二次創作小説(紙ほか)

Re: 第二百二十六話 突入 ( No.392 )
日時: 2016/09/26 12:00
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: MaOD8qI9)

『ブロック』の者たちが飛翔し、巨大円盤都市に向けて空を駆け抜けていく。
近づくほどに円盤都市の全貌が明らかになっていく。
物凄く大きい。それこそ、ソルナシティの巨大遺跡を上回るほどに。
都市の目前まで迫ろうとしていた、その時。
ビークインに乗り、リョーマの隣を飛んでいるテレジアが叫んだ。

「前方より敵艦接近! 『ホエール』です!」

刹那。
数多の弾幕が、一向に襲い掛かる。
「ッ……トロピウス、ハリケーン!」
「ビークイン、防御指令!」
先頭のリョーマとテレジアが、咄嗟に指示を出す。
トロピウスは荒れ狂う暴風を巻き起こし、ビークインは無数の蜂の群れを召喚して守りの壁を作り上げるが、如何せん弾幕が多すぎで全てを防ぎ切ることが出来ない。
さらに、鯨を模した『ホエール』の口が開き、巨大な砲口が姿を現わす。
よく見るとエネルギーを充填しているのが分かるが、その間も弾幕は止まない。
「まずい……! リョーマさん、砲撃が来ます!」
「分かってる! だが流石に狙えねえ……!」
砲口のエネルギーは、みるみるうちに溜まっていく。
充填完了の、まさにその直前。

「レジギガス、冷凍パンチ!」

一同のはるか上空。
バクソウオの頭部に立ち、いつの間にかそこまで上昇していたリカルドの声が響いた。
刹那。
巨大ポケモン、レジギガスが『ホエール』の頭上に飛び乗り、冷気を込めた拳を戦艦の頭部に叩きつけた。
間一髪、エネルギー砲は軌道をずらされ、明後日の方向に飛んでいった。
その隙にリカルドは素早く辺りを見回し、
「アスカ、ライロウ! 共にこの戦艦を止めるぞ!」
真っ先に目に付いた二人の名前を呼ぶ。
「っ、はい!」
「わかりやしたぜ! リョーマ、お前たちは先に行け!」
ライロウがリョーマにそう告げ、残りの『ブロック』構成員たちは目前に迫った空中円盤都市へと突入していく。
「さあ、ネオイビル討伐の前に一仕事だ」
「前座なんて面倒ね。速攻で堕としてやるわ」
それを見届け、ライロウとアスカはリカルドに続き、『ホエール』の中へと乗り込んでいく。


「なんだこれ……街……?」
街。
何とか円盤に降り立ったレオたちの第一印象は、それだった。
円盤の上部は円形の巨大な都市のように作られていたのだ。
ただひたすらに広い街。着地点は人のいなくなった古い住宅街のような場所なのだが、奥には森もあれば塔もあり、似つかわしくない機械的な建物に、巨大な城まである。こんな巨大な街が、古代には存在したということなのだろうか。
「マターがいるのは、やっぱりあの城ですかね」
「どうかしら。あの塔の頂点の可能性もあるわよお」
「もしくは、あの研究施設みたいなところか」
正直、この段階では断定は出来ない。どこにマターがいてもおかしくはないのだ。
しかし、一つだけわかることがある。
「こんなところでも、やっぱり邪魔は入るんだな」
レオがそう呟く。
風化した住宅街の中から、気配を感じる。それも、多くの家からの多くの気配だ。『ブロック』は今、かなりの大軍に囲まれているのだろう。
「出て来ないなら、こっちから引っ張り出すぞ」
レオたちがボールを取り出した、まさにその瞬間。
周囲の住宅街から、一斉に夥しい数の下っ端が飛び出してくる。
「早速お出ましか! やっぱり本拠地だけあって、数が多いねえ!」
「ちょっと待ちいな、流石にこの数はきついで!」
皆それぞれのポケモンを繰り出し、下っ端軍に応戦するが、それこそ相当数の下っ端がいる。
何しろ『ブロック』の総勢よりも余程多いのだ。これを蹴散らすのは、時間も労力もかかるだろう。
「仕方ありません。リョーマ、ここは分散した方がいいですね! この広い街を全員で回っても非効率的ですし、それなら散開して個々人で動いた方がよさそうです!」
「元よりそのつもりだ! お前ら、まずはこいつらを突っ切って、それから天将やらマターをぶっ倒すぞ! 出て来い、ブレイオー!」
全員にそう指示を出すと、リョーマはブレイオーを繰り出し、いち早く下っ端の群れの中へ飛び込んでいった。
「キリがないな! ドサイドン、纏めて薙ぎ払え! 地震だ!」
ホロがドサイドンを繰り出し、地面を揺らして周りの下っ端の動きを止める。
「そこだ! エンペルト、ハイドロポンプ!」
そこにレオのエンペルトが大量の水を噴き出し、多数の下っ端を蹴散らした。しかし、まだ至る所に黒ずくめの集団がいる。
『ブロック』とネオイビルとの決戦は、まだ始まったばかりである——



そして。
「『ブロック』とネオイビルの最終決戦が、遂に始まったみたいだね」
ホクリク地方から遠く離れたある土地の塔の頂で、とある男が目を開いた。
彼の眼の前にあるのは、巨大な龍の描かれた祭壇。
「この時のためにここまで姿を隠していたけど、ようやく僕が動く時が来たようだ。準備は整っている。後は手筈通りに行ってくれれば、全てが上手くいく」
祭壇を見据えて、男は手を翳す。
ここまで誰にも姿を見せず、ひっそりと、しかし確実に準備を進めてきた。この今のために、準備を進めてきたのだ。
「さあ、頼むよ。偉大なる神話の龍よ、僕に力を貸してくれ——!」