえ。屋上まで来てくれ』
それだけ告げ、通話は切れてしまう。
恐らく、他のメンバーにも急いで連絡を取っているのだろう。
レオとカンタロウは顔を見合わせて頷き、走り出す。
続々と人が集まって来た。
アカノハ支部屋上の中心には副統率リョーマとチャンピオンのリカルドが立っており、その周りには『ブロック』他支部の統括や多くの構成員、アスカやマゼンタなどレオの友人たち、四天王やジムリーダーなど、それこそホクリク地方のほぼ全ての戦力が集まって来ている。
テレジアの話によると、このためだけに屋上を拡張工事したそうだ。
「っし、これで全員か」
呼ばれた人間は全員集まったようで、中心にいるリョーマが口を開く。
「それじゃあ、これで役者は揃いましたね。あれを見て分かる通り、とうとうネオイビルとの最終決戦の日がやって来ました」
リョーマが言葉と共に向こうの空を指差す。その先には、巨大な円盤が宙に浮かび上がっている。
「さっきニュースで流れてたと思いますが、この国の南にスフィア遺跡って名前の遺跡があります。あそこは伝説のポケモン、アスフィアの住処と言われています」
リョーマの発言に続き、
「そして、先ほどあの円盤を確認したところ、かつてスフィア遺跡に存在した空中都市、スフィアシティとほぼ同じ構造をしていることが判明した。恐らく、奴らはその遺跡を模した巨大都市を作り上げ、アスフィアを復活させようとしているのだろう」
リカルドがリョーマからバトンを受け取り、そう話す。
「だがあの円盤、スピードはそこまで早くない。ここからスフィア遺跡の孤島まであのスピードで行くとなれば、半日以上掛かってもおかしくない」
半日。
普通に考えればかなり遅い。しかし、世界の明暗を決めると言っても過言ではないこの決戦が半日で決まる。そう考えると、この時間は早いのか、遅いのか。
「それじゃあ、ここからの動きを指示します」
再びリョーマが口を開く。
「まずジムリーダーの皆さんと四天王の皆さん、そしてライオ博士。俺たち『ブロック』が総出でこの地方を離れてしまいますから、その間街の混乱抑えてください。よろしくお願いします」
次に、とリョーマは『ブロック』構成員とリカルドの方を見る。
「俺たち『ブロック』とチャンピオンで、あそこに突入する。突入方法は一つ、空から入り込むしかない。恐らく敵の妨害もあるだろうが、強引にでも突入する」
そこでリョーマは一旦言葉を切る。
そして。
アカノハ全体に響き渡るほどの大声で、叫んだ。
「お前ら、覚悟は出来てるか! 今日この日が、ネオイビル壊滅の日だ! やるべきことは一つだけ、出会った敵は全部倒せ! あの円盤を沈めて、その地に墓標を立ててやれ! 『ネオイビル、ここに眠る』ってなぁ!」
アカノハ支部屋上から街全体にかけてが、どよめくような歓声に包まれた。
リョーマが真っ先にボールを掲げ、トロピウスを繰り出す。
それに続くように、突入組がそれぞれの飛行ポケモンを繰り出し、次々と飛び乗っていく。
「それじゃあ、行くぞぉ!」
リョーマの叫びと共に。
『ブロック』の戦士たちが、一斉に飛び立った。